今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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これは「ベナトールが【教官】らしくハナに教えている所を見たい」と友人に言われて書いたものです。
友人にお題を貰ったり、自分が急に思い付いたりしたものを脈絡もなく書いたりしているため、彼らの時系列がバラバラになっている事がよくあります(^^;)


実際は二つの作品なんですが、最初の話が短かった(千文字にならなかった)ため、二つの話をくっ付けて一つにしました。
なので、今回は本文の中にタイトルが二つあります。


ハナ、基本を学ぶ

《ハナ、【肉焼き】を学ぶ》

 

 

 

 これは、ハナがハンターになって間もない頃の話。

 フィールドで【肉焼きセット】を置き、鼻歌交じりに肉を焼いているベナトールを見て、ハナはよだれを垂らさんばかりに焼かれていく骨付き肉を見詰めていた。

 

【挿絵表示】

 

 当たり前のようにベナトールが焼く係になっていたのだが、そろそろ興味が湧いて来た様子で、肉だけでなく彼の手元も見るようになった。

 その様子を察したベナトール。

 

「焼いてみるか?」

 

「いいの!?」

「お前もハンターなら覚えにゃならん事だからな」

 まずベナトールが見本を見せる。

「良いか、このタイミングで上げるんだ」

 彼はハンターなら肉を焼く時に誰もが口ずさむ、【肉焼きソング】と呼ばれる歌を歌い出した。

 といっても特定の歌詞があるわけでもなく、いつから歌われて来て誰が作ったのかも定かではない。

 とにかく肉を焼く時のタイミングを計るために、「あ~」だの「う~」だのそれぞれの節回しを用い、ハンターの間で歌い継がれて来た歌らしい。

 

「♪タッタラ~ラララタッタラ~ラララタララッタララッタララッタララッタタタタタンッ♪」

 

 歌い終わった彼は三秒数えてから肉を上げ、「上手に焼けましたっ♪」と言った。

「へんなのぉ~~」

 ハナは笑ったが、これが一番タイミングが計りやすいのだという。 

 交代してもらって【肉焼きセット】に付いている椅子に座るハナ。

 すぐには【肉焼きソング】は覚えられないだろうと、ベナトールは横で歌って拍子を取っている。

 が、上げるタイミングが早すぎて【生焼け肉】になってしまったり、逆に遅すぎて【コゲ肉】になってしまったりしている。

「意外にむずかしいのね……」

 ハナは呟きながら、肉焼きを続けた。

 

 

 ベナトールから「上手に焼けましたっ♪」と言われた頃には、周りは【生焼け肉】と【コゲ肉】の山が積み上がっていた。

「どうすんだ? これ」

 ベナトールが呆れ顔で言う。

「責任持って食べるんでしょ? ベナが」

 ハナはニヤニヤ笑っている。

「失敗したのはお前だろうが!」

「教えたのはベナでしょお!」

 言い合ってはいたが、結局二人で分けて食べたのであった。

 

 もちろん、ベナトールの分の方が(特に【コゲ肉】の量が)断然多かったのだが。

  

 

 

*********************************

《ハナ、【調合】を学ぶ》

 

 

 

「――さて問題です。【アオキノコ】と【薬草】を交ぜると、何になるでしょう?」

 おどけた口調でベナトールが言う。

 

 今日は【調合】をハナに学ばせているのだ。

 

「う~~~ん、【回復薬】?」

「ほぉ、正解だ。なら【アオキノコ】と【太陽草】では?」

「えぇ? そんな調合あったっけ?」

「あるんだなこれが。答えはどっちも【回復薬】だ」

「そんなの、片一方だけ覚えとけばいいじゃ~~ん」

「そういう訳にはいかんぞ。【薬草】は意外にも採れる場所が限られていてな。今採れる報告があるのは【森丘】と【塔】だけなんだわ。だから他の場所で現地調合しようと思ったら、【太陽草】を採る必要がある」

「でも、この前【密林】で採ろうと思ったら、【落陽草】っていうのしか採れなかったよ?」

「それは【夜】だからだろう? 【太陽草】は【昼】に行かんと採れんぞ?」

「じゃあ【夜】に現地調合しようと思ったら、どうすればいいの?」

「諦めるか、もし【回復薬】を持っているのなら、【回復薬グレート】にしちまうか、だな。調合素材は分かるか?」

「うん。あたし大好きだから分かるよ♪ 【ハチミツ】でしょ」

「正解だ。まあこの前も採取中にこっそり舐めてたもんな」

 

 ハナはげんこつされた事を思い出して、頭を押さえながらペロッと舌を出した。

 

「【大食いマグロ】や【ドス大食いマグロ】を釣って【秘薬】が胃に残っているのを期待する、という手もあるにはあるが、現実的とは言えんからなぁ」

 

【挿絵表示】

 

 

