今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】 作:沙希斗
少し前に今年も配信されたようですが、これは最初に配信されたものを書いているので去年(2018年10月5日)のものです。
依頼主、そのセリフ、依頼文などは公式に書かれてあったものです。
「あぁ、知ってるよ!」
一般人らしい青年は、【大衆酒場】でハンター相手にそう息巻いていた。
「アレでしょ? 番人とか言われてるヤツ」
彼は、どうも今は閉鎖された【天廊】に潜んでいるとされる、【天廊の番人】と呼ばれている【モンスター】について語っているらしい。
「知ってる、知ってるよ! オレ様が集めた情報によると……」
そう言いながら青年は、持っていた資料を捲り始めた。
「そうそう! 青系でさぁ、水晶みたいな……。なんかそんな感じの奴!」
見るともなしになんとなく見ていたベナトールは、その資料は正しくないのではないか? と思った。
「高い所に居るんだよな。な! な! な! そうだろ?」
明らかに知ったかぶりして詰め寄るその青年に、ハンター達はあからさまに迷惑そうな顔を向けた。
「見事狩猟して、オレ様にも報酬分けてくれよな!」
ハンターですらない青年のその発言に、「虫が良いのも程がある」と嫌悪感丸出しで一人が言う。
「おめぇさんは『狩猟』がどういうものかちっとも分かってねぇようだな。こちとら命を懸けた商売やってんだ。文字通り死ぬ奴もごまんといる。そうやってやっとこさ貰った報酬を狩りも出来ねぇおめぇに分けろだと? んな人の良い馬鹿がここにいるとでも思ってんのか?」
彼は怒って言っているのではない。単に呆れているのだ。
だが一般人から見れば山賊紛いにしか見えない程の容姿と荒々しさを備えた彼に見詰められ、青年は途端にオドオドし始めた。
ハンター慣れしているはずの町民でも、怖いものは怖いのだ。
「いいいや『報酬』って言ってもその報酬じゃなくて、たた単に情報が欲しいと思っただけであって……」
だがその発言を聞いてもハンターは鼻で笑った。
「おめぇよ、さっきほざいてた情報ってのはいったいどっから手に入れた? どうせ噂の類いを集めただけだろうが。――あのよ、この際だから言って置くがよ。【モンスター】の情報っつうのは誰彼構わず吹聴するもんじゃなくてよ、ハンター同士でも仲間内っつうか、余程信用してる相手同士じゃねぇと交換しねぇものなんだわ。それは【ギルド】でも同じ事でよ。余程信頼に足る情報か、正確であると判断した情報じゃねぇと公表してもらえねぇ。勿論おめぇさんのような一般人には開示してももらえねぇものだ。だから諦めな。変な情報を鵜呑みにして知ったかぶりしても自分が恥かくだけだぜ」
「そんなぁ……」
青年は泣きそうな表情になったが、話は終わりだとでも言うように無視して仲間と話し始めた彼を見て、しょんぼりと項垂れながら【大衆酒場】を出て行った。
しかしそれでも諦め切れなかったようで、後日彼による【依頼書】が【掲示板】に張り出された。
報酬が特別な【ハンマー】の素材だというので、少し興味を持ったベナトールがそれを見てみる。
依頼主に【知ったかぶり青年】と書かれてあるのを見て吹き出してしまった。
狩場が【高地】となっていたのもあり、青年の話していた「青系で水晶みたいな」という表現でなんとなく【モンスター】の見当を付ける。
崖で構成された狩場をツタを頼りに登って行き、頂上付近で見付けた相手を見て、彼はやはりなと思った。
まだ遠くにいるためか彼に気付く事無く佇んでいる相手は、蛇のような長い身体に短い四肢を持つ【海竜種】と思われる姿をしている。
青年が話していた通りに青く輝く水晶を身体全体に生やしたような見た目をしており、身震いなどして大きく身体を動かす度にそれが剥がれ落ちていた。
【晶竜(しょうりゅう)】と呼ばれる【クアルセプス】である。
本来なら海中でしか生きていけないはずの【海竜種】が、陸上でも生きられるように進化したものだという。
隠れる場所の全く無い頂上ではすぐに見付かってしまう。
こちらを見るや否や向き直って咆哮して来た相手は、素早く身体をくねらせながら何故か後退した。
そして更に何度か後退を繰り返してから、その溜めた力を解放するように一気に前に押し出し、弾丸のように突進して来た。
真っ直ぐの軌道しか描けないと思いきやしっかり追尾してくるその突進を簡単に避ける。
眼前で止まった相手は上半身を持ち上げ、圧し潰そうと圧し掛かって来る。
横に避けると今度は長い身をくねらせてタックルして来た。
