今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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これは友人から「フルフル」のお題を貰って書いたものです。
「フルフル」はホラー風が合うだろうと思って、それを目指したものです。 


薄暗闇にほのかに浮かぶ白

   

 

 

「毒沼、気を付けろよ?」

「うん。分かってる」 

 【クエスト】依頼を夜の【沼地】で受けた二人は、陰気な雰囲気の湿地帯を、毒沼を避けながら駆けていた。

 昼と違って雨が降ってない代わりに、地面に至る所に生えている【毒テングダケ】の成分なのか、それとも毒を含んだ微生物のせいなのか、この辺りはあちこちから毒を含んだ水が湧き出して毒沼を形成している。

 昼には大抵ずっと降り続いている雨で流されるので、この辺りを走っていても毒に冒される事はまずないが、夜にうっかり踏み込むと毒が回ってしまうため、気を付けないといけない。

 雨がうっとうしいのが嫌で夜に依頼を受けたアレクトロは、こっちもこっちで嫌だなと思っていた。

 

 道々で【ゲネポス】とか【イーオス】とかを狩って素材を剥ぎ取りつつ、ついでに豊富に生えている【キノコ】類を採取しつつ、地図でいう《3》に入る。

 そこからは《9》《7》へと続く長い洞窟になっていて、昼でも体感気温がぐっと下がるエリアである。

「さっびぃ~~~!」

 アレクトロは入り口付近で震えながらポーチから【ホットドリンク】を出してあおった。

 【雪山】や夜の【砂漠】なんかでもそうなのだが、【ホットドリンク】が無いと寒さでスタミナがどんどん減っていくからだ。

「アレク、ごめん【ホットドリンク】忘れた……」

 すまなそうに言うカイ。

「ったくおめぇは! いっつもそれだな」

 アレクトロは苦笑いしながら自分の分の【ホットドリンク】を半分渡した。

 カイは〈忘れ物(特大)〉のスキルでも付いてるのではないかと思うほどしょっちゅう何かは忘れる奴なので、アレクトロは気にしていない。

 ゆっくり進みながら、見回したり耳を澄ませたりした二人は、「ここはいねぇみてぇだな」とか言いながら次のエリアに進む。

 目当てのモンスターは洞窟のどこかに潜んでいるはずなのだが……。

 

 《9》に入って少し進み、耳を澄ませていたアレクトロは、「アレク、あそこ……」と気味悪そうにカイが言うのを聞いた。

「――ん?」

 彼が指さす方向を見ると、薄暗闇の天井に張り付いて、蠢いているものがいた。

 そいつはぺたぺたと天井をこちらに這って来て、首だけ下げて匂いを嗅ぐ仕草をした。

 そして吸盤状の尻尾だけで逆さにぶら下がった後、ゆっくり落ちるように地面に降り立った。

 薄暗闇の洞窟内に、ほのかに浮かぶ白。

 ぬめぬめとした質感の体を持つ、どことなく雄の生殖器を連想させるような姿。

 そいつはまるで頭を切り落とされたかのような首を持ち上げると、その断面を見せるように、肉色の口を開けた。

 

 ヴォエェ~~~!!!

 

 なんとも表現し難い声を使って大音量で吠える相手に、〈高級耳栓〉スキルを付けてなかったカイが、隣で思い切り耳を塞いだのが見えた。

 用意周到にそのスキルを付けているアレクトロは、とっくに近接して【溜め】の姿勢に入っている。

「ったく、なんでこんな気色悪い【飛竜種】に、【フルフル】なんて可愛らしい名前を付けたんだろうな」

 最大溜めをお見舞いしてから、アレクトロがぼやいた。

 

 そう。今度の狩猟目標は【フルフル】という飛竜種モンスターなのだ。

 

 遅れを取ったカイはいつものように【麻痺属性】の【太刀】で攻撃していたが、麻痺時間があまりにも短いので少しばかり焦っている。

 当たり前のように弱点属性である【火属性】の【大剣】を持って来ていたアレクトロは、攻撃するたびにボンボンと派手に火の粉を撒き散らせている。

 

 と、怒った【フルフル】が尾先にある吸盤を広げ、地面に吸い付けるように広げた。

 そうして思い切り息を吸い込むような動作をしたと思ったら、次の瞬間電気ブレスを吐いた。

 それは地面を帯電しながら三方に分かれて伸びていく。

「危ねぇ!!」

 そのコースにカイがいたのが分かったアレクトロは、踏み込みながら切り上げ、彼をその場から浮っ飛ばした。

 当然代わりにブレスを食らった彼は、痺れて動けなくなってしまう。

 直後に彼が見たものは、やや離れた距離から姿勢を低くして後ろ足を踏ん張った【フルフル】の姿。

 

 まずい! 潰されちまう!!

