今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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このタイトルを見た友人は、お色気話かと思ったそうな(笑)


ハートをあげる

 

 

「ん~~~っ、今日も良い天気ね~~~!」

 【密林】に着いたハナは、水辺で思いっ切り伸びをした。

 夜はいつも雨が降っているために鬱陶しいが、昼間の【密林】は気持ちが良いほどの天気である。

「そんな余裕かましてる場合かよ、前見ろ前!」

 アレクトロの言葉で気が付くと、前方の奥の方に【モノブロス】の顔が見えた。

 【顔】はこちらに気付いた様子で突進して向かって来る。

「もうなの!?」

 横に避けながらハナが言う。

 上位の依頼は道中も危険性が増すために【ベースキャンプ】まで届けてもらえず、着いた所がいきなり狩場になる事も珍しくない。

 

 今回は地図でいう《10》に船が到着したのだが、着いて早々その場所に【モンスター】がいたらしい。

 

 【モノブロス】の顔は突進をやめると後ろを向いた。

 が、【後ろ】と思われる場所には【モノブロス】の体は無く、代わりに赤く巨大な鋏を持つ【甲殻種】がくっ付いていた。

 

 【ダイミョウザザミ】である。

 

 相手は巨大な鋏を振り上げて威嚇すると、そのままの勢いで鋏を振り下ろして来た。

 当たり前のようにベナトールがハナを掻っ攫って避ける。

 右、左と連撃して来るので、反対側にいたアレクトロが【大剣】でガードした。

「脚を狙えハナ!」

「了解っ!」

 ベナトールに言われて脚を切るハナ。

 【甲殻種】は脚が弱いため、連続で脚を狙われると簡単にこけた。

 もがいている間にアレクトロは殻(つまり【モノブロス】の顔)に溜め切りをし、ベナトールは前方に回って頭(というよりは口辺り)に溜めスタンプ。

 カイはハナとは反対側の脚を切っている。

 

 まず一回目の麻痺を取った二人に、ベナトールは「でかしたハナ!」と声をかけ、アレクトロは「カイ!」と呼び掛けて親指を立てた。

 

 二人の溜め攻撃がもう一度炸裂すると、先にアレクトロが一段階目の殻破壊に成功したらしく、【ダイミョウザザミ】が勢いよく滑りながら一回転した。

 たまらずに鋏を前にかざした相手は、ピッタリと殻の入り口を塞ぐように、鋏だけ前に出して体を縮込めた。

「硬い!?」

 それに気付かずに切り付けてしまったハナは、攻撃を弾かれている。

 【盾蟹】と呼ばれているように、殻に籠るこの姿勢を取られると、巨大な鋏が文字通り【盾】の役割をして全ての攻撃を跳ね返してしまうのだ。

 

 それを見越したように、カイが【音爆弾】を投げる。

 途端にだらしなく殻から出てもがく【ダイミョウザザミ】。

 周りが見えなくなる代わりに音で状況判断をする殻籠りには、大きな音が有効なのだ。

 

「ナイス♪ カイ!」

 ハナに言われて親指を立てるカイ。

 この男は【ホットドリンク】などの環境に応じたアイテムはしょっちゅう忘れるくせに、【罠】や【生命の粉塵】などのサポートアイテムは調合分までしっかり持って来る。

 

 まあそのおかげで、特に二人で組んで行く事の多いアレクトロは命を助けられてはいるのだが。

 

 もがく【ダイミョウザザミ】を切り付けていると、起き上がった相手が大きく鋏を振り上げて威嚇し、口から泡を吐き出すようになった。

 途端に動きが速くなり、攻撃力も増す。

 ふいに脚全部を縮めた【ダイミョウザザミ】は、それをバネにして真上に飛び上がった。

 密着して切っていたカイとハナが跳ね飛ばされる。

 その内の一人を目掛けて上から押し潰すように、【ダイミョウザザミ】が降って来る。

 

 犠牲になったのはカイだった。

 彼は呻いて地面に手をついたが、起き上がれずにいる。

 

「カイ、しっかり!」

 ハナは近付いて【生命の粉塵】を掛けた。

「ごめん、ありがと……」

 ふら付きながらもゆっくり起き上がった彼を見て、ハナはホッと息を吐いた。

 後は自分で回復しつつ、カイは攻撃に戻った。

 

 

 ベナトールの攻撃によって昏倒した相手に溜めたアレクトロは、二段階目の殻破壊に成功。これで殻の全破壊は終了した。

 そこで前に回り、今度は鋏破壊に集中する。

 

 と、相手が潜った。

 

「散れ!」

 ベナトールの一声で、一斉にばらける。

 固まっていては集中攻撃されるからである。

 地響きの感じでハナに向かっているらしいと分かったアレクトロは、「まずい!」とハナを切り上げた。

 ベナトールも向かっていたのだが、彼の方が一足速かったようだ。

 

 ドーン!

 

 そこに突き上げが来た。

 まともに吹っ飛ばされたアレクトロだったが、「いってぇな!!」とすぐに起き上がった。

 相手はすぐには地面から出ず、何度も突き上げて来る。

 次に犠牲になったのはベナトールだったが、彼は既にその軌道を読んでおり、突き上げが来る前に避けている。

 カイは【音爆弾】を持っていたためか、うっかり投げてしまって皆から失笑を買っていた。

 

 

 討伐して【街】に帰って来た一行は、ハナの言葉に唖然となった。

 

「ねえ、破壊報酬で【モノブロスハート】っていうのが貰えたんだけど……」

 

「マジかよ!? ギルドも大盤振る舞いだな」

「……。まあ、どっちみち独りじゃ狩れねぇだろうしな」

「どゆこと? ベナ」

「その素材は【モノブロス】という飛竜の心臓なんだが、その【モンスター】は独りで狩る事が条件になっているのだよ」

「そ、そんなの絶対無理っ!!」

「言うと思った。いいなぁハナは。おいら苦労して何十頭も狩って手に入れたのにぃ」

「へ? お前【モノブロス】狩れるわけ?」

「やだなぁ、【モノブロス】ぐらい狩れるよ」

「何回気絶したんだよ?」

「いいだろそんな事はっ!」

 

 二人の言い合いを見ながら、なんだか和むハナであった。          




「上位」に上がって間もない頃は、「上位クエスト」でキャンプ以外の場所から出発し、「ここどこ!?」と思う間も無くいきなり目の前に「モンスター」がいて腰を抜かしそうになったもんです。

ちなみに上位「ダイミョウザザミ」の部位破壊報酬で「モノブロスハート」の出る確率は8%だそうな。
この素材が出やすいとされる「モノブロス亜種」の捕獲報酬は10%(本体剥ぎ取りでは8%)。
「物欲センサー」に引っ掛かって狩りまくったのは良い思い出です。
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