今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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これは「ヤマツカミ」のお題を友人に貰って書いたものです。
タイトルは「塔」にある螺旋階段と、「ヤマツカミ」が行う回転攻撃(通称ヤマコプター)から付けました。


グルグル回る

   

 

 

「ねぇねぇベナ! この前【塔】が遠くに見える所で何気に【塔】を眺めてたらね、なんかでっかくて気球に脚が生えたみたいなのが飛んでったの! あれ何!?」

「そりゃ多分、【浮岳龍】って奴だな」

「フ、ガクリュウ?」

「【浮岳龍ヤマツカミ】。【古龍】の一種だよ」

「山を掴むの?」

「まあ、それぐらいデカいってこった」

「ふぅん……」

「丁度今その依頼が来てるんだが、行ってみるか?」

「うんっ♪ カイとアレクも連れてっていい?」

「好きにしな」

 

 

 【塔】に着いた一行は、【ベースキャンプ】でいきなり【浮岳龍】に出くわした。

「でっか~~~い!」

 上空をフワフワと漂うように飛んで行く【浮岳龍】を眺めながら、ハナが口をあんぐりと開けている。

 どっちみち空に浮かんでいる時には攻撃のしようがないので、四人はそのまま見送った。

 

「あれ、ベナ、今日は【ハンマー】じゃないの?」

 彼にしてはかなり珍しく、いつもの【ハンマー】ではなくて極長リーチの【ランス】を担いでいる。

 この【ランス】には【氷属性】が付いており、【浮岳龍】の弱点属性であるという意味と、もう一つ担いで来た意味があった。

 

「あれ、アレクも【大剣】じゃないんだね?」

 カイも珍し気に相棒を見る。

 アレクトロもいつもの【大剣】ではなく、長リーチの【双剣】を担いでいたのだ。

 こっちの【双剣】にも【氷属性】が付いており、彼がこれを担いで来たのももう一つの意味があった。

 

 とにかくも、【浮岳龍】が飛んで行った先の【塔】の上を目指して駆けて行く。

 そして螺旋階段に差し掛かった頃、相手も丁度螺旋階段が取り囲む、吹き抜け部分にやって来た。

 少し登った所でベナトールが【ランス】を構え、アレクトロが【狂走薬グレート】を飲んで【鬼人化】する。

 

 どうやらここで闘うらしい。

 

「届かないぃ」

 螺旋階段の縁ギリギリに陣取って、触腕や膜を攻撃している男二人を尻目にハナが必死で攻撃しようとしているが、普通リーチの【片手剣】では到底届きそうにない。

 カイは、【浮岳龍】が螺旋階段の縁まで体を寄せた時に限り、辛うじて【太刀】の先端が届くか届かないかという所。

 まあどっちみち【特殊リーチ】組も螺旋階段から相手の体が離れてしまったら攻撃が届かないので、ここでの攻撃はどうしても限られてしまう。

 

 と、【浮岳龍】がビタン! と螺旋階段目掛けて腕を叩き付けた。

 

「いった~~~い!」

 それに掠められたハナが吹っ飛んだが、限られた攻撃チャンスを無駄にしたくないと思ったのか、回復役をカイに任せてベナトールは攻撃の手をやめないでいる。

 動きの緩慢な【浮岳龍】は、叩き付けてもすぐには触腕を引っ込めないため、攻撃を躱せれば逆にこちらの貴重な攻撃チャンスになるのだ。

 

 嫌がって腕を引っ込めた【浮岳龍】は、仕返しとばかりに馬鹿でかい口を開け、そこから【大雷光虫】を吐き出した。

 これは別に大きな【雷光虫】という訳じゃなく、小さな【雷光虫】が何百匹も集まったものなのだが、それ故に体当たりのダメージや麻痺の蓄積も侮れない程ある。

 

「ぎゃっ!?」

 案の定というか、よりによってというのか、アレクトロが麻痺ってしまった。

 

 ベナトールは当然のように横ステップでヒョイヒョイと避けながら闘っているのであるが、【大雷光虫】はなぜか麻痺っているものに対して反応するようで、アレクトロは何度も体当たりを食らった挙句に自爆されて吹っ飛んだ。