 

そう思ってもがくのも空しく、痙攣する事しか出来なかった彼は、もろに飛び掛かられてしまった。

「アレク~~~!!!」

 カイの悲鳴が洞窟内に木霊する。

「うるせぇよ……」

 ぶよんと縮まった【フルフル】の脇で、多少ふら付きながらも立ち上がったアレクトロ。

 どうやら運良く弾き飛ばされ、まともに圧し潰される事は免れた様子。

 それを見て、カイはホッと胸を撫で下ろした。

 だが油断は出来ず、体全体に電気を纏わせる【フルフル】。

 今度はガードする余裕があったアレクトロは、放電中なのにも関わらず、その影響が及ばない位置で再び溜めた。

 

【挿絵表示】

 

 そうして放電終わりにタイミングを合わせ、最大溜めを叩きこむ。

 ソロでもそうやって狩って来ているアレクトロは、慣れたものだった。

 

 その内に体中に裂傷が刻み込まれた【フルフル】は、痛々しい姿になった。

 ぶよぶよの体は斬撃が通りにくく、尚且つ傷が塞がりやすい体質をしているのだが、二人で何度か切っている内に傷を付ける事に成功した。

 麻痺が短いといってもまったく効かないという訳ではないため、カイの麻痺も利用して溜め切りをお見舞いする。

 カイが足元を狙うと転ぶので、これも溜めチャンスにした。

 

【挿絵表示】

 

 堪らず天井に逃れた【フルフル】は、大慌てで隣のエリアに逃げた。

「待て~~!」

「待てこらぁ!!」

 【ガンナー】なら撃ち落とす事が出来るだろうが、二人とも【剣士】なので追いかけるしかない。

 【フルフル】が《7》に逃れたのを見て、アレクトロはチッと舌を鳴らした。

 あそこは入り組んでいるし、【イーオス】【ゲネポス】コンビの巣窟だからやっかいなのである。

 

 案の定二種の【鳥竜種】に出迎えられた二人は、それらに気を取られている間に眼前に【フルフル】が落ちて来たのを見て心底驚いた。

「このやろ! びっくりさせんなっ」

 切り掛かったカイをあざ笑うかのように、【フルフル】は横に首をぐいんと伸ばして刃を避けた。

 が、避けるためにそうしたのではないとアレクトロは知る。彼が見たものは横に伸びたはずがカイの背後に回り込んだ【フルフル】の首だったからである。

「危ね――!!」

 声を掛ける間も無く、伸びた首がそのままカイの背中を狙う。

「あああああ!!!!」

 カイは背中の肉をごっそり嚙み取られ、その場で転げ回った。

「畜生!!」

 アレクトロは踏み込むや否や、上段から切り下した。

 それはたまたま間にいた【ゲネポス】ごと切断するほどの力だった。

 それが止めとなったのか、それきり動かなくなる【フルフル】。

 生きていようがいまいがお構いなしというふうに踏み越えて、カイの傍に駆け寄るアレクトロ。

 彼はポーチを弄って【回復薬グレート】を取り出すや否や封を開け、背中にかけた。

 カイは暴れないように押さえ付けられたため、歯を食い縛りつつ呻くしかなかった。

 【イーオス】が毒を吐きかけて来たにも関わらず、平然としたように【回復薬グレート】をかけ続けるアレクトロ。

 傷が塞がってきたのを確認して、初めて押さえ付けていた手を緩めた。

「ごめん……。ありがと……」

 多少痛がりつつも立ち上がったカイは、今度はアレクトロが毒に冒されているのに気付いて【解毒薬】を渡した。

 後で【漢方薬】を飲むつもりだったアレクトロだったが、「サンキューな」と受け取ると、仕返しとばかりに【イーオス】を切り殺してから飲んだ。

 

 

 本当に動かないのを確認し、剥ぎ取りを終えた二人。

 後は帰るだけという段階になって、なんとなく嫌な予感がしたアレクトロは、【クエスト依頼書】を見てみた。

 その途端に落ち込む彼を見て、「どしたのアレク?」と聞いたカイは、渡された【クエスト依頼書】を見てこちらも落ち込んだ。

 そこにはこう書かれてあったからである。

 

()()()()する事!』

 




アレクのイメージ防具は「レウス」系なので、今回の挿絵は「シルバーソル」を着ています。
彼のメイン武器は「大剣」です。
カイのイメージ防具は決まっておりません。
カイは「太刀」がメイン武器です。

武器を使って切り上げたり打ち上げたりして助ける行為が私の話の中にはよく出て来ますが、ハンターの武器を人に向ける行為は固く禁止されており、下手をすれば違反者として「ギルドナイト」に処刑対象にされますので、この場合の切り上げ、打ち上げ行為は「防具を引っ掛けて飛ばす行為」だと思って置いて下さい。
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