今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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今回は「ハナの場合」。
同じシチュエーションで彼女に合わせて書いています。



初心忘るべからず(ハナの場合)

   

 

 

 

「諸君! 【ハンター】とは生半可な気持ちでなれるものではない」

 

 ある日抜き打ちで選ばれて【教官】に呼び出された者達は、幾つか並んだ【闘技場】に赴く場所で、【教官】の話を聞いていた。

 

「【モンスター】と対峙し生き抜く術と強い心が不可欠だ」

 

 ハナもその一人だったのだが、正直出来るかなと思っていた。

 

「そこで問いたいっ!」

 【教官】は興奮して捲し立てている。

 

「いかなる決意をもってハンターとなったのか。それを示してほしいのだ。決意を示してくれれば特別な報酬を進呈しようっ!」

「おぉ~~っ!」

 

 一緒に感慨の声を上げながらも、ハナは緊張して【教官】と興奮した周りの者達を見ていた。

 

 

 【闘技場】には防具無しで一人で入る事になっていた。 

 武器、アイテムは自由だったが、狩猟には課題があった。

 

「【ヒプノック】の嘴を破壊した上で捕獲する事!」

 【教官】はそう言ったのだ。

 

 一応【アイテムボックス】にはそれに困らない支給品が親切にも入れられていたので持ち込むアイテムと併せると罠なども贅沢に使えるようになっていたのだが、相手の【ヒプノック】はどうやら【弱個体】らしく、失敗する事が多いとこの課題に挑んだ者に予め聞いていた。 

  

 ちなみに【弱個体】というのは成体になったばかりの、もしくは成体直前のまだ本格的な力を兼ね備えていない個体の事である。つまり鷹などでいう【若鳥】のような。

 このような個体でも生息場所によってはその近くの地域に住む人間に危険が及ぶため、ハンターへの依頼が出される事があるのだ。

 【ギルド】ではそれほど強くない事を利用して、駆け出しハンター用として回す事もある。

 

 通常ならばどんな個体であっても捕獲した【モンスター】を【闘技場】に放ってハンターに挑ませるものなのだが、【教官】が行う抜き打ち試験のようなものは、繁殖力の高い【モンスター】を捕獲、繁殖させて、いわば【養殖モンスター】として養って置き、それを使うのだそうだ。

 そうすればいつでも課題を提供出来るし、失敗が続いても生態系を壊す程に【モンスター】が減る事もないからだ、との事。

 

 なにせ【ドンドルマ】には数千人規模のハンターがいるのだ。それら全てが何度も失敗して対象【モンスター】を死なせるような事になれば、生態系が狂ってしまうのは目に見えている。

 

 

 

 さて、控室でインナー姿になって【闘技場】に入ったハナは、早速正面奥で呑気に寝ていた【養殖ヒプノック】にジャンプ斬りした。

 立ったまま寝る【モンスター】なので、高い位置を攻撃するやり方でないと【片手剣】では嘴に届かないからである。

 ビックリして起きた相手は、直後に体を回転させた。

 密着していたハナは、尻尾で飛ばされた。

 

「いったいわねぇっ!」

 

 怒りを込めてジャンプ斬りで戻りながら切り掛ったが、正面ではなかったのでまだ嘴が壊れない。そこで脚を狙って転ばせる事にした。

 

「えいえいっ!」

 

 こけた相手の嘴を集中攻撃していく。それを繰り返して嘴を破壊。

 その頃には怒り状態に入っていたが、【弱個体】の、しかも下位の【モンスター】なので大したダメージにならない。

 ただし睡眠ブレスを多発し始めるのはどの個体に関しても変わりなく――。

 

「あ……」

 近くで振り撒くように吐き出す睡眠ブレスをうっかり受けてしまった。

 

 足元で昏倒したハナを、なぜか【養殖ヒプノック】は攻撃せずに不思議そうに眺めた。

 いきなり倒れて動かなくなったのを見て、その状態に慣れていなかったらしい相手が驚いたようだ。

 首を傾げ、どうしたもんかと戸惑っている様子。と、ハナがむくりと起き上がったのでそれに驚いて飛び上がった。

 どうやら再び敵と認識したらしく、起きたハナに攻撃し始めた。

 

「痛い! しつこいっ!」

 

 攻撃を集中されるのは一人なので当たり前の事なのだが、ハナは文句を言った。

 

 

「そろそろかな?」

 

 尾羽はまだ垂れ下がっていなかったが、弱ったサインをそれ程正確には把握出来ていない彼女はそう呟いて適当に【支給用シビレ罠】を掛けてみた。

 掛った相手に【捕獲用投げナイフ】を投げてみると、罠に掛ったショックと投げナイフの僅かなダメージが偶然にも捕獲ラインに入っていたらしく、アッサリ捕まってしまった。

 

「出来たっ♪」

 喜んでピョンピョン跳ねていたら、【教官】が近付いてこう言った。

 

「まぐれでも捕まったのなら、まぁ合格としてやろう」

 

「ま、まぐれじゃないもんっ」

「貴様が弱ったサインを把握しているとはとても思えん。だがまぁ、捕まって良かったな」

 

 呆れた、というよりは諦めたような顔で【決意の証】を渡した【教官】は、「まったく、あ奴の過保護にも程があるわ……!」などとぶつぶつ言いながら帰って行った。

 

 てへっと笑って誤魔化したハナは【武具工房】に報酬を持って行き、【決意の剣】という赤い刀身と黒金属に金の装飾のある赤い盾がセットになった、雷と麻痺の双属性のある長リーチの【片手剣】を作ってもらった。 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 




「決意の剣」は「辿異武器」と呼ばれている段階まで強化した上でベナトールに付けているハナ(パートナー)に持たせています。
麻痺属性が付いているのでこれが効くものには結構な頻度で麻痺らせてくれるため、大変助かってます。

ところで捕獲の際に瀕死のサインを見極める時、実はサインを出す直前でも捕まえる事が出来るのは知ってましたか?
かつてこの感覚が鋭いハンター(ゲーム仲間)がMH2(ドス)の頃におりまして、脚を引き摺る前に「もう捕まるよ」と声を掛けられる事が多かったんですよ。
「なんで分かんの!?」と聞くと、「匂いがする」との事。
〈リアル捕獲名人〉の持ち主だったようです(笑)

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