今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】 作:沙希斗
話自体は去年(2018年8月6日)に書いたものですが、今年も2019年7月17日(水) メンテナンス終了後~2019年9月4日(水) メンテナンス開始まで開催されているので挿絵はそれに参加して撮影しました。
(去年のものはカイ役のキャラが違っておりましたので撮り直しました)
クエ出発前の依頼主(食材屋の女将)のセリフは公式サイトに載っていたものです。
さて問題です。
この果実は何でしょう?
ある日【食材屋の女将】から、カイはこんな話を聞いた。
「遂に幻の果実を見付けたよ! 鮮やかな色に特徴的な形。まさに完璧な果実さ!」
「それ欲しいっ! どんな果実なの?」
「幻だからねぇ、おいそれとは譲れないよ」
女将は勿体ぶった顔をした。
「おばさんお願いだよ、そんなに珍しいならハナに是非見せてあげたいんだ」
「そうさねぇ……」
女将は渋る表情をして考えてから、次のように言った。
「この幻の果実が欲しければ、【彩の滝(いろどりのたき)】にある【ポルタネ】と交換しようじゃないか!」
「【ポルタネ】……」
「採取もハンターの立派な仕事だからね! 頼んだよ!」
そう言うと女将は、カイの背中を思い切り叩いた。
実はカイは【彩の滝】には一度も行った事が無い。
というよりは、四人の中で行けるのはベナトールだけである。
なぜなら【彩の滝】は、G級専用の狩場であるからだ。
そんな【彩の滝】にHRの者でも行けるように許可が下りているのはここの所【大型モンスター】の目撃報告が無いというのもあったのだが、そういう時期に【G級体験クエスト】として【ハンターズギルド】がHR1からでも行けるように手配し、【採取ツアー】が掲示板に張り出されていたからである。
ただしあくまでもG級専用の狩場なので、防具だけはG級専用のものを貸し出すとの事。
クエストを受ける時に「幻の果実と交換するんだから、漢(おとこ)を見せな!」と【一人専用クエスト】として女将が依頼を出していたので、カイは一人で【彩の滝】に赴いた。
【気球】が【ベースキャンプ】に着くと、彼は目の前に広がっている光景に目を奪われた。
キャンプの前でどうどうと音を立てて落ち続ける滝があったからである。
その水量は計り知れず、ここは綺麗な水が豊富にある狩場なのだなと思った。
南国の土地なようで強い日差しが降り注ぎ、眩しいくらいの青空が広がっている。
キャンプ周りに生えている植物も赤く派手な色合いの花が咲いている木があったり、ふと鳴き声が聞こえると思ったら大きく目立つ嘴を持った鳥がいたりとなんだかウキウキさせられる。
キャンプのテントも暑くないように簾風になっていたりと南国仕様になっていた。
だが、そんな浮き立つ気分はキャンプ場所だけで留めて置こう。
カイはそう思った。
ここは遊びの場でもバカンスを楽しむ場でもない。あくまでも狩場である。
しかもG級専用なのだ。いくら【大型モンスター】の報告が無いとはいえ、どんな危険が待ち構えているかも知れないのだ。
カイは、トロピカルな風景の中で唾を呑み込みながらエリアに踏み出した。
地図で言う《1》にあたるこの場所は、滝、川、まばらに茂る熱帯の木々や明るい色彩の花々、などで構成されていた。
エリアの端には蛍光色に光る怪しいキノコが生えていて、試しに採取してみると【特産キノコ】などのお馴染みのキノコ類が採れた。
水辺が多いのと暑い気候なのとで【ランゴスタ】が大量に湧いており、採取の際にはあちこちから刺して来て辟易させられた。
【ポルタネ】がどこで採れるかも分からないのでキノコの所でも採ってみたが、採れる気配は無い。
虫捕りヶ所や採掘ヶ所もエリアによっては何ヶ所かあり、試しに採取してみたが、こちらも採れる気配は無かった。
やはり【タネ】と付いているので植物から採れるのだろう。
全体的に周ってみたが、やはりここの狩場は滝が全域を占めているようである。
ので、恐らくGRハンターは川になっている平らな岩場や起伏の富んだ地形を利用して狩猟をするのだろう。
岩場が白っぽいので、植物以外は全体的に白い地形に見える。
そのいくつかに多肉植物に枝が付いたような丈の低い植物が生えていて、そこから【ポルタネ】が採れた。
棲息している【小型モンスター】は【ランゴスタ】の他に【ランポス】【ヤオザミ】【ガブラス】がいて、特に【ガブラス】のいるエリアでは毒を吐き掛けられては採取の邪魔をされた。
ここが狩場でなければ間違い無くリゾート気分を味わえるような雰囲気を全体的に感じつつ、必要量の【ポルタネ】が採れたのを機に納品して帰る。
「待ってたよ!」と女将が満面の笑みで手渡して来たのは【アイルー印の果実】というアイテムだった。
不思議がるカイに「武具工房へ持って行ってごらんな!」と女将。
言われた通りに親方に見せると「おぉ! こりゃあ珍しいねぇ!」と目を輝かせ、嬉しそうに何やらカンカンと作り始めた。
「ハナちゃんに見せるんだろぉ? 是非とも装備させてやれよ!」
しばらくしてニヤリと笑いながらドカンとカウンターに置いたのは、先が丸く、鮮やかな黄色い皮に包まれた長い果実を模した【ライトボウガン】だった。
ちなみに先程の【アイルー印の果実】と同じ形の物で、こちらは皮を剥くと食べられるのだと言う。
早速ハナにどちらも持って行くと……。
「やだ面白い形! こんなので撃てるの?」
「分かんないけど性能は良さそうだよ」
装備したハナは【剣士用】を着ていたせいで【インナー】姿になったが、その恰好と良く似合っていて可愛らしい雰囲気になった。
続いて黄色い皮を剥いた【アイルー印の果実】を渡すと、中の白い果実を齧って「あんまぁ~~いっ!」と目を輝かせた。
「すっごく甘くて美味しいよこれ、カイにもあげるっ♪」
「ほんと?」
皮の表面はすべすべで、見た目では硬そうなのだが手でも簡単に剥げる程に実と皮がすぐに離れる。
皮を剥ぐと白く柔らかい果実が顔を覗かせ、長い実なので途中まで剥いだ皮を手に持って食べる形になる。
そうすると手を汚さずに食べられるので丁度良かった。
ほっぺたが落ちそうになる程甘くて美味しい果実に夢中になって食べた二人は、他の者の分を残すのを忘れてしまってほんの少しだけ後悔した。