今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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この話の冒頭部分は「2(ドス)」のオープニングムービーの一部がモチーフになっておりますので、それを見た事のある人ならば「ああ、あの場面か!」となると思います。

ちょっと長いです。


村消滅の危機

   

 

 

 

 【ドンドルマ】の一角、そこには【古龍観測所】という施設がある。

 施設名の通り主に【古龍】について研究、観測をする所で、世界各地を回っている【古龍観測隊】は、ここから派遣されている。

 神出鬼没の【古龍】を、例え噂の類いでも気球で上空から観測、もしくはハンターを使って情報収集し、その情報が正確であると判断されると一早く、影響があると思われる各町村に伝え、警笛を鳴らすために存在している。

 

 そこにいる年老いた竜人族の研究者の元に、脚に伝書用の筒を付けた鷹が舞い降りた。

 

「ふむふむ……」

 頷きながら読んでいた竜人族の老人は、傍らに立っていた比較的若い竜人族の助手に、声を掛けた。

「再び【フラヒヤ山脈】で目撃報告があった。まだ移動報告は来ていないのじゃな?」

「はい。【雪山】での移動報告はまだ受けていません」

「ふむ。そこでの生息も充分に考えられるが……。【シュレイド地方】で報告があった個体は移動したのじゃな?」

「はい。【セクメーア砂漠】で発見されたとの報告が入りました」

「【ゴルドラ地方】付近で報告のあったものは?」

「【テロス密林】に移動したとの事です」

 

二人は机の上に広げた地図を見ながら、発見場所と移動場所とを指差しあって、お互いに確認している。

 

「確か【密林】の近くに村があったな?」

「はい。【ジャンボ村】ですね」

「警戒を怠らぬように村長に伝えてくれ。場合によっては村人全員を非難させる準備をするようにと」

「畏まりました」

 

 

 丁度その頃、その【テロス密林】で狩りを行っているハンターがいた。

 彼らは村付きのハンターで、それぞれに【弓】【狩猟笛】【ガンランス】【太刀】を使っているのが見える。

 防具が【ボーン】シリーズ、【ガレオス】シリーズなどそれ程良いものではない事を考えると、また武器も【ボーンホルン】【アイアンガンランス】などの初期装備をしている事を考えると、まだ駆け出しなのだろう。

 

 彼らは今、血相を変えて必死で【あるもの】から逃げ回っていた。

 

 【それ】はすぐ後ろまで迫って来ており、彼らが折れて倒れた大木を飛び越えた途端、それがいとも簡単に踏み折られた音を背後で聞いて恐怖した。

 思わず振り向いてしまった四人だが、そんな事をしている場合ではないとばかりに走り出す。

 

 だが、嘲笑うかのように【それ】は彼らの頭上を飛び越えた。

 

 緊急回避で四散した彼らは、急に降り出した雨が土砂降りになった事に気が付いた。

 ゆっくりと立ち上がった彼らが見たものは、激しく打ち付ける雨に紛れて見える、ドラゴン型のシルエット。

 【それ】が唸り声を発するや否や、暴風雨が彼らを襲った。周りでは雷が轟いている。

 煽られて体勢を崩しつつ踏ん張っていると、今までの天気が嘘であるかのように、カラッと晴れた。

 

 濡れた【ボーンヘルム】の角の先端から、雫が一滴落ちる。

 その音を合図にするかのように、彼らは武器を一斉に構えた。

 

 やるしかない!

 そう思ったのだ。

 

 一番背後に控えていた者が、【弓】を引き絞る。

 キリキリと弦を軋ませながら、狙いを定めて目を細めた。

 【それ】は、まるでそうされる事を見越したかのように深く息を吸い込んだ。

 

 ビシュンッ!

