今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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「ランス」の上手い人って、「モンスター」相手に踊っているように見えませんか?


踊るごとくに

 

 

 

「――アン、ドゥ、トロワ。アン、ドゥ、ステップ。アン、ステップ、ステップ……」 

「さっきから何をブツブツ言ってんだよ?」

「ベナの闘い方。なんか【モンスター】相手に踊ってるみたいじゃない?」

「確かにね。珍しく【ランス】担いで来てさ、『苦手だからあまり使いたくない』とか言ってたくせに、こうやって見てると見惚れちゃうよね」

「器用だよなぁ、俺も【訓練場】で全武器種は習ったけどよ、とてもじゃねぇけどあそこまで動けねぇや」

「おいらも習ったけど、あんなの無理」

 

 ベナトールは他に攻撃する者が誰もいないのを知ってか知らずか、華麗ともいえる足さばきで相手の攻撃を全て躱しつつ、あるいはガードしつつ、的確に【ランス】で突いている。

 相手は変種の【グラビモス】。重厚なこの【モンスター】は動きが速くないとはいえ、あそこまで張り付いたままで攻撃し続けられるというのは、三人にとっては驚き以外の何物でもなかった。

 エリアに入って相手を見付け、一斉に攻撃しようと思ったのだが、その前に真っ先に相手に張り付いて攻撃し始めたベナトールの、その動きのあまりにもの見事さに、三人は見入ってしまっているのである。

 と、【グラビモス変種】が深く息を吸い込んだのが見えた。

 

 グラビームが来る!

 

 慌てて回避の準備をしようとした三人は、彼が今まさに吐かれようとしている相手の口の前に立ちはだかったのを見る。

「まさか――!」

 

 ベナトールはなんと、強烈な熱線である相手のブレスを易々と盾で防いで見せたのだ!

 

「こ、攻撃全てを防ぎ通す気かよ!?」

 しかもその場に踏み止まり、まったく微動だにしていない。

「〈ガード性能+2〉だろうか?」

「分からん、普通はそうだが、オッサンの事だから自分の力だけで止まっているのかもしれん」

「だとしたら筋力あり過ぎじゃないのよぉ」

「まぁあの筋肉だしなぁ」

「【デカマッチョ】っていうアレクが付けたあだ名も、あながち嘘じゃないもんねぇ」

 もし〈ガード性能+2〉のスキルを付けていたとしても、【グラビモス】のブレスは強力なのでかなりのダメージになっているはず。

 ならばとハナは、【生命の粉塵】を投げた。

 彼女の愛用【リオハート】シリーズには〈広域化+2〉のスキルを付けているので、遠くから投げても効果があるのである。

 

 ベナトールはその時だけ一瞬こちらを向いて、親指を立てた。

 

 なんとなく邪魔してはいけないような気がして見ていた三人だったが、彼だけに任せるのはやはり気が引けるので、攻撃に参加する。

 彼は集中しているのか、それとも分かっていてあえて黙っているのか、三人が参加しようがしまいが変わらずに黙々と攻撃を続けている。

 彼の蓄積があったために簡単に腹が壊れたが、流石に尻尾にまでは手が回らなかったようで、こっちの方は無傷で残っていたのでアレクトロが担当して切り落とした。

 (といっても後で、【ランス】では尻尾が切り辛いので単に放って置いただけ、という事が分かったのだが)

 討伐前に睡眠ガスやら火炎ガスやらを撒き散らされたが、ベナトールのガードによって、ハナは無傷だった。

 

 まあその代わりに、男二人は当然のように食らった訳だが。

 

 

 【クエスト成功】して【街】に帰ってから、アレクトロは「あそこまで動けるんなら【ランス使い】に転職した方が良いんじゃねぇの?」と言ってみた。

 ガード出来る武器の中でガード性能が一番高い【ランス】ならば、ハナを護る彼の負担もかなり軽減出来ると思ったからである。

「いや、やはり【ランス】は気に食わん」

「なんでだよ? 【ランス】だったらオッサンも無傷で済む事が多いんじゃねぇのか?」

「【ランス】では気絶させられん」

 そう言ってニッと笑うベナトール。

「そっちかよっ!!!」

 

 それを聞くや否や同時に突っ込んだ三人であった。




これを読んだ友人にも「ランス使いになった方が良いんじゃないの?」と言われたんですが、ベナトール自身はガードを取るよりスタンを取る方が楽しいらしいです。

なんでも彼の父親カワードが有名な「ランス使い」だったらしく、どうやらかなり厳しく「ランス」の指導をされたらしいので、その反発からか苦手意識を持つようになったようです。
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