今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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これは「片手剣」の生産券がもらえるイベントクエストに参加したのを書いた話です。
これも今年のものはまだ配信されていないため、去年(2018年9月28日)のものを投稿しています。

「フロンティア」ではこのように様々なイベントが毎週のように配信されるのですが、私は毎回全部のものに参加している訳ではありません。
「外装」もしくは性能の良い「防具」が手に入るもの。
四人の主な使用武器(大剣、ハンマー、片手剣、太刀)が手に入るもの(ただしほぼ使わずにアイテムボックスの肥やしになっている事の方が多いのですが)。
後は個人的に面白そうだとか小説のネタになりそうだと思ったものには参加しますが、イベント告知をされている公式ページの内容を見て「ツマンネ」とか「この武具はイラネ」とか思ったらスルーしているものもあります。


サブタイトル、依頼主のセリフ、クエ内容などは公式に書かれてあったものです。


亀を助けろ!

   

 

 

 

「どうしよう……」

 

 その日、【大衆酒場】に狼狽えた様子の一般人が入って来た。

 

「どうしたの?」

 

 カイと一緒にたまたま一番近くにいたハナがそう声を掛けると、彼は不安気な表情でこんな事を言った。

 

「どうしよう。宴の準備が間に合わない!」

 

 彼は自分の事を【亀】と名乗った。

 

 

 彼の話によると、【乙姫】と呼ばれている貴婦人の宴のために、大量の【ヒレナガウオ】が必要なのだと言う。

 【ヒレナガウオ】は【潮島】に生息している魚である。なので一般人では余程安全が確認出来ないと釣りに行くのは難しい。

 

 なおかつ、今回は二十匹も必要なのだとか。

 

「そんな数、一度に釣れるかな?」

「う~~ん……。確か【ベースキャンプ】のある船着き場にいたような……? 後は《3》だったかな? の川の淀んだ所にいたはず。その二ヶ所のエリアを往復すれば、あるいは……」

 

 二人で顔を見合わせてそんな事を言っていると、【亀】は懇願するように言った。

 

「お礼はきちんと行ないます! 何なら乙姫さまにもお伝えしますし…! どうか! どうか亀を助けてくださいませ!」

 

 二人が困惑していると、返事も待たずに「依頼を出して置く」と去って行った。

 恐らく数が数なので、他のハンターにも協力して欲しかったのだろう。

 

 

 

 どれぐらい釣れるかも分からなかったので、取り敢えず少しでも多く納品してあげようという事で、【潮島】へ。

 【支給ボックス】を覗くと【釣りバッタ】やら【釣りミミズ】やらがうじゃうじゃ入っていた。

 多分ハンターに少しでも役に立ってもらいたいという思いで、【亀】が頼んだのだろう。

 

「ここにもいるようだから、まずここから釣っておこっか」

 

 船着き場の釣りポイントを覗いていたカイがそう言ったので、いなくなるまでそこで釣る。

 

【挿絵表示】

 

 が、ハナの場合は【ヒレナガウオ】だけを狙わずに食い付いた魚全部を釣り上げようとするため、【バクレツアロワナ】やら【ドス大食いマグロ】やらが魚籠の中でビチビチ跳ねている。

 〈釣り名人〉のスキルが付いた防具(狩人のピアス【釣師】と【ブルック】シリーズ)を貸与されているので魚がつついても取り逃がす事無く上手く合わせる事が出来るため、片っ端から釣り上げてははしゃいでいる。

 まあ最終的に【ヒレナガウオ】が釣れれば文句は無いのだが……。

 

「あぁん、餌が無くなっちゃったぁ」

「もう、ちゃんと狙わずに釣るからだろぉ」

 

 取り敢えず四匹釣れたと言うので納品させると、控えていた【ギルド職員】が「サブクリアです」と言いながら追加の餌を【支給ボックス】に入れてくれた。

 

「ありがとっ」

 

 ハナはお礼を言って取り出し、再び釣りポイントに戻って来た。

 その場にいた【ヒレナガウオ】はいなくなってしまったのだが、釣り餌につられて寄って来た魚が増えたため、また釣れるようになった。

 

「けっこう増えたね」

「うん。この分ならこの場のポイントだけでもしかしたら二十匹いくかもね」

「そうだったら楽なんだけどなぁ」

 

 釣りが出来るように張り出している、船の上の足場から覗いて言う二人。

 【ベースキャンプ】にはまず【モンスター】は来ないため、小型のものでも無駄な殺生をせずに済むからである。

 

 

 二種類の餌はたんまりあったので、結局その場だけで移動せずにクリア出来てしまった。

 随分楽な依頼だったなと思いつつ二人が帰って来ると、報酬として【竜宮状】というアイテムを貰った。

 

【挿絵表示】

 

「もしかして、【乙姫】さんの宮殿って【竜宮】っていうのかな?」

「そうなのかもね」

「じゃあさ、この報酬を持って宴に来いって事?」

「まさか!」

 

 そんな事を話していると、【ユニス】がボソッと言った。

 

「それ、【片手剣】の生産券」

 

【挿絵表示】

 

「あぁそうなのかぁ」

「宴に招待されたと思った? もしかして【乙姫】さんを見たかったとか?」

「そ、そんな事は……」

 

 カイがオドオドするのを面白がって、わざと拗ねたふりをするハナ。

 

「だって貴族の宴だよ? 一介のハンターが招待される訳ないじゃん」

「私は招待された事あるよ」

「えぇっ!? ホント?」

「うん。だっておじいちゃんが『お前も貴族との交流を持っておきなさい』って言うんだもん。まあ『1人では絶対に行かない』って頑として受け入れなかったんだけどね」

 

 ペロッと舌を出したハナに、「じゃあ【大長老】様と行くの?」とカイは聞いた。

 

「ううん、おじいちゃんは【大老殿】を離れられないから。ベナと行くのよ」

「そうなんだぁ!」

 

 カイは驚きつつも、彼なら確かに相応しいんだろうなと思った。

 

「ベナって凄いのよ、この前だってね……」

 

 ハナが興奮しながら宴に現れた【サンドリヨン】をベナトールがやっつけたエピソードを話すのを聞きながら、将来もしハナと結婚出来た時に、果たして自分は彼女を護れるのだろうかとなんだか不安になったカイであった。

 

  

 

 




話ではカイも参加している事になっておりますが、実際は「NPC同行不可」だったので挿絵ではハナ役のキャラだけが写ってます。
「亀」が人間か本当に「浦島物語の亀」なのかは公式にも書かれていませんでしたが、「亀」という「乙姫」に仕える使用人として書く事にしました。

あ、「宴に現れた【サンドリヨン】をベナトールがやっつけたエピソード」は、「守護者であるならば(第215話)」を参照して下さい。

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