 

 喉を反らせた一瞬を狙って矢が放たれる。

 が、それを吹き飛ばしながら、氷の交じったブレスが彼らに襲い掛かった。

 

 

 一部始終を目撃していた【古龍観測隊】から、村付きハンターが全滅したとの報告を受付嬢が受けた。

 それを知らされた【ジャンボ村】の村長は、悲痛な面持ちで次のように言った。

 

「……。分かった。では、村人全員の避難の準備をしよう……」

 

 【ハンターズギルド】の支部として派遣された受付嬢に向けて放たれたその苦し気な発言は、村を捨て、この村が消滅する覚悟をしなければならない悔しさが滲み出している。

「お待ち下さい村長、それはあくまでも最終手段として頭に置いておいて下さい。【古龍】がハンターと接触した時点で、【観測隊】が既に【ドンドルマ】に伝書鷹を飛ばしていたんです。その連絡によると、村付きのハンターが手に負えない場合に備えて【街】のハンターがサポートするべくこちらに派遣される手筈になっていたとの事。恐らく後一週間程でこちらに着くでしょう」

 

「おぉ! 有難い」

 村長は、顔を明るくして言った。

 

 幸いにもというのか、【古龍】が出現したおかげで小型のみならず大型【モンスター】も影を潜めており、村の近くで被害に遭う事も無さそうなので、悲しいがハンターがいなくなった今でも当分の間忍んでいける。

 遺体を確認しに行った村人達が埋葬し、悲しみに沈みつつも、村は派遣される【街】のハンターを期待しながら待った。

 

 

 

 ハンターが村に向かう少し前の事。

 【大衆酒場】に集められた【ドンドルマ】のハンター達は、【ギルドマスター】が重々しい口を開いて発した言葉にどよめいた。

 

「【ジャンボ村】で、ハンターが全滅したそうじゃ」

 

 村のハンターといえども【モンスター】を狩るべく訓練された連中である。

 聞けば駆け出しの四人であったというが、いくら駆け出しといえども四人全員が全滅する事など、有り得ない。

 

 それはつまり、異様な事だと言えた。

 

「――それは、村近辺にはいてはいけない程の【モンスター】がいた、という事でしょうか?」

 そう尋ねた一人を含め、そこにいる全員が、【マスター】の次の言葉に戦慄した。

 

「【古龍】にの、やられたそうじゃ」

 

 一瞬静まり返った【酒場】が、ザワザワと騒ぎ始めたので【マスター】が静める。

「どんな【古龍】ですか?」

「【古龍観測隊】からの報告によると、恐らく【クシャルダオラ】だと思われる。少し前に『接触した』との報告を受けたのでサポートを出すべくここのハンターを選ぶつもりでおったのじゃがの、直後に『全滅した』との報告が来てしもうた。非常に残念な事じゃ」

 

 【マスター】は悲痛な面持ちで俯いた。

 同じような表情になっている者が数人いる。恐らく【ジャンボ村】出身の者達であろう。

 

「村に近付いてしまえば、【ジャンボ村】の消滅は免れんじゃろう。そこで直ちに村に向かってくれる者を募集する」

 【古龍】の能力は天災クラスと言われている。村が一夜にして消滅する事も充分に有り得るのだ。

「オレが行きます!」

「いいえ、私に行かせて下さい!」

 特に村出身と思われるハンターが、我も我もと手を上げた。

 

「この調子じゃ、俺らの出番は無さそうだな」

「そうかもね」

 その一角で、アレクトロら四人は呟いていた。

 

 

 ところが、派遣されたハンターが苦戦し、しかも再起不能に陥ったとの連絡が入ったのだ。

 派遣されたハンター四人は【上位】ランクである。その彼らがやられたとなれば、かなりの強敵である事は間違いない。

 連絡によると、どうやら今までの【クシャルダオラ】とは違う動きをするとの事だったのだが……。

 

「……。もしや、【特異個体】か?」

 連絡を聞いたベナトールは、そう呟いた。

 

「んな馬鹿な! そんな奴が村付近に現れるなんざ、聞いた事ねぇぜ!?」

 【特異個体】とは依存のあらゆる【モンスター】に近年現れるようになった強個体の事で、通常種とは違う攻撃をしてみたり、アイテムや状態異常などに対する耐性が異常にあってかなり効きにくくなっていたり、体の部位が異常に発達したりしている個体の事である。

「相手は【古龍】だからな。どこで発見されるか分からん」

「そりゃそうだが……」

 【特異個体】のクエストは、【HC(ハードコア)クエスト】と呼ばれて通常のランクのハンターでは受けられない特殊なものに変わるため、【SR(スキルランク)】もしくは【GR(G級ランク)】の資格を持つハンターにだけ狩猟を許されるものなのだ。

