今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】 作:沙希斗
「ねぇハナ、【森丘】っていうとこ、行ってみたくない?」
「どんなとこなの?」
「文字通り【森】と【丘】で成り立っているフィールドでね、景色がすんごく綺麗なんだ♪」
「へぇ~~! 行ってみたい♪」
「……。まあ確かに見晴らしが良くて気持ちは良いが、【森】の部分は鬱蒼として見えにくい。そんな中に【モンスター】が入られたら、結構やっかいだぞ」
「茶々入れないのっ。ベナが付いて来てくれるんならどこでもいいじゃん」
「お前さぁ、そのおんぶに抱っこの関係っつうの、いい加減どうにかなんねぇのかよ?」
「いいのっ。だってベナはあたしの【教官】だもんっ」
「【教官】というよりは、むしろ爺と孫の関係のような……」
「誰が爺だコラ! 俺はまだそんな歳じゃねぇ!」
「ばっ! 痛ぇって! わ、分かったから頭抱えてぐりぐりすんのやめろ!!」
「当然、アレクも行くんだよねぇ?」
「だよねぇ? アレク」
「何で俺まで……」
「えいこのっ! あたしもやっちゃうからねっ! ぐりぐり~~!!」
「……。ハナ、お前胸意外とあんだな」
「えっちいぃ!」
「ってぇな! ビンタすんなよやったのお前だろうが!」
「……!」
「おいオッサンよ、黙って殺気出さねぇでくれるか? 今の俺のせいじゃねぇし」
「案外羨ましかったりして?」
「そうなの? ベナ」
「んな訳あるかっ! ほれさっさと行くぞ!」
「つまんないの……」
という訳で、【上位クエスト】の受付カウンターに赴いた一行だったのだが……。
「カイさん、その装備ではこの【クエスト】は受けられませんよ?」
「へ? どゆこと?」
「この【クエスト】は【武器指定クエスト】となっております。従って【太刀】では受けられません」
「じゃあ、どの武器だったら受けられるの? 禁止武器は何?」
「【太刀】【ハンマー】【大剣】【双剣】が禁止となっております」
「でぇ!? 得意武器全滅じゃねぇか!!」
「【片手剣】は禁止されてないじゃん、良かった♪」
「んじゃおいらも【片手剣】で行こぉっと」
「オッサンどうする? 俺今更【片手剣】なんてクソ軽い武器使うのやだぜ?」
「そうだな……。【ランス】、いや【ガンランス】にするか」
「じゃあ俺はしょうがねぇから【ランス】の方にするわ」
一応【ガンナー】にするという選択肢もあるのだが、この四人は考えていないらしい。
ちなみに狩猟対象は【リオレウス】である。
「うわぁ~~~! 気持ちいい~~~♪」
【ベースキャンプ】から出た途端に広がる光景に、ハナは感慨の声を漏らした。
そよ風に吹かれながら伸びをする様は、なんとも気持ち良さげである。
「ね、来て良かったでしょ?」
そう聞くカイに、「うんっ♪」と嬉し気に答える。
「のんびり出来るのはここぐらいなもんだけどな」
「まあな。ここが一番平和を感じる所だよな」
平和そのものというように草を食む【アプトノス】の群れを眺めながら、アレクトロとベナトールが言った。
その言葉通り、地図で言う《2》に入った途端、状況が一変した。
景色自体はのんびりしているのだが、そこにいる【モンスター】が、【ランポス】の群れに変わっていたのだ。
「ケッ、面倒臭ぇ。まとめて片付けてやらぁ!」
こちらに気付いて賑やかに鳴き交わしている【ランポス】共に言い放ち、【ランス】を構えたアレクトロ。
そのまま盾を前にして重心を低くするや否や、突進で次のエリアまで駆け抜けた。
たちまち進行先にいた【ランポス】全てが吹き飛んでいく。
「やれやれ、せっかちな奴だ……」
ベナトールが呆れて言ったが、取り敢えず進行上の脅威が省かれたので、残った三人はゆっくり次のエリアまで走って行った。
《3》を経由して《4》に向かうと、奥にゆっくりと舞い降りたものがいた。
「よぉ、来たな」
まるで友人にでも声を掛けるような口調でアレクトロが言うと、【リオレウス】はこちらを向いて吠えた。
申し合わせた訳ではなかったが二人ずつで両側に分かれ、攻撃を開始する。
弱点を突きたかったアレクトロは、頭に陣取りたかったのだが、そこには同じ考えのベナトールがいた。
彼は切り上げや突き上げの合間に砲撃している。
しょうがないので反対側から上突きしていたが、お互いに当たってしまうようなので、なるべく翼を狙うようにした。
両側から足元に攻撃していたカイとハナだったが、ハナが尻尾を狙おうとして移動し、「届かな~~い」などと言っている。
ベナトールより尻尾寄りにいるアレクトロは、それが見えて苦笑した。
「馬鹿かおめぇは、リーチの短い【片手剣】で尻尾が狙えるわきゃねぇだろ」
「だったらあんたが狙いなさいよ!」
「【ランス】では狙いにくいんだっつの。麻痺るまで待ちやがれ!」
「頑張って転ばそうハナ。それだったら【片手剣】でも届くだろ」
「うん分かった」
だが、尻尾を振り回されてハナが吹っ飛んだ。
「いった~~~い! もぉアレク、あんたの方がベナより近いんだから、ちゃんとガードしてよぉ」
「そっちまで届くわきゃねぇだろが! 【片手剣】でもガード出来んだから、自分でしやがれ!」
「なによぉ! ベナならガード出来なくても護ってくれるのにぃ」
「おいオッサン! このギャンギャンうるせぇのどうにかしろよ! 耳痛ぇ」
「〈高級耳栓〉付けてるのに?」
「カイ、それとこれとはまったく聞こえ方が違うんだが?」
闘いつつもそんな言い合いをしていると、ベナトールの持つ【ガンランス】の砲身の先が、赤く輝いたのが見えた。
何か嫌な予感がする、とアレクトロは思った。
案の定、直後にまるで竜がブレスを吐くかのように、【ガンランス】から火炎放射が放たれた。
【竜撃砲】という、【ガンランス】特有にして最大の技である。
続いて起こった爆発に、当然のように彼以外の全員が同時に吹っ飛ばされた。
「ちょ! オッサンよ!?」
アレクトロが苦情を言おうとすると、「あ、すまん」と言われた。
「すまんじゃねぇ!!」
突っ込んだら「いやつい、集中して周り見えなんだわ」と苦笑いしている。
「絶対わざとだろてめぇっ!」
「まあまあ、ほれまだ来るぞ! 集中しろ」
突進して来たのをガードでやり過ごしつつ、「ったく……!」とぶつぶつ言うアレクトロ。
「ベナ集中しすぎっ!」
「びっくりしたぁ~~~!」
何だかんだ言いつつ、仲良く(?)討伐した四人であった。
「ガンランス」の竜撃砲は優秀ですが、気を付けないと近くにいる者が吹っ飛ばされてしまいます。
それが場合によっては一人ではなくなるため、野良PTでは迷惑になります。
まあ身内でやってる分には逆に楽しかったりするんですけどね(笑)