今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】 作:沙希斗
「おね~さんっ、依頼、何か来てるぅ?」
「はい。【ドスランポス】変種の討伐依頼が来ておりますよ、お嬢様」
「【ドスランポス】変種かぁ……」
「行ってらっしゃい♪」
「ちょっとアレク! なに満面の笑みで手を振ってるわけぇ!?」
「んなもん一人で行けるだろうが」
「あのねぇ、下位じゃないのよ!? 変種よ変種! 一人で狩れるわけないじゃないっ!」
「そうだよアレク。ハナ一人で行かせるのは可哀想だよ」
「おめぇらみてぇにいつもいつも【お手々繋いで】なんかやってられねぇっつの! そう言うなら二人で行きやがれ」
「……。上位でも苦戦するおいらに、そういう事言う?」
「二人でならなんとか……。なんねぇか」
「よくお分かりで♪」
「いや俺が来るのが当たり前みてぇな目で見られてもだな」
「来るんでしょ?」
「でしょ?」
「ま、チームならば当然だわな」
「ちと待てオッサン、なんであんたまで行く気になってんだよ、ちったぁ自立させようとか考えろよ」
「だってベナはあたしの【教官】だから、来るの当たり前だし♪」
「いやその考えおかしいから!」
「結束力乱すのはんた~~い」
「んな結束力元からねぇよ!」
「……。ハナに捕まって、逃げられるとでも?」
「オイそこ、威圧するとこかよオッサン」
「あたしのバックを舐めんなよっ?」
「なよっ?」
「いやおめぇらに威圧されてもちっとも怖くねぇから」
「いい加減諦めろアレク。声が掛った時点でもう決まっているのは分かっているだろう」
「……。ケッ」
「ほんっとに素直じゃないんだからぁ」
「うっせぇよ!」
という訳で、【密林】に来ている。
目的は【ドスランポス】の変種討伐らしいので、「ちゃっちゃと済ませようぜ」と散策。
だが、見付ける前に、空から何かが下りて来た。
緑に溶け込むかのような深緑の体色。
【飛竜】といえば真っ先に思い浮かべるような、翼の発達したプロポーション。
しかし、むしろ飛ぶよりも歩き回る方が多いため、【陸の女王】などと呼ばれている。
【雌火竜リオレイア】である。
「……。なんでこいつがいるワケ?」
「まあ同じ生息地だしな。縄張り内に入る事があってもおかしくはなかろう」
「この子も変種、なんだよね?」
「まあ変種が出るHR100以上でしか許されない狩場に来てんだから、そうだろうな」
「混戦になったらちとやっかいだが……。どうする先に狩っちまうか?」
「いや待て、俺に考えがある」
アレクトロは【彼女】に見付かる前に、全員を茂みの中に隠れさせた。
そして、なんと手甲と兜を脱いだ。
「お、おい、何考えてんだアレク?」
「そんな事をして噛まれたら、腕と頭が無くなっちゃうんだよ!? 分かってんの!?」
「良いから俺の言う事を聞け」
アレクトロは、ヒソヒソ声で注意している二人と、兜の中で厳しい顔になっているであろうベナトールに言った。
「このままおめぇらはここで隠れてろ。いや
「アレク何する気!?」
「良いから黙って見てな。――良いかぜってぇ手ぇ出すなよ?」
念を押したアレクトロは、一人で【リオレイア】の前へ進み出た。
彼を見止めた相手は、威嚇をしようと息を吸い込んだ。
「クルル……」
その時掛った
「クルル、ギャウッギャウッ」
『グルル……』
そうしてアレクトロがそっと差し出す両手を、近付いてクンクンと嗅いだ。
アレクトロは臆せずに、静かにされるがままにしている。
と、【彼女】がその手に顎を擦り付けた。
「クゥ、クルル。クゥックゥッ……」
『グゥッ、グルル……』
アレクトロは、その顎をしっかりと抱き締めた。
「――なんか、会話してないか?」
「してるな」
「驚いた。【モンスター】と会話出来る人間なんて、初めて見た」
驚いて見ている三人を余所に、アレクトロと【リオレイア】は、どう見ても会話にしか思えないようなやり取りをしている。
そしてしばしのやり取りの後、相手は翼を広げ、どこかに飛び立って行った。
「もう出て来ても良いぞ」
アレクトロは、そう言って三人を手招きした。
「たまげたな。どうやって退けた?」
「簡単なこった」
アレクトロはベナトールから手甲と兜を受け取ると、それを身に付けながら言った。
「俺は【リオス科】の言葉が分かるんだよ。ある程度は、の話だがな」
「それって、レイアに育てられたからって事?」
「まあそういうこったな」
「で、なんて言ってたの?」
「かいつまんで言うと、『あんたを狩りに来たんでもなければ危害を加えるつもりもない』みてぇな感じか」
「それでよく納得したね、【彼女】」
「まあ縄張りに入ってんのは【ドスランポス】の方みてぇだからな。『奴をやっつけてくれるんなら文句は無い』とさ」
「抱き合ってたのは?」
「始めに『母さん』って声掛けたからな。『大きくなったね坊や』って言われたよ」
「
「【記憶】の共有がある限りは、雌火竜にとっては俺は共通の【息子】なんだよ」
「い、一杯【母さん】がいて、幸せだね」
「まあな」
「それならさ、これからも【リオレイア】を狩る事は沢山あるんだろうに、狩っていいわけ?」
「その点は向こうもわきまえてるさ。だから狩る時はこっちも全力で行くし容赦をするつもりもねぇ。これからもな」
「……。ならば安心だな」
「あぁ。次に【リオレイア】が狩猟対象になった時は、遠慮なんざ一切いらねぇぜオッサン」
「承知した」
「……ところでさ、ちょっと前から大きくて赤い鶏冠がチラチラ見えるんだけど……」
「カイぃ、早く言ってよぉっ!」
「言える雰囲気じゃなかっただろぉ!?」
「丁度良いじゃねぇか。さっさと狩っちまおうぜ!」
「おうよ!」
「麻痺は任せて!」
「あんなもんてめぇが麻痺らす前に死ぬっつの」
「なら、意地でも麻痺らせてやるぅ」
「おいらも麻痺武器なんだからねっ!」
「二人で頑張ったら早く麻痺るよカイ」
「そだね頑張るっ!」
「その前に一発で仕留めるわバーカ」
「変種だから一発という訳にはいかんと思うがな、アレクよ」
「物の例えなんだが、真面目な答えありがとなオッサン」
哀れな【ドスランポス】変種は、威嚇直後に【閃光玉】を投げられ、あれよと言う間に討伐されましたとさ。
「人間」と「モンスター」は声帯構造が違うはずですので、そもそも会話出来ないと思います。
ですが、リアル世界でも「似たような声」を出してさも動物と会話しているかのような事が出来ますので、アレクトロもきっとそんな感じで「会話」が出来るんだという事にしています。