今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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これは、前回の「二頭の覇竜」にアレクトロを参加させ、彼の視点で書いたものです。
話の内容はまったく前回のものと同じですが、他の視点ではどう見えるのかを知りたかったので書いてみました。

クエスト自体がキツイので、カイとハナには参加してもらえませんでした(笑)


【覇竜】の実力

 

 

 

 溶岩の狭間で、二頭の【覇竜】が死闘を繰り広げていた。

 というよりは、まさに「二頭の【覇竜】が闘っている」と言える程の光景だった。

「これが、オッサンの実力なのか……!」

 アレクトロは、この光景を見られる事に、そして自分が同じ場所で闘っている事に、感動すら覚えていた。

 

 

 

 話は数日程前に遡る。

「オッサンよ、あんたが独りでクエやってる時にな、どんな依頼を受ける事が多いんだ?」

「どんな、とは?」

「いや依頼こなすのに内容は関係ねぇのは分かってるけどよ、一応こっちにも『選ぶ権利』っつうものがある訳だろ? だから独りで闘いやすい【モンスター】とか、実力を出しやすい相手とかがあって、それを優先して選んでんじゃねぇのかなと思ったんだよな」

「……。俺が独りで相手をするのに相応しい、と思って受けている依頼があるとすれば、【覇竜】の依頼だな」

「【アカムトルム】かよ!?」

「うむ。あやつは戦友だと思っているのだよ。俺としてはな」

「まあ愛着してんのが【アカムト】シリーズだもんなぁ。そりゃ狩り慣れてるわなぁ」

 

「お前は狩った事はあるのか?」

「独りでか?」

「うむ」

「あるにゃああるが、何度も気絶しては【リタイア】してやり直したりして、【クエスト時間】ギリギリでやっとこさ倒せたぐれぇだったな。【クーラードリンク】の調合分まで持ち込んで、それでも足りるかどうかっつう感じだったよ」

「そうか……」

 

「なぁオッサンよ、一片見ても良いか?」

「何をだ?」

「あんたが【覇竜】と闘うとこをだよ。あのクソ手強い【モンスター】を、【ハンマー】一本で闘ってんだろ? ガード出来ねぇのにどうやって闘ってんのか見てぇんだよ」

「やめとけ、巻き込まれて死ぬのが落ちだ」

「そんな過酷な闘いしてんのか!?」

「俺の場合、ソロだと【閃光玉】などの縛りは一切せんからな。まさに生死を懸けた死闘となる」

「面白ぇじゃねぇか。それこそ俺が求めてる、命と命のやり取りっつうやつだぜ」

「……。集中したら、助けてやれんかもしれん。それでも良いのか?」

「上等だぜ。元より助けて欲しいなんざハナから思ってねぇよ」

「……。自分の命は自分で護れよ?」

「了解」

  

 【受付カウンター】の前で落ち合うと、彼は「出発前に言って置きたい事がある」と言った。

「例え俺がどうなっても、一切構うな。助けようなどとしなくても良い。それが出来んのなら、この依頼は破棄だ」

「承知した」

「くれぐれも頼むぞ?」

 ベナトールは念を押した。

 

 

 【決戦場】と呼ばれている場所は【火山】の奥地にあるらしく、かなり過酷な場所なためなのか【ベースキャンプ】が無い。

 気絶するなどして力尽きれば一応安全な場所に【猫車】が運んではくれるのだが、もしそこまで逃げ帰ったとしても簡易ベッドが設けられてないために、寝て回復する事は不可能。更に、【支給品ボックス】も備えられてないので、【支給品】を受け取る事も不可能なのだ。

 とすれば、持ち込みや調合分の回復系だけでしのぐしかない。

 無論、他のアイテムも然り。

 そんな生半可な環境じゃない狩場に好き好んで行くようなハンターは、恐らくベナトールぐらいなものだろう。

 

「さて、始めようか」

 自分を見付けて吠えた【覇竜】に、ベナトールは呼びかけた。

 吹き出す溶岩に気を付けながら溜めつつ近付き、咆哮終わりに合わせて最大溜めのスタンプ。

 普通なら発覚直後(必ず吠える)に合わせて【閃光玉】を投げ、攻撃しつつ【閃光玉】で動きを封じながら闘う方が楽なのだが、彼はそういうやり方は好まないらしく、始めから自らの手で攻撃している。

