今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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前回までは血生臭い話でしたが、今回の話は真逆で、血の表現など全く無い平和そのもののような話です。


食モス連鎖

 

 

 

 【モス】っつう【モンスター】ってのは、【火山】とか【雪山】みてぇな過酷な環境じゃねぇ限りは大抵どこにでもいるもんなんだが、特に【密林】とか【樹海】とか、やっぱ緑が多い環境を好むみてぇなんだよな。

 

 なんでかって?

 そりゃあいつらの主食がキノコ類だからさ。

 

 俺もハンターの真似事やってたちっせぇ頃、【アオキノコ】なんかを採る時なんかに、よくあいつらの世話になったもんだ。

 ほらあいつらってキノコの場所を匂いで感知してそこまで行って食いやがるだろ? だからあいつらの後を付いてったらキノコが生えてる場所が分かるってぇ寸法なわけだよ。

 

 ――あん?

 

 なんで俺が語ってるかって?

 そりゃおめぇ、こんな面白れぇ事があったからだよ。

 

 

 

 ある日俺は、いつものように無理矢理ハナに付き合わされて、キノコ狩りに付いて行かされてた。

 クッソ面倒臭ぇから行く気なんざ更々無かったんだがよ、オッサンが【仕事】だっつうし、カイが「行こう」っつってしつけぇし、まあ俺も丁度暇だったから「しゃあねぇか」ってなもんで、【密林】まで行ったわけよ。

 

 で、あれは確か《5》だったか? に【モス】がよく群れてるとこあんだろ? そこだとキノコの場所を教えてもらいやすいってんで、そこでキノコ採取してたわけ。

 おめぇ、もしかしたら知らねぇかもしんねぇけどよ、あそこ、地面にただ生えてる分かりやすいとこだけじゃなくて、まるで取られまいとするみてぇに、背丈が低くて丸っこい葉っぱのシダ類の下に隠れて生えてるキノコがあってな、そいつを見付けると、なんだかキノコが秘密にしてる取って置きのやつを見付けたみてぇな感じがして、ほくそ笑みたくなんだよ。

 

 ま、んなこたどうでもいっか。

 

 とにかくだ、そこでカイとハナは楽しそうに話しながら、【アオキノコ】やら【特産キノコ】やらを採ってて、暇な俺は適当にその辺を見回しながら、【モス】の観察とかしてたわけよ。

 丁度季節は【繁殖期】で、【モス】の数も多かった。

 でよ、その内の一匹が、いつものように旨そうに【アオキノコ】をむしゃむしゃやってんのを見るともなしに見てたんだが、その後ろにもう一頭がやって来て、そいつのケツに付きやがった。

 

 なにやってんのかなと思ってたら、そのまま前の奴の、ケツの辺りに生えてるキノコをむしゃむしゃやり始めたんだわ。

 

 【モス】ってのは普段動きが鈍いからか、それともカムフラージュのためなのか、体毛に苔やらキノコやらが生えてっだろ?

 だからあいつらを狩って剥ぎ取ると、たまに【アオキノコ】が取れたりするんだが、つまりはケツに付いてた一匹が、前の奴の体毛に生えてた【アオキノコ】を食い始めたってこったな。

 こいつらキノコでさえあれば仲間に生えてるやつだろうがお構いなしかよ? とか思って見てたらば、その後ろにまたもう一匹が付いて、同じように前の奴のキノコを食い始めた。

 

 面白れぇなと思って見てたら、そんなふうにしてどんどん繋がりやがった。

 

 たまたまそういう形になったのか、それとも普段でも【繁殖期】にはそんな列が出来るのか、五、六匹ぐれぇが繋がったまんま前の奴のキノコをむしゃむしゃやってんのがおっかしくてな、ゲラゲラ笑ってたわけ。

 一番先頭にいたのが地面に生えてるキノコを食い終わって移動し始めたら、他の奴らはまだ食い足りなかったみてぇで、食いながら繋がったまんま移動しやがんの。

 曲がったら曲がったまんまになるもんだから、たまたま俺が中心になって囲まれたようになって、それが更に可笑しかったよ。

 

 あんまり俺が笑ってるもんだから二人が顔を上げたんだが、その光景見て「可愛いぃ~~」とか言いながら、笑い出して。

 奴らの鎖が自然に離れるまで三人で笑ってた。

 危険な【モンスター】が潜むフィールドでありながら、こんな平和な光景もあるんだなと思ったよ。

 




口調や内容で分かると思うんですが、語っているのは「アレクトロ」です。
彼はこんなふうに率先して自分から語るような性格では無いんですが、今回は余程面白かったようです。

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