今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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この話はリアルの時系列から言えばずっと後に書いた話ではあるんですが、登場人物の身の上に関する内容なので、早目に出しておこうと思いました。

この先も四人のメンバーでの話が中心ですし、四人揃わなくても誰かは関与しておりますので。


という事で、今回は「アレクトロ」と「カイ」が出会った話です。


《出会い》編(アレクトロとカイの場合)

   

 

 

 

「ねぇねぇアレクぅ」

「なんだよ? 一人で俺の部屋来て変な声出してんじゃねぇよ。何かあったら知んねぇかんな?」

「相変わらず口悪いわね~~!」

「悪かったな!」

「何かあったらって、何かする気なの?」

「物の例えだよバーカ。てめぇなんぞに何かする気ある訳ねぇだろ。――で、なんか用かよ?」

「何よつまんない……。あのね、カイが【ココット村】でどう成長していったか知りたいの」

「んなもん聞いてどうすんだ? アイツの過去を知った所で何か変わるわけでもねぇだろうに」

「だって【奇跡の少年】がどう成長していったかって、なんか興味があるんだもん」

「何だその【奇跡の少年】ってのは!?」

「ヤダあなた知らないの? 【街】が初めて【ラオシャンロン】に襲われた時に、その区画に住んでた人の中で、たった一人だけ生き残った幼い少年がカイなのよ。【ドンドルマの奇跡】としてけっこう有名なのよ?」

「へぇ、アイツにそんな過去がねぇ。一言も言わなかったけどな、アイツは」

「きっと思い出すのも辛かったんじゃない? それに新しい生活に慣れるのも精一杯だったでしょうし」

「俺に付いて来るのもな」

「あんた、そんな小さい頃から連れ回してたの?」

「いや? 勝手にどこにでも付いて来るからそれに任せてただけだぜ?」

「きっと寂しかったのよ」

「そうだろか? 他にも同じくらいの歳のガキはいたんだぜ? なのに俺にばっか付いて来やがってさ。ほんっとガキの頃から【金魚のフン】みてぇだったよ」

 

 

 あれは俺がまだうんとちっせぇ頃、ハンターに憧れて、ハンターの真似事をして野山を駆け回ってた頃だった。

 ツタを降りてその先に行こうと思ったら、その今降りたツタの上で、ぎゃあぎゃあ泣いてんのがいたんだわ。

 見上げたらさ、生っ白い(なまっちろい)ガキがツタを降りれなくなって途中で泣いてやがんの。

 そのまま放っとこうと思ったんだが、もう今にも落ちそうになってたわけ。つまり握力が持たなくなって、上に登るにも下に降りるにも出来なくなってたんだな。

「オイ! 一旦上がれよ。そっちの方が近いだろ」

「ヤダ!」

「なんでだよ? 下降りたって、危ないだけだぜ?」

「ヤダ~~~!」

「ビービー泣いてたら、もっと体力使うよ? 落ちたら大けがしちゃうぜ? いいの?」

「ヤダぁ……」

「あぁもう! ほら支えてやるから。ゆっくり降りな」

 しょうがねぇから支えてやったら、こくんと頷いてゆっくり降りて来た。

「オマエさ、もしかしてオレに付いて来たワケ?」

 

 こくん。

 

「なんで付いて来んだよ?」

「…………」

「だまってちゃ、分かんないだろぉ!?」

 そう言うと、そいつはすすり上げ始めた。

「あぁもお! 勝手にしろよ!」

 後ろに構わずにずんずん進んで、飛び石伝いに川を越えた時だった。

 

 今度は泣き声じゃなくて悲鳴が聞こえてさ。振り向いたら向こう岸に【ランポス】がいたんだよな。

 

 幸いにもはぐれた奴だったのか一匹しかいなかったんだが、俺らはまだちっさかったもんだから、充分怖かった。

「オイ! 早くこっちに渡れよ!」

 声を掛けたが怖くて縮こまってんのか、それとも飛び石を伝うのが怖かったのか、後退りするだけで渡ろうとしない。

 その内川に落ちるか【ランポス】に食われるかのどっちかになりそうだったから、俺は一旦戻って無理やり手を引いて、半ば抱えるようにして川を渡り直した。

 【ランポス】は水が苦手だから、それ以上は追っては来なかった。

「ほら、危ないって言ったじゃんか! もう付いて来んなよ!」

 そうは言ったがこの先また何かあったらやっかいだしと、結局手を引いて歩いて行った。

 

 怒った顔で手ぇ取ったらさ。ニコッて笑いやがんのそいつ。

 よく見たら可愛い顔してやがってさ、なんか女みてぇだなと思ったよ。

 

 もう帰ろうと思ったんだが、そのまま同じ道を通ったら【ランポス】がいやがるから、うんと遠回りして帰ったわけよ。

 

 

 その日からよ、なんでかずっと、俺に付き纏うようになりやがったんだよな。

 

 うっとうしくて追い払おうとしても、仕舞にゃ泣き出すのがうるさくて、もう付いて来るのに任せる事にした。

 でよ、俺が成長して体力を付けて行ったのと同じに、アイツも(アイツなりに)体力が上がってったみてぇだ。

 その間、別に何をしてやった訳でもねぇんだが、気が付いたらいつもいるから何でも話すようになるだろ?

 

 だから俺がハンターになるつもりだって事も話したんだよ。

 

 そしたら案の定「アレクがハンターになるならおいらもなる!」と抜かしやがった。

 特別に誘ったつもりは無かったんだがな、俺としては。

 アイツは「アレクに誘われた」っつってるみてぇだけどな。

 

 

 

「――へぇ、カイって意外にねちっこい性格なのかもね」

「ストーカーみてぇに付いて来るとこがか?」

「うん。それか、一つの事に拘る傾向があるのかもよ? 好きな事とかをずっとやり続けるような」

「どうだかなぁ? 何も考えてねぇように見えるんだが?」

「案外、全部計算してたりして」

「計算して【金魚のフン】やってるってのか!? それって気持ち悪くねぇか?」

「やっぱり何も考えてないのかも……」

 

「――あれ? ハナ、いたんだ」

「よぉ来たか。【奇跡の少年】君!」

「なんだよそれ……」

「アレクにね、あんたの成長物語を聞かせてもらってたの♪」

「え~~~? どんな事を話したんだよ? アレク」

「そりゃあおめぇ、あんな事やこんな事や……。な? ハナ」

「うん、中々面白かった♪ ね、アレク」

「やだなぁ、二人してニヤニヤして……」

「まぁ良いじゃねぇか、おめぇはおめぇだし」

「だね。カイはカイだわやっぱり」

 

 

 

 




幼いカイが、「ヤダ」しか言ってない件について(笑)

カイのエピソード(「奇跡の少年」の話)は友人が考えた話(第一話参照)なので、それに基づいて書いてます。

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