今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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これは「訓練所時代の彼らが見たい」という友人の要望に応じて書いたものです。
なので三話構成です。

ハナはベナトールが教官として付いているので、訓練所には入ってません。
なので、彼女だけ本物の「教官」から訓練を受けていません。


※今回は血飛沫の多い挿絵になってしまいましたので、グロ注意です。


【訓練所】編(ベナトールの場合)

   

 

 

 

「今日から【訓練所】に来る事になった、【ベナトール】と言うのは、お前か?」

 【訓練所】で【教官】を待っていた若き日のベナトールは、そう聞かれてビシッと気を付けをし、直角にお辞儀をした。

「はい、よろしくお願いします!」

 

「デカいなお前……!」 

 【教官】は少し驚きながら見上げている。

 大男な上に褐色の肌をしているので、威圧感があった。

 

「はぁ、すんません……」

 恐縮して頭を掻くベナトール。

「まあいい、かなりガタイが良いようだが、今まで何かやってたのか?」

「はい。独自で狩りの勉強を……」

「ほぉ、それは一人でか?」

「いえ、物心付く頃から親父に付いてました」

「親父さんもハンターなのか?」

「はい。代々ハンターの家系だそうで」

「なるほど。だから名前が【ベナトール】というのだな」

「はい。『立派なハンターになるように』と、【ハンター】という意味の名前を付けたそうです」

「立派な名前じゃないか。名前負けしないように、いずれ【上位】でも活躍出来るように祈ってるぞ!」

「はい! 頑張ります!」

 

 既にハンターに付いて勉強していたというので、【ハンターの基本】などの項目はすっ飛ばし、武器種ごとの訓練をする事に。

 【片手剣】を持たされたベナトールは、物足りなさそうにしている。

 

【挿絵表示】

 

「お前、何を普段使っておるのだ?」

「【ハンマー】とか、【大剣】とかですかね……」

「重い武器が好みか。まあそれに比べて攻撃力が無い【片手剣】は物足りないだろうが、軽い分手数を多く稼げるし、【状態異常】を効かせるには持って来いだぞ。武器を出したまま【アイテム】も使えるしな」

「心得ております」

「ハンターを目指す者に、最初に与えられる武器が【片手剣】だものな。こんな説明もいらなかったか」

 まあともかくも、狩りの腕前を見る事にした。

 

 今回の狩猟対象は【ドスファンゴ】。フィールドは【密林】である。

 普通に狩猟すると【ドスファンゴ】など取るに足らない【モンスター】だと思われがちなのだが、【狩猟訓練】ではポーチを空にした状態で一から【アイテム】を調達したり、武具も【教官】が独断で決めた物を装備して挑まなければならないため、意外にも難しい。

 

 ベナトールは各エリアごとにある、採取出来る箇所に向かっては【回復薬】の元になる【太陽草】やら【アオキノコ】やらを採っている。

 中には【教官】が隠して置いた【アイテム】も交じっていたため、あり得ない所から【トラップツール】やら【ピッケル】やらが出て来て驚いたり苦笑したりしていた。

 

 【教官】が言うには「【モンスター】からその素材が剥げるとは限らない」との事。

 そこで【ブルファンゴ】を倒して剥いでみると、皮下や腸の中などに【回復薬グレート】が入っていて、心底驚かされた。

 ちなみに「どうやって入れたかは秘密」なのだそうだ。

 

 地図で言う《7》で【ランポス】の攻撃を避けながら採取を行っていたベナトールは、ふと違う気配を感じて振り向いた。

 が、一瞬遅く、背後からぶち当たったものに吹っ飛ばされた。

 

 ブゴッブゴッ!