 まあそれは初めから言われて分かっていたので、アレクトロは頭部をベナトールに任せ、後ろ脚付近に回り込んで腹側などを中心に攻撃する事にした。

 その辺りが一番体の動きが少ないため、一つ一つの振りが遅い【大剣】では闘いやすいからである。

 

 【覇竜】の咆哮はバインドボイスなので、例え〈高級耳栓〉を付けて耳を保護していたとしても発せられる衝撃波でダメージを受けて吹っ飛ばされてしまう。

 なので、咆哮に合わせてガードしつつ闘える、【大剣】は都合が良かった。

 だからガード出来ない【ハンマー】を使っているベナトールはどう闘っているんだろうと闘いながらチラチラ見ていると、ダメージを受ける寸前に、どうやら転がって避けているようである。

「相変わらず器用な事すんな~~!」

 アレクトロは感心した。

 

 動きに合わせて隙を見て切り付けつつ、咆哮はガードしてすぐに溜める。

 そのタイミングで咆哮終わりに最大溜めが決まるので、時には悲鳴を上げて怯んだりした。

 ベナトールが時々スタンさせてくれるため、溜める隙はけっこうあった。

 

【挿絵表示】

 

 と、ふいに【覇竜】の黒々とした体が赤黒くなり、最大に吠えた。

 怒りによって血流が上がり、甲殻の表面が赤く見えるようになったのだ。

 

 例え怒ってもこちらの立ち回りが変わる訳ではないのだが、咆哮のダメージや動きそのものに速度と衝撃度が増し、ただ足を踏み出すだけの動作でも意外に痛い。

 【覇竜】に呼応するかのように吹き出す溶岩の範囲も増えたりし、時には巻き込まれたりした。

 それに腹下付近にいると突進開始が分かりにくく、どうしても轢かれてしまう。

 「自分の身は自分で」と言われているため、というかハナから自分もそのつもりでいるために自分で回復していたアレクトロは、食らう事が多くなった分調合分でも足りないかもしれないと思い始めていた。

 だから無傷で闘っているように見える、ベナトールが羨ましかった。

 

 そう思っていた矢先、彼に悲劇が訪れた。

 攻撃を受けた【覇竜】が苦し気に頭を振り上げた際、下顎に生えている巨大な牙に引っ掛けられたのである。

 

【挿絵表示】

 

「オッサン!!」

 派手に吹っ飛ばされた彼に思わず駆け寄ろうとしたアレクトロだったが、ぐっと堪えた。

 「一切構うな」と言われているからである。

 

 彼が言うのだから本当にそう思っているはずで、あれほど念を押すのだから、本当にそうして欲しいはずなのだ。だからそれを破ったとあらば、二度と【クエスト】に同行して貰えない可能性だってある。

 二言は無い。彼はそういう人物なのだから。

 

 それでも気になって闘いながらチラチラと見ていたアレクトロは、立ち上がった彼の状態が、あまりに酷いのが分かって愕然とした。

 左脇腹から右肩にかけて、斜めに切り裂かれたようになっていたからである。

 しかし、大量の血を滴らせながらも、彼は回復しようともしていない。

 

 回復系なら充分に余裕があるはずだ。今までほぼ無傷で闘っていたんだから。

 てか、俺なら吹っ飛ばされた時点でとっくに気絶してるだろう。なのになぜ立っていられる!?

 アレクトロがそう思っていると、勝ち誇ったように【覇竜】が吠えた。

 

 まずい! オッサンがやられちまう!!

