今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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「朝ご飯はココット村で」でアレクトロが「火事場飯を食べる」という話をしたので、それを基に思い付いて書いたものです。
ただし、この話に出て来る「逆襲グラビモス」を始めとした通称「逆襲シリーズ」と呼ばれていたクエストは、今のフロンティアZでは廃止になっております。


逆襲競争

 

 

 

 【メゼポルタ広場】に行き交うハンター達の往来を、何とはなしに眺めていたベナトールは、その中の一人が見覚えのある事に気が付き、近付いた。

 

 遠くから近付いて来た大男に気が付いたアレクトロは一応立ち止まったが、会いたくない奴に会ってしまったという顔をしている。

「よお、お前、【街】に来ていたのか?」

「なんだよオッサン、なんか用かよ?」

「そう嫌な顔をするな。【ココット村】での約束を、守ってもらおうと思ってな」

「俺は約束した覚えなんぞねぇ」

「ほら、【火事場】で【クエスト】を――」

「断る」

 アレクトロは、最後まで言わせずに突っぱねた。

「やはり【クエスト成功】させる自信が無いか?」

「なんだと?」

「いやな、少し見てみたかったんだよ。お前が【火事場】でどんな狩猟をするのかをな」

 

 〈火事場+2(体力40%以下で攻撃力が1.5倍になり、防御力も上昇する)〉のスキルを使いこなせるハンター自体が珍しく、ベナトールも失敗する事があるため、【ココット村】で『【火事場飯】を食う』と言っていたアレクトロに、少し興味があったのだ。

「人に見せられるようなもんじゃねぇよ。……それに、オッサンと行ったとして、あんたと一緒に巻き込まれて死ぬのはごめんだからな」

「ならこうしよう」

 ベナトールは提案した。

「ほれ、【沼地】に【グラビモス】が二頭同時に来る事があるだろう? その依頼があった時に、それぞれ一頭ずつを担当して狩る。というのはどうだ? それなら各自で集中出来るし、お互いの狩猟も見る機会が出来るのではないか?」

「面白ぇ。ならそいつを受けて、どっちが早く討伐出来るか競争しようじゃねぇか」

「おぉそりゃ良いな。受けて立とうじゃねぇか、チビ助」

「後で吠え面かくなよ? デカマッチョ」

 二人は拳を突き合わせてニッと笑った。

 

 

 【グラビモス】が二頭同時に現れる【クエスト】は、その脅威さ故に【グラビモスの逆襲】と呼ばれている。

 なぜなら上位【グラビモス】を一頭相手にするだけでもかなり難易度が高いのに、それが二頭同時に同じエリアで入り乱れる事があるからである。

 その【クエスト】を【火事場】でこなそうというのだから、この二人は尋常じゃない。

 人が聞けば、当然のように「死にに行くようなもんだ」と言うだろう。

 カイが聞こうものなら顔色を変えて反対されるのが分かり切っているので、アレクトロは彼には黙って置く事にした。

 

 さて。

 普段は【剣士】装備の二人だったが、珍しく【ガンナー】装備で落ち合った。

 なぜならこの【クエスト】では【グラビモス】が相手なため、【火事場】で狩猟するにしても【弓】の方がやりやすいからである。

 【火山】では相手が溶岩の中に入られたり地形が邪魔で近付けなかったりすると飛距離が足りずに使えなくなってしまう【弓】だが、【沼地】では溶岩や地形に阻まれずに【グラビモス】に近付けるため、本領を発揮出来るのだ。

 

 「どうせ同じ飯を食うなら」という事で、二人で並んで食事をする事にしたのだが……。

「うぐっ!」

「ぐえっ!」

 二人でそんな声を出しながら、大の男(といってもアレクトロは平均身長ぐらいなので大きくはないのだが)二人が同時に腹を押さえて悶絶しつつ倒れ込む。

 その様は、傍から見れば実にシュールだった。

 多少の腹の痛みは瘦せ我慢で乗り越えつつ、【クエスト受付】へ。

 ベナトールが受け、夜の【沼地】へ。

 上位クエなので到着がバラバラになり、《5》から始まったアレクトロは【強撃ビン】を付けつつ一頭がいる《4》のエリアへ。

 ベナトールは《8》から始まったので、そのまま【強撃ビン】を付けてそこにいる一頭へ。

 さあ戦闘開始である。

 

 

 二人は【グラビモス】が【水属性】に弱いのを知っているため、【オオバサミⅥ】を使っている。

 そのため【グラビモス】に矢が当たるたびに、バシャバシャと水滴が跳ね返っていた。

 突進を誘発させてしまうとその分時間の無駄になり、ブレスを避けにくくもなるのだが、アレクトロはどうしても突進させてしまっている。

 ベナトールは、突進は抑えてはいるものの、《8》に定期的に湧く【ガブラス】の群れに少々手を焼いていた。

 一方アレクトロの方も、一匹の【ガブラス】と、【ランゴスタ】に手を焼かされていた。

(もっともこちらの方は、一度倒すと現れなくはなるのだが) 

 それでも二人共に順調に攻撃を加えていき、まずアレクトロが、続いてベナトールが第一段階の腹破壊を終了する。

 五分程経った頃にアレクトロが第二段階の腹破壊を終了。と思った矢先、アレクトロのすぐ脇を、背後からグラビームが通過した。

「連れて来んじゃねぇよ! オッサン!!」

 振り返らずとも分かるので、彼は自分が担当している相手に集中したまま叫んだ。

「んな事言ってもよ、移動しちまうもんは仕方ねぇだろが!」

 背中を向けたまま攻撃を続けているアレクトロに、叫び返すベナトール。

 そう。なぜか五分ぐらい経つと移動して合流してまうのである。

 

