今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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これは、「チャチャブー」のお題を友人から貰って書いたものです。


チビを侮るなかれ

   

 

「ねぇアレクぅ、【星鉄】っていう物が必要になったんだけど……」

「なぜ俺に言う!? 目の前に守護者がいるだろうがっ!」

「だって、あんた私の【騎士(ナイト)】じゃない」

「ニヤニヤ笑いながら言うな! それはもう終わっただろ!? てか、別におめぇを護ってた訳じゃねぇし」

「照れ屋さんね~~」

「変な勘違いしてんじゃねぇっ!!」

 ハナはケラケラ笑った。

「……で? 【星鉄】が何だって?」

 むくれたように言うアレクトロ。

「なんだ結局付き合ってくれるんじゃない。あのね、【片手剣】の強化に【星鉄】っていう物がいるんだって」

「【星鉄】っつったら、確か【樹海】で取れるヤツだよな? オッサン」

「だな。採掘で取れる物だから、【ピッケル】の類いは必須だぞハナ」

 

「でもなぁ、場所がなぁ……」

 アレクトロは、顔を曇らせた。

「だよな……」

 ベナトールも同じようにしている。

 

「なになに? 二人してどうしたのよ!?」

「……。まあ、どっちみち掘れるのあそこっきゃねぇしな。仕方ねっか」

「二人で護りゃ、なんとかなんだろ」

「だな」

「ちょっと、勝手に二人で話進めて決めないでよっ!」

「まあ行きゃ分かるさハナ」

「その代わり、ちいっとばかしキツイかもしれんがな」

「どういう事よぉ」

 

 

 という訳で、今回は三人で【樹海】に来ている。

 道なりに採取しつつ《1》《2》と進み、《2》にある細い通路を伝って《8》へ。

 そこは巨木の根で出来た洞窟のようになっており、そこだけ開けた狭い空間になっている。

 

 入ってすぐにハナが見たものは、まるでカボチャのような奇妙な被り物をした、小さな生き物だった。

 

 それは人間のような姿はしていたが人間よりはるかに小さく、裸に葉っぱを腰に巻いただけ、といういで立ちのその肌は、緑がかった褐色というおおよそ人間とはかけ離れた肌色をしている。

「きぃきぃ!」

 その奇妙な生き物は、耳障りな甲高い声を発しながら、ハナに近付いて来た。

 見ようによっては可愛く見えなくもないので、ハナは「可愛い♪」などと言いながら、抱き上げようとした。

「そいつに触れるな!」

 ベナトールは一喝しつつ、ハナの手を遮った。

 

 ザクッ!

 

 直後に彼の腕が切り裂かれ、血が舞った。

 よく見ると相手は、ハンターや他の者が使えなくなって捨てたと思われる、折れた刃物を持っている。

「べ、ベナ!?」

 ハナは狼狽した。

 なぜならたったその一太刀で、彼の腕に骨まで見える程の切り傷が出来ていたからである。

 ベナトールはそんな事は構わずに【ハンマー】を振り上げ、相手に叩き付けた。

 頭を叩かれて朦朧となっている相手に、もう一発。

「ぎいぃ~~~!!」

 耳を覆いたくなるような高周波音を発しながら相手は地面に潜って逃げていき、被っていた奇面だけを残した。

 

「きぃ~~!」

「きぃきぃ!」

 それを合図にするかのように、いつの間にか周りに集まっていた同じ生き物が、耳障りな高音を発しながら向かって来る。

 よく見ると全部がそれぞれに、折れたり欠けたりした刃物を持っている。

 

「集まっていたか……」

「こいつはやっかいだな……!」

「ベナ、怖いよぉ」

 

 そこでアレクトロは、【閃光玉】を投げた。

 

「今の内に一匹ずつ狩るぞ」

「了解」

 ベナトールとアレクトロは二手に分かれ、視界を奪われて闇雲に刃物を振り回している相手を、一匹ずつ仕留めていった。

 ハナも一匹ずつならと協力して、倒していっている。

 

 と、閃光を見ていない者がいたのか、その内の一匹がアレクトロに向かって来た。

 

「このっ!」

 上段から振り下ろした【大剣】は、相手が高くジャンプした事によって空しく何もない地面を切り裂いた。

 

 ザシュッ!

 

 直後に刃が振り下ろされ、アレクトロの体から血が噴き出す。 

「がはっ!!」

 血を吐くアレクトロ。 

 丁度低い姿勢になっていた彼は、肩から胸辺りを切り裂かれたのだ。

 

 ……コイツ、()()()()やがる……!  

 

 もう少し彼の姿勢が低ければ、頸動脈を切り裂かれるところだった。つまり相手は急所を狙う事を知っているのだ。

「くそっ!!」

 アレクトロは歯を食い縛り、切り上げて相手を吹っ飛ばした。

 追い掛け、起き上がる前にもう一太刀。

 悲鳴と共に相手が潜ったのを確かめると胸を押さえ、【大剣】を支えにしながらがくりと片膝を付いた。

「おい! 大丈夫か!?」

 ベナトールが助け起こす。

 

 出血が酷い。アレクトロは苦し気にあえいでいる。

 だが自分でポーチを弄り、【秘薬】を飲んで一息付いた。

 

「はぁ……。やっぱ攻撃力高ぇなこいつらは」

 苦笑いするアレクトロ。

「舐めるとこんなふうに酷ぇ事になる。分かったか? ハナ」

「う、うん……」

 

「こいつらは【チャチャブー】といってな、我々【人間】とは異なる種族の生き物だ。独自の文化があるようで、常に奇妙な面を被っているために【奇面族】などと呼ばれている。人間の生活などに入り込む事はまずないんだが、こんなふうに人間が捨てた刃物などを加工して、自分で使いやすいようにする知恵もあるようだ。その小ささに似合わずかなりの怪力でな、その力でもって攻撃されると、今みたいにかなりのダメージを負わされるのさ」

 

 全部倒した(正確には追い返した)後で、ベナトールはハナに説明した。

「ここは、たぶん【チャチャブー】の巣なんだと思うぜ。大抵ここに来るといるし」

「そうだろうな。地面や壁にもちっこい穴が開いてるしな。ここで生活してるのかもしれん」

「そんなとこに連れて来ないでよぉ」

ハナは半泣きで抗議した。

「仕方ねぇだろが、ここでしか【星鉄】は取れねんだっつの」

「だな。だからまた帰って来る前に、さっさと掘るこった」

 

 そう言われ、ハナは慌てて採掘場所で【ピッケル】を振るったのであった。




「モンスターハンター3(トライ)」あたりでは「チャチャブー」の子供「チャチャ」がハンターの仲間になっているようですね。
私はやった事はありませんが。

ですが「フロンティア」及びそのベースになっている「モンスターハンター2(ドス)」、それ以前の「モンスターハンター」シリーズでは「チャチャブー」の存在は脅威の対象でしかありません。
私は舐めてて何度も殺されました(笑)



余談ですが、かつてのゲーム仲間(リアル男)がいくら「チャチャブーだよ」と教えても、何故か頑なに「チャチャぷー」としか言わなかったのを思い出します。
確かに可愛くなりますけどねぇ、「チャチャぷー」。

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