慌てて攻撃を加えようとすると――。

 

「……。これで、勝ったつもりか?」

 ベナトールの低く、静かに放たれた声が聞こえ、次の瞬間がらりと空気が変わった。

 

 

 彼の体全体が威圧感を増し、何倍も大きくなったように見える。

 まるで、猛る【覇竜】がもう一頭現れたかのような、圧倒的な迫力が迫って来る。

 彼は何もせずにただ立っているだけなのに、体全体から禍々しい闇が湧き上がり、それが【覇竜】を覆い、そのまま呑んでしまいそうな雰囲気がある。

 

 つまり、彼は【殺気】を【覇竜】に向けて放ったのだ。

 

 その迫力に怖気付いたのか、こちらの【覇竜】がたじたじと下がった。

 が、それを打ち消すように吠え、真っ直ぐに向かって行った。

「オッサ――!!」

 声を掛けようとしたアレクトロは、彼が避けずにそのまま溜めたのを見て無茶だと思った。

 だが彼が再び牙に掛かる寸前で叩き付けると、相手が昏倒した。

「す、すげぇ……!」

 感慨の声を漏らすアレクトロ。あんな状態でも突進を止める力があるのかよと戦慄さえ覚える。

 しかも、その大きな隙に回復もせずに攻撃を続けているのだ。死ぬ気かよと彼は思った。

 何度も血を吐いている様を見て、気が気でないアレクトロ。しかし「構うな」と言われている以上、代わりに回復してやる事も出来ない。

 というか、それを許して貰えない雰囲気がある。

 

 傷が深いのかおびただしい出血が続いており、黒い溶岩の地にビシャビシャと音を立てる程鮮血が吹き出し、流れていく。

 苦しそうな荒い息遣いが、先程からずっと続いている。

 なのに、回復しないのに弱るどころかその動きは少しも鈍っていなく、まるで血によって覚醒したかのように、更に激しい攻撃になってすらいる。

 

 ――狂戦士――。

 

 アレクトロは、その言葉を思い浮かべた。

 その闘いぶりは常軌を逸しており、本当に二頭の【覇竜】が血みどろの闘いを繰り広げているようにしか見えなかった。

「これか、オッサンの実力なのか……!」

 アレクトロは、感動すら覚えながらそう言った。

 

 

 結局、相手が倒れ伏すまで彼は一度も回復しなかった。

 が、やはりきつかったと見えて、喘ぎつつ【秘薬】を飲んでいる。 

 

「……。大丈夫だったか?」

 少しして深く息を付いたベナトールは、そう聞いた。

「まあなんとかな。――とか言ってる場合じゃねぇよ! 死ぬ気かよオッサン!!」

 思い切り突っ込むアレクトロに、「はは、ちと不覚だったが、楽しかったよ」と彼は言った。

 

「……。これ程常軌を逸してるとは思わんかったぜ……」

「……。俺が、怖くなったか?」

「いいや、もう慣れたよ。あんたの【殺気】の凄まじさはもう知ってるしな。むしろ感動した」

「こんなもんで感動してくれちゃ困るぞ、真似なんぞしてくれるなよ?」

「あんなもん、真似したくても到底出来やしねぇよ」

「なら安心だな」

 それを聞いて吹き出すアレクトロ。それから次のように言った。

 

「なぁオッサン、言い付け守ったんだから、これからも同行してくれよな?」

 

 今度はその可愛さにベナトールが吹き出して、「無論だ。俺からも頼むぜ」と言った。

 

 ハナにやるように頭をポンポンされたアレクトロは、真っ赤になって「やめろよ!」と手を払いのけた。

「褒美だよ」

 兜の下で真っ赤になっているのを知っているベナトールは、そう言って優しく笑った。

 その雰囲気を察したアレクトロは、彼が分かると知りつつ照れ隠しにむくれて見せた。  

 

【挿絵表示】

 




これを書きながら、私はアレクトロの可愛さに図らずも萌えました。
てか、これ程素直に最後まで「言い付けを守る」とは思わなかったです。
アレク可愛いよアレク(爆)

挿絵撮影では「ベナトール(パートナー)」がずっと頭に張り付いて攻撃してくれなかったので、中々スタンさせてくれなくて困りました。
もうちょっとしっかりしろよAI(-"-)

彼が吹っ飛ばされるシーンは、「アカムトルム」の唾液が付いて鎧から煙が上がっております。
重酸性なので、鎧が溶けて(防御力が下がって)しまったようです。
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