今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】 作:沙希斗
「コリニィ」という防具の外装が作れるクエストだったんですが、今年のものは無かったので、去年(2018年9月4日)に参加、撮影したものを載せております。
なのでクエ中の挿絵の「カイ役」が違うキャラになってます。
話ではハナも参加している事になっておりますが、実際は「NPC同行不可」のものでしたのでカイ役のキャラ一人だけで写ってます。
「ねぇねぇカイ、あんたにピッタリな依頼を見付けたよっ♪」
ある日そう言いながら、ハナがカイにある【依頼書】を持って来た。
そのクエスト名を見たカイは、苦笑いした。
何故ならこんなクエスト名だったからである。
『しゃれおつハンターと蒼眠鳥』
「どぉ? ピッタリだと思わない?」
「ハナぁ、わざとそんな事を言ってるだろ」
「え? そんな事ないよ?」
ジト目で見られてハナはそう言ったが、顔がにやけているので誤魔化しているのはバレバレである。
「いいじゃん『特別なイベントを記念してくじ券が手に入るクエストをご用意しました』って書いてあるよ。『お洒落な衣装から愛らしい衣装まで取り揃えてお待ちしています』だって! ねぇ一緒に受けよっ。私『愛らしい衣装』が手に入ったら着て、カイにだけ見せてあげるからさ」
そう言われて、カイもまんざらじゃ無い顔をした。
「なに想像してにやけてんのよ」
「いや、可愛いだろうなと思ってさ」
「カイもお洒落な衣裳似合うだろうなぁ」
「君も変な想像してにやけないでくれるかな」
「変な想像ってなによぉ」
そんな事を言いながら受付に行くと、【ユニス】にこんな事を言われた。
「その依頼、受けたいならこれに着替えて」
どうも防具は貸与されるらしく、カウンター裏に置いてあったそれを見て再びカイは苦笑い、ハナはケラケラ笑った。
【剣士】専用のその防具は、頭、胴、腕、脚は【カカブ】と呼ばれている【イャンクック】を格好良くしてタイトに纏めたようなシリーズものであるのだが、腰の部分だけが何故か【ハンショクフェイク(腰)】と呼ばれる【蒼眠鳥】こと繁殖期の【ヒプノック】を模したものだったのだ。
つまり、これを身に着けた者は腰(というよりは股間辺り)からデフォルメされて多少可愛らしくなった、【蒼眠鳥】の首がにょっきり突き出す格好になるのである。
これの【ヒプノック(ノーマル)】のものを【狩人祭】で【負け組】になった者達が身に着けさせられて恥ずかし目を受けている姿を二人は何度も目撃していたので、その可笑しな恰好をさせられると知ってカイは苦笑いをしたのだが、ハナは逆に面白がったという訳だ。
まあとにかくも、貸与防具に着替えて出発する。
カイは恥ずかしがってそそくさと【クエスト出発口】から飛び出して行ったが、逆にハナは堂々と見せびらかすようにして出発口に移動した。
そしてその恰好を見てゲラゲラと指をさしては笑っている者に対し、「面白いでしょ♪」と一緒に笑ったり得意気にアピールしたりさえしていた。
「よく恥ずかしく無いなぁ……」
逆に変な恰好を楽しんですらいる彼女を隠れながら見ていたカイは、呆れたり羨ましがったりしていた。
狩場は【樹海】なのだが、【繁殖期】の時とそうでない時とでは【ヒプノック】のいる場所が違う。
大抵は一所で寝ている事が多いのだが、【繁殖期】の時は巣を護る目的があるからなのか、フィールドのほぼ中央にあるエリア《7》で寝ている事が多いのだ。
ちなみにそうでない時は大抵は《5》の大木の元で寝ている。
《7》に入ると案の定、奥の方で寝ていた。
が、耳が良いのか感覚が敏感になっているのか、近寄ろうとするとすぐに起きてしまう。
「おはよ、蒼ピーちゃんっ♪」
ハナは目覚めた相手にそう話し掛けた。
ハナは【ヒプノック】の事を「ピーちゃん」と呼んでいるので、【繁殖期】で羽の色を蒼に変えたこの時期の【ヒプノック】は「蒼ピーちゃん」なのだそうな。
ピイィ―――ッ!
