今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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この二人がクエストに行くと、どうも喧嘩みたいになるようです(笑)


パラライズパニック

   

 

 

 

「ねぇアレクぅ、【麻痺袋】が欲しいんだけど……」

「断る」

「なんでよぉっ」

「おめぇに何かあったら、オッサンに顔向け出来ねぇ。前回で懲りた」

「あの時は悪かったわよ。余計な負担かけちゃってさ」

「はぁ、やっぱオッサンは優秀だよな。俺だと護り切れねぇわ」

「そう落ち込まないでよね。ガードし切れなかった私も悪いんだから」

「そう思うんならちったぁ踏み堪えられるように鍛えてくれよな? オッサンに頼ってばっかだからああなんだぜ?」

「そうね。頑張る」

「オッサン何も言わねぇけど、おめぇのせいでいっつも重症負わされてんの知ってんだろうが? 言っとくがおめぇ庇うためにわざわざ自分で食らってんだからな? あれ。タフだから出来る事だが、仕舞にゃ死んでも知らんからな?」

「そんなのやだぁ……」

「だろ? ならもうちっと負担しねぇような立ち回りも考えるんだな」

「うん。そうする」

 ハナは泣きべそをかきながら頷いた。

 

「――で? オッサンはまた【仕事】なのか?」

「そうみたい。部屋に行ったらいなかったの」

「そんなに違反者増えてんのかな……?」

 思わず呟いてしまった言葉に怪訝な顔をされ、「いやこっちの話だ」と誤魔化すアレクトロ。

 

「しゃあねぇ、【ドスゲネポス】ならなんとかなんだろ」

「ありがとアレク。大好きっ♪」

「心にもねぇ事ぬかしてねぇで、さっさと準備しやがれ!」

「つまんないのぉ」

 

 

 【麻痺袋】を効率良く取るなら、上位で捕獲した方が報酬で貰える確率が高い。

 上位といっても【ドスゲネポス】ならそれ程攻撃力は高くないので、アレクトロは上位で受ける事にした。

 だが下位では【ベースキャンプ】に届けてもらえるのを利用して、必ず最初にいる《6》に古井戸からすぐに飛び下りれば間に合うのだが、どの場所に着くか分からない上位では、運良く同じエリアで遭遇しない限りは探し回らなければならない。

 

「二手に分かれるぞ」

「え~ヤダ~~。【大型モンスター】が襲って来たらどうすんのよ?」

「んなもんいねぇって!」

「そうとは限らないじゃないっ」

「はぁ。分かったよ、んじゃずっと付いてろよ【金魚のフン二号】」

「ほんっとに口悪いんだから……!」

「うるせぇ、文句あんなら置いてくからな」

「分かったわよっ!」

 

 

 【ドスゲネポス】は《4》にいた。

 ここは比較的狭いため、ピョンピョン跳ねて【大剣】では翻弄されやすい【ドスゲネポス】でも攻撃が当たりやすい。

 麻痺らされたハナは、「えいっ、麻痺返しよっ!」と【デスパライズ】で逆に麻痺らせたりしていた。

 

 その麻痺攻撃の最中に、チャンスとばかりに溜めていたアレクトロは横蹴りを食らって吹っ飛んだ。

「――!?」

 途端に体が痺れて動かなくなったのに面食らい、取り敢えず目だけを動かして周りを探ったアレクトロは、そこに元気に跳ねている黄色い【鳥竜種】を見付ける。

 

【挿絵表示】

 

「も、もう一匹いたのかよ!?」

 【ドスゲネポス】が二頭いたのだ。

 

「きゃあっ、ちょっとアレクなんとかしてよぉっ!」

 そろそろ弱るだろうと、最初の一頭に【シビレ罠】を仕掛けようとして飛び蹴りされたハナが文句を言っている。

「んな事言ったってなぁ、もう一頭いるなんて聞いてねぇっつの」

「そういうのは依頼書に書いてあるはずよ? 見てないあんたが悪いんでしょ!?」

「へいへい、すんませんでしたね」

「悪いと思ってんならなんとかしなさいよぉ!」

「希望したのはてめぇだろうが! てめぇでなんとかしやがれ!」

「二頭いっぺんに相手出来るわけないでしょお!?」

「うるせぇな! んなこた知るかよ!」

 とか言いつつも、しっかりもう一頭を引き付けてやるアレクトロ。

 

 

 無事に二頭とも捕獲し、【街】に帰った二人。

 

【挿絵表示】

 

「貰えたよ【麻痺袋】! しかも二個もっ♪」

「あ~そりゃ良かったな」

「なによ、もっと嬉しそうにしなさいよ」

「俺はち~~っとも嬉しくねぇからな。【麻痺袋】なんざ有り余ってるし」

「そりゃあんたとは狩猟数が違うでしょうよ。一般人とは比べないでよね」

「あのなぁ、【ハンター】である時点で一般人とは既に違うんだっつの」

「んじゃ一般ハンター?」

「どうでも良いわっ!」

 

 突っ込みつつ、ハナが無事でいてくれた事に、内心安堵したアレクトロであった。

 




「違反者が増えているのか」と思わず口走ってしまったアレクトロが誤魔化すシーンがありますが、ベナトールが「仕事」と言う時はハンター業務ではなく「ギルドナイト」としての仕事(つまり暗殺任務)なので、ベナトールが「ギルドナイト(暗殺者)」である事を知っているアレクトロは仲間、取り分けハナには知られたくないと思っているのです。

何故なら「ギルドナイト(及びその組織であるギルドナイツ)」はその名前こそ有名ですが実在すら噂に過ぎない程の都市伝説級の存在で、「ハンターズギルド」でも直属の組織でありながら公けにはしていないからです。
というか、少なくとも私の中ではそういう存在であるので、私の話では機密組織として徹底的に隠す方に働いています。

ので、今の所ベナトールの正体を知っているのはアレクトロだけなんです。

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