今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】 作:沙希斗
「【雪獅子の牙】が欲しい」
ハナにそう言われてカイと共に付き合わされているアレクトロは、当然のように【火属性】の【大剣】を使っていた。
雪原の白に溶け込むように白い体をしている【雪獅子】事【ドドブランゴ】の、正面に構えてその牙目掛けて【大剣】を振り下ろしていた。
が、それを邪魔するかのように、正面に立ちはだかった者がいた。
カイである。
カイは、【雷属性】の【双剣】を使っている。
そして破壊は任せろとでもいうように、【鬼人化乱舞】で切り込んでいた。
アレクトロは、その行為にイライラしていた。
なぜなら【ドドブランゴ】の牙は、【火属性】の武器でしか破壊出来ないからである。
ハナはと見ると、やはりいつものように【麻痺属性】の片手剣である【デスパライズ】を使っている。
ハナと言えばこれ、と言わんばかりに彼女が他の属性武器を使っているのを見た事が無い。
というよりは、他の武器を作る気が無いのかもしれない。
もっとも、彼女が一人でクエストに行く事はまず無いので、PT戦で役に立つ【麻痺属性】を使ってくれている方が理に適っていると言えなくもない。
「そこをどけカイ!」
再び正面に立たれたアレクトロは、イライラをぶつけるように言った。
「邪魔なんだよ!」
が、カイはいつもの事だと思っているのだろう。意に介さずに正面に立ち続けた。
イライラの頂点に達したアレクトロは、とうとうカイを切り上げて吹っ飛ばした。
「うわあぁ!?」
が、吹っ飛んだ彼を追い掛けるようにして【ドドブランゴ】が飛び掛かって行ったのを見て焦った。
慌てて走って行き、背中に一太刀。悲鳴を上げて転んだ隙に組み敷かれていたカイを引き摺り出す。
「酷いよぉ」
「そうよ、なんて事すんのよ!?」
文句を言う二人に更に苛立ちを募らせたアレクトロは、「うるっせえぇ!!」と怒鳴った。
その声にビクッとなりつつ、「なに苛立ってんの?」と訳が分からない様子の二人。
「おいハナ! てめぇの目的はなんだ!?」
「【雪獅子の牙】だけど?」
「んじゃカイ! てめぇが使ってる【双剣】の属性を言ってみろ!!」
「雷だよ? それがどうかしたの?」
「どうかしたのじゃねぇ!! てめぇ【雪獅子】の牙を壊す条件分かってねぇだろ!?」
「【火属性】だろ? そんな事ぐらい分かってるよ」
「分かってんなら俺の前に立つんじゃねぇ!!! ってか、なんで分かってて【火属性】で来てねぇんだよこの野郎!!」
「なんとかなると思って」
テヘッと笑うカイ。
「なるかボケェ!!!」
アレクトロはそう突っ込みつつ、その怒りを【ドドブランゴ】に向けて叩きこんだ。
哀れな【ドドブランゴ】は、牙を折られた挙句に切り裂かれ、ボロ雑巾のようになって雪原に転がったのであった。
これを読んだ友人は「何とかなる訳ないじゃん」と笑っておりました。
どうやら自分がやった事を覚えていなかったようです。
実際は友人とフレが雷の「双剣」を使っていて、頭に回られて私がイライラしておりました。
で、文中のようなセリフを吐いて「条件分かってたけど何とかなると思った」と友人に言われますた。
確かに「雪獅子」には雷属性が有効なので、属性の選択は間違ってないんですよ。
ないんですが、「牙を折る」には火属性の武器で攻撃しないと折れないわけで。
という事は、「火属性の大剣」を使っていた私一人が頑張るしかなかったわけで。
更に言うと頭を狙って攻撃し、尚且つ折る前に殺さないようにしないといけなかったわけで。
天然が二人もいると、往々にしてこんなふうになるものです(苦笑)