相手は鋭い声で鳴いたが、これは答えた訳では無くて単に威嚇のためだろう。
【サブオーダー】が『嘴の破壊』となっていたので、なるべく正面から斬り付ける。
が、正面を取るという事は必然的に睡眠ブレスを受けやすいという事になり、案の定どちらかが強制的に眠らされた。
起こそうにもこの時期の【ヒプノック】は気が立っていて普段の時より暴れ方が激しいので、二人で起こし合うよりも逆に相手に踏まれたり嘴で小突かれたりして起こされる事の方が多かった。
なので眠らされてもすぐに起きられるのは良いのだが、結構痛い。
【鳥竜種】の中で唯一尻尾の切れる【イャンガルルガ】を除き、【彼ら】の尻尾はいくら長くても斬る事は出来ない。
そのせいで回転尻尾で叩かれたりすると「邪魔っけだな」と二人は思った。
そうしている内にも闘っていると弱ったらしくて腰に目立つ飾り羽がペタンと垂れたため、「捕獲にする?」と了解を求めて罠を掛ける。
掛けたカイと連携して【捕獲用麻酔玉】をハナが投げ、【クエストクリア】した。
「ねぇ見てみて、なんか親子みたいね」
そう言いながら、ハナがすやすやと寝ている【蒼眠鳥】の脇にしゃがむ。
そうすると丁度【ハンショクフェイク(腰)】の部分が雛のように見え、なんとなく微笑ましかった。
「そうだね」
カイも真似して相手に抱かれるような場所でしゃがみ、二人して並んで微笑み合う。
迎えに来たギルド関係者は苦笑いする者と優しく口元を緩める者とに分かれていた。
「お帰りなさいませ、ご主人さまっ(はあと)」
後日、部屋に帰ったカイは妙な色気を出した声色でそうハナに言われて部屋の中で固まった。
何故なら彼女が身に着けていた【外装】は、【コリニィ】シリーズと呼ばれる胸元の大きく開いた、というよりは薄く短いベストを素肌に着けているにもかかわらず、留め具を閉めずに乳首だけ見えないように隠した、というようなデザインの衣装だったからである。
それだけではない。
腰に至ってはただ陰部を極小さな当て布で隠し、後は紐で繋げた、というようなデザインになっている。
脚はロングブーツでそのヒールは高く、そして頭にはウサギの耳を模したような髪飾りを着けていた。
「な……っ、なな……!?」
カイは完全に面食らい、耳まで真っ赤になって焦り、目のやり場に困って両手で顔を隠す事までし、しかしその場でわたわたしながらも逃げ出す事はしなかった。
「うふん、カイにだけは見せるって言ったじゃない。『愛らしい衣装』♪」
「ははハナ!? きき君そんな大胆な子だったっけ!?」
『大胆』というよりはもう、こんな格好では『破廉恥な』と言ってしまった方が良いかもしれない。
「あなただけだから見せられるのよん、ねぇ抱いてぇ♪」
「ははハナっ! 酔ってるだろっ」
だらしなくしな垂れかかるハナを慌てて押し退けようとしたカイだったが、完全に狼狽しているので逆に押し倒されてしまった。
そのまま腕や脚を絡み付かせるハナの息が熱い。
「やめ……っ」
まだ焦っているカイに構わず、その口を自分の唇で塞ぐハナ。
思わず硬直してしまったものの、ここまで来ればやはりカイも男である。
【召使アイルー】のアルジャンに目配せだけすると、ベッドに移りもせずに欲望のまま彼女を愛撫し始めた。
アルジャンは心得たとばかりに頷くと、誰も入らないようにドアの外に【長期クエスト中】と書いた紙を貼り、部屋の鍵を全部閉めたのだった。