今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】 作:沙希斗
アジトから少し離れた所で乗って来た【ケルビ】を呼び、鞍を付けて身を押し上げる。
が、いざ駈け出そうとしたまさにその時、背後に殺気を感じて腰の【銃】を抜いた。
そのまま振り向かずに脇の下から後ろに銃口を向け、撃つ。
パパンッ!
乾いた破裂音が二つ、ほぼ同時に聞こえた。
腰の後ろに焼けるような痛みが走る。
その直後、その場所が爆発するように弾けた。
「うがっ!!」
あまりの衝撃に声を出すベナトール。
落ちそうになるのを堪え、そのまま駆けた。
相手の呻き声と倒れた音は聞いたのだが、死んだのかどうか確かめる余裕はない。
なぜなら、【徹甲榴弾】を撃ち込まれたのを知ったからである。
弾が貫通しなかったのは己の筋肉がそうしたのかと思っていたが、わざと貫通させないようにしてあった事を理解した。
着弾後に爆発して致命傷を与えるこの弾は、貫通してしまうと役に立たないからである。
アジトから少し離れたこの場所は、アジトからの焚火が届かず暗闇なのだ。
しかも今宵は新月で、頼れるとすれば星明りのみ。
にも関わらず、相手は【ケルビ】に乗った事によりほぼ固定される腰を、避けられないと分かって正確に撃って来た。
そして、一発でも充分に致命傷を与えうる、【徹甲榴弾】を使って来た。
これはかなり夜目が利き、尚且つ手練れたハンターの仕業に違いない。
ベナトールは激痛に上半身を折り曲げて耐えつつ、とにかく落ちないようにしながら【街】を目指した。
傷の状態は触らなくても分かる。大きく抉れて肉が爆ぜ、穴が開いているはずだ。
下手をすれば腎臓の一つくらいは無くなっているかもしれない。
【秘薬】も持って来るべきだったな……。
時々【回復薬グレート】を呷りつつ、彼はそう思った。
あともう少しで【街】に辿り着くという直前で、ベナトールは力が抜けて【ケルビ】から落ちてしまった。
ここはハンター達が使う【マイハウス】の辺りだろうか? それとも食材屋などが使う倉庫の辺りだろうか。
とにかく街門からは外れた奥まった所の草の上に、ベナトールは俯せに倒れていた。
心配そうに【ケルビ】が寄って来たが、もうその背に這い上がる力は無い。
そこで、合図を送った。
【ケルビ】は躊躇したが、意を決したように【街】へ駆けて行った。
【ギルドナイツ】の施設内にある、騎乗用【ケルビ】の飼育場へ帰すためである。
おそらく鞍には大量の血が付いているはずなので、飼育係の者が気が付けば【ギルドマスター】に知らせるだろうと思ったのだ。
鞍には彼の物ではない【ギルドナイトセイバー】が括り付けられてある。それには個人の名前が記されているはずで、それでグリードが死んだ事も明らかになるだろう。
なぜなら【ギルドナイト】の誇りとも言える【ギルドナイトセイバー】を手放す事は、彼らにとっては死を意味するからだ。
そういう意味でグリードが手放さなかったのは、誇りを捨て切れなかったとも言えるのである。
最も、肌身離さずという訳にはいかないベナトールのような暗躍者は、代わりにセイバーを斜め交差させた形の名前入り護符を持っていたりするのだが。
少し、眠ろう。
喘ぎつつ、ベナトールはそう思った。
ハンターの驚異的な回復力は、寝ただけでもかなり改善するからである。
幸いここはまだ【街】の明かりが届いていないため、一般人や他のハンターらに見付かる可能性は低い。
かなり血圧が下がっているのはずっと前から分かっている。このまま意識を手放せば、もしかしたら死んでしまうかもしれない。
が、死ぬつもりはまだなかった。
【ケルビ】を先に帰したのは、少しでも早く【ギルドマスター】に知らせたかっただけだ。
だが、自分が報告出来るようになるまで持つだろうかとも考えていた。
意識は徐々に低下している。
それに委ねたい気持ち良さに、彼は抗っていた。
脇腹を突かれたくらいではビクともしない彼ですが、これは堪えたようです。
弾にはレベルがありますが、ここではレベル1を使ったと思って置いて下さい。
「ギルドナイトセイバー」には「フロンティア」では強化先があるのですが、強化すると「ギルドナイト」の名前が無くなってしまうため、あえて「ツインドクレスソード」や「マスターセイバー」にはしておりません。