「ぐぬぬ……!」

 苛ついて起きた所に触腕を叩き付けられ、「あぶねっ!?」と横転している。

 ハナを除いた三人で攻撃している内に、膨らんでいた【浮岳龍】の体が心成しか萎んでいったように見え、とうとう落ちた。

 

 これを見越して二人は、特殊リーチの【ランス】と【双剣】を担いで来たのだ。

 

「おし! 今の内に乗るぞ」

「えぇ!?」

 素っ頓狂なハナの声を無視して背中に飛び乗る男三人。ハナも慌てて続く。

 落ちたといっても完全に下まで落ちた訳じゃなく、螺旋階段の縁を触腕で掴んで必死で途中で引っ掛かっている。

 この状態で背中(正確には頭?)に飛び下りる事に成功すると、長年を経て背中に生えるようになった、【龍苔】やら【龍木】やらが剥げるのだ。

「全員剥いだか?」

 そう聞いて返事を確認したベナトールは、「おし、もうここでは用はねぇから頂上に行くぞ」と背中から飛び降り、サッサと階段を登り始めた。

「待ってよぉ」

 ハナが慌てて付いて行く。

 

 と、元に戻った【浮岳龍】が、口を開けたのをアレクトロは見た。

 

「オッサン!!」

 注意を促したが間に合わず、ベナトールが吸い込まれて行く。

 アレクトロは自分も吸い込まれそうになりつつ螺旋階段の縁を掴んでなんとか体を固定し、彼の手首を掴んだ。

 ビキッと音がし、関節が外れたかと思う程の衝撃が腕に走る。

「ぐうっ!!」

 呻いたが手は離さない。

「放せ馬鹿者! 一緒に吸い込まれてぇのか!?」

「そうなりたくねぇから掴んでんじゃねぇかよ! ちったぁ分かりやがれ!!」

 

 だが、片手で掴んだままでいるのは意外にきつく、徐々に引き込まれて行く。

 

「う、腕が抜ける! てめぇら手伝え!!」

 アレクトロはカイとハナにも手伝わせて、自分をそれ以上引き込まれないようにした。

 幸いにも全員が引き込まれる前に吸い込みをやめてくれたので、アレクトロはベナトールを階段の上に引き上げつつ自分も上がり、大きく息を吐いた。

「すまなんだな」

 腕をさすっている彼に気が付いて、【生命の粉塵】を掛けるベナトール。

「んな大袈裟な、自分で回復するっつの」

 そう言いつつも嬉しかった。

 

 攻撃を躱しつつ螺旋階段を登り、頂上へ。

 ここはまるで円筒闘技場の舞台のように広い石畳が広がっている所である。

 縁まで行って覗き込めば、遥か下の景色は霞んで見えない程高く、柵すら無いのでうっかり滑ってでもしてここから落ちればひとたまりもないだろう。

 だが端にさえ行かなければ、ここが【塔】、つまり建物の頂上とはとても思えない程広いので、四人でも充分に立ち回れる。

 【ヤマツカミ】という名前の通りに山を掴む程巨大な今回の狩猟相手でも、さほど狭さを感じさせずに闘える程の場所だった。

 

 

 

「……に、してもおっそいわねぇ」

 頂上で待つ事にしてから、随分時間が経っている。

「これ、時間間に合うの?」

 ハナは少々不安気味に聞いた。

「……ま、一応はな」

 ギルドから与えられた狩猟時間は、もう残り少ない。

「おし出来たっ♪」

 ちゃっかり【マカ漬けの壺】を持って来ていたらしいカイが、煙が紫になったのを確認して壺を掘り出し、【狂走薬グレート】を作ったりしている。

 暇を持て余して【鬼人化乱舞】を繰り返して体を鍛えているアレクトロは、「おいおい、討伐前に疲れるなよ?」とベナトールに失笑されている。

 

 と、前方の空に気球に脚が生えたようなシルエットが浮かび、それが徐々に近付いて来た。

 