 

 今現在、【ジャンボ村】出身者でSRの者は二人との事。

 

 ちなみにアレクトロら四人の中でその資格を持つ者は、アレクトロとベナトールの二人のみ。

 

 そして、その二人に白羽の矢が立った。

 

 他にもSRの者は少なからずいるのだが、出身地である【ココット村】から【ジャンボ村】への連絡船が出ているのを利用してしょっちゅう村を訪ねていたアレクトロに対し、知った顔があるなら村人も安心するだろうという事で薦められたのだ。

 彼も村長や村人には何かと世話になっているので、少し他人と組むのは気に食わなかったが引き受ける事にした。

 

 村出身のSR組は【古龍】の【特異個体】は初めてだというので、少しでも人数が多い方が良いとなってベナトールも参加する事になった。

 ベナトールはSRどころかその上のGRの資格を持っているので、これ程心強い事は無い。

 GR自体は下位にあたる彼だが【特異個体】の狩りは慣れており、【古龍】も何度も狩った事があるとの事。

 

「是非、ご指導をお願いしますっ!」

 村出身者に元気良く頭を下げられたベナトールは、苦笑いした。

 

 

 

 【アプトノス】の引く竜車で【ジャンボ村】まで向かう間に何事も無いという訳がなく、移動に支障のある何体かの大型【モンスター】を狩猟、あるいは撃退しながら進む。 

 だが大抵はそこに生息していたというよりは【クシャルダオラ】から逃げて来ていたと言った方が良く、戦闘に持ち込むより先に向こうから逃げていく方が多かった。

 それよりもむしろ『戦闘どころではない』もしくは『眼中に無い』といったふうだったため、【クシャルダオラ】から逃げるのに精一杯なようだった。

 

 逃げるにしても移動先で生息するにしても、既にそこで生息している【モンスター】の縄張りに入るという事になるため、単に逃げるだけではなくて縄張り争いに巻き込まれたりするのは、逃げた【モンスター】の事を考えると気の毒にさえ思えた。

 

 元いる【モンスター】は、暗黙の了解になっているのか街道付近にはあまり出没して来ないため、そういう意味では『比較的安全に』旅を進める事が出来た。

 

 

 村に着いた一行が村長に挨拶に行くと、アレクトロの姿を見た村長が「君が来てくれたのかい!?」と驚いた顔をした。

「久しぶりです村長。いや募集が掛かったもので」

 照れ臭そうにするアレクトロに、「【HCクエスト】を受けられるハンターって、そうはいないんだろう? 随分と出世したもんだね!」と嬉しそうに言う。

「いやそれほど珍しい事ではないですよ」

「そうなのかい?」

「はい。他の者も少なからず行きたがってたんですがね。やっぱ世話になってますからねこの村は。なので【ギルドマスター】が俺を薦めてくれたんです」

 

「【特異個体】は通常種どころか上位種とも比べ物にならないくらい強いんだろう? 現に先に派遣された上位ハンターは今でも医務室で起き上がれないまま唸っている。君達まで二の舞にならないかい?」

 心配そうな村長。目の前で瀕死の上位ハンターが担ぎ込まれて来れば当たり前だろう。

 

「村長。オレ達はSRハンターです。【特異個体】の狩りは慣れています。大船に乗ったつもりで――」

「【古龍】狩った事ねぇあんたの大船じゃあ、ちと心許ないかもな。せいぜい小舟程度だろうぜ」

 

 村出身者の一人の発言に、ニヤニヤ笑うアレクトロ。

 

「アレクさんよ。こういう時は暗黙の了解で黙っといてやれよ。それが優しさだろう」

 村出身者のもう一人がぼやく。

「根が正直なもんで悪いな。てか、むしろ隠して後で不安煽るより、逆に優しいと思うがな?」

「先に連絡が来ていたから分かってはいたよ。君達二人がフォローに回るとの事だったが、もう一人は仲間なのかい?」

「あぁ、まだ紹介してませんでしたかね? ここんとこなぜかよく狩りに同行してくれるようになったGRハンターなんです」

 

「おいアレク、『なぜか』は余計だと思うんだが?」

 

