今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】 作:沙希斗
挿絵は「パートナー」を外して撮影しています。
溶岩の狭間で、二頭の【覇竜】が死闘を繰り広げている。
一頭は【飛竜種】の【アカムトルム】。
そしてもう一頭は、【アカムト】シリーズに身を固めた【人間族】のベナトールである。
彼は、この【飛竜種】と独りで闘う事が、どの【モンスター】を独りで相手にするよりも好きだった。
巨大な肢体から繰り出される重々しい攻撃。
巨体の肺活量に相応しい、音速を超えるブレス、通称【ソニックブラスト】。
その躍動は大地を裂き、その咆哮は溶岩をも噴出させ、その潜行は地を轟かせる。
彼にとっては【好敵手】とも言える存在だと思っている。
だから独りで狩りたくなった時は、こうして【決戦場】と呼ばれている溶岩の奥地へ赴くのであった。
PT戦では仲間の被弾を考えて【閃光玉】などのアイテムを使う彼だったが、命を懸けた勝負の方が燃えるので、一対一で闘う時には極力束縛アイテムなどは使わない。
なので被弾すれば即命に関わりかねないのだが、その刹那の闘いすらも、彼にとっては楽しいものだった。
キャガオォ~~~!
頭に高い周波数が付く独特の咆哮。
それに呼応するように、前方に溶岩が吹き上がる。
それを避けつつ咆哮終わりに最大溜めを叩き付ける。
噛み付きを避け、牙に縦攻撃二回。
再度叩き付けようとして振り被ろうとしたら潜られたので、潜る際の衝撃を避けるために後転し、潜行に伴う吹き出す溶岩を避けながら、地響きを追うように追い掛けた。
出て来るタイミングを見計らって溜め、出切った所に溜めスタンプ。
怯んだのでそのまま縦三と言われる三連続の縦振りを当てると、相手は昏倒した。
最大溜めの溜めスタンプを二回程当て、起き上がりに合わせて振り上げ一回。
怒って潜られたが、潜行先が遠かった。
飛び出した【アカムトルム】は、ベナトールが追い付くまでに馬鹿でかい口を開け、ブレスを吐いた。
音速を超える黒い竜巻が正面付近に広がったが、横に回り込みつつ近付いて、隙だらけの横顔に叩き付ける。
怯んだ相手は苦し紛れに頭を振り上げた。
それを予測していなかったベナトールは、下顎に生えている巨大な牙に引っ掛けられた。
牙といっても顎からはみ出るぐらい馬鹿でかく、二本の角に見える程長く大きく発達しているものなので、それに振り上げられたら派手に吹っ飛ばされるしかない。
それでも受け身を取ったベナトールは、すぐに起き上がったがボタボタと血を滴らせた。
左脇腹から右肩にかけて、大きく切り裂かれたようになっている。
大量の血を滴らせながら立っている彼を見た【アカムトルム】は、勝利を確信したかのように大きく吠えた。
「……。これで、勝ったつもりか?」
次の瞬間、ベナトールの全身から殺気が沸き上がった。
それを感じた【アカムトルム】は怖気付き、たじたじと引き下がった。
が、その恐怖を打ち消すかのようにして吠え、突進して来た。
彼は回復もせずに溜めると、正面で迎え撃って、再び牙が彼に届く寸前で叩き付けた。
動きを止めた【アカムトルム】は、そのまま昏倒。
その大きな隙に、ベナトールは回復しようともしていない。
大きく切り裂かれた傷は深く、常人ならば吹っ飛ばされた時点で気絶していてもおかしくはない。
なのにビシャビシャと音を立てる程黒い溶岩に鮮血を滴らせながら、何事も無かったかのように攻撃を続けている。
そう。まるで【狂戦士】そのもののように。
それに戦慄を感じているのか、相手も死に物狂いで向かって来るようになった。
が、攻撃も、避ける動作も少しも鈍っていない。
それどころか血によって覚醒したかのように、ますます攻撃が激しくなっている。
「がはぁっ!!」
途中で何度も血を吐き、荒い息遣いなのにも関わらず、その口元は楽し気に歪んでいる。
結局相手が倒れ伏し、二度と動かなくなるまで一度も回復しなかった。
「……はぁ、はぁ……!」
討伐を確認したベナトールは、荒い息を吐きながらポーチを探り、【秘薬】を口の中に放り込んだ。
効き目が表れた頃に大きく息をつき、もう息の無い【アカムトルム】に近付いて、彼の攻撃によって折れた二本の牙の内の一本を愛おしそうに撫でた。
「また楽しませてくれよ? 相棒」
その牙は、彼に傷を負わせた方の牙だった。
「覇竜」を怯ませる程の殺気って((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
アカムもアカムトシリーズも黒っぽい上に「決戦場」の風景も暗いため、挿絵撮影では特にベナトールが何をやっているか分からなくなってしまいました(^^;)
牙に引っ掛けられるシーンでは放り上げられるような吹っ飛ばされ方にしたかったんですが、「アカムトルム」の吹っ飛ばしではそうはならないようです。