今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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「訓練所」編第三話カイの項。

挿絵では一応アレクトロ役とは違うキャラでカイ役を演じています。
ただし私のキャラは全員黒人なんで、黄色人種のカイとは肌の色が違います。
なので黄色人種として脳内再生して下さい(^^;)

※今回も血飛沫多めなんでグロ注意です。


【訓練所】編(カイの場合)

 

 

「今日から【訓練場】に来る事になった、【カイ】というのは、お前か?」

 【教官】は、目の前でニコニコしている少年に尋ねた。

「はいっ! よろしくお願いしますっ!」

 彼は元気よく答えて勢いよく頭を下げた。

「元気が良いな」

「はいっ! おいら元気だけが取り柄なんでっ!」

「見たところえらく体の線が細いようだが、お前、ハンターの経験はあるのか?」

「ありませんっ!」

「そんなに元気良く否定せんでも……」

 【教官】は苦笑いした。

 

 端整な顔立ち。くせ毛の多い、柔らかそうな茶色がかった金髪。

華奢な体にはとても筋肉があるようには見えず、これは女の子に間違えられても仕方がないだろうなと、彼を見ながら【教官】は思った。

 

 笑うと特有の人懐っこさが表れ、可愛らしいとさえ思ってしまう。

 

 とにかくも、まず【ハンターの基本】から教えようと、【肉焼き機】を手渡して言った。

「【生肉】を取って、【こんがり肉】を作るように」

「分かりましたっ!」

 元気よく【密林】へ飛び出して行った彼は、だがふと途中で立ち止まって振り返り、「狩りはしないんですか?」と言った。

「【生肉】を取る事も狩りの一つだぞ? 【アプトノス】を狩らん限りは肉は手に入らんからな」

 彼はニコッと笑って頷き、再び元気よく駆け出して行った。

 

 地図で言う《1》に【アプトノス】が群れているのを見付けた彼は、早速その内の一頭に狙いを付け、飛び掛かりつつ切り掛かった。

 

【挿絵表示】

 

 が、【ハンターナイフ】の切れ味が悪いせいなのか、それとも攻撃力が無いためなのか、

一向にダメージを与えているようには見えない。

 

 その内、うるさいハエが纏わりついているのを嫌がるかのように【アプトノス】が尻尾でカイを叩くと、カイはあっけなくペタンと尻餅を付いた。

 

 すぐに起き上がったが走って逃げて行く【アプトノス】に付いて行けず、とうとうエリア外まで逃げられてしまった。

 

【挿絵表示】

 

 しょぼんとした顔で戻って来たが、【教官】が手伝ってくれないと分かると何度も挑戦した。

 

 それでも倒すまでには至らなかった。

 

 スタミナが減って来たカイは、「おなかすいた……」などと言っている。

「一度でもフィールドに出れば誰も助けてはくれんぞ? カイ。飢えたくなければ自分で食料を確保するんだな」

「だって、狩るには力がいるじゃないですかぁ。おなかすいたら力も出ないじゃないですかぁ……」

「ぼやくな。どうしても我慢出来んのなら【携帯食料】がある。それでどうにか食い繋げ」

 

【挿絵表示】

 

 

 カイはポーチから【携帯食料】を出して口に入れてみた。

 

「おいしくないです……」

 眉を寄せてそう言いながらも、もそもそと食べている。

 

 【携帯食料】は確かに不味く、ハンターの間でも不評ではあるのだが、軽く、長く日持ちがし、取り敢えずの飢えを満足させるので万が一の時のために【支給品】の中に入っているのを持って行くハンターは多い。

 特に下位ハンターには大変助かる物として重宝されているため、ハンターならば誰もが一度は必ず口にしている食糧である。

 

 めげずに何度も何度も挑戦していたカイは、とうとう一頭だけではあるが、【アプトノス】を狩る事に成功した。

 

「よし頑張ったな。倒せたなら、そこから【生肉】を剥ぎ取るんだ」

 【教官】に言われて剥ぎ取り用のナイフを腰から抜いたカイは、おっかなびっくり【アプトノス】に突き立てた。

 が、そこが下腹部だったがために切り裂いた途端に腸が溢れ、「うえぇ……」と気持ち悪そうにしている。

「馬鹿者もうちょっと上を裂かんか。肉が臭くなってしまうぞ?」

 【教官】は苦笑している。

 

【挿絵表示】

 

 どうにか【生肉】を剥ぎ取ったカイは、【肉焼き機】にセットした。

 

