今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】 作:沙希斗
という事で、今回は「カイ」と「ハナ」が出会った話です。
「よぉハナ、今日はオッサンと一緒じゃねぇのか?」
「どうしても連れて行けない仕事があるんだってさ。アレクこそカイはどうしたのよ?」
「たまにゃ一人の時もあるさ。アイツと四六時中一緒ってわけでもねぇしな」
「そっか」
「あのよハナ。アイツって【ドンドルマ】の出身なんだよな? ちっせぇ頃に、おめぇと一緒に暮らしてたんだろ?」
「うん。ちょっとの間だけなんだけどね」
「それが何で【ココット村】に来るようになったわけ?」
「知りたい?」
「別に特別に知りたいっつう程でもねぇけども……」
「あ、知りたいんだ♪」
あれはね、あたしがまだ二歳か三歳くらいだった頃なんだけどね。そんなに幼かったのに、ハッキリ覚えてることがあるの。
その日は何でもない普通の日で終わるはずだった。
あたしはおじいちゃんが帰って来て、頭をポンポンされて、「お帰り♪」なんてやってたの。
そこに地震が来た。
ううん、最初はそう思ったんだけど、そうじゃなかったの。
その地震はね、一回じゃなくてずっと続いてて、しかもだんだん大きくなってきたの。
伝令が慌てふためいて入って来て、おじいちゃんに何か言ったんだよね。そしたらおじいちゃん、顔色が変わって、「すぐに行く!」って、一緒に出て行っちゃった。
不安がるあたしをいつも遊んでくれるメイドが慰めてくれて、あたしは止まらない地震が怖くてメイドにしがみ付いてた。
外が異様に騒がしくなって、その内家々が壊される音が交じって来た。
あたしは怖くて仕方がなかったんだけど、どうなってるのかがどうしても知りたくて、バルコニーから外を見てみた。
そこに見えたのは、沈み行く太陽に照らされた、とてつもなく大きな【モンスター】の顔。
鼻先に角があるのが分かったんだけど、その角だけで巨木ぐらいあるんじゃないかと思った。
【それ】がゆっくりこっちに向かって来る。
そして、どうも【それ】が一歩前に出るたびに地震が起こるらしいと分かる。
つまり、地震だと思ったのは、その【モンスター】が歩く振動だったわけ。
【
でもその【モンスター】は、攻撃するでもなく、ただひたすらに前に進んでいる、という感じだった。
なのに、ただそれだけなのに、【それ】が進む先々で【街】が破壊されて行く。
そしてその後は、瓦礫の山しかなかったの。
一夜明けて見てみたら、【モンスター】が進んだ区画『だけ』が壊滅的な被害になってることが分かった。
そしてその区画には、生きている者の気配がまったく無かったの。
いいえ、「まったく無かった」と言えば嘘になるわね。
そう思われたその場所で、無傷の【彼】が発見されたんだから。
【彼】が見付かった知らせが届いた時、それはそれは大騒ぎでね。誰もが「奇跡だ!!」って叫んでた。
だから【彼】は「奇跡の少年」って呼ばれるようになったわけ。
そしてその話は【ドンドルマの奇跡】として、【街】で語り継がれるようになった。
噂を聞き付けた王族や貴族の方々が、「是非会いたい!」って言って来てたみたいなんだけど、おじいちゃんは【彼】を匿って誰にも会わせようとしなかった。
だから【彼】は、あたししか遊び相手が無かったの。
でも周りがあまりにも騒ぐのが【彼】の精神的によくないというおじいちゃんの判断と、おじいちゃん自身も【彼】を匿い切れなくなったのとで、あたしにも内緒でどこかに連れて行っちゃったの。
それを知った時、あたしとっても寂しかったっけ。
だってあたし、女の子だと思ってたんだもん。
同い年ぐらいの女の子が来たと思って、【彼】がいる間はずっと、おままごととか、お花摘んだりとかして遊んでたんだし。
まあ何でドレス着ないのかな~とは思ってたんだけどね。
だから後でおじいちゃんから「カイは男の子だよ」って聞いた時、ホントにびっくりしたの。
「――なるほどねぇ」
「どう? 面白かった?」
「まあな。ってか、アイツままごととかしてて嫌がんなかったのか?」
「ニコニコして嬉しそうにやってたよ? お花摘む時も、メイドが花冠作って被せてあげたらすんごく喜んでたし。しかも花の妖精みたいでよく似合ってたっけ」
「まあ、今でも確かに女みてぇだしな、アイツ」
「それは細いからじゃない? まあ自分でも『たまに間違えられる』って言ってたけど」
「いつまでもなよっちぃからなぁ、筋肉付いてねぇし」
「そりゃあんたと比べたら付いてないでしょうよ。比べる人が間違ってるわよ」
「そうかぁ? ハンターだったらこんくらいの筋肉をだな――」
「アレク? 筋肉自慢はベナを超えてからにしなさいね?」
「ぐ……! 厳しいなぁ」
幼いハナが、異常に記憶力がある件について。
個人的に、最後にアレクトロがハナにやり込められるシーンが可愛くて好きです(笑)
「ベナトール」には「朝ごはんはココット村で」でメンバー全員が出会っているので、彼との「出会い編」は無しです。
ちなみに「カイ」が「ユクモ村」の温泉でベナトールに犯されたのは、彼らが時々「集会所」で狩りを行っていた仲だったからです。
カイはアレクトロに付き纏う奴なので、アレクトロも時々「ユクモ村」で狩りを行ってました。
でもその際にベナトールには会っていなく、里帰りしていた「ココット村」で初対面となったようです。