今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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こいつと対峙した時は、「見えないのにどうやって攻撃するんだ?」とか思ったもんです。
特に部位破壊に苦労してます今も。


その霞、毒を孕みて

   

 

 

 

 その日は、のんびり採取でもして帰るつもりだった。

 夜だから【光蟲】でも捕れるかな~などと思いながら【沼地】の《8》で【虫網グレート】を振るっていたカイを暇そうに見ていたアレクトロは、何かの気配に気が付いた。

 

 が、周りを見回しても、何もいない。

 

 いや【ランゴスタ】がうるさく飛び交っていたので「何もいない」というのは嘘になるのだが、感じられた気配は間違いなく大型【モンスター】のものだったので、アレクトロにとっては「何もいない」と感じられたという訳である。

 

「――カイ」

「なに?」

「何かいる。気を付けろ」

 

 注意を促されたカイは不安げに周りを見回したが、「(ランゴスタ以外は)何もいないよ?」と不思議そうに言った。

「いや、ぜってぇ何かいる。見えねぇがな」

 油断無く身構えて見回しているアレクトロを見て、「変なの?」と首を傾げるカイ。

 

 クルル……。

 

 その時、微かに何かの声がした。

 そう思うや否や、アレクトロがいきなり吹っ飛ばされた。

 

【挿絵表示】

 

 カイから見れば、何も無い所で見えない何かに吹っ飛ばされたように見え、アレクトロから見れば、いきなり何も無い所で衝撃を受けて吹っ飛ばされたように感じた。

「うがっ!? な、なんだ!?」

 背の高い枯草から這い出るように立ち上がったアレクトロ。

 

 が、やはり何も見えない。

 見えないが、確かに何かの声と、息遣いが聞こえる。

 

 こいつ、もしかして……。

 

 そう考えながらそいつがいると思われる方向を攻撃してみたアレクトロは、確かな手応えと悲鳴と共に血飛沫が上がった事で確信した。

「【オオナズチ】だ!」

「えぇ!? 見えないじゃん」

「見えねぇから【オオナズチ】なんだよ馬鹿。こうなりゃ気配だけで攻撃するしかねぇ」

 

 そう言われて取り敢えず、アレクトロが攻撃した方向に切り付けてみたカイだが、切れたのは空気だけだった。

 

「見て切ろうとすんな、どうせ見えねんだから。感じて切れ!」

「そんな無茶苦茶なぁ……」

「んな事言っても見えねんだからそうするしかねぇだろが!」

 アレクトロも空気を切り裂きつつ、なるべくその方向を攻撃しようとしていた。

 

 一瞬、伸びる舌が見えたと思ったら、叩き飛ばされたと同時に【秘薬】が無くなった。

 

【挿絵表示】

 

「ちと待てやオイ! よりによって【秘薬】盗むこたねぇだろ!?」

 アレクトロは焦った。

 

 【オオナズチ】はなぜか、回復系を好んで盗もうとする性質があるのだ。

 

 だが、一瞬だが舌が見えた事である程度場所が分かったので、その場所を中心に攻撃していく。

 

 と、今度は一瞬姿全体が見えたと思ったと同時にその場で飛び上がったのが見え、真下に向けて紫色のガスを出したのが分かった。

 近接している二人は、当然のように吸い込んでしまう。

 

【挿絵表示】

 

「……は……っ、カイ……。は……やく、解毒……しろ……っ」

 苦しみながら、アレクトロはまず、自分よりカイの方を心配した。

 

 【オオナズチ】の毒は猛毒なのだ。

 

 喘ぎつつ隙を見て【漢方薬】を飲んだアレクトロは、カイが同じように回復した様子を目の端で見てホッと息を吐いた。

 

 が、相手はそれだけでは許してくれず、近付いていると何度も毒ガスを出して来る。

 かと言って離れていては攻撃出来ないので、 毒に冒される事を覚悟して攻撃を続けるしかなかった。

 だが見えないがために、相手がその場から移動したのが分からずに攻撃を続けようとして、離れた所から舌で叩かれて回復系を盗まれたりした。

 