 

 慌てて起き上がると、相手は鼻息荒く前足で地面を掻いている。

「出たな! 【ドスファンゴ】め」

 ベナトールは呟くと、直後に来た突進を避けて追い掛けた。

 だが、うっかり【ハンマー】の攻撃タイミングで振り向き様に切り付けたために、再び吹っ飛ばされた。

 

 【教官】は、狩りの影響が及ばない範囲の距離で紙に【赤ペン】を走らせている。

 

 攻撃修正したベナトールは振り向き様ではなく、突進終わりに止まったタイミングで二度ほど切り付けて、回避している。

 

【挿絵表示】

 

 そんな事を繰り返していると、【ドスファンゴ】の鼻息がますます荒くなった。

 突進後の振り向きが速くなり、止まる時間も短くなったため、手数がどうしても減ってしまう。

 焦って控えるべきタイミングで攻撃してしまったベナトールは、その場で振り回された牙に引っ掛けられた。

 

【挿絵表示】

 

「うがっ!!」

 放り投げられた際に脇腹を破られた彼は、地面に転がって呻いた。

 起き上がる前に突進が来る。

 

 ……やられる……!

 

 歯を食い縛ったその時、視界に別の影が入った。

 

 ガキィン!

 

 直後に硬い者同士がぶつかり合う音が聞こえる。

「焦るなベナトール。もう少し攻撃タイミングを考えろ」

 【教官】がガードして防いでくれたのだ。

「……すいませ……! うぐっ!!」

 痛みで悶えるベナトールは、ポーチに手を伸ばす事も出来ないでいる。

 

 【教官】は、しょうがねぇなと言う顔でガードしたまま【生命の粉塵】を投げた。

 

「さっさと立て! まだ訓練は終わってないぞ」

「はい……」

 よろよろと立ち上がるベナトール。

「これぐらいの事でやられていては、親父さんが泣くぞ?」

「はい。すいません……」

「ほれ続きだ! 最後まで自分で狩ってみろ!」 

 【教官】は【ドスファンゴ】から離れた。

「はいっ!」

 勢いよく返事をしたベナトールは、手数に気を付けながら、今度は慎重に攻撃していった。

 

【挿絵表示】

 

 まあそれでも跳ね飛ばされる事はあったのだが、重症を負うまでには至らなかった様子で、後は【教官】の手を煩わせる事無く討伐まで持って行けた。

 

「おめでとう!」

「ありがとうございます!」

「普段使わない武器だから仕方ない面はあったとしても、もう少し相手を見る目を養う事だな。ベナトールよ」

「はい」

「そうすればお前の得意な【ハンマー】でも、もう少し優位に、尚且つ安全に立ち回る事が出来るはずだ」

「はい」

「見ていて気付いたのだが、お前、もしかしたら【ハンマー】の攻撃力に頼って、力任せに相手を怯ませるような攻撃をしているのではないのか?」

「…………」

「確かに【ハンマー】は攻撃力が高い。時にはそれを生かした戦法を取る事もあるだろう。だがな、基本的な立ち回りはどの武器種も『如何に安全に攻撃するか』なのだ。『肉を切らせて骨を断つ』というような立ち回りをしていては、いずれ死を招く事を忘れるな」

「分かりました」

「――さて。今日の訓練は終わりだ。明日は【ランス】を使ってもらう」

 

「【ランス】、ですか……」

 ベナトールは浮かない顔をしている。

 

「どうした? 苦手な武器だからといって、吾輩は容赦はせぬぞ」

「……。実は実戦で使った事が無いのです」

「それは意外だな。親父さんには習わなかったのか?」

「一応教わったのですが、使いこなす前に諦めてしまって……」

「ははぁ、練習段階で諦めたのか。ならば明日は少しでも使えるようにせねばな」

「はい。お願いします」

 

 

 次の日は【狩猟訓練】ではなくて【闘技訓練】だったため、まず【控え地】で【ランス】の使い方を見てみる事に。

 基本的な動きは分かっていそうだったので、訓練用の【闘技場】で、実戦させてみる事にした。

 

 相手は【リオレイア】である。

 

 まず武器出しで咆哮をガード。

 耳を塞ぐかと思ったが、やはりこれぐらいは知っているようである。

 そのまま頭を上突き。二回突いて噛み付き攻撃をバックステップで躱し、正面突きをしながら踏み込んで上突き。

 ここまでは調子が良かったようだが、回転尻尾に合わせるガード方向を間違えて、吹っ飛ばされた。

 

【挿絵表示】

 

