今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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これは「二頭クエ」のお題を友人から貰って書いたものです。
ですが、今読み返すと「キケンな女の子」の続きのような内容になっているので、「キケンな女の子」の続きとして載せても良かったかもしれませんね。


砂まみれで痺れる

 

 

「ハナよ。【音爆弾】の使い方は、もう分かったか?」

 【ディアブロス亜種】を狩った次の日、ベナトールはそう聞いた。

「ん~~~、よく分かんなかった」

 

 てへっと笑うハナ。

 

「なら復習に行くか」

「もうあの子に会うのヤダ。女の子なのにすんごく乱暴なんだもん」

「ならば【ドスガレオス】あたりで練習するか」

「なにその【モンスター】?」

「【ガノトトス】を狩った事を覚えているか? 奴と同じ【魚竜種】でな。水ではなくて砂を泳ぐんだよ」

「砂の中を泳ぐの!? へんなの~~」

 

 

 昼に【砂漠】に着いた二人は、今日は【ベースキャンプ】の古井戸からは入らずに、そのまま道なりに《2》へ出た。

「あっついぃ~~!」

 文句を言うハナに【クーラードリンク】を渡したベナトールは、自分も飲みつつ数歩進んだ。

 

 そこでは【ガレオス】が数頭、グルグルと周回しながら泳いでいる。

 

 まず【ガレオス】に対して【音爆弾】を投げて見せたベナトールは、「ほれやってみろ」とハナを促した。

 だが、案の定タイミングが合わずに、とっくに相手が通り過ぎたあたりで投げてしまっている。

 ベナトールは苦笑いしながら、「もっと練習が必要だなぁ」と言った。

 

 と、砂色の背ビレの中に、異様に大きく黒味がかった背ビレがあるのに彼は気付いた。

 しかも偶然にもタイミングが合ったハナが、そのでかい背ビレの主を砂から引き摺り出した。

 

「またまっくろじゃん!」

 ハナはビチビチと砂地を跳ねる相手を見て、そんな事を言っている。

「まあこいつは雌じゃねぇがな」

 ベナトールは苦笑して言った。

 慌てて砂の中に潜ろうとする【ドスガレオス】に【ハンマー】を叩き付け、阻止するベナトール。

 ハナは大き過ぎて他の部位に届かないので、足元で一生懸命に切っている。

 だがたまにタックルされて、吹っ飛ばされたりしていた。

 

 

 それは、戦闘開始からそれ程経っていないと思われる頃だった。

 頭を狙って叩き付けようと最大溜めを振り被ったベナトールは、いきなり真横から飛び蹴りを食らって吹っ飛ばされた。

 

「――!?」

 

 次の瞬間痺れて動けなくなる。

 そんな彼を馬鹿にするかのように、吠えたものがいた。

 

 ギャウッギャウッ!

 

 【ドスゲネポス】か……。

 

 【ゲネポス】よりもドスの効いた声が耳に入ったベナトールは、苦々し気に心で呟いた。

 目だけを動かして周りを見た彼は、【ゲネポス】を引き連れていないのを知る。

 

 恐らく成長して、群れから離れたばかりの若い雄なのだろう。

 

「ベナ? どしたの大丈夫!?」

 急に倒れて痙攣している彼を見て、心配そうに言うハナ。

 

 が、悲劇はそれだけでは終わらなかった。

 今までよくもやってくれたなとばかりに、【ドスガレオス】が圧縮した砂のブレスを彼めがけて吹きかけたのである。

 

「ぐおっ!?」

 更に吹っ飛ばされるベナトール。

 だがこれで麻痺は解けたため、再び【ドスガレオス】に対峙しようとすると――。

 

 ガブッ!

 

「邪魔なんじゃコラ~~~!!!」

 ベナトールはとうとうキレた。

 

【挿絵表示】

 

 だが【ドスガレオス】そっちのけで【ドスゲネポス】を追い掛けるとハナから離れてしまうので、どちらも相手をしなければならない。

 幸い足元に陣取っているからなのか、ハナには【ドスゲネポス】の攻撃は届いていないようなのだが、そのせいで二頭ともに自分に攻撃を集中され、忙しいったらない。

 

【挿絵表示】

 

 それでもどうにか先に攻撃を加えていた【ドスガレオス】の方が弱ったようで、部位破壊されてギザギザになった背ビレを畳んで移動した。

 これ幸いと、残った【ドスゲネポス】を二人で倒すと、寝ていると思われる《7》へ向かった。

 

「なんか、可愛いね」

 立ったままスヤスヤと寝ている【ドスガレオス】を見て、ハナが言う。

 

【挿絵表示】

 

 ベナトールは無言で足元に【シビレ罠】を仕掛け、捕獲した。

 そのままにしておいてやろうかとも思ったのだが、それだと【クエスト失敗】になってしまうので、討伐にはしないでやったのだ。

 

「結局、よく分かんなかった。【音爆弾】のタイミング」

 

 そう呟いたハナに対し、ベナトールは久しぶりに、こめかみに血管を浮かせて引き攣り笑いをしたのだった。   




「ドスゲネポス」の飛び蹴りをわざと食らってベナトールが痺れるのを再現しようと思ったんですが、上手くいきませんでした。
闘っているシーンは二頭いる間に撮影しないといけなかったので、結構難しかったです。

ベナトールは基本的に自分の感情を抑える性格なんですが、この時ばかりはキレたようです(笑)

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