 いや、()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

 確かにダメージと共に回復系が無くなるのはやっかいなのだが、もっとえげつないのはブレスの方なのである。

 痰を出すかのように黄色味がかった液体を吐き掛けるものと、文字通り息のように黄色味がかったガス状のものを吐き掛けるものがあるのだが、そのどちらも同じ効果を持つ。

 

 つまり――。

 

「……っ!? ……!!」

 その犠牲になったアレクトロは、ごっそりスタミナを削られた挙句、ものが言えなくなった。

 

【挿絵表示】

 

 スタミナの方は【こんがり肉】やら【元気ドリンコ】やらの、スタミナ回復系アイテムを摂取すればその場で回復出来るのだが、【声帯麻痺毒】と言われるこの【古龍】特有の毒ブレスは、しばらくの間声帯をやられて何も言えなくなる効果がある。

 〈声帯麻痺毒無効〉という特殊なスキルを身に付ければそれを無効化する事が可能だが、今の所この毒を使うのはこの【オオナズチ】のみだし、当たらなければ冒される事もないため、他の貴重なスキル枠を削ってまでわざわざ付けるハンターはそれ程いないだろう。

 

「……!」

「アレク? 苦しいのか?」

 アレクトロが喉を押さえているのに気が付いたカイは、心配そうに聞いた。

 

 が、返事が無い彼を見て、余計に心配になった。

 

「一旦戻ろうか?」

「……!!」

聞こうとしたカイは、黙ったまま押し退けられたと同時にガードしようとして吹っ飛ばされた彼を見て、慌てて駆け寄った。

 

「……がはっ!!」

 起き上がろうとして血を吐くアレクトロ。

 肺かどこかをやられたらしい。

 

 が、【モドリ玉】を出そうとするカイを押し止め、【回復薬グレート】を飲んだ。

「一旦戻った方が良いんじゃないのか?」

 

 もう一度聞いたが、彼は黙ったまま。

 苦しそうなのは明らかなのだが、答えない。

 

「何か言ってくれよ! 分かんないだろおっ!?」

 思わず叫んでしまったが、それでも彼は答えてくれなかった。

 それによってなおも不安が高まったカイだったが、何も言ってくれない以上こちらとしてもどうしようもないので、様子を見つつ攻撃に参加する。

 立ち回りはそれ程変わっていないように見えるのだが、荒い息遣いだけがずっと続き、一言も声を発さないのが余計に不安を煽る。

 もしかして口も利きたくない程嫌われてしまったのだろうかと、そちらの方の絶望感に苛まれた頃、彼はようやく口を開いた。

 

「いってぇんだよクソがあぁ!!!」

 

 その前に攻撃を食らっていたのか、第一発声がこれである。

「てめぇ! よくも声帯冒しやがったな畜生! 麻痺して声出なかっただろうがぁっ!!」

 今まで声が出なかった分をぶつけるかのように、叫びつつ攻撃をし続けている。

 

 それでようやく今まで何も答えてくれなかった事を理解したカイは、内心で心から安堵しつつ、「アレク、叫び過ぎたら喉潰れるよ?」と笑った。

 

「お、そりゃ困るな」

 そう言うと叫ぶのを止め、「カイすまんかったな。答えられなくてよ」と言ってくれた。

 

 良かった。いつものアレクだ……。

 

 戦闘中なので抱き付きたくなるのを堪えたカイは、討伐成功してから思い切り抱き付いて、即引き剥がされたのであった。

      




「2(ドス)」時代に知り合ったゲーム仲間と共に「スカイプ」で喋りながら「オオナズチ」を狩っていた時、「ブレス食らったら声出すの禁止」という決まりを設けて遊んでました。

その時に食らった仲間の一人の、声帯が復活した第一声が「いってぇなクソが」だったのです(笑)
憎しみを込めたような低い声がヘッドセットの耳元で聞こえたもんだから、「第一声がそれかいっwww」と大笑いしましたよ。

今覚えば私にとって、「2(ドス)」時代が一番楽しかった気がするなぁ……(遠い目)
「フロンティア」も楽しいっちゃ楽しいんですがね。
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