今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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「訓練所」編第二話アレクトロの項。

彼はハンターに付いて学んだ訳ではありませんが、小さい頃からハンターに憧れては野山を駆け回ってハンターの真似事をして成長しており、その過程で「片手剣」を使っていたため、ハンターについて一から学ぶという事にはならなかったようです。
なので、ベナトールと同じ訓練内容をこなす事になりました。

※今回の挿絵も血飛沫多めなんでグロ注意です。


【訓練所】編(アレクトロの場合)

   

 

 

 

「今日から【訓練所】に来る事になった【アレクトロ】というのは、お前か?」

「そうだけどよぉ、何でハンター全員が【訓練所】なんかに通わにゃならんわけ? 独自で訓練すりゃ良い話なんじゃねぇのか?」

 

 褐色の肌に鮮やかな青い髪を持つ少年は、むくれたように言った。

 

「何だその態度は? これは【ハンターズギルド】の決まりなのだ。独自で訓練したらどうしても武器種が偏ってくるだろう? だから満遍なく全ての武器種をだな――」

「んなもん自分で得意な武器を見付けて、それだけ極めりゃ良いじゃんか。何も無理して下手な武器を使わなくても――」

「馬鹿者!」

 

 【教官】は彼の頭にげんこつを食らわせた。

 

「武器にはそれぞれの利点があるのだ。それを知らずに一つの武器ばかり使っていては、引いてはその武器ですら有利に立ち回る事が出来なくなるのだぞ? それに誰かと組む時に武器指定をされたらどうするつもりなのだ? 時には【剣士】ばかりではなく【ガンナー】で行く事もあるかもしれん。そんな狩りに参加出来ずとも良いのか?」

 

「いってぇなてめぇ!!」

 アレクトロはうんちくよりげんこつされた事に腹を立て、殴りかかった。

 

【挿絵表示】

 

 それを腕組みしたまま簡単に避ける【教官】。

 

 彼がムキになって殴ろうとすればするほど、口の端を持ち上げたままヒョイヒョイと避けている。

 

 しかも、その場から一歩も動いていない。

 

「どうした小僧。人間相手でさえこんな動きしか出来ないのなら、狩りの腕も知れているなぁ」

「くそぉ……!」

「元気があるのは良い事だが、その元気は吾輩ではなくて【モンスター】に向けてくれんか?」

 

【挿絵表示】

 

「……チッ!」

 いくら殴ってもかなわないと知ったアレクトロは、舌打ちしてやめた。

 

「で、その得意な武器とやらは何だ?」

「【片手剣】だけど……」

「ならば今日は【大剣】を使ってもらおうか」

「あんなクッソ重てぇの使えるかよ」

「何だ重たいのが分かっているなら、使った事があるではないか」

「一度だけな。あれは【アイアンソード】だったかな? けど、あまりにも重てぇのと、切れ味が悪くて【アプトノス】すら殺せずに逃げられたのとで、その日だけ使ってやめたんだよな」

「切れ味が悪いのは、それは【初期武器】だからだぞ? そのまま鍛えれば良い武器になるのだがな」

「それまで使い続けてられっかよ」

「せっかちな奴だ」

 【教官】は苦笑いし、「とにかく使ってみろ!」と、鍛えて切れ味と攻撃力が増した【大剣】を渡した。

 アレクトロはまだぶつぶつ文句を言っていたが、取り敢えず背に負う。

 ズシリとその重みが掛ったが、動けない程ではなかった。  

 

 【密林】で【ドスファンゴ】を狩る【狩猟訓練】をするとの事なので、(貸与防具とポーチを空にして一から採集しなければならない決まりに文句を言いつつ)各エリアを駆け回っては採取していたアレクトロ。

 地図で言う《1》に群れていた【アプトノス】に、【生肉】でも取ろうと何気なく武器出し攻撃で上段から切り下してみた。

 

 ズバンッ!

