今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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無謀な挑戦をして「漢(おとこ)」を示すというのは、どこの世界でもあると思います。
てか、「命知らずの馬鹿」はどこにでもいるよねって事で(笑)


無謀な挑戦

 

 

 

 裸で狩ってみよう。

 

 無謀にもそう思い立ったアレクトロは、まず手始めに【戦友】とまで思っている、【リオレウス】に挑戦してみる事にした。

 ちなみに裸と言っても素っ裸という訳ではなく、防具無し(インナースーツのみ)の事を指す。

 防具をまったく身に付けない状態では当然防御力は皆無であり、従って裸同然という訳なのである。

 

 当たり前だがスキルの恩恵も一切受けられないため、自殺行為も甚だしい。

 が、命知らずというか無謀というか馬鹿というか、この状態で挑戦するハンターは、けっこういたりする。

 それで勇気を試して【漢ぶり】を示そうとするのは、常に命を張っていて生と死のギリギリを生きている【ハンター】という仕事だからなのだろうか。

 

 

 流石にいきなり上位は怖かったので、まず下位からにする。

 【雄火竜】こと【リオレウス】は、【森丘】に生息している事で有名な【飛竜】であるが、時折【塔】でも見掛ける事がある。

 

 なので、【塔】にいる時の依頼を受ける事にした。

 

 なぜなら広い範囲を飛び回る【彼】は、【森丘】の複雑な地形で探し回るより【塔】で探し回った方が比較的見付けやすいからである。

 【塔】の地形は一本道なので、【ベースキャンプ】から上へ上へと登って行く形になる。

 もっと登らないといけないと思っていたが、螺旋階段まで辿り着く前の、麓に近い場所で【彼】を見付けた。

 

 やっかいな奴といやがるぜ……。

 

 【ギアノス】の群れといるのを見た彼は、心の中で舌打ちした。

 先にさっさと【ギアノス】共を殲滅させようかと思ったが、気付かれるし、あまり【彼】が奥の方に進んでしまっては逆に気付かれる前にすぐに飛び去ってしまうので、やはり真っ先に【リオレウス】の方へ進む。

 奥に向かってゆっくり歩いていたので走り寄りつつ尾先に抜刀切りをかますと、周りの【ギアノス】がちょっかいを出したと思ったのか、長い首を伸ばしてキョロキョロし始めた。

 その隙に翼にもう一撃加えると、不届き者めと言わんばかりに吠えた。

 

 スキルが無いため硬直し、思い切り耳を塞ぐアレクトロ。

 

【挿絵表示】

 

 やはり無意識に反応してしまう本能的な恐怖は、いくらハンターといえども、そしていくら狩り慣れているといえどもどうにかなるものではない。

 これは無意識下において、というよりはもう遺伝子に刻み付けられているといえるもので、いくら訓練されたハンターでも、そしてあらゆる恐怖を克服しているだろうと思われる【ギルドナイツ】であったとしても、どうする事も出来ない反応なのだ。

 それ程大型【モンスター】の咆哮は、自分の矮小さ、圧倒的な弱さを嫌でも思い起こさせるものなのである。

 

 〈耳栓〉などのスキルが付いた防具を身に付ける事により、その恩恵でもって普段はスキルで無理矢理抑え込んでいるだけなのだ。

 

 硬直が解けないままゆっくりと振り向かれたアレクトロは、心の中で「動け! 動け!」と体に命令し続けた。

 解けたと同時に回避するや否や、脇をブレスが駆け抜ける。

「あ、危ねえぇ……!」

 冷や汗をかきながら体勢を整えるアレクトロ。

 裸では相手の行動一つ一つが死に直結するため、普段よりも慎重に慎重を重ねて立ち回らなければならないのだ。

 

 近くにいる事により、回転尻尾を誘発。

 

 試しにガードしてみると防具で衝撃を吸収出来ない分全身の骨が悲鳴を上げたため、回避に徹する事にした。

 当たれば間違いなく即死である。

 慎重さは必要ではあるが立ち回り自体は防具を着けた時と変わらないので、簡単に尻尾を切る。

 

【挿絵表示】

 

 飛び上がった時に溜めるのも変わらずに――。

 

 ペッ!

 

 その時、痰を吐くような音がして、背中に白いものが落ちて来た。

 それと同時に頭と脚だけ残して雪玉になるアレクトロ。

 

【挿絵表示】

 

 犯人は【ギアノス】である。

 つまり氷液を掛けられたのだ。

 

「オイてめぇ! 邪魔すんじゃねぇよ!」

 悪態を付いても動ける訳じゃないので焦るアレクトロ。

 だが【リオレウス】が降りて来た風圧で砕けたので、安堵しつつ少し離れる。

 

【挿絵表示】

 

 そのせいで溜め攻撃が出来なかったのは少し悔しいが。

 

 【ギアノス】に気を取られてやられるのはまずいので、【彼】にわざと突進させたりブレスを当ててもらったりしながら掃除する。

 

【挿絵表示】

 

 かなり数が少なくなった頃に、とうとう相手が怒りだした。

 特大の咆哮から発せられる音の衝撃波を、今度はどうにかガードする事によって強引に耳を塞ぐのを防ぐ。

 

【挿絵表示】

 

 直後に行われたバックブレスを躱せたが、露出した肌が熱風に煽られて非常に熱い。

 

 だが火傷を気にしている場合ではない。

 

 大きく後ろに飛び退った相手は、こちらの体勢がろくに整わない内に向かって来る。

 避ける事に徹し、普段ならば一撃入れる突進終わりのつんのめりにも攻撃せずに我慢する。

 ブレスやホバリングからの降下など、とにかく大きな隙が出来る時だけ攻撃し、普段は出来る足元付近の攻撃も控える。

 なぜなら足踏みされただけでもけっこうなダメージになるからである。

 

 とにかく普段より時間が掛かっても良いから慎重に……。

 

 何度か冷や汗をかく場面もあったし、無傷ではいられなかったが、そうやってやっていく内に【リオレウス】はとうとう足を引き摺り、やがて倒れて動かなくなった。

 

【挿絵表示】

 

 なんだ、意外に出来るもんだな。

 

 【裸で討伐】という偉業(というか馬鹿な挑戦というか)を成し遂げたにもかかわらず、喜びよりも呆気なさの方が強かったアレクトロであった。




これを読んだ友人には、「あるある。懐かしいね」と言われました。


ちなみに私は「2(ドス)」時代でも「フロンティア」でも上位レウスの裸ソロ討伐(大剣&ハンマー)を成し遂げていますので、私のキャラであるアレクトロとベナトールは下位なんか余裕で出来るはずです。
(脳内プレイでは私が実際に操作するより彼らは上手く立ち回っていますので)

ただし本文のように簡単には出来ず、被弾しまくって何度もキャンプ送りにされては上位では時間ギリギリで討伐成功したんですけどね。

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