「ようやく来なすったか」

「ったく、待ちくたびれたっつの」

 【浮岳龍】はゆっくりゆっくり【塔】に近付くと、朽ち落ちた壁の前辺りに浮かんだまま低空静止した。

 外側から攻撃すると触腕に叩かれて危ないので、浮かんだ体の下に陣取って、それぞれで一本ずつ内側から触腕を攻撃していく。

 が、相手もじっとしてはいず、腕を振り回すので中々攻撃が当たりにくい。

 こういう場合もリーチの長い武器は有利である。

 

 腕の届く地面ギリギリに浮かんで攻撃していた【浮岳龍】は、攻められるのがうっとうしかったのか一旦高く浮かんだ。

 

 こうなってしまうと例え極長リーチでも届かないため、下りて来るまで様子を見る。

 上空で大口を開けた(らしい)【浮岳龍】は、またもや【大雷光虫】を吐き出した。

 四方から体当たりをして来て攻撃が当たりにくい【大雷光虫】を、翻弄されつつも切り付けていたアレクトロは、【浮岳龍】の影が誰かを狙うかのようにゆっくり移動していくのを見た。

 

 圧し潰しが来る!

 

 慌てて武器を仕舞ってタイミングを見計らい、相手が腹から落ちる寸前で緊急回避。

 この攻撃は触腕を目一杯伸ばしたまま落ちて来るため、自分が狙われていなくてもけっこう巻き添えを食らうのだ。

 狙われているのが誰か確かめる暇が無かったアレクトロは、見回して愕然とした。

 

 カイが、倒れている。

 

 いやむしろ、カイは触腕の巻き添えを食らったようだった。

 

 次に目に入ったのは、ガード姿勢のベナトールの姿。

 ハナはと見ると、その足元で倒れている。

 いかにガード性能の良い【ランス】でも、本体の重量は受け止め切れなかったのだ。

 

 彼は次の瞬間、力を出し切ったかのように膝から崩れた。

 

「オッサン!!」

 慌てて駆け寄って支える。

 やはり、かなりのダメージになっているらしい。

「……お前は、無事、なのか?」

「ああ、緊急回避が上手くいったからな。だがカイがやられた」

「……ハナ、は……?」

「生きてるよ。それよりてめぇの心配しろ!」

 

 【猫車】で運ばれて行く二人を尻目に、アレクトロはありったけの【生命の粉塵】を彼に掛けた。

 

「結局、護り切れなかったか……」

 悔しそうなベナトール。

「いや護れてるじゃねぇかよ、オッサンがガードしなきゃ今頃ペッタンコだぜあいつ」

「だったら良いんだがな……」

 

 兜の中で寂しそうに笑ったのが、雰囲気で分かる。

 

「それより時間がねぇんだ。残った二人でカタ付けるぜ!」

「おうよ!」

 二人が戻って来る間に攻撃を仕掛け、戻った頃には山のようなその巨体は、地に伏せていた。

「これ、二人で倒したのぉ!?」

 ハナは呆気に取られている。

「いや、その前にお前らの蓄積があったからな」

「嘘だ、おいら殆ど攻撃出来なかったのに」

「はぁ……。やっぱ実力が違い過ぎよねぇ」

 

 喜ぶどころか逆に落ち込んでいる二人を見て、討伐した二人は苦笑いするしかなかった。  




他の「モンスターハンター」シリーズには無いかもしれませんが、「フロンティア」には「特殊リーチ」と呼ばれる通常より極端に長かったり短かったり、攻撃判定が先端しか無かったりするような特殊な武器があるのです。
ので、「極短」「短」「中」「長」「極長」というリーチ武器が存在しています。
ちなみに通常リーチの武器は「中」にあたります。


文中に出て来る「マカ漬けの壺」についてですが、これはその壺の中に何某かのアイテムを入れて埋め、一定の時間が経てば他のアイテムに変わるという不思議な壺で、「2(ドス)」の頃から存在しているアイテムです。
狩場で拾う事も出来るし店売りで買う事も出来ます。

時間経過で煙の色が変わり、今回カイが作っていた「狂走薬グレート」は「回復薬グレート」を入れて時計の針が一つ動いた頃に出来るものです。
「ヤマツカミ」が塔の頂上に来るのは時計が後25分という頃なので、それまでに暇を持て余したハンターが「ヤマツカミあるある」として「狂走薬グレート」を作るために持って行っていました。
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