 

 気持ちの良い音がして、一発で沈む【アプトノス】。

 

【挿絵表示】

 

 こ、攻撃力高ぇ!!

 

まさかたった一撃で死ぬとは思っていなかったアレクトロは、鍛えられた【大剣】の攻撃力の高さに目を見張り、目から鱗が落ちた。

「【教官】っ!!」

 首を巡らせて【教官】を見付けたアレクトロは、勢いよく走り寄って次のように言った。

 

「俺、【大剣】使いてぇっ!」

 

 まるで今までずっと欲しがっていた新しい玩具を得たかのように、キラキラと輝かせている目を見た【教官】は、「そうか。ならば使いこなせるようになるまで、うんと練習しないとな」と優しく笑った。

「うん! 俺頑張るよ!!」

 アレクトロは嬉しそうに答えた。

  

《7》に移動したアレクトロは、そこに【ランポス】が群れているのを見た。

 【片手剣】だと囲まれたら脅威になるこの【モンスター】に、【大剣】ではどれだけ太刀打ち出来るのかと挑んでみる。

 まず一番手前にいた一頭に切り掛かってみると、丁度飛び掛かって来たタイミングに刃が食い込んだからなのか、なんと真っ二つに切断されてしまった。

 続いて向かって来た三頭を、横薙ぎでまとめて切り払う。

【挿絵表示】

 

「すげぇ……!」

 アレクトロは楽しくて仕方がないという顔をしている。

 まるで【ランポス】相手に遊ぶかのように、次々と切り倒していたアレクトロは、調子に乗るなとでも言うように吹っ飛ばされた。

【挿絵表示】

 

「いってぇな!!」

 

 起き上がると、白く巨大なイノシシが、鼻息荒く前足で地面を掻いている。

 

「【ドスファンゴ】てめぇ! いてぇじゃねぇか!!」

 正面から切り掛かったもんだから、まともに突進の餌食になった。

「くっそおぉ……!」

 次の突進を避ける余裕があったアレクトロは、追い掛けて後ろから切り付けた。

【挿絵表示】

 

 そのまま切り上げてもう一度攻撃しようとしたら、突進で吹っ飛ばされる。

 ならばとまず突進を追い掛け、武器出しで切り下し、切り上げで止めて武器を仕舞おうとしたが、間に合わずに突進を食らってしまった。

「ぐぬうぅ!」

 重い【大剣】は武器を出したままではまともに動く事も出来ないため、まず仕舞ってから行動を起こさないといけないのだが、攻撃してから仕舞うまでのタイミングを掴みかね、アレクトロは浮っ飛ばされてばかりいる。

 

「まったく、何をやっておるのだお前は」

 【教官】は呆れている。

 

「【大剣】はその重さを生かしたからこその攻撃力なのだぞ? 動作が遅くなる分、【片手剣】よりも遥かに少ない手数でダメージを稼ぐ事が出来るのだ。だから欲張って食らうよりは一度切って逃げるぐらいで良い。ヒット&アウェイを意識しろ」

「分かってるようるせぇな!」

 アレクトロは傷だらけの体で答えた。

 

 一応自分だけの力で討伐に成功したにはしたものの、その頃にはぜぇぜぇと息を切らす程になっていた。

【挿絵表示】

 

「まだ鍛え方が足らんなぁアレクトロよ。【大剣】を我が体の一部のように扱えるようになるには、もう少し筋力を付けんとなぁ」

 【教官】がニヤニヤ笑うのが悔しくて、アレクトロは唇を噛んだ。

 

 

 翌日は同じ【大剣】で【闘技訓練】をするとの事。

 他の武器種を学ばせるのは後にして、まず【大剣】をマスターさせようという【教官】の愛情(?)である。

「昨日言いそびれていたのだがな。【大剣】には【溜め】があるのを知っているか?」

「【溜め】?」

「そうだ。こう振り被って力を溜め、その力全てを刃に乗せて切り下す、【大剣】特有の大技だ」

 

