今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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新人のハンターで「モノブロス」などの一人でしか狩れない「モンスター」がいる事を知らない者が、「モノブロス手伝ってください!」「ナナ狩り募集!」などと(その場チャットなどで)声高に叫んでいる事が(特に初期段階のフロンティアでは)あったそうです。
(私はそれに居合わせた事がなかったのですが)

大抵は無視されるか失笑されているかだったらしいのですが、こうやって親切に教えて下さるハンターもいたそうです。



怖い顔の女の子

 

 

 

 ある日【武具工房】にいたハナは、入って来た女ハンターが親方に差し出した、素材の一つにくぎ付けになった。

 【モンスター】の甲殻のようなのだが、青く輝く中に紫を秘めたような、不思議な色をしていたからである。

「わぁ綺麗っ♪」

 思わずそう言ったハナに気が付いた女ハンターは、にこやかに微笑むと次のように言った。

 

「これは【炎妃龍の甲殻】ですわ」

 

「エンキリュウ?」

「【ナナ=テスカトリ】。雄である【テオ=テスカトル】のお嫁さんにあたる【古龍】になるのかな?」

「女の子なの?」

「そうなりますね」

「ありがとう。後でベナと狩りに行こっと♪」

 

 それを聞いて、彼女は苦笑した。

 

「【炎妃龍】は、独りでないと狩れませんよ?」

「えぇっ!? そうなのぉ!?」

「はい。ギルドではそう指定されています。なんでも雄と比べて数が少なく、【モノブロス】のように警戒心が強いからなんだとか」

「そうなんだぁ……」

 

 彼女が出て行った後も工房で一人悩んでいるハナを見て、親方は苦笑しつつ、「どうしても素材が欲しけりゃ頑張るんだな」と言った。

「そうよねぇ、頑張るしかないか!」

 ハナは、【炎妃龍】に挑む事を決意した。

 

 ベナトールに話してもどうしようもないし、変に心配されても困るので、彼が仕事に出かけている間に挑戦してみる事に。

 親方が言うには「〈地形ダメージ減(大)〉のスキルがあった方が良い」との事だったのだがそんなスキルの付いた防具があるはずもなく、とにかく回復系の調合分をたっぷり持って行けばなんとかなるだろうと思った。

 

 

 【塔】にいるとの事だったのでその依頼を受け、探してみる。

 【彼女】は《5》にいた。

 素材と同じ、青に紫が入ったような、不思議な体色。

 獅子によく似た体付きに皮膜のある翼を生やしたような姿。

 だが頭には冠のような、変わった形の角がある。

 

 というか――。

 

「あんた女の子でしょお!?  顔が怖過ぎぃっ!」

 そのしかめつらしい顔は、なんとも強面なのである。

 それを気にしてか、言われた途端にこちらを向いて【彼女】は吠えた。

 

「――っ!?」

 予備動作無しの突進。

 

 どうにかガードでやり過ごし、隙を見て横から飛び掛かりつつ切り込み、回避。

 が、近付くと熱風が身を炙る。

「あっついわねぇ!」

 これが【龍炎】なのだなとハナは思った。

 徐々に体力が消耗していくため、他の【モンスター】と闘う時よりどうしても回復系の消費が多くなる。

 独りで闘う分被弾も多く、出来れば温存したかったのだが、どうしようもなかった。

 

 麻痺っている間になるべく手数を多くし、ダメージを稼ぐ。

 角を折ろうと頭を中心に攻撃していると、倒れてもがいた。

 横になったら【片手剣】でも翼に届く事に気が付いたハナは、倒れた時は翼を狙うようにした。

 

 やっかいなのは粉塵爆発で、遠くを囲むように爆発する分には密着していると当たらなかったのだが、至近距離で爆発する事もあるため、それが怖かった。

 これは、実は周囲に撒く際の粉塵の色で爆発の範囲が分かるのだが、そんな知恵はハナには無いので粉塵が見えたらとにかく急いで武器を仕舞って、遠くに逃げるか緊急回避で爆発を避けた。

 

 

 何度かやっている内に怒り出す。

 そうすると攻撃力もスピードも格段に増える。

 突進の予備動作が無いのもあって、巻き込まれては遠くに飛ばされたりした。

 

 【彼女】から遠のくと、遠くまで届くブレスが来る。

 だがそれよりもしっかりと追尾して来る突進の方が怖かった。

 逃げようと離れれば離れる程、逆に追尾されるようなのである。

 

 ならばと恐怖を無理矢理抑え込み、ハナは【彼女】から離れて突進が来た場合は、逃げるのではなく近付くようにして避けた。

 被弾して遠くに飛ばされない限りは、逆に近くにいる方が(かなり怖いけど)安全だと分かった。

 

 が、問題はいつ回復するか、である。

 近くにいるという事はそれだけ攻撃を誘うという事であるので、その分回復する隙が少なくなる。

 だが離れてしまうと追尾突進や飛び掛かりが怖いため、やはり近付いておいた方が良い。

 

 なので、本来なら攻撃チャンスであるはずの、ブレスの最中、遠くの粉塵爆発などに回復するしかない。

 しかし粉塵爆発はハナの場合は全部逃げているため、ブレスの時か、あるいは涙を呑んで頭を攻撃して倒れている最中などに回復するしかなかった。

 

 

「多分もう少しのはず……」

 少しも弱った素振りを見せない【彼女】に、焦りの色を隠せないハナ。

 【龍炎】のせいで余分に回復せざるを得ないので、回復系が底をつきはじめている。

「お願い、早く倒れて……」

 息が上がり、的確な攻撃が出来にくくなった。

 

 そんな中、やけっぱちで切り付けた回転切りが横腹に当たり、【彼女】は苦し気に吠えた。

 

「いけるかも!」

 もう一押し! と同じ所を更に深く切り付けると血を吐き、堪らずに倒れてもがいた。

 苦し気な様子に今更のように躊躇したが、心を鬼にして連続で切り付ける。

 

 【彼女】はよろよろと立ち上がるとこちらに向き直り、四肢を踏ん張って威厳を示すかのように吠えた。

 思わず怖気付くハナ。

 そんな彼女を荒い息遣いで静かに見詰めてから、ゆっくりと倒れて動かなくなった。

 

「やった、のね……?」

 ハナはぜぇぜぇと息を切らせながら座り込んだ。

 

 【彼女】の見開いたままの目には、もう光が宿っていない。

 

 ハナは剥ぎ取ると、返り血を全身に浴びた状態のまま、ふらふらと帰って行った。

 独りで【クエスト成功】させた喜びよりも、悲しみの方が深かった。

 

 




ハナちゃん一人で出来るもんっ! の巻(笑)

彼女は上位ハンターでありながら、基本的に下位か「誰か」としかクエに行きませんのでこうやって独りで狩る事は超珍しいのです。


今回挿絵を撮影しようとログインしたんですが、今のクエストは何故か無料枠には「塔」でのナナクエがありませんでしたので、仕方なく挿絵無しにいたしました。
狩場だけ他のフィールドに書き換えようかとも思ったんですが、個人的に「ナナ」と言えば「塔」にいるイメージが強いため、文中の狩場も変えない事にしました。
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