今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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「フロンティア」にしかないゲームシステム、「パローネ=キャラバン」。
今回はその中で出来る「キャラバンクエスト」の話です。


【キャラバンクエスト】は楽し?

 

 

 この日、四人は【キャラバンクエスト】に挑んでいた。

 【キャラバンクエスト】とは、ここ最近【メゼポルタ広場】の一角に大規模な飛行船でやって来た、【パローネ=キャラバン】というキャラバン隊が依頼して来る【クエスト】である。

 【ハンターズギルド】から受ける通常の【クエスト】と違い、キャラバン隊の【カシラ】が指定する複数の【モンスター】を、各地のフィールドを行き来しつつ狩らねばならない。

 なので、一クエごとには帰れず、従って出発前の準備を怠ると、けっこうキツイものとなる。

 

 移動はいつも使う【竜車】ではなくキャラバン隊が所持している【気球】で行うため、【竜車】では何日も何週間もかかったりしてクエスト時間そのものよりも移動時間の方が長かったりするような所でも、遥かに短い時間で狩場に着けるのは大変便利だった。

 

 更に特徴的なのは、【カシラ】から小型無線受信機のような物を借りて必ず耳に着けなければならない、という決まりがある。

 なぜならクエ中に、【カシラ】から突然指示が飛ぶ事があるからである。

 

 それは個人的に届くものとPT全体に届くものとがあり、まあ無視しても構わないものではあるのだが、従った方が【CP(キャラバンポイント)】が増えるという仕組みになっている。

 【キャラバンクエスト】では報酬が【モンスター】素材やゼニーではなく全てCPで支払われるという特徴があり、それを溜める事で特別スキルを持つ【狩人珠】の強化が行えたり、特別なアイテムを(CPで)買えたりするのだ。

 

 

 さて、それは【ドスファンゴ】を狩り終えた時だった。

「――はい。分かりました」

 個人的な指示を受けたと思われるハナが、いきなりアレクトロをげしっと蹴った。

「いってぇないきなり! 何すんだよ!?」

 キレるアレクトロに、「だって、『他の者を蹴れ!』って言われたんだもん」と、しれっと答える。

 

「――了解した」

 そう言ったベナトールは、おもむろにアレクトロを【ハンマー】で打ち上げた。

「うわあぁ!?」

 たまたまエリアの切れ目近くにいたのもあり、彼の力は簡単にアレクトロをエリア外に吹っ飛ばした。

 

「おいオッサン!」

 帰って来たアレクトロは、文句を言った。

「すまん、『他の者をエリア外に飛ばせ!』という指示が来たものでな」

「そうじゃねぇよ! 俺の指示が失敗したじゃねぇかよ!!」

「どんな指示だったの?」

「『エリア内に留まれ』っつう指示だったんだよ」

「そりゃすまんかったな」

 むくれて言うアレクトロに、ベナトールは頭を掻いた。

 

「……目が回るうぅ……」

 カイはなぜか、その場でぐるぐると回って目を回している。

「何やってんだおめぇ?」

 アレクトロが呆れると、「だって、『その場で十回転しろ』っていう指示だったんだもん」とふらふらになっている。

 

「おっと」

 また指示が来たらしいアレクトロが、耳の受信機に手を添えた。

「『十秒以内に全員集合しろ!』とさ。集まるぞおめぇら」

「了解」

 二人は集まったが、カイが集まっていない。

 目を回して立てなくなっているのだ。

「しゃあねぇな、あいつんとこ行くぞ」

 急いでカイの傍に集まり、事なきを得た。

 

「――。了解」

 次に指示を受信したベナトールは、なんと躊躇いもせずにポイポイとポーチ内のアイテムを捨て始めた。

「おいオッサンよ!? トチ狂ってんじゃねぇのか!?」

 貴重な回復アイテムである【いにしえの秘薬】【秘薬】だけでなく、かなり高価なアイテムである【力の護符】【護りの護符】、貴重な【老山龍の大爪】を調合して作る【力の爪】【護りの爪】まで捨てているのを見て、アレクトロは驚愕している。

「……。『ポーチ内を全て空にせよ』という指示だったもんでな」

「だからっつってそんな貴重なもん捨てるぐれぇなら、従わなきゃ良い話だろうが!」

 

 ハンターが物を捨てるという行為は、フィールドであろうと【街】であろうと、一度でも捨てると【放棄した】と見なされるのだ。

 従って、どこで捨てようとも誰も拾う事は許されていないし、勿論二度と自分の手には戻らない。

 

「護符は買える。それに【老山龍の大爪】も余っている」

「呆れた。それいくらすると思ってんのよっ!?」 

「おいら、買うの物凄く勇気いったのに……」

「はぁ、やっぱ次元が違うわオッサンは」

 

 三人は揃って首を振るアクションをしたのだった。

    

 




「カシラ(キエル)」には、戦闘中でも関係なくどうでも良いような指示を飛ばされては「うぜぇ」となる事がありました。
仲間内でやると面白く、盛り上がるような指示もあったんですが、それでもいきなり蹴られたり武器で放り投げられたりするとムッとなるものです。

ちなみに文中の指示と四人の行動は実際に起こった「実話」です。
実際は「その場に留まれ」という指示が出ていた仲間を、そうとは知らずに私が大剣で切り上げてエリア外に飛ばしてしまって怒られました。
そして私が「ポーチ内を全て空にせよ」という指示を受け、ベナトールと同じように護符爪も全て捨てたのを見て(そうしたという話を私から聞いて)仲間に呆れられました(笑)

まあその指示に従ったのは一度だけだったんですが。流石に何度も護符を買うのは金銭的にも辛かったので。
初めて買った時、本当にバカ高い買い物をするみたいにドキドキしましたもん(笑)
「老山龍の大爪」も、手持ちに無かったら取るのけっこう怠いですからね。

「その場で十回転しろ」という指示の時には、ゲーム画面を見ていると酔うので目を閉じて回してました。

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