「良いかカイ。肉焼きにはリズムとタイミングが大事なのだ。早過ぎても遅過ぎても失敗してしまうぞ」

「そんなの、どうやって計るんですか?」

 そこで【教官】は、カイに【肉焼きソング】を教えた。

「この歌が終って三秒後が、だいたい【こんがり肉】が作れる目安だな」

「へぇ~~」

 言われた通りにやってみたが、やはりタイミングが合わずに【生焼け肉】やら【焦げ肉】やらになってしまう。

 

【挿絵表示】

 

【挿絵表示】

 

 とうとう一頭分の【生肉】が無駄になってしまった。

「またやり直しだな」

 【教官】に苦笑され、カイはうんざりした顔をした。

 

 

 そんなふうにして一からハンター生活を教わったカイは、ようやく本格的な狩りを学ぶ事になった。

 まだ武器種を指定すると危ないため、彼に選ばせる。

 一応一通りの武器を触らせたのだが、筋力の無い彼はやはり重い武器より軽い武器を好むようで、今回は【太刀】を使うとの事。

 

 相手は【ドスファンゴ】である。

 

 【密林】を駆け回って、今までに教わって来た採取場所で採取しながら、相手を探す。

 

 《7》に入ると、【ランポス】が群れていた。

 

 狩り自体に慣れていないカイは、囲まれると餌食にされかねないので恐怖を覚え、腰が引けている。

「一頭ずつ引き付けて闘うんだ。囲まれたら終わりと思え」

「分かりました」

 だが狡猾な【ランポス】は連携し、数に物を言わせて次々と襲って来る。

 

【挿絵表示】

 

 とうとう横から飛び蹴りをされて吹っ飛んだ。

 

「さっさと立て! 動き続けなければ餌食にされてしまうぞ!」

 【ランポス】は素早いが、幸い【太刀】の攻撃範囲が広いためか、不利ではあっても一斉に集中攻撃を仕掛けられる事だけは防げているようである。

 

【挿絵表示】

 

 と、そんな中で突っ込んで来たものがいた。

 

 カイはまともに吹っ飛ばされ、ゴロゴロと何度も転がってから起きた。

 

【挿絵表示】

 

 なんとか立ち上がった彼が見たものは、白く巨大なイノシシ。

 鼻息荒く前足で地面を掻いている様は、口の端から大きく突き出している目立つ牙も相まって、【ランポス】の比じゃない程恐ろしく感じた。

 

 相手はそのままカイに向かって来る。

 

 だが恐怖で凍り付いてしまった彼は、動く事が出来ないでいた。

「何をやってる! 避けろ!!」

 【教官】の声で我に返ったが、すでに遅かった。

 

 が、牙が彼に掛かる寸前、横から飛び蹴りをしたものがいた。

 

 偶然にも【ランポス】が飛び掛かった事で、まともに突進を食らう事を免れたようである。

「良くやった! 【ランポス】」

 【教官】は【ランポス】に礼を言っている。

「ほれさっさと攻撃しろ!」

 【教官】に言われて向き直ったものの、突進ばかりするので一向に攻撃出来ない。

 

【挿絵表示】

 

「突進を追い掛けて攻撃するのだ。分かったらさっさとやれ!」

 やってはみるものの、一、二度切れればいいという具合にしかならない。

 

【挿絵表示】

 

 焦って手数を多くしようとすると、吹っ飛ばされる。

 

「カイ、焦っても自分が痛い目に合うだけだぞ? こ奴は手数を稼げない【モンスター】ではあるが、辛抱して何度も攻撃するしかない」

 そうは言っても一、二度しか攻撃出来ないのがもどかしいため、つい攻撃を重ねようとしては吹っ飛ばされた。

 

 【罠】を仕掛ける練習をするとかで【捕獲】で【クエスト成功】したカイだったが、もう二度と【クエスト】には行きたくないと思った。

 しかし強制的に【教官】に鍛えられて全部機種を習ったり、アレクトロに無理やり付き合わされては【クエスト】に出向く内に、特定の【モンスター】だけではあったが自分一人でも【クエスト成功】出来るようにはなった。

 

 まあ未だに女に間違えられたり、アレクトロには【金魚のフン】扱いされたりしているようだが……。 




大型モンスターと闘っていて、「ランポス」にピンチを救われた経験ってありませんか?
私は「リオレイア」のブレスを代わりに受けてくれたり、瀕死になった目標モンスターが死に物狂いで私を殺そうとした時なんかに止めを刺してくれて助かったりした事があります。

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