今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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ハンター御用達の雑誌、「月刊・狩りに生きる」は今はフロンティアでも廃刊してしまったようですが、私の世界では未だに現役なので、たまに登場します。


朝ごはんはココット村で(ココット村編)

   

 

 

 

 ここは【大老殿】の【謁見室】。

 【大長老】はその椅子に座って、褐色の肌を持つ大男の報告を聞いていた。

「なるほど。――大儀であった。ベナトール」 

「――ははっ!」 

 ハナの上位最終試験を終えたベナトールは、その足で【大老殿】に向かったのだ。

「ここまでさぞや苦労したであろうの?」

 ほくそ笑みながら聞く【大長老】に、「とと、とんでもないっ!」と慌てる。

「そう隠さずとも良い。お主の奮闘ぶりが目に見えるようじゃよ」

 【大長老】はほっほっと笑った。

 彼女は今や、『ドンドルマ最速で上位になった』と専らの噂になっているのだ。

 

「時に、頼みたい事があるのじゃが……」

 【大長老】は、切り出した。

「――はっ。俺に出来る事であれば、なんなりと……」

「ハナをの、【ココット村】に連れて行ってはくれまいか?」

「【ココット村】ですかい?」

 ベナトールは少々驚いた。

 あんな片田舎に何の用事があるのかと思ったからである。

「お主、【奇跡の少年】の話を聞いた事は無いか?」

「……初めて【ラオシャンロン】が【街】を襲った時に、奇跡的に生き残った少年がいた。とかいう話の事ですかね?」

 唐突な話に多少混乱しながら答える。  

「そうじゃその話じゃ。――実はのベナトール。【ココット村】に、その少年がいるのじゃよ」

「ほぉ……!」

「まあ今はもう青年になっておろうがの。……ほれ【狩りに生きる】にこの前載っておったじゃろう?」

「あぁ、もしかして【カイ】の事ですかい?」

「なんじゃお主、あやつを知っておるのか?」

「ええ、まあ……」

「ならば話は早い。実はの、ほんの幼い時分に一時期あやつを引き取っておった事があったんじゃが、その頃にハナはようあやつと遊んでおってな」

「それで【狩りに生きる】で見付けたカイに、ハナが会いたがっていると?」

「そういう事じゃ。上位ハンターになろうとしたのは、上位でなければ通れぬ門を通過せねば、【ココット村】に行けないという理由があったからじゃからな」

()()()()()()()で、あいつはハンターになろうとしたんですかい?」

 【ハンター】という職業を、多少神聖化しているベナトールは、『それだけの理由』という所に怒気を込めた。

「まあまあベナトール。それを許してお主を【教官】として付けたのは儂なのじゃ。じゃから今回も黙って引き受けてはくれまいかのぉ?」

「……。了承いたします……」

 不満だったが、ベナトールは受けた。

 

 

 

「【ココット村】楽しみ~~♪ お願い聞いてくれて、ありがとベナ♪」

 いつものひらひらな服を身に着けたハナは、【ココット村】へ向かう竜車の中ではしゃいでいる。

 が、反対にベナトールはブスッとしてそっぽを向いている。

「何むくれてんのよぉ。――あ、もしかして私が上位ハンターになりたかった理由、バレちゃった?」

 窓の方を向いたまま、無言で答えるベナトール。

「ごめんねぇベナ。でもね。どうしても会いたかったの。カイに」

 まだ無言を貫こうとするベナトールに、「もぉ! いい加減に機嫌なおしてよぉっ」と両手で顔を挟んで自分に向けさせ、目の前でふくれっ面をしてみせた。

 それが可笑しくて顔を挟まれたままつい吹き出した彼に、にっこり笑う彼女。

「ベナはい~~~っつも仏頂面なんだから。たまには笑わないとシワになるよ?」

「うるせぇ。余計な世話だ」

 いつも怒ったような顔をして、【触るな危険】のオーラを出しているかのような無口な大男も、怖がらずに懐いているハナには多少饒舌になるようである。

 最も、傍から見たらどう見ても、猛獣を従えているお嬢さんというふうにしか見えないのだが……。

 

 【ココット村】に到着した二人は、まず【村長】に挨拶してからカイの行方を尋ねた。

「――ああ、カイならあそこにいるよ」

 指差す方向に勇んで走って行くと、そこでは黄色(おうしょく)の肌に茶色がかった金髪を持つ青年と、褐色の肌に鮮やかな青い髪を持つ青年が、二人で楽しそうに談笑していた。

 

【挿絵表示】

 