「GRハンターとは、また心強い!」

「GRと言っても、まだ下位ですがね。――ベナトールという者です。以後お見知り置きを」

「こちらこそよろしく!」

 二人は握手を交わした。

 

 

 医務室に様子を見に行ってみると、まだ包帯だらけで唸っている者もいた。

 一週間ほど経ってこの状態なのだから、余程重症なのだろう。

 村出身者同士が悔しそうに言葉を交わしている。

 

「随分派手にやられたんだな……」

「……面目無い……。まさか、【特異個体】だったとは……」

「……普通の上位【古龍】ならば、遅れを取る訳が無かったんだ……」

「それは分かってるさ。普通種だと思っていたから安心して見送ったのだ。そして今頃【街】で、我々は『無事討伐』の知らせを受けてた」

「だよなぁ、それでお前らが帰って来たら祝杯上げるつもりだったのによ。お預けになっちまったぜ」

「……すまんかったな……」

「良いって事よ。代わりに俺らがやっつけてやっからよ。ゆっくり休んでな。でよ、お前らが帰ったら改めて祝杯上げようぜ!」

「だな。それまで待っててやるから早く治せよ!」

「……ありがとな……」

 

 

 一晩休んで次の日に出発した一行は、【密林】の中があまりにも静かなので不気味さを感じた。

「鳥どころか虫の声すらしないとは……!」

「【アプトノス】がいねぇとなると、食料確保に困るなこりゃ」

 

 村出身者が頭を掻いている。

 

「俺のスタミナ維持は【元気ドリンコ】なんだが……。なんなら分けてやろうか?」

「有難いが、【こんがり肉】の余裕がまだあるから、それが足りなくなったら貰うとするよ」

「了解」

 

「ところでよ、出発前に医務室に寄ったらよ。あいつが『【閃光玉】は使うな』って言ってたんだがよ、ありゃどういう意味だい?」

「【クシャルダオラ】に【閃光玉】を使うのは、優位に持ち込むための常識のはず。それを『使うな』とは?」

 二人が納得いかないとばかりに聞いて来た。

 

「知りたいか?」

「あぁ。是非教えてくれ」

 そんなふうに道々話しながら移動していると、急に雨が降り出した。

(やっこ)さん、近いらしいぜ」 

 油断無く身構えた四人の前方に、目的の【クシャルダオラ】が舞い降りた。

 

「これが、【特異個体】の姿か……!」

 

 思わず感慨の声を上げる一人。通常種と似てはいるが、より輝かしい姿をしており、角も発達している。

 そして一番違いが目立つのは、目の色なのではないだろうか。

 通常種が水色または翡翠色なのに対し、【特異個体】は金色をしているのだ。

 ちなみに鼻先の赤い部分がより目立つので、「赤鼻」と呼んで通常種と見分けている輩もいるそうな。

 

「【閃光玉】使ってみな」

 アレクトロの発言に、「使ってはいけないのではなかったのか?」と怪訝そうに一人が尋ねる。

「使えば分かるさ。『使ってはいけない』理由がな」

 そこで一人が当てる。

 

 タイミング良く振り向き様に光った【閃光玉】は、飛んでいる最中の【クシャルダオラ】の目を眩ませた。通常種ならばそこで落ち、無様にもがくはずである。

 ところが眩しさに逃れるかのように見えない程高く舞い上がり、周囲に盲滅法(めくらめっぽう)にブレスを放ち始めたのだ!

 

 しかも【特異個体】の風ブレスは、竜巻の塊を吐き出すかのような強ブレスである。

 そのブレスはあまりにも強力なために、一瞬だけだがその場に残って回転し続けるのだ。そんなものにまともに当たったら、全身が引き千切られるだろう。

 なのにそれをやたらめったら吐き出すもんだから、すぐに消えるとはいえ周囲一辺が竜巻の塊だらけになるのだ。

 

「な、分かったろ?」

 慌てふためいて逃げ惑う二人に、可笑しそうに言うアレクトロ。

 ベナトールはこれも経験だとばかりに、黙ってアレクトロに任せている。

 まあ垂直に飛び上がるので影の下は安全だし、ブレスの後は必ず落ちてもがくので、それを攻撃チャンスに出来るといえば出来るのだが。

 

