今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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「朝ご飯はココット村で」とは別の話ですが、続きのようになってます。
この話は友人から「卵運び」のお題を貰って書いたものです。


砂漠のデッドヒート

 

 

「ねぇ【草食竜の卵】ってさぁ、どんな味か食べてみたいと思わない?」

 【ココット村】での朝食を終え、四人で談笑していると、ハナが言った。

「別に思わねぇな」

 腹さえ満たせば味にはそれほど拘らないタイプのアレクトロが、事も無げに言う。

「うんうん、一度食べてみたいよね♪」

 体型は細いくせに意外と食いしん坊であるカイが、その話に乗る。

「でしょでしょ? じゃあさ、みんなで取りに行かない?」

「みんなって……。まさか俺も入ってるんじゃあるまいな?」

 ベナトールが困惑したように言う。

「当たり前でしょ!? ベナは私の【教官】なんだから」

「それはもう卒業したんじゃ……」

「なんか言った?」

 迫られて、「むぅ……」と唸るベナトール。

「俺は行かねぇかんな!」

「なんだよアレク、行こうよぉ」

「そうよ、一人だけ行かないのはルール違反よ」

「そのルール誰が作ったんだよ……」

 四人でなんだかんだと言っていたが、結局揃って行くハメに。

 

 【砂漠】の【ゲネポス】を狩る【クエスト】を受けた四人は、取り敢えず【草食竜の卵】のある《10》に行ってみた。

 今は【繁殖期】なので、割と沢山の卵がある模様。

 が、この卵は【アプケロス】の卵なため、まず卵を護っている親をどうにかしなくてはならない。

「いっその事殺すか……」

 つぶやいたベナトールの声に、「可哀想よぉ」と答えるハナ。

「俺もそう思うんだが、邪魔なんだよなぁ」

 ぼやくアレクトロに、「んじゃ誰かが引き付けるか気付かれる前に運ぶ?」とカイ。

「まあなんとかなんだろ」

 巣に近付いたベナトールが、卵を抱えようとすると――。

 

 ぐしゃ

 

「もぉベナ! 腕力ありすぎ!」

 脆い卵はベナトールの腕力では、抱える前に潰してしまうようだ。

「ったく、ならオッサンは援護してろよ」

「いやすまんすまん」

 頭を掻くベナトールだが、援護も大切なのだ。

 

 《10》から【キャンプ地】まで運ぶルートは二通り。

 《5》の砂漠を通って《1》《2》とずっと砂漠を歩き続けるか、比較的涼しいために【クーラードリンク】のいらない《7》《3》を通り、《2》の砂漠へ出るか。

 距離的に《7》を通って行く方が近いため、こちらを選ぶ事にした四人。

 が、どちらにしても《2》の砂漠は避けられないので、運ぶ前に【クーラードリンク】を飲んでおかなければならない。

「よっこらしょ」

 年寄染みた言葉を発しながら、アレクトロが卵を抱える。

「うんとこしょ」

「どっこいしょ」

 まるで合いの手のような事を言いながら、ハナとカイも抱えた。

 当然のようにその親である怒った【アプケロス】が追い掛けて来るので、それを避けつつ進む。

 が、卵が重いのと中身が不安定に揺れてバランスが取り辛いせいで、かなりゆっくりしか走れない。

 ようやく《7》に出た一行は、そこにずらりと【ゲネポス】が待ち構えているのを見た。

「オッサン、頼んだ」

「おうよ!」

 たちまち鬼のごとく蹴散らすベナトールを尻目に、《3》へ向かおうとすると――。

 

 がっしゃんっ!

 

 卵が割れた音がしたと思って振り向くと、ハナが「あぁ~~、割れちゃったあぁ!」と情けない声を出している。

「おめぇ、スタミナ配分に気を付けろよ!」

 注意しつつ走っていると、背中に衝撃を受けて吹っ飛ばされた。

「ななっ!?」

 混乱して立ち上がろうとするも、痺れて動けない。

 ベナトールの強攻から逃れた【ゲネポス】の仕業である。

「くっそぉ~~!」

 《3》の入り口間近で飛び蹴りを食らったアレクトロは、麻痺から抜けるや否や、「てめぇ! よくもやりやがったな!!」と【ゲネポス】を一刀の元に両断した。

 飛び蹴りしたものとは別の個体だったのだが、卵が割れた腹いせだったので、そんな事はどうでも良かった。

「あぁっ!」

 《3》まで無事に通過していたカイの声が聞こえ、そこまで駆けて行くと、こちらは【ランゴスタ】に刺されて麻痺っていた。

 

  

 そんな事を二度ほど繰り返して失敗したアレクトロ。

「やってらんねぇ!!」

 割れた卵の一部を地面に叩き付け、彼は言葉を吐き出した。 

「俺も援護に回るわ。お前ら勝手に運んでろ」   

 捨て台詞を吐いて、さっさと《7》へ行くアレクトロ。

 そこにはベナトールがいるのが分かっているので、彼を無視して怒った顔のまま《3》へ行く。

 定期的に湧く【ランゴスタ】を、枯れるまで退治するつもりだったのだ。

 

 卵の中身を防具にひっかけて、ずんずんと怒った足取りで《3》へ向かう後ろ姿を目で負いながら、ベナトールは彼の心情を察して苦笑いした。

「しょうがないわねぇ、んじゃさっさと二人で運んじゃいましょ」

「そだね」

 ハナとカイは、二人でえっちらおっちら卵を運んで行った。

 

 

 そうやって、多少(?)苦労して取って帰ったは良いものの……。

「……これ、うめぇか?」

「う~~ん……。ハッキリいってイマイチねぇ」

「え? おいしいじゃんこれ♪」

「カイ、味音痴は黙ってろ」

「い、いやハナの作ったものなら、なんでもウマいからな、うん」

「オッサン無理しなくていいから」

「いやおいしいってば♪」

「だったらおめぇが全部食え」

「ホント!? やったぁ♪」

「ま、まあカイが喜んでくれてるんなら、いっか……」

 

 言い出しっぺのハナは少し後悔したのだが、喜んでがっついているカイを見て、苦笑いしつつも嬉しかったのであった。




なんか卵をそのまま食べたような書き方になってますが、ちゃんと料理しましたよ。ハナが(笑)

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