【挿絵表示】

 

 ベナトールが完全腹破壊を済ませているのを目の端で確認したアレクトロは、「勝負は互角。いや向こうが先か……」とつぶやいた。

 なぜなら彼が完全破壊を成し遂げた直後に合流されたという事は、向こうは既に破壊が終っている事を証明しているからである。

 

 合流する少しの間だけ、お互いの闘いぶりを見る事が出来る。

 アレクトロは攻撃を続けながらチラチラとベナトールの攻撃を見て、「そうか。もっと胸側で良いのか」とつぶやいた。

 弱点攻撃をするなら【腹】に攻撃を集中させれば良いと思っていたのだが、それよりもむしろ【胸】辺りを狙って腹部に貫通させる感じで良いようなのだ。

 自分の攻撃を見て修正したアレクトロを見たベナトールは、密かに口の端を持ち上げた。

 お互いの攻撃を見れるのは良いのだが、二頭が狭いエリアを入り乱れる事になるため、短い時間だとしてもアレクトロにはかなりきつかった。

 案の定、背後から放たれた薙ぎ払いブレスを避け切れず――!

 

「お……! オッサン!?」

 振り返ったアレクトロが見たものは、丁度覆い被さるようにして立ち塞がっている、ベナトールの姿。

 当然、全身が黒焦げになっている。

 いかに打たれ強いハンターであるとしても、【ガンナー】用の防具は【剣士】よりも防御率が低いのだ。

 尚且つ今回はわざと【火事場飯】を食らい、自分の体力を40%以下にしている。

 そんな状態で上位【グラビモス】の、しかも怒り時のブレスをまともに食らったら、どうなるかアレクトロでも簡単に想像出来る。

「……無念……!」

 ベナトールは苦し気につぶやくと、ゆっくり倒れた。

「オッサン! おいオッサン!!」

 意識が無いと分かっていながら、アレクトロは呼びかける。

 が、二頭がまだいるのを思い出し、【閃光玉】を投げてから彼を担ぎ上げ、丁度隣のエリアだった【キャンプ地】まで逃げた。

 

 

「重てぇなオイ!」

 半ば投げ出すようにしてテント内の簡易ベッドに寝かせたアレクトロは、状態を見るべくベナトールの防具を引っぺがした。

 やはり覆い被さっていたからか、背中の火傷が一番酷く、肉まで焦げている。

 【生命の粉塵】をかけてみるも、僅かに皮膚が再生した程度。

 ならばと【秘薬】を混ぜてみると、これなら良さそうだったため、【生命の粉塵】やら【回復薬グレート】やらに混ぜて火傷全部にそれを掛け、布でぐるぐる巻きにした。

 火傷の範囲があまりにも広かったために、持って来ていた【秘薬】及び回復アイテムが全部無くなってしまったが、今回はもう飲む事はねぇしなとアレクトロは思い直した。

 

 【クエストリタイア】を選ぼうとしていると、ベナトールが呻いた。

 どうやらもう意識を取り戻したようである。

「よぉ、しぶといなオッサン」

 わざとそう言ってやる。

「……お前は、無事……なのか?」 

「あぁ、おかげ様でな」

「……そうか……」

「別に助けてくれなくても良かったんだぜ? そこまでの義理はねぇんだし」

「……が、悲しむ、んでな……」  

「誰が悲しむって?」

「……お前が……。お前に、何かあったら……、カイが、悲しむんでな……」

 【キャップ】から覗いたその目を見たアレクトロは、なぜか何も言えなくなった。

 

 

 お互いにもう少しで【クエストクリア】という段階ではあったが、アレクトロは【リタイア】を選んだ。

 ベナトールは不服そうだったが、一旦引き返して彼の回復を待ち、仕切り直す。

 今度は運が良かったのか、それとも二人の実力だったのか、合流寸前ぐらいに討伐する事に成功し、お互いに命を脅かされる事なく【クエストクリア】出来た。

 で、結果はというと――。

 

「お前の勝ちだ。アレクトロ」

「いやオッサンの方だろ? どう見ても」

「今回は勝ちを譲ってやるよ。俺はブレスを食らっちまったしな」

 わざと頭を掻いて見せるベナトールに、「ならそういう事にしといてやるよ」と、こちらもわざとふんぞり返って見せる。

 フッと笑ったベナトールに対し、アレクトロは照れ臭そうにした。

「楽しかったぜ、オッサン」

「こっちも楽しめたぜ、アレクトロ」

 アレクトロはいつの間にか自分を名前で呼んでくれているのに気が付いて、「アレクでいいよ」と言った。

「また、誘って良いか? アレク」

「あぁ。……でも今度は出来れば【火事場】無しで頼む」

 それを聞いて、愉快そうに笑うベナトール。

 それを見ていた周りの者は、「お、おい【ベナトール】が笑ってるぞ!?」「もももしかして、天変地異の前触れか!?」などと囁き合った。  




「火事場」状態で上位グラの薙ぎ払いブレスなんぞ浴びたら、普通は消し炭すら残らないと思うんですがね(笑)

挿絵のキャラ名が違うのは、フロンティアZで使っているキャラ名の中に「アレクトロ」がいないためです。
ですが顔パターンや髪などはアレクトロ型を使っているので、「パートナー」のベナトールと一緒に二人クエでの再現が出来ます。
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