 掻い込むように前脚を叩き込む「猫パンチ」と呼ぶ攻撃には、周囲に小さな竜巻が生じる。

 通常【雪山】でのみ効果のある氷を纏ったブレスを、氷の無い狩場である【密林】でも吐く事がある。

 空中でチョンと足の爪で真下を攻撃した時は、必ずS字状に飛行しながらの氷ブレスを吐く。

 

 氷ブレスも多彩になっており、ただ真っ直ぐ吐くだけでなく滑空しつつ吐きながら向かって来るとか、怒り時には前方周囲に氷を湧き出させながら吠えるとか、色々使って来る。

 普通のブレス(強ブレス)も多彩で、ただ前方に吐くだけでなくて飛びながら三連続で吐くとか、地上でジャンプしながら背後に回り、直後に方向転換して背後から吐くとか色々やってきた。

 

 通常種よりも【風】を操る技術に長けているようで、唸りながら竜巻を発生させて周囲に拡散させる(回転しながら舐めるように周囲を回りつつ遠ざかるため、下手をすると背後から竜巻に襲われて吹っ飛ばされる)とか、威厳に満ちた歩き方をしながら砂嵐を発生させ、それによって姿が隠れてこちらが焦っている間に見えない所で竜巻を発生させて巻き込もうとするとか、これも多彩だった。

 

 空中攻撃も足爪、尻尾、体ごと前足で引っ掻くだけでなく、三連続で叩き付けるように真下を攻撃しつつ向かって来たりした。

 それらの攻撃一つ一つを、コンビ二人にフォローされながら、村出身の二人は体験しつつ学んでいった。

 

 

 戦闘に入ると主にベナトールが主権を握って頻繁にこかせたりスタンさせたりしていたので、(彼以外が多少苦戦しつつも)比較的安定して攻撃を続けられた。

 アレクトロも溜める時間がけっこうあったりしたため、強力な攻撃を何度も叩き込めた。

 【特異個体】とはいえ下位に当たる【古龍】だったようなので、【古龍】に関しては初心者の二人がいるPTだったがそれ程の脅威も無く討伐に成功。

 主にベナトールの活躍だと分かっている二人は、安堵の溜息を長く吐いた後、まず彼に礼を言った。

 

 まぁしゃあねぇわな。オッサンの活躍は抜きん出てるもんなぁ。

 

 多少嫉妬したアレクトロではあるが、悪い気はしなかった。

 

 

 

 村に帰って村長に報告するや否や、涙を浮かべながら両手で手を取られたので、アレクトロは焦った。

「お、俺はそこまでの働きはしてません。主にオッサンが――!」

「謙遜せずとも【特異個体】の【古龍】をやっつけたという事自体が、我々にとっては驚愕すべき事なのだ。その参加者である君が働いていないなど想像出来る訳がないだろう? もっと自身を誇るべきだよ? 君は」

「で、ですが――」

「君は何のために来てくれたのだね? この村を救いに来てくれたんだろう? ならばその目的を果たせた見事さは誇るべきだ。有難う【勇者】よ。村を代表して君を表敬しよう!」

 

「とと、特別扱いしないで下さいっ!」

 アレクトロは真っ赤になってわたわたした。

 

 もちろん村長は他の三人に対しても同じように手を差し伸べながら礼を述べ、それぞれに対して違った称賛の言葉を掛けたのだが、それでもアレクトロは恥ずかしくて、今すぐ【飛竜】のように自分の部屋まで飛んで帰りたい気分だった。

 

 今すぐあいつらと変わりてえぇっ!

 

 かつて【兄妹】の関係だった【リオス科】達を、羨ましく思ったアレクトロであった。  




アレクトロもベナトールも「死んで覚えろ」タイプなので、傍から見れば結構酷い教え方をします(笑)

ちなみにこれを読んだ友人には「特異個体の古龍なのに、意外にアッサリ討伐出来たんやね」と言われました。
ふ、二人のフォローが的確だったんですっ!(言い訳)

「2(ドス)」のオープニングで登場していますが、この世界の連絡手段として飛ばす鳥は「鳩」ではなく「鷹」のようです。
なので「伝書鷹」という表現にしています。

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