今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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素直じゃ無いばっかりに、痛い目に遭った話です。
グロ注意かも。


【幼子】の怪

 

 

 

 通称【沼地】と呼ばれる【クルプティオス湿地帯】は、その場所が表すようにじめじめと湿気が多く、従ってキノコ類が豊富に採れる場所でもある。

 夜になると毒沼が発生するからなのか、取り分け【毒テングダケ】が多く採れ、それを用いて調合する者が足繁く通う場所だ。

 【マヒダケ】も採れるため、それらを用いて状態異常を起こさせる者にとっては最適な採取場所となっている。

ちなみに洞窟のある地図番号《9》《3》《7》では鉱石類の他に草や弾の調合素材などが取れたりするのだが――。

 

 

 変種の【ドスイーオス】を狩りに来ていた一行は、その洞窟に逃げた相手を追い掛けて、《7》に来ていた。

 《7》は【イーオス】【ゲネポス】という二種類の【鳥竜種】がよく集まっており、従って巣窟となっている場所である。

 

 【イーオス】のカシラである【ドスイーオス】は、どうやらここで手下を仕掛けて数で攻める作戦に出たようだ。

 

 カシラが帰って来た事によって連携の取れた攻撃をし始める【イーオス】に手を焼かされつつ、更に【ゲネポス】が気紛れに攻撃して来るので、毒を気にしながら麻痺にも注意しなければならないといった、非常に厄介な戦闘を強いられる事になってしまった。

 それでも【イーオス】の群れは、【ランポス】程はキッチリ連携して来ないという特徴があるため、全体の流れを見つつ個々の攻撃を見極めれば、それ程翻弄される事は無い。

 が、ランポス系の【鳥竜種】の中では体力が一番ある種類なので、特に【片手剣】などの攻撃力の弱い武器では一度切ったぐらいでは平然としているために、何度も攻撃しなければならない。

 必然的に一頭に対しての攻撃回数が増えるため、数が多いのもあって、どうしてもその分こちらの体力を消耗してしまう。

 攻撃力の高い【大剣】や【ハンマー】ならば、ちゃんと強化さえしていれば一撃で死んでくれるので、主にそれを扱う二人が【イーオス】を殲滅させる係になっていた。

 

 そんな中、うっかり【ドスイーオス】の毒を食らってしまったアレクトロは、解毒系のアイテムが切れたのに気が付いて、隙を見て近くに生えている草を探って【げどく草】を採っていた。

 

 【イーオス】の毒ならば、何度も食らいさえしなければ放っといても少々体力が減るぐらいで自然解毒が出来るのだが、【ドスイーオス】の毒ともなるとやはり少々キツイ。ましてや相手は変種なので、なおさらである。

 ハナに頼めば〈広域化+2〉のスキルで解毒してもらえるのだがなんか癪だったし、他の二人にアイテムを貰うのも、なんか嫌だったのだ。

 

 だが、それが間違いだった。

 

 弱った【ドスイーオス】が他のエリアに逃げた時、追い掛けようとした三人の内、ベナトールだけがアレクトロの異変に気が付いた。

 

 毒を受けたのとは違う様子があったのだ。

 

「アレク、お前まさか――」

「……。なんでもねぇよ。それより早く追い掛けて――」

「見せてみろ!」

 有無を言わさずに腕を掴み、強引に引き寄せて調べる。

 すると、右アームの隙間に食い破ったような穴があった。

「……やはりな」

 

 アレクトロは黙っているが、苦し気な様子が見えている。兜で見えない事を良い事に表情を誤魔化しているが、顔を歪めているのがベナトールには分かっていた。

 

「……いつからだ?」

「なんでもねぇっつってんだろうが……。それより追い掛け――」

「いつからだと聞いている!」

 

 鋭い言葉に、走り出していた二人はビクッとなって止まった。

 

「な、なに!?」

「どど、どうしたの!?」

 動揺する二人を無視して、腕を離さないままベナトールはアレクトロを見ている。

 彼が兜の中で険しい顔をしている事を察したアレクトロは、「……さっき採取してた時からだよ」と、観念したように言った。

 

