今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】 作:沙希斗
配信の順番で言えば、どうもこのエピソードが一番最初(2014年10月31日に第一弾として配信された)らしいです。
こちらはエピソード全体に登場する「モンスター」が「フロンティア」にも棲息しているものだったので、三つのエピソード全部をフロンティア風に書いています。
今回はその「湯けむり繁盛記(猫の手も借りたい配達編)」を投稿します。
実際のサブタイトルには全て「外伝:」が付いているみたいです。
というよりもどうも「エピソードクエスト」のエピソードのサブタイトルが全て「外伝:〇×」というような書き方になっているようです。
依頼主のセリフ及びクエ内容は情報サイトに書いてあったものです。
「んにゃああぁ!!!」
外で猫のような悲鳴と共にドアにぶつかったような大きな音が響いたのを聞いて、カイは何事だと外を見た。
するとそこには【大タル】が転がっており、近くで猫顔の番傘を被って片目に肉球模様の眼帯をし、腹にさらしを巻いた【アイルー】がひっくり返っていた。
「……。【ニャン次郎】っ!?」
カイは少し間を置いてようやく思い出し、素っ頓狂にそう言った。
【彼】の名は【転がしニャン次郎】。
【ユクモ村】で配達の仕事をしている【アイルー】である。
【彼】の配達は多岐に及び、【ベースキャンプ】で待機して、一度だけではあるが剥ぎ取った【モンスター素材】も含めた採取などしたハンターが運べるあらゆるものを代わりにハンターの家まで届けてくれたり、【ユクモ村】だけでなく【街】などのあらゆる地方に頼んだ荷物や郵便物などを届けてくれたりする。
(ただし玉乗りの要領で転がして運んでいる【大タル】に納まるもののみ、だが)
なのでカイは自分宛ての荷物か手紙が届いたか何かして、大方操作を誤って玄関のドアに激突したんだろうと思ったのだが――。
「いたたた。助けてくれにゃ~~」
頭にたん瘤を作りつつ起き上がった【ニャン次郎】は、情けない声を出して次のように言った。
「湯治客や観光客の増えたユクモ村で団体客を迎える準備のために働いていたら、運んでいた荷物を砂漠のメラルーたちに盗まれてしまったのニャ! 取り返すのを手伝って欲しいのニャ!」
「なんで、村付きのハンターに頼まないの?」
「丁度ここに来る仕事があったのニャ。だからどうせなら知り合いのハンターに頼みたかったのニャ!」
カイは以前、【ユクモ村】で狩りを行っていた時期があるのだ。
「そうか……。分かったよ。要するに【砂漠】に行って【メラルー】を退治してくればいいんだね?」
「そういう事ニャ。依頼内容としては【秘密のポーチ】を10個納品して欲しいのニャ。ただし、【レア度1】の武器で行って欲しいのニャ」
「どうしてだい?」
「荷物を奪われたのは自分のミスニャ。だから過度にメラルーたちを傷付けるのは気が引けるのニャ」
「なるほど。了解」
ハナも誘って【砂漠】に赴き、各エリアに散らばっていた【メラルー】をやっつけていく。
でも必ず【秘密のポーチ】を落とす訳では無いので、思うようには集まらなかった。
「もぉっ、サッサと落としなさいよっ!」
ハナが苛ついたが、相手は逆にハナのアイテムを盗んだりしてますます彼女を憤慨させたりしていた。
そんな彼女に苦笑いしながら10個集め、二人でキャンプに帰って納品。
【街】に帰ったら【ニャン次郎】は礼もそこそこに去って行った。
なんでも「タルにガタが出来る程忙しい」のだそうで、「それでも仕事はやり切って見せる!」と言っていた。
しかし去って行く後ろ姿は悲愴感が漂っており、二人は「大丈夫かな?」とすぐに小さくなっていった【彼】を見送りながら気遣った。
それでお役御免と思いきや、【彼】と入れ替わるように違う【アイルー】が訪ねて来た。
今度は【ドリンク屋】である。
【彼】も【ユクモ村】で働いている【アイルー】で、着いた早々こう言われた。
「爆発ユクモ的に増加したユクモ村の客にドリンクの生産が追いつかずドリンクの原料を切らしてしまいましてにゃ、原料調達のため各地を渡り歩いていた所、転がしニャン次郎から話を聞いて【ドンドルマ】に赴いたのですにゃ」
「カイ、あんた【ユクモ村】ではけっこう頼りにされてたのねぇ」
「まぁねぇ」
照れ臭そうに笑っている彼を無視し、【ドリンク屋】は更に続けた。
「ドリンクの原料となる超電雷光虫の捕獲を依頼したいのですにゃ」
「【超電雷光虫】って、まさか……」
カイは嫌な予感がした。
「3匹採って納品するだけにゃ。いやアイテムを使わせるなんて水臭いにゃ。こっちで用意するから安心して下さいませにゃ」
一方的に押し付けたようにして去って行く【ドリンク屋】。
念のために【依頼書】を見てみると、やはり【アイテム無所持】が条件になっていた。
カイの感じた「嫌な予感」は、分かる人には分かると思います。