今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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タイトルに「カイ編」と付いてますが、特に続きはありません。
友人の人格であるカイが超珍しく自分から「下りて」来たので分かりやすいようにタイトルにも入れました。
と言っても「ハナ」と違って一人称として「下りる」事は無い様で、なのでカイの視点を「神(私)」の視点で俯瞰して見たような書き方になりました。

※挿絵のグロ注意です。


猛る【一角竜】(カイ編)

 

 

 

 ギオォ~~~ン!

 

 巨体の割にはやたら甲高い咆哮が、【砂漠】の《7》に響き渡った。

 それを終戦の合図にするかのように、身構え、突進する傷だらけの【モノブロス】。

 

【挿絵表示】

 

「来いよ! 決着を付けてやる!!」

 カイは半分折れた【太刀】を構え、避けつつ切り掛かった。

 

 

 

 話は五時間前程に遡る。

 【武具工房】で強化素材を見ていたカイは、そのリストの中に【真紅の角】を見付けたのだ。

 

【挿絵表示】

 

「親方、この素材って――」

「そいつぁ【モノブロス】の角だな」

「やっぱり、そうか……」

「不安げだな、だがこればっかりは仲間を頼れねぇぞ?」

「分かってるよ」

 

 【モノブロス】は、猛々しい【飛竜】であるにもかかわらず、独りで狩る事を求められる【モンスター】である。

 なぜなら同じ系統種である【ディアブロス】と違って非常に警戒心が強く、滅多に表れない上に数人で行くと逃げてしまうため、気配を最小限に抑えつつ狩れる独りで挑むのが一番望ましいからである。

 

 もちろんカイも初めての相手ではなく、今までに必要に応じて何度も狩ってはいるのだが、手強いのは変わりがないので彼としては極力相手をしたくはなかったのだ。

 

 とにかく、準備は万端にしよう。

 

 彼はそう思って、【クーラードリンク】やら【音爆弾】やら、とにかく【砂漠】で必要な物や回復アイテム、【罠】などを吟味し、ありったけの持てる分を持って行く事にした。

 長期戦になる事を覚悟していたので、とにかく調合分も忘れないようにした。

 

 

 【砂漠】に着くと、まず一番に【クーラードリンク】を飲んだ。

 が、見付けたのは《3》だったので「意味なかったな」と苦笑した。

 

 まず目的の角を折ろうと、麻痺を期待して切り刻む。

 

 手数の多い【片手剣】よりは遅れを取ったが、何度か切っている内に麻痺ってくれた。

 【太刀】には溜め攻撃が無いが、切っている内に【錬気】が溜まって行くので、それを消費して強力な攻撃を当てた。

 潜ったらすかさず【音爆弾】を投げ、上半身だけ飛び出させてもがいている間に切り刻む。

 頭が高いと当てにくいので、麻痺っている間になるべく頭を狙う。

 

 それを何度か繰り返し、角破壊に成功。

「よし、あとは尻尾だな……」

 だが、その頃には相手の口元から黒い息が出るようになっていた。

 

 怒ったまま移動してしまったので、【ペイントボール】の匂いを頼りに探す。

 相手は《5》に移動した事が分かったため、一旦【モドリ玉】で【キャンプ】に戻り、古井戸から《5》へ。

 走って移動するよりその方が早いからである。

 効果が切れていたのもあって改めて【クーラードリンク】を飲もうとしたが、既に補足されていたのかエリアに入るなり突進して来たので、回避してから隙を見て飲んだ。

 

 だが、飲んでいる間に潜られた。

 

 どちらにしても怒り時に【音爆弾】は効果がないので、なるべくその場に止まらないようにして出て来るのを待つ。

 が、その努力も空しくカイは突き上げられ、思い切り吹っ飛んだ。

 

【挿絵表示】

 

 幸い角が折れていたために串刺しは免れたが、怒り時のダメージはけっこうきつく、すぐに起き上がれない。

 

 そこに突進が来た。

 

「うぐあっ!!」

 起き上がった直後だったために、ガード出来ないのに思わず【太刀】をかざしてしまったカイは、衝撃と共に再び吹っ飛ばされた。

 熱い砂の上に仰向け状態で叩き付けられ、 一回バウンドして止まる。

 

 ギオォ~~~ン!

 

 勝利宣言のように吠える【モノブロス】の声を聞きながら、彼の意識は遠のいた。

 

 

 次に目を開けた時、カイはテントの前に転がされていた。

 どうやら【猫車】で【ベースキャンプ】まで運ばれたらしい。

 起き上がろうとしたが、体中が痛い。

 寝ころんだまま呻きつつポーチを探って【回復薬グレート】を飲み、上半身を起こせるまでになってから、何本か呷って一息ついた。

 

 その段階になってようやく、なんとなく背中が軽いのに気が付いた。

 

 最初【太刀】を無くしてしまったかと思って慌てて背中に手を回したが、【太刀】は鞘にちゃんと収まっている。

 そこで鞘から抜いてみたカイは、愕然とした。

 【太刀】が中程から完全に折れてしまっていたからである。

 

「あの時に折れてしまったか……」

 恐らく、突進を【太刀】で受けてしまったがために、その衝撃に耐えられなかったのだろう。

「これじゃ【片手剣】だな」

 カイは苦笑いした。

 【クエストリタイア】の選択が頭を過ったが、まだ刃の部分は残っていると思い直した。

 

 切っ先が無いから突く事は出来なくても、切る事はまだ出来る。

 きっともうすぐ討伐出来るはずだ。ここで諦めてはいけない。

 そう思って、そのまま再び【モノブロス】の前に立ちはだかった。

 

 

 突進を避けたカイは、直後に振り回される尻尾に気を付けつつ、尻尾の動きが止まったと同時に踏み込んだ。

 

【挿絵表示】

 

 切り上げ、切り下がりを当てて様子を見ながら納刀。

 横に回って脚を切り付け、こけた所を連続切り。

 怒って潜られたが、今度は突き上げを食らわずに済んだ。

 様子を見つつ【シビレ罠】を仕掛け、下がった尻尾に錬気切り。

 それで尻尾が切れたので、後はなるべく弱点を狙うように切り刻んだ。

 タックルされて吹っ飛んだが、これは大したダメージじゃなかったのでそのまま攻撃を続ける。

 痺れた所を気刃斬りで最後まで錬気を出し切ったのが止めとなり、【モノブロス】はとうとう断末魔の声と共に、その巨体を沈めた。

 

「ふ~~~っ!」

 長く息をつくカイ。

 やはり、苦戦してしまった。

 剥ぎ取りつつ、やっぱり独りで狩るよりは仲間との狩りの方がいいな、と彼は思った。   

  

 




例によって、自キャラをカイ役として適当な装備をさせて挿絵撮影しています。
「太刀が折れた」という設定なので、短リーチの太刀を使いました。

この話は友人との会話から「武器が折れる話もあるんじゃない?」という事で書いてみたものです。
「モドリ玉」の話も出て、私的には小説としてはこのアイテムは無しなんじゃないかと思っていたので今まで出してはいなかったんですが、「実際に(ゲーム内で)使われている物なんだから」と友人に言われたので「それもそうだな」と採用いたしました。

ので、この話以降は「モドリ玉」を使うようになっております。

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