「……。一旦【キャンプ】に戻るぞ」

 

「え!?」

「なんで!?」

 驚く二人を無視してアレクトロを掴んだまま、【モドリ玉】を地面に叩き付けるベナトール。

 残された二人は訳が分からなかったが、とにかく戻った。

 

 

 アレクトロを強引に簡易ベッドに寝かせると、ベナトールは抵抗するのも構わずに、右アームを引っぺがした。

 

 腕の中をトンネル状に上って行った痕があり、それはまだ続いている。

 

「よし。お前ら手伝ってくれ」

「いったいどうしたって――」

「【フルフルベビー】だ」

「な、なんですって!?」

 

 つまりは、先程採取していた時に噛まれ、皮膚の中に潜り込まれたという事である。

 

「アレク! なんで黙ってたんだよ!!」

「……。【ドスイーオス変種】をやっつけてからでも間に合うかと思ったんだよ……」

「遅れれば遅れる程手遅れになるのが分からんのか馬鹿者が! それだけ体内に潜り込まれて余計に苦しむ事になるのだぞ!」

 

 【フルフルベビー】は【フルフル】の子供なのだが、卵から生まれるとこのように草や岩の割れ目などに潜み、他の生物が近付くと体内に寄生して宿主の肉を食いながら育ち、ある程度大きくなると宿主の体を食い破って出て来るという、特殊な生き方をするのだ。

 

 叱り付けたベナトールは、「引き摺り出すからお前ら押さえてろ」と、【剥ぎ取りナイフ】を抜いた。

 

「痛いだろうが自業自得だ。我慢しろよ」

 言うなりベナトールは、肩近くにまで向かっていた【フルフルベビー】を狙ってナイフの先で皮膚を切り裂き、抉り開いた。

「うぎゃあぁ~~~!!!」

 堪らずに叫ぶアレクトロを無視し、そのまま更に深く切っ先を押し込み、抉る。

 

 暴れるアレクトロを必死で押さえ付けていた二人は、傷口に指を突っ込んで探っていたベナトールが、やがて白く、ぶよぶよした口だけしかないナメクジのようなものを引き摺り出したのを見て卒倒しそうになった。

 血を纏ってうねうねと動いているそれを放り投げるや否や、ベナトールは【ハンマー】で叩き潰した。

 

「……はぁ、はぁ……!」

 痛みに耐えていたアレクトロだけでなく、力一杯押さえ付けていた二人までもが喘いでいる。

 最も、二人は卒倒や吐き気を堪えて喘いでいたせいもあったのだが。

 

 三人の顔が青ざめているのを見て、(二人に対して)苦笑いするベナトール。

「お前ら、よく耐えたな」

 苦笑したままアレクトロに【生命の粉塵】を掛けながら、ベナトールは言った。

 

「……すまん……、助かった……」

「ったく、俺じゃあるまいし痩せ我慢してんじゃねぇよ」

「……いやオッサンでも痩せ我慢してちゃヤバいと思うんだが?」

「てか、その前に解毒系切れたんなら言いなさいよねぇ」

「そうだよ。おいらまだ余裕あったんだから、渡せたんだからね? 【解毒薬】」

 

「いや俺は【漢方薬】派なんでな」

 

「何を誤魔化している。単に貰ったりスキルで解毒してもらったりするのが嫌なだけだったのだろうが」

「ほんっとに素直じゃないわよねぇ~~!」

「悪かったな!」

 

 素直じゃ無いばっかりに、かなり痛い目にあったアレクトロであった。




「フルフルベビー」の生態を思い出して書き始めた時はアレクトロに対してだけ「よく耐えたな」とベナトールに言わせるつもりだったのに、カイとハナまでこんな風になったもんだから三人に対してのセリフになったというね(笑)

「フルフルベビー」は「【山菜爺】の怪」(第十六話)でも駆け出しのベナトールの中に入っているんですが、ここまで詳しく引き摺り出すシーンを描写していなかったので、友人には「ついに出たよ……」などと言われました。
でもグロい描写に「徐々に慣れさせた」のもあってか、そこまで拒絶反応は起きなかったようです。
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