今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】 作:沙希斗
「あぁ、こりゃ一から作り直しだな」
【武具工房】の親方は、折れた【大剣】を一瞥するなりそう言った。
「やっぱりか……」
アレクトロはそう言うなり、カウンターに手を付いて落ち込んだ。
【モンスター】の弱点ごとにある程度属性を変えるアレクトロだが、それぞれに愛着があるのと、やはり強力な武器程大金になるので、そう言われるとショックである。
「一応【片手剣】として鍛え直すという手もあるが――」
「いやいいや、俺【片手剣】使わねぇし」
親方の言葉を途中で遮って断る。
正式なハンターになる前は【片手剣】しか使った事がなかった彼だったのだが、【訓練場】で【大剣】を触ってその強さに惚れ込んで以来、ずっと【大剣使い】として名を馳せている。
だから彼が【片手剣】しか使っていなかった事を知る者は、少なくとも【街】にはいないだろう。
折れた【大剣】の名は【ローゼンクラフト】。火と毒の双属性で切れ味ゲージが長く、会心も付いている強力な【大剣】である。
そしてその素材となる【モンスター】の名は……。
「また【樹海の主】と闘うのかよ……」
苦戦する事が分かり切っている彼は、深い溜息を付いた。
準備万端整えて、【クエスト受付カウンター】に歩いて行くと、三人に呼び止められた。
「独りで何に行くつもりなんだよ?」
「おめぇにゃ関係ねぇだろ」
「いやあるね。だって【ローゼンクラフト】が折れたのおいらのせいだし。どうせそのための素材を取りに行くんだろ?」
「あんたはいっつもそうやって一人で行きたがるわよね。そういう水臭い事やめてくれる?」
「個人の事でいちいち付き合わせたくねぇだけだ。ソロ狩り出来る【モンスター】なんだし」
「……。強い武具なら低確率のレア素材を要求される分、連戦が必須だと分かっているだろう。お前ならソロで狩れる事は分かってるが、手強い【モンスター】だという事は変わりはない。ならばPTで回した方が効率が良いに決まっておろうが」
「そりゃあんたがいればどんな手強い【モンスター】でも早く回せるだろうが、他の奴の手伝いならともかく、俺の事で甘える訳には――」
「あぁもう素直じゃ無いわね! ほらさっさと行くわよっ」
すでにクエスト受注を済ませていたらしい三人に、アレクトロは半ば無理やり連れて行かれる形になった。
相手は【樹海の主】事【エスピナス】。大変大人しい【飛竜】として有名ではあるが、一度怒ると豹変する事でも有名である。
それはまるで、【静】と【動】を完全に使い分けているかのようだった。
【樹海】に着いた一行が散策しつつ《7》に入ると……。
「寝てる……」
「寝てるな」
中央付近の木の根の影で、なんとも気持ち良さそうに【主】は眠っていた。
「せっかく寝てるのに、起こすの可哀想ねぇ」
「このまま起きるまで待ってあげよっか」
「馬鹿かおめぇは、いつ起きるか分からん奴を待ってられっかよ。時間切れになっちまうっつの」
そこで頭に回ったベナトールと、側面に回ったアレクトロで溜め、「せ~~の!」と溜め攻撃。
だが、最大溜めをぶち込んでも、平然と寝ている。
「どんだけ鈍いんだよこいつは」
アレクトロが呆れている。
「いくらなんでもこれなら起きるんじゃない?」
ハナが【落とし穴】を仕掛けると、流石に起きてジタバタし始めた。
その間に麻痺組二人が麻痺を取り、火力組二人は溜め攻撃と頭三連。
麻痺が解けたと同時にスタンしたので、更に溜めを畳みかける。
残念ながら二度目の麻痺スタンの流れは取れなかったので、罠を抜けられた。
すかさず【閃光玉】を投げたが、既に怒っていたため暴れられ、ベナトール以外の誰か(特にハナ)が吹っ飛ばされた。
怒り時の攻撃には毒が含まれるため、解毒系が必須である。
視界が戻った相手がいきなり突進したが、頭に張り付いているベナトールは難なく避けている。
が、【エスピナス】の突進は一度では終わらずに反転して向かって来る事がある。
それにカイが巻き込まれそうになったため、切り上げたアレクトロが代わりに轢かれた。