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「でもあのお魚、いろんなもの食べてるよね」

「まあ【大食い】という名前が付いちゃあいるが、あれじゃ【暴食】だわな」

「そうかも」

 

 ハナは可笑しそうに笑った。

 

「体力回復だけじゃなくて、スタミナ回復もせにゃならん。その調合があるのは知ってるか?」

「え? 【こんがり肉】じゃダメなの?」

「まあ大抵はそれで解決するんだが、俺の場合はいちいち焼くのが面倒臭ぇもんだから、【元気ドリンコ】を持参してるんだよ。その調合にさっき言った【落陽草】が必要になるんだ。ちなみにもう一つの調合素材は【ハチミツ】な」

「なによぉ、【ハチミツ】一杯いるじゃないのよぉ」

「そうだぞ? だからこっそり舐めてる場合じゃねぇぞ?」

 

 ハナは苦笑いした。

 

「回復系は多く持てる【回復薬】と【回復薬グレート】を持って行けば大抵は事足りるが、いざという時にはちと物足りん回復量でな。そのために【秘薬】をポーチに忍ばせておいた方が心強い。あの薬は体力が満タンになるからな」

「【秘薬】って、二個しか持てないよね?」

「貴重だからな。だから調合素材も手に入り辛い。まず【太陽草】【落陽草】【アオキノコ】を三種調合するか、もしくは【アオキノコ】と【不死虫】を二種調合して【栄養剤】を作るだろ。そいつに【ハチミツ】を交ぜるか【ハチミツ】【アオキノコ】【不死虫】と三種調合するかして【栄養剤グレート】を作る。そんでもって、それに貴重なキノコである【マンドラゴラ】を交ぜて初めて【秘薬】になる。ちなみに他の調合では【栄養剤】【ハチミツ】【マンドラゴラ】の三種調合と、【ラオシャンロン】から剥げる【龍薬石】に【回復薬】【回復薬グレート】を交ぜる、ってな方法もあるぞ」

 

「なんか頭痛くなってきちゃった……」

 

「調合っつうのは【二種調合】と【三種調合】ってぇのがあるからな。全部覚えようとするとけっこう大変なんだわ」

「ベナは全部覚えてるの?」

「あたぼぉよ! と言いてぇとこだが膨大なもんでな。調合が成功した物は全部メモしてるんだよ」

 見せてもらうと回復系はもちろんの事、中には【弾】やら【ビン】やらという類いもあった。

 

【挿絵表示】

 

 

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「ねぇベナ、あんたが【ボウガン】や【弓】を使ってるとこ見た事ないんだけど、こんな調合して役に立つの?」

「知ってると知らねぇとは大違いだぞハナ。特に【状態異常】を起こすものや、よく使われる【貫通弾】【通常弾】【散弾】【拡散弾】なんかの調合を覚えとかねぇと、いざ使う時になって役に立たねぇぞ」

「その『いざ』っていつ来るのよ?」

「お前は知らんだろうが、必要に応じて使う事もあるんだよ。こう見えてな」

「ほんとぉ!?」

 

 【ガンナー】は【火事場】でやる事が多いため、とてもそんな【クエスト】にはハナは連れて行けないのだ。

 

「まあ【ハンマー】担いでた方が、俺には性に合ってるよ」

 これ以上深入りすると「連れて行け」と言われかねないので、早々に【ガンナー】の話は切り上げた。

「そうでしょおねぇ……!」

 

 彼女が深く詮索しない性格で良かったと、ベナトールは思った。

  




この調合は、あくまでも「フロンティア」で使われている調合のやり方なので、他のモンスターハンターシリーズでは素材が違う調合になっているかもしれません。
ので、もし「素材が違うよ」と思われたとしてもスルーして下さい。

なお、文中では「森丘と塔しか薬草は採れない」となっていますが、今現在の「フロンティアZ」では「樹海」「潮島」「高地」でも採る事が出来ます。
この頃はまだそれらのフィールドが狩場として開発提供されてなかったんです(苦しい言い訳)。


「肉焼き」の話が出たついでに「肉焼き機(肉焼きセット)」の豆知識をひとつ。
この「肉焼き機」、水の上だろうが崖の端など足場の不安定な所だろうがどんな場所でも焼けるように工夫されているのですが、そんな不安定な所で水平に保つようにかそんな場所では「つっかえ棒」が出て来るんですよ。
(他のシリーズでは分かりませんが)

【挿絵表示】

で、「密林」のキャンプ背後の崖を登ってその縁ギリギリで焼こうとすると「肉焼き機」が崖からはみ出る形になるんですが、その時だけ普段の「つっかえ棒」より長い「ロングつっかえ棒」が出て来るんですよ。

【挿絵表示】

これは「フロンティア」の元になった「モンスターハンター2(ドス)」の頃からそうなっていて、「良く出来てるな~~!」と感心したギミックの一つなんです。


こういうのを見ると、いかに細部までこの世界が設定されて創造されたか分かりますよね。

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