退屈な日々を忘れたい俺がなぜバンドの手伝いをしているんだ......   作:haru亜

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友希那視点から始まります。


第5話 世界最高峰と謳われるバンド 〜前編〜

CiRCLE 3月21日 木曜日 祝日

 

月が灯り、夕日が沈んだ頃。

あの人が死んでから、1ヶ月の時を過ぎようとしていた。

一度は掴めた手。

けれど、振りほどいてしまった感触は、未だに昨日のことのように覚えている。

すると

 

「ゆーきなっ♪」

 

ポンっと背中を押されボーッとしていた意識を戻す。

リサは練習をし始めた日から前のような明るさを少しずつ取り戻していた。

 

「……リサ」

 

思わず元気の無い声を出してしまい、それで察したのかリサは一拍置いてから

 

「…中入ろっか」

 

そう言ってCiRCLEの中に入っていった。

 

「……」

 

珍しく物静かな店内を見渡す。

私にとって、この場所はあまり来たくない場所であり、リサに嘘を吐いてしまった理由でもあった。

 

なぜなら、ここはあの人が『大好き』と言った場所でもあり、あの人を手伝わせる為にここで歌ったこと。

彼の正体を思い出した時は声には出さなかったが本当に驚いた。

それから起きた出来事を走馬灯のように思い出し、その頃の思い出に浸っていたい気持ちが抑えられなくなりそうだからだ。

そして、そのままここ3週間ほど経った。

 

(…あの人は、もうこの世のどこにも居ない…と何度も言っているでしょう…?)

 

心のどこかで生きていて欲しいと思っている自分を否定するように、そう思ってしまう自分。

するとリサが受付まで私を引っ張っていった。

しかし

 

「あれ?

まりなさんどこ行ったんだろう?」

 

リサが言うように、友希那も辺りを見渡したが、いつも受付にいるまりなさんが居なかった。

するとカランカランと扉が開く音が聞こえて振り向くとそこには

 

「あっ…湊さん」

 

「友希那先輩っ!」

 

『Afterglow』と『Poppin'party』のメンバーが揃って入ってきた。

 

「…美竹さん」

 

「…どうも」

 

「ええ…」

 

若干ピリピリとした蘭との会話が終えると香澄が

 

「えーっとえーっと…。

い、良いお天気ですねっ!」

 

空気を察したのか、お世辞を言う。

ちなみに夜空は雨が降りそうなくらいに、どんよりと曇っている。

 

「思いっきり曇ってるけど…」

 

蘭が少し控えめに言う。

 

「あうっ…!」

 

しかし香澄にダメージが入る。

すると蘭の隣にいたつぐみが

 

「今日はお2人だけで練習ですか?」

 

とリサに聞く。

それをリサは流暢に返した。

 

「ううんっ。

アタシと友希那がちょっと早く来すぎちゃっただけで、紗夜たちは後で来るはずだよっ☆」

 

「そうなんですね。

紗夜さんに言っておきたいことがあったので良かったです!」

 

「ん?紗夜に何か用事でもあったの?」

 

「はいっ。

実は、羽沢コーヒー店で期間限定のフライドポテトを出すことにしたんですよ」

 

「あははっ☆

それは紗夜が喜びそうだねー♪」

 

「はいっ!」

 

リサと話して会話が弾んでいるのを聞いていると、その騒ぎに駆けつけて来たのか、またカランカランと音が鳴った。

 

「どうしたのかしら?

みんな元気が無いように見えるわ!」

 

バンド『ハローハッピーワールド!』のメンバー5人が入って来た。

更にその後ろから

 

「あれ?

彩…ていうか、パスパレのみんなじゃん♪」

 

「こんばんは、リサちゃん。

今日も練習?」

 

「そそっ♪

彩たちは、どうしたの?