「だだ、大丈夫!?」
ゴロゴロと何度も転がって止まった彼に、ハナが声を掛ける。
「大丈夫なわけねぇだろぉ?」
ぼやきつつも起き上がったアレクトロだが、言う程はダメージを負っていない。
でも痛いのは変わらないので、しっかり解毒、回復した。
突進で距離が離れた隙にブレス。
今度はハナが巻き込まれそうになり、ベナトールが打ち上げて代わりに食らう。
【エスピナス】のブレスには毒だけでなく麻痺の状態異常も加わるため、彼はしばらく動けなくなった。
その間も毒に冒され続ける事になるので、ハナは慌てて【解毒薬】を投げた。
〈広域化+2〉のスキルで他人も癒せるからである。
動けないベナトールを狙うかのように相手が向かって来たので、アレクトロが前に立ってガードして凌ぐ。
ついでに頭に連撃を叩き込み、立ち直ったベナトールに場所を譲った。
仕返しとばかりに彼がスタンさせたので、側面に回って最大溜めをお見舞いする。
尻尾を切ろうとしたカイだが、中程を切ってしまって思い切り弾かれた。
どうやら怒りが治まったらしい。
通常の状態になってしまうと極度に硬くなるこの【モンスター】は、〈切れ味+1〉のスキルを発動させた白ゲージの武器でも簡単に弾かれてしまう。
一応尾の先端と胸から腹にかけては柔らかいので、そこのみを狙えば弾かれずに攻撃出来るのだが、怒りが治まると、なぜか戦意を消失したかのようにまったくハンターも含めた周りのものに興味が無くなってしまい、ただのったりのったり歩くだけになってしまうため非常に狙い辛い。
ゆっくり歩くだけなら狙うのは簡単だろうと思いがちだが、【棘竜】と呼ばれる程全身棘だらけの姿をしているこの【飛竜】は、近寄るだけで棘が刺さってこっちが怯んでしまうので、意外にも狙いにくいのだ。
怒らせてしまえば肉質は柔らかくなるのだが、どの【モンスター】でもそうであるように怒り時はスピード、攻撃力共に増すし、多発する攻撃とブレスに毒や麻痺の効果が付くため非常に闘いにくい。
なので、怒らせるにしてもそうでないにしても悩ましい【モンスター】であった。
怒りに入ると頻繁にやる突進がこちらの手数を減らせてしまうので、攻撃して怯ませるか【閃光玉】を使うなどしてなるべく突進させないようにしなければならない。
まあ麻痺担当が二人もいるし、ベナトールも頻繁にスタンさせてくれるので、何もない状態で闘うよりは足止めの条件は多かった。
特にソロだと足止めをしにくいのもあって、その点では非常に助かっているアレクトロである。
ソロだと突進で時間がかかる場合も多いのだ。
なのでソロの時よりかなり短い時間で討伐完了。
だがレア素材である【棘竜の紅玉】が案の定出ず、やはり連戦するはめになってしまった。
討伐、捕獲を繰り返して出るまで粘り、ようやく出たと思ったら、今度は【変種】の汎用素材を取りに行かなければならない。
ハンターたるもの、強い武具を作りたいなら強い【モンスター】を連戦するのは当たり前の事なのだが、それを楽しいと思いながらも、一方ではそのために沢山の命を屠る事になってしまう後ろめたさも感じてしまうアレクトロであった。
ゲーム世界では乱獲どころかハンターのせいで絶滅するんじゃないかと思える程何度も同じクエストを受けて連戦出来ますが、実際は依頼が無いとクエストには行けませんし、その「モンスター」がいて、尚且つ近くに縄張りを構えるなど人間に脅威をもたらす存在にならないと依頼にも出ないので、レア素材が無いからといって連戦なんて出来ないでしょうね。
なのできっと、各地で出ている依頼を回して貰ったり、依頼が出ている地方に移動したりして長い間かけて目的を達成してるんだと思います。
「ローゼンクラフト」は、今では弱い武器の中に入ってしまいましたが、「エスピナス」が実装された当初は最強武器に匹敵する強さでした。
外見がなんだか芋虫みたいなので、私は「芋虫剣」と呼んでおりました(笑)
前回の話で挿絵に写っているのが「ローゼンクラフト」です。
実際に使っているようにして撮影しましたので。
今回は武器説明として撮影したものを載せております。