今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】 作:沙希斗
【森丘】は、相変わらず良い天気だった。
のんびりとピクニックでもしたいような景色が広がるその中で、能天気な青い空に浮かぶ、蒼い影。
【蒼火竜】と呼ばれる、【リオレウス亜種】である。
それが段々と近付いて来るにつれて、呑気な景色とはまったく不釣り合いな、緊迫した空気にがらりと変わる。
アレクトロは着地点に近付き、影に陣取って、降りて来るタイミングに合わせて溜めた。
〈風圧無効(大)〉のスキルのおかげで舞い降りる際の風圧に煽られずに溜め続け、着地と同時に最大溜めが見事に決まる。
同じように頭付近で溜めていたベナトールの溜めスタンプも頭にジャストヒットし、二人の溜め攻撃で戦闘が開始された。
隙を見てカイが【ペイントボール】でマーキングすると、同じく隙を見たであろうハナが【閃光玉】を投げた。
相手が視界を奪われている間に麻痺が決まり、麻痺っている間にアレクトロの溜め攻撃が炸裂する。
麻痺が解けたと同時にベナトールが昏倒させ、どうやら(特に【リオス科】においては)この流れがパターン化してきている様子。
ただしそれぞれのタイミングが合えば、の話のようだが。
舞い上がった相手がホバリングしたままブレスを吐いているので、そういう時は二人は溜め、それが出来ない二人はブレスに当たらないように逃げるか、風圧の影響が無い所で待機するしかない。
ホバリングブレスの時は待機していればブレスにさえ当たらなければ安全である風圧外だが、毒蹴りの時はいきなり来るので風圧外では危険な場合がある。
案の定次に舞い上がった時、ブレスかと思って待機していたカイが毒蹴りされた。
火竜の雄は足の爪に毒があり、それを利用して二連続で蹴って来るため、空中からの勢いもあって、必ずぴよってしまう。
けっこうなダメージな上に毒りながらぴよるので、蹴られた場所が悪ければ、そのまま気絶してしまう事も。
しかも、ぴよっている間に更に追撃されたりするのでタチが悪い。
カイが慌てて意識をハッキリさせようとしているのに気付いたハナは、〈広域化+2〉を利用して解毒、回復させた。
「ありがとっ」
お礼の声を聞いてカイに笑顔を向けるハナ。
女性用の【リオハート】シリーズには顔全面を覆うような兜が無いので、可愛らしい笑顔が見えて、カイも笑顔で親指を立てた。
カイの兜では顔が見えないので表情は分からない。なのでそれを補って親指を立てたのであるが、ハナには表情が分かっているようで笑って頷いた。
二人が無邪気な(笑)やり取りをしている間に、真面目な二人は溜めを中心とした攻撃を、確実に弱点もしくは部位破壊箇所に叩き込んでいる。
が、簡単に攻撃を避けているベナトールと違い、アレクトロは避け切れずに回転尻尾などに巻き込まれたりしていた。
「おいアレクよ、最大まで溜めようとするな。それで巻き込まれるぐらいなら、溜め途中か溜めずに攻撃した方がずっと良い」
「そうなんだけどよ、やっぱ最大まで溜めたくならねぇ?」
「気持ちは分かるがそれを抑えるのも立ち回りの一つだぞ? 敢えて溜めずにとか、二段階の溜めの状態でわざと攻撃する方が都合上 良いという場合もある。溜めていたがために避けられない事もあるしな」
「そこがオッサンとの違いなんだよなぁ……」
「……。次に来る攻撃を、見極める目を養わなければ食らい損になるだけだ。――まあ最も、それを知るまでに俺は何度も死にかけたがな」
「オッサンが死にかけたんなら、俺はどんだけ命あっても足りねぇや」
「安心しろ、お前は死なんよ。お前程しぶてぇ奴は、俺は見た事ねぇからな」
「俺はゾンビかよ……」
お前は死なせんよ、アレク。
無論、他の奴らもな。
ぼやくアレクトロを見ながら、心の中だけで語り掛けるベナトールであった。
これを読んだ友人は、「なんだかベナトールがみんなの教官みたいだね」と言ってました(笑)