今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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前回の「剛種ポボルバルム」の話を読んだ友人が、「これはベナ(G級)で続きがあるな」とか抜かしやがりましたので、挑戦してみました。
なので、「挿絵」も全てG級で撮影しております。


G級の混乱

 

 

 

 その日【G級グレンゼブル】と相対していたベナトールは、戦闘中に急に相手が混乱し始めたのを見て不審がった。

 まるで頭の中のものを振り払うかのように角を振り回し、地面に突き刺す。

 頑丈な角は岩肌の地面を陥没させる程で、相手もそれを利用してダイナミックな攻撃を仕掛けて来るものなのだが、その自慢の角が欠けようが砕けようが、狂ったようにただ地面を突き刺し続けている。

 

【挿絵表示】

 

 それは、まるで地面を攻撃しているかのようだった。

 

 巻き添えを食らわないように離れたベナトールは、今の今まで敵対していた、自分を廃除すべく死に物狂いで向かって来ていた相手が見向きもせずにひたすら地面を『攻撃』しているのを困惑して見ていた。

 

 が、ふと『音』が響いている事に気付く。

 

 それは幾つもの笛を乱雑にただ吹き鳴らしただけの中に幾つもの太鼓を乱雑に叩き鳴らしたようなもの。

 

 この『音』は――!

 

 聞いた事のある音の出所を探そうと首を巡らせている内にその音は大きくなり、エリア全体に響き渡りつつ地面が揺れた。

 直後、いきなり【G級グレンゼブル】の真下が崩れ、馬鹿でかい口が現れて相手をくわえ込みながら飛び上がった。

 

 悲痛な叫び声を上げながらもがいているそれを噛み砕き、飲み込んだのは【創音竜】とも呼ばれている【飛竜種】。

 つまり【ポボルバルム】である。

 GRハンターしか行けれない狩場にいるという事は、つまりはこの【モンスター】もG級である可能性が高い。

 

「……。おいおい。証拠隠滅されちゃ、俺の御飯(おまんま)が食いっ逸れるんだがな」

 

 美味そうに舌なめずりして口の周りの血を拭っている相手を見ながら、ベナトールは言った。

 相手はざまあみろと言わんばかりに例の音を響かせた。

 

 

 頭を中心に攻める【ハンマー】の立ち回りは、噛み付き攻撃を誘いやすい。

 他の【モンスター】なら避けつつそのまま頭に叩き付ければ済む話なのだが、相手は口だけで顔が出来ているかのような、馬鹿でかい口の持ち主である。

 なので【頭】というよりは【口(下顎や下唇など)】を攻撃するような感じになってしまう。

 おまけに眼前もしくは斜め前にいるが故に上半身を持ち上げて圧し潰そうとしたり、前進しつつ噛み付こうとするのでその巨体さも相まって頭に届きにくい。

 なので彼は【嵐ノ型】【極ノ型】の溜めジャンプ攻撃を多用して攻めていた。

 

【挿絵表示】

 

 その間にも様々に変化する『音』は響き続けている。

 それは時には闘気が赤くなって攻撃力が上がったり、緑色のオーラを纏ってどうも自身を回復させているのではないかと思わせるような事もあった。

 

【挿絵表示】

 

 【狩猟笛】が、そのまま【モンスター】になったみてぇだな。

 ベナトールは闘いながらそんな事を思った。

 

 

 幾度目かの叩き付けの後、スタンから立ち直った相手が持ち上げた上半身を屈めるようにして溜めた。

 随分長い溜めだなと思っていると、それを全て解放するように吠えつつ、体全体からある『音』を響かせた。

 

 それはバインドボイスを幾つも重ねたような多段攻撃で、避けたベナトールは頭の中を掻き回された。

 

「ぐぅあおぉ!!」

 彼は頭を抱えて地面を転がった。

 

 混乱する『音』は直接脳に届くらしく、〈超高級耳栓〉を付けていようがお構いなしに狂わせて来る。

 今までは強靭な精神力で何とか持ち堪えていたのだが、この大咆哮には勝てなかったようである。

 

 意識が朦朧とする。

 体が勝手に動いて、どうも自分は踊っているらしい。

 

【挿絵表示】

 

 暴れている【奴】の気配を感じる。

 クソッタレ動け、サッサとこの呪縛から抜け出せ!

 

 そうやって(主に内面で)もがいている内に、先割れした瘤状の尾先が眼前に迫っている事に気付き――。

 

「ぐぅおっ!!」

 が、やはり逃れられずに吹っ飛ばされた。

   

「がぼぉっ!」

 

 何度も転がって岩壁に叩き付けられて止まった彼は、上半身を起こしつつ大量吐血した。

 鎧の腹部分が大きく凹んでいる。

 内臓が破裂した可能性が高い。

 

「ぐぶっ! げはぁっ!!」

  

 だが、血を吐きつつも立ち上がった。

 腹を押さえ、しかし相手を睨む。

 一歩、二歩。

 ふら付く足を前に運び、そしてなんと走り出した。

 

 真正面から攻撃して勝てる相手ではない。

 相手は文字通り大口を開けて待っている。『さあ来い、飲み込んでやる』とでも言うように。

 

【挿絵表示】

 

 そしてそれが彼の体に覆い被さる寸前に、彼は飛んだ。

 

【挿絵表示】

 

 飛び上がった勢いを利用して下から振り上げ、口内から上顎を叩き上げた。

 強制的に上を向かされた相手の咽頭付近に飛び下りつつ、叩き付けた。

 

 今度は相手が血反吐を撒き散らせる番だった。

 

 堪らずに倒れ、まだ血を吐き続けている間に脱出し、頭目掛けて振り下ろす。

 血を吐きつつ、それでも彼は手を止めずに叩き付け続けている。

 頬骨あたりが砕けた音がし、下顎あたりが砕けた音がし、それでも彼は止まらない。

 途中で糸が切れた操り人形ように急に彼が倒れた頃には、もう相手は息をしていなかった。

 

 

 ベナトールが【医務室】に運び込まれた時、救助係の【アイルー】は、「死んでないのがおかしい状態だ」と医療係に伝えたという。

 

 

 

 

 




書いてみましたが、やはり壮絶になってしまいました。
ちなみに友人には「倒しちゃうんだ!」と驚かれましたが、今回挿絵のためにソロ挑戦した時もなんとか倒せました。
ただし「元気のみなもと」という大幅ダメージカットの特別アイテムを使っていますので、「邪道」とか「甘え」とか言われても仕方がないです。

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