 立て直している間に突進されたが、辛うじてガードが間に合ったのは、流石に武器種一のガード性能を誇る【ランス】といえる。

 だが武器を構えたままでは移動もままならないこの武器に弄ばれ、突進を追い掛けられないでいる。

 そうこうしている内にブレスが来た。

 武器を仕舞っている最中だったので慌てたが、ギリギリで緊急回避。

 起き上がりを狙ったかのように突進が来たのを、なんとかガードしてやり過ごす。

 そのままでは追い掛けられないベナトールは、ならばとこちらも突進して【リオレイア】に近付いた。

 

 武器に翻弄されつつも果敢に闘っていたベナトールだったが、相手が怒りだしてからは、攻撃を食らう回数が多くなった。

 特に回転尻尾のガード方向をいまいち把握しておらず、ガードするつもりが逆に吹っ飛ばされる。

 頭では分かっているつもりなのだが、体が付いて行かないようだ。

 

 【教官】はその度に苦笑いしていた。

 

 尻尾を切り落としたかったベナトールは、ブレスの最中などに狙いはするのだが、ピンポイントでしか攻撃出来ないために細い尻尾に当たらずに、空を突いてばかりいた。

 苛ついて踏み込み過ぎて、【彼女】が二歩程下がった事に、気付くのが遅れた。

 

 バシッ!

 

 途端に【サマーソルト】の餌食になってしまうベナトール。

 

【挿絵表示】

 

 起き上がろうとしたが、傷の痛みと毒の苦しさで気絶してしまう。

 

【挿絵表示】

 

 【教官】は【閃光玉】を投げると、彼を抱えて一旦【控え地】まで戻った。

 

「生きてるな?」

 目を開けた彼に声を掛けながら、【教官】は治療している。

「……すいません。また、やっちまいました……」

「まったく。だいたいお前は突っ込みすぎなのだ。もう少し手数を考えろ」

「はい……」

「連続で攻撃したいのは分かるがな、相手も攻撃して来るのだ。それを見極めにゃならん」

「はい……」

「それと、何のために貴様は【ランス】を使っている? この武器が【ガード】を駆使して闘う武器だという事を忘れるな。そのための【盾】だろうが」

「はい……」

「構えたままでは動きがままならないのが不満なようだが、それは貴様が突進を誘発するなどの、無駄な動きをしているからだ。【ランス】は常に、【モンスター】に張り付いて攻撃する武器だと心得ろ」

「分かりました」

「良いかベナトール。【モンスター】をコントロールするのも腕の内なのだぞ。今は難しいかもしれんが、次に来る動きを予測し、どう自分が動けば自分の立ち回りが優位になるように【モンスター】を動かせるか、というのも考えられるようにしておけ」

「はい」

「言って置くが、これは武器種によっても違うからな。よく考えて行動するように」

「はい」

 

 回復したベナトールは、再び【リオレイア】の前へ。

 先程言われた事を口の中で反芻しているのか、ぶつぶつ言いながら攻撃している。

 

 ほぉ、だいぶ動きが良くなったな。

 

 【教官】は、飲み込みの早さに少し感心した。

 そんなふうにして、色々な武器種で【狩猟訓練】や【闘技訓練】で励んだベナトールだったが、卒業してある程度全武器が使えるようになった今でも、やはり【ハンマー】が一番自分に合っていると思っている。 

 

 




未熟なベナトールを書くのと、「教官」をそれらしく喋らせるのが難しかったです。
「フロンティアZ」の「訓練場」は「2(ドス)」ベースで、その中の「狩猟演習」が本編の「狩猟訓練」にあたります。
「闘技訓練」は「闘技演習」です。

ですが、実際にそれをやろうとしたら無料コース(トライアルコース)では出来なかったため、それに近い無料クエストで再現撮影いたしました。
挿絵撮影のためだけに有料コース(ハンターライフコース)に入るのは気が引けましたので。


今現在「フロンティアZ」の「教官」はHR1の間だけしか付いて来てくれませんし、もし彼を付けたとしても本編のように遠く離れて見守るどころか(システム上)積極的に攻撃しようとしてしまいますので、彼が見ているという設定で一人でクエに出掛けて撮影しました。

ただし「教官が独自で判断した武具を与えている」という設定なので、いつものベナトールイメージの武具(アカムトシリーズ&パラライズインパクト)ではなく、適当に下位らしい武具にして撮影しています。

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