今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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何だかんだ言いつつも付き合ってやるあたり、こいつは意外にも世話好きなのかもしれません(笑)


見え猿

 

 

 

「寒い寒い寒い! 死んじゃうよぉ」

「うるせぇなさっきから! 【ホットドリンク】飲んでるだろうが!」

「飲んでても寒いものは寒いのっ!」

「【七色たんぽぽ】が欲しいっつったのおめぇだろうが! ちったぁ我慢しやがれ!」

「だってぇ、【雪山】にあるなんて思わなかったんだもん~~」

「【火山】の方が良かったか?」

「ヤダ。あっち【グラビモス】いるし」

「いや別に必ずいるとは――」

「汗だくになるじゃん」

「なったら鎧を脱げば――うごっ!?」

 

 肘鉄を食らわせるハナ。

 

「何考えてんのよっ、えっちぃ!」

「馬鹿かおめぇは! 誰も全部脱げとは言ってねぇだろうがっ!」

「今変な想像したでしょ!?」

「してねぇよっ!!」

 

 アレクトロは、やっぱ付き合ってやるんじゃなかったぜと少し後悔した。

 一人でいる時にハナに捕まったアレクトロは、【七色たんぽぽ】が採れる場所の案内を無理矢理頼まれたのだった。

 

 

 《8》の採取場所を案内していた時の事。

 ハナが採取しているのをやや離れた場所で暇そうに見ていたアレクトロは、ふいに何かの気配がしたのに気付いて身構えた。

 

 その途端、足元の凍り付いた地面が割れ、彼を吹っ飛ばしつつ飛び出したものがいた。

 初めから彼を狙っていたらしく、そのまま放り出されたアレクトロに襲い掛かる。

 

「くうっ!!」

 彼は上半身を起こしつつ背から【大剣】を外し、左手を添えながらそのまま刀身を横にした。

 ギリギリでガードが間に合ったが、物凄い衝撃でビリビリと手が痺れる。

 

 目の前には白い毛の壁があった。

 相手は飛び退って対峙し、唸る。

 筋肉質の白い体と、頬に派手な色彩の入る赤ら顔。

 発達した長い犬歯を持つ猿である。

 

 あちゃ、こいつの縄張りに入っちまったか……。

 

 吠える相手を見ながら、アレクトロは苦々しく思った。

 【雪獅子】と呼ばれる【牙獣種】、【ドドブランゴ】である。

「何コイツ!? いきなり出て来て吠えてんじゃないわよぉっ!」

 

 驚いたハナが素っ頓狂な声を上げている。

 当然のように気付かれて、顔を向けられる。

 

「きゃあっ!? こっち見ないでよぉっ!」

 そう言ったが通じる相手ではない。

 離れていたせいなのか、相手はいきなり地面に手を突っ込むと、大きな凍った塊を引き剥がしてハナに放り投げて来た。

「ちょ!? ちょっと! やめてよねっ!」

 慌てつつも緊急回避したハナ。

 

 相手はそれを追い掛けるように飛び付いて行き――!

 

 が、ハナには届かなかった。

 アレクトロが切り付けたからである。

 裂傷から火の粉が爆ぜ、悲鳴と共に転がる。

 【雪山】の【モンスター】が【火属性】に弱いものが多い事を知っている彼は、【煌剣リオレウス】を装備していたのだ。  

 

【挿絵表示】

 

 忌々しそうに唸りながらアレクトロに向き直る。

 発達した犬歯を見せ付けるように剥き出すと、次の瞬間飛び掛かって来た。

 

 既の所で躱すアレクトロ。

 勢い余ってつんのめった相手に追い打ちをかけようとしたが、その場で短く飛んで体勢を整え、バックジャンプされた事で尻で吹っ飛ばされた。

「いってぇな! ケツで飛ばすんじゃねぇよ!」

 隙を見てハナは【ペイントボール】を付けた。

 裂傷と共に火傷を負わされるのが堪らなくなったのか、相手が体を拭うような仕草を見せた後、逃げた。

 

 【ペイントの実】の匂いを嗅いで探そうとしたが、その匂いがしない。

 

「あれ? さっき【ペイントボール】を付けたばかりなのに?」

 ハナが首をかしげている。

「効果を消されちまったみてぇだな……」

 舌打ちしつつ言うアレクトロ。

「どゆこと?」

 

「【ドドブランゴ】っつうのはな、意外に頭が良くて、【ペイントボール】の効果を知ってる節があるんだわ。――で、その効果を毛繕いする事で消しやがる事があんだよな」

「じゃあ、もうどこに行ったか分かんなくなっちゃったって事?」

「まあ少なくとも、【ペイントの実】の匂いを嗅ぐ事での追跡は出来なくなっちまったって事だ」

 

「そうなのぉ~~!?」

「ま、そんなに遠くには行ってねぇはずだから、その内見付かるんじゃね?」

「そんな悠長な事でいいのぉ?」

「大体目的はあいつじゃなくて【七色たんぽぽ】だろうが。採れたんだろ?」

「まあ、採れたけど……」

「なら無理に狩る必要もねぇ。帰るぞ」

 

 その言葉を聞いたハナは、キョトンとした顔をした。

 

「え? 【モンスター】前にして狩らずに帰るの!?」

「そうだが?」

「あんた、変わってるわね」

「そうか? 多分オッサンでもそうすると思うぜ?」

「何で分かんのよ?」

「生態系を大切にしてるのが分かるからさ。そういう奴は、やたら滅多に目的も無く乱獲したりはしねぇもんだ」

「へぇ、あんたたち意外に優しいとこあるのね」

「ハンターらしくねぇってか?」

「うん」

「むしろ俺らの方がハンターらしいと言えるんだぜ? 自然の仕組みと共に生きてるっつう意味ではな」

 

 だからこそ、それに反した輩を(ただ)すために、オッサンのような【ギルドナイト】が暗躍してるんだからな。

 

 アレクトロは心の中だけでそう言った。

 

  




友人が、「【ドドブランゴ】が良い。ほらオナラしたりしてやたらクサい奴」とお題を出そうとしたので、「それは【ババコンガ】やがなっ!」と思い切り突っ込んでおきました(笑)

ハナ役のキャラにアレクトロを「パートナー」として付けているため、挿絵では彼が攻撃している時に撮影しています。
本当は火属性のエフェクトが出ている瞬間を狙いたかったんですが、上手くいきませんでした。

「煌剣リオレウス」の最終強化は「蒼煌剣リオレウス」で、ここまで強化すれば攻撃力も火属性ももっと上がるのですが、最終強化には「祖龍の堅殻」が必要になるので「煌剣リオレウス」までで止めました。
禁忌の「モンスター」ですし、「彼ら」は御伽話の世界にしか存在しないと思われているためです。
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