 【控え地】でまず【教官】が手本を見せる。

 

 それを見たアレクトロは、「これって、隙が大き過ぎなんじゃねぇの?」と言った。

「まあそこが難点だがな。でもキッチリ決まればかなりのダメージになるぞ」

「こんな長い隙を晒す【モンスター】なんかいんのか?」

「それが意外にも溜める時間はあるのだよ。使いこなせれば、の話だがな」

「へぇ……」

 

 アレクトロが試してみる事に。

 背中に【大剣】を背負うようにして振り被り、そのままの姿勢で力を溜めていく。

【挿絵表示】

 

 己の筋肉が最大まで膨らんだのを確認すると、その全ての力を刃に乗せるようにして振り下ろす。

 勢い余って地面に食い込んだ刃は、周りに土塊(つちくれ)を跳ね飛ばす程に勢いがあった。

【挿絵表示】

 

 

「なるほど、確かにすげぇ攻撃力にはなりそうだけど……」

「『成功しなけりゃ意味がない』ってか? まあそうなるように練習するんだな」

 

 練習用の【闘技場】の中に入って行ったアレクトロが見たものは、威嚇している【リオレイア】だった。

「でぇ!? 【リオレイア】かよ!?」

 素っ頓狂な声を上げる彼に、「まあせいぜい頑張りな」と離れる【教官】。

「こんな奴に溜める時間なんてあんのかよ!?」

 文句を言いながらも対峙したアレクトロは、まず頭に一発お見舞いした。

 ブルンと頭を振った【リオレイア】は、噛み付こうと巨大な(あぎと)を開けた。

 大剣の腹でガードし、そのまま横薙ぎ。

 武器を仕舞う動作を少しでも早くするために、転がって回避しつつ仕舞う。

 回転尻尾を落ち着いて範囲外でやり過ごし、翼に一発。

 悲鳴を上げて怯んだので、切り上げ、切り下し、横薙ぎと加え、回避して納刀。

 突進を避けて追い掛け、尻尾に一発。

 が、欲張って攻撃しようとして轢かれた。

「いってぇなこのアマ!!」

 起き上がるとブレスが来たため、慌てて緊急回避。

 

 そこで彼は気付いた。

 ブレスの時ってゆっくり向き直ってから吐くよな? ならその間に溜めれるんじゃ……。

 

「うし、試してみるか」

 呟いたアレクトロは、近くで待機しつつブレスを待って、ゆっくり向き直る間に溜めてみた。

【挿絵表示】

 

 

 ドゴンッ!

 

 見事に最大溜めが【彼女】の頭を直撃したのを見た【教官】は、「でかした!」と声を上げた。

 アレクトロは満面の笑みで親指を立てる。

 だがその隙に吹っ飛ばされて、無様にゴロゴロと転がって行った。

 

 こうして、彼は【大剣使い】になったのである。

 




彼は今でも結構打たれ強い奴なんですが、ガキの頃から打たれ強かったんだなとこれを書く時思ってました(笑)

武具は「教官」に貸与されている設定なので、アレクイメージの「レウス系」ではなく、適当な下位武具を「フロンティアZ」のキャラに装備させて撮影しています。

ちなみに彼が「大剣使い」になった経緯は、実際に私が「モンスターハンターG」(PS2で初めて「モンスターハンター」として発売された頃の二番目のタイトル)の「訓練所」で、「教官」に無理矢理「大剣」を使わされて彼と同じように攻撃力の強さに驚愕し、それ以来「大剣」を使うようになった事に由来しています。
それまで私はアレクトロと同じように「片手剣」しか使った事がありませんでした。

なので実話です。


「ベースキャンプ」に「教官」といるのは、本来HR1でしか付いてくれない「教官」を、HR1になって彼が付き、初めてのクエストに連れて行ってくれる所のみ再現出来るシステムがあるからです。

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