とにかく長い身体なので攻撃範囲が広く、避けにくい。
大きく回り込みながら回避していると鼻先にある角(というよりは単に鼻先が尖っているようなもの)を地面に突き刺し、それを支えにしてぐるりと我が身を一回転させた。
タイミングを合わせて転がり、丁度背後に回ったのを知るや、長い尾を振り回して打ち付けようとした。
避けると向き直り、離れているのを見て直線状に長く伸びる、まるで光そのものを放つかのようなものを額から照射して来た。
かなり遠くまで届くこの光は当たれば脅威だが、その分照射時間が長いため、実はハンターにとっては攻撃し放題の大きな隙になる。
当然最大溜めまで溜めていたベナトールは、【極ノ型】の強烈な二重スタンプを照射中の頭に叩き込み、相手は簡単に気絶した。
昏倒し、意識をハッキリさせようと頭を振りながらもがく相手に容赦無く連続で【ハンマー】を叩き付ける。
起き上がりのタイミングで飛び上がりつつ頭に食らわせ、回避すると怒った。
特大の咆哮に呼応するかのように今まで晴れていた天候が変わり、にわかに曇ったかと思うと同時にたちまち大雨が降り出した。
【高地】の天候は変わりやすいのだが、偶然にしても【クアルセプス】が天候を操っているように見えて恐ろしくも思える。
尚且つ自身から分泌されて結晶化している青い水晶状のものに雷が反応するのを相手は熟知しているらしく、上空から降って来る雷だけでなく相手がばら撒いた結晶にも落雷するために、それらを避けつつ闘わねばならなくなったのが忙しかった。
更に背中の結晶に雷から得た電気を蓄積させ、長めの溜めの後周囲に放つ技も身に付けており、雷、落雷、電気の三重攻撃のいずれかを食らえば麻痺してしばらく動けなくなってしまう。
ベナトール自身は頑丈な鎧と異常にタフな肉体のお陰で例え食らっても痺れた後の追撃で『自由にしてもらって』助かるくらいなのだが、彼以外がもしもこんな状況に置かれれば戦闘不能にさせられるだろう。
本来ならば【クアルセプス】程の【モンスター】にはPTで行くのが望ましいはずなのだが、今回は何故か一人専用クエストとして扱われていた。
まあどちらにしてもソロハントを好む彼には関係の無い事ではあったが。
天候が回復しても今度は太陽光を利用して結晶で乱反射させたり、それによってハンター側が【閃光玉】を食らったかのように目晦ましを受けたりする技も持つので眩しさに辟易しながら攻撃する。
その頃には角が折れ、頭付近の結晶が剥がれて赤剥けになった皮膚が痛々しかったが、そこだけでなく長いがために常に頭に回れずに四肢を攻撃したりもしていたため、その部位も赤剥けになっていた。
部位破壊されたヶ所から血を滲ませながらも頑張っていた相手だったが、ベナトールの前ではどんなに暴れても彼の本気を引き出せず、『じゃれている』間に死んでしまった。
帰ると青年が来ており、「あれ? コイツじゃないの?」と呟いている。
どうやら間違いに気付いた様子の彼は、「違うのかぁ、悪かったね」とベナトールに謝った。
彼がそのためにクエストに出発した事を受付から聞いていたのだろう。
申し訳なさそうに「お詫びに奢るよ」と申し出た彼を断り、【武具工房】へ。
出来た【ハンマー】は青味がかった奇妙な形をしたもので、親方曰く「溜めると面白いぜぇ!」という事だった。
試しに同じクエストを受けて溜め攻撃をしてみると、なんと一部が赤くなった。
面白い構造だなと思いながら今度は捕獲して帰る。
強化するにはG級個体の【古龍】、【極龍ルコディオラ】の素材が必要だと言われたが、GRでは下位に当たる彼では許可が下りないので諦めた。
青年は余程知りたがりなようで、今日も懲りずに【大衆酒場】に赴いては今度はG級個体の【辿異種】についての情報を集めているという。
撮影したのは「特異個体」の方だったため、少し緑がかった色になってます。
原種(ノーマル)はもっと青味が強いです。
話の中のベナトールはまったく本気を出してませんが、ゲーム内では本気を出さないと軽く死ねます。
てか、特にG級のクアルはタフな上に攻撃力も強いのでけっこう苦戦します。
ですがこのイベントはHR帯のものだったので楽でした。
強化は「G級ルコディオラ」になっていますが、ただのG級ではなく「辿異種」の方です。
なので強化素材が貰えるクエストの方は、青年が集めた「辿異種」の情報を基に狩猟をする流れになっていました。
ただし、やはりこちらも盛大な勘違をしていたようで、実際は「番人」ではなく「アクラヴァシム辿異種」を狩る事になるようです。