「カイ! あなたカイでしょ!? 会いたかった……!」

 【カイ】と呼ばれた茶金の髪の青年は、きょとんとした顔をしている。

「やだカイ、忘れたの? あたしよ。【ハナ】よ!」

 カイは困った顔をして、人差し指で頬をかいている。

「ほら【大老殿】の庭でよく遊んだじゃない。覚えてないの?」

 眉間にしわを寄せて考えていたふうの彼は、「――ああ!」と顔を明るくした。

 

「何だこのガキ? お前の知り合いか?」

 その時褐色の青年が割り込んだ。

「ガキってなによ! あたしはカイと一つか二つぐらいしか違わないんだからね!」

 早速噛み付くハナ。

「って事は十七、八ぐれぇかよお前! やっぱガキじゃねぇか」

 彼は馬鹿にしたように笑った。

「アレク、君はどんな奴にも態度変えないな~~。初対面なんだろ?」

 カイは苦笑いしている。

「こんなガキに敬意を表しろとでも?」

 【アレク】と呼ばれた青年は、ハナを指差して言った。

 

「よぉカイ。久しぶりだな!」

 その時、黒人の大男が割り込んだ。

 

【挿絵表示】

 

「ちょっとベナ! まだ話は終ってないんだからねっ!」

 彼はハナの言葉を無視し、「こいつがお前の新しい【パートナー】ってやつか? やはり黒い肌が好みなんだな? ん?」とカイの頬を触ろうとした。

「やめろよ」

 その手を叩いて振り払うカイ。

「随分とつれねぇじゃねぇか? カイよ。まさか【ユクモ村】での事を忘れた訳じゃねぇだろうな?」

「その話はするな!!」

「おいオッサン!!」

 カイの声と同様に、強い口調の声がかかる。

 声を荒げたのは【アレク】と呼ばれた青年だった。

「そいつは俺の事か? チビ助」

「……! 自分よりちっせぇからってチビ呼ばわりしてんじゃねぇぞ! このデカマッチョ!!」

 ベナトールは筋肉隆々の大男なので、デカマッチョと言われても仕方がない。

「チビにチビ助と言って何が悪い? お前も自分より低い者がいたら『チビ』と呼ぶんじゃねぇのか?」

「ぐぬ……!」

 言葉に詰まった彼だったが、「んな事じゃねぇ! こいつが嫌がってんだろうが!!」と踏ん張った。

「ほぉ。随分と愛されてるようだな? カイよ?」

「そんなんじゃねぇ!!! 気色悪い事ぬかすなデカマッチョ!!」

「俺には【デカマッチョ】じゃなくて、【ベナトール】という名前があるんだがな? チビ助」

「あぁそうかよ! 俺にだって【アレクトロ】っつう立派な名前があんだよ。デカマッチョ!」

 なぜか勢いで、思わず名前を紹介してしまった二人であった。

「ちょ、ちょっとあんたたち! 何いきなり喧嘩してんのよ」

「そうだよアレク落ち着けって!」

 二人に引き離されて取り敢えず収める。  

 

「――あ、そうだ♪」

 ハナは思い出したようにパンと手を叩き、「あたしねっ、カイに会ったら一緒に朝ごはん食べようと思って【ランチ】作って持って来たの。お代わりしてもいいように一杯作ったから、みんなで朝ごはん食べましょっ♪」と言った。

「それ良いねハナ♪ 丁度お腹すいたな~とか思ってたんだ♪」

「おいカイ、こんなガキが作った飯なんか食えんのか?」

「しっつれいね~~! こう見えてあたし、料理は得意なんだから!」

「ほぉ? そりゃ楽しみだな」

「後で腹壊さねぇように【漢方薬】用意しとくわ。俺」

「【火事場飯】をわざと食べてるアレクが何を言う? おいらにも食べさせたりするくせに~~」

「そりゃおめぇの反応が面白ぇからじゃねぇかよ」

「やだアレク、あんたそんな事してんの!? 趣味悪いわねぇ~~」

「チビ助。【火事場】が出来るのなら、今度俺と組んで【クエスト】に行かんか?」

「だからチビ呼ばわりすんなっつってんだろが! デカマッチョ!!」

「あ~も~うるさい! 黙って食べてよぉ」

 

 

 こうしてハナは、周りを巻き込みつつも、目的を果たせたのであった。 

 




これにて友人から始まった「朝ご飯はココット村で」の話は終わりです。
後は続いていたり、いなかったり、続いていないようで続いていたりしてます。

ベナトールのセリフ「【ユクモ村】での事を……」についてですが、ベナトールは一度、「ユクモ村」の温泉でカイを犯した事があるのです。
(それについても書いてはいますが、「やおいもの」になるので載せるのはやめておきます)
ので、それをきっかけに、カイはベナトールとなるべく二人きりにはならないようにしてます。

今回出て来た「アレクトロ」ですが、これは「2(ドス)」時代に私が操作していたキャラ名です。

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