パスパレがここに来るなんて珍しいね」

 

「うんっ。

実は今日。

コーチの佐々木さんが許可してくれたおかげで、1回だけ外のライブハウスで」

 

彩が話していると

 

「あたし達がパスパレって事が周りにバレないようにするなら練習して良いって言われたんだー」

 

いつも通りだが、どこか健気な日菜がぽむっと顔を出してきた。

そして

 

「リサちー。

おねーちゃんどこー?」

 

「紗夜はもうちょっとで来ると思うんだけど…。

って、噂をすれば…。

おーいっ、紗夜ー!」

 

リサが手を大きく振って呼んだ先に

 

「なんですか今井さ…日菜?

それに…皆さんお揃いで、どうかしましたか?」

 

「あっ、おねーちゃんっ」

 

そう言って、トテトテと日菜は紗夜の方へ歩いて行った。

すると紗夜の隣にいたあこが

 

「あれっ!?おねーちゃん!」

 

「よっ、あこも今から練習か?」

 

「うんっ!

もしかして、おねーちゃんも?」

 

「ああ、今から一緒に演るか?」

 

「やるっ!!やりたいっ!!」

 

宇田川姉妹の会話に

 

「いや、やらないって」

 

蘭が割って入った。

そして段々と収拾がつかなくなってくるこの状況。

 

「…?」

 

前まで無かった新しい扉に気づくと共に、その扉からまりなさんが勢いよく飛び出してきた。

 

「ご、ごめんねみんな!

ちょっと立て込んでて気づかなかったよ!」

 

「何かあったんですか?」

 

リサが聞くと

 

「なんというか…1ヶ月くらい前にここに来るっていうアポがあったんだけど、それがちょっと大変な事になるかも知れなくて…」

 

『大変な事?』

 

声を揃えて言うとまりなさんはハッと我に戻り手を横に振って

 

「う、ううん!!

みんなが気にすることじゃないから。

それに、いつもみたいに練習しに来たんでしょ?

これ、RoseliaはAスタジオで、AfterglowはBスタジオで……」

 

そう言って各5バンドに5つの鍵を渡して、背中を押して急かすようにそれぞれスタジオの中に入れられた。

 

一連の行動を起こしたまりなさんがラウンジに戻るとオーナーが

 

「どうしたんだい?」

 

と聞いてからお茶を啜る。

 

「余計な心配させちゃうところでした…」

 

オーナーが不思議な顔をする中、まりなさんは冷や汗を拭った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Aスタジオ

 

「なんだったのかしら?」

 

友希那が呟く。

 

「わかりません。

にしても…前まであんな扉あったかしら?」

 

紗夜が言う。

 

「んー?無かったと思うけどな〜。

そういえば、あそこって前まで改装中って札が無かったっけ?

燐子覚えてる?」

 

リサが聞く。

 

「えっと……確かに…改装中の札が立て掛けられてました…」

 

燐子が肯定した矢先

 

「あこ、あの中入ったことあるよ?」

 

「えっ!?」

 

「そ、それっていつの…こと?」

 

「えーっとね。

つい最近で。

まりなさんが『あそこはラウンジだよ』って、教えてくれたよっ!」

 

「ラウンジ…?

休憩とかに……使うのかな…?」

 

「あの中すっごい快適だよっ!

ふかふかのでーかっいソファがあって、ジュースも飲める上にアイスも食べれるんだ〜」

 

あこが嬉しそうに話す。

 

「お〜っ、それ良いねっ♪

また後で行ってみようよっ☆」

 

「今は何やら忙しいみたいですから、また今度にしましょう今井さん」

 

「そうだねっ☆

じゃあ〜次回の練習が終わったらみんなで行こっか♪」

 

「それは置いておいて。

とりあえず、今は練習に専念しましょう」

 

「…それじゃあ、FIRE BIRDのサビの部分から」

 

黙々と準備していた友希那が言い、それぞれ配置につく。

そうして、どこか抜け落ちたようなスタジオでの練習が始まった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

練習終了後

 

スタジオを出ると外は来た時よりも暗くなっていた。

 

「あっ」

 

「…美竹さん。

それに……戸山さん」

 

「はいっ!」

 

「と…丸山さん」

 

「は、はいっ」

 

「………それに弦巻さん」

 

「ええっ!」

 

「……別に…わざわざ名前を呼んだだけで返事をしなくても良いのよ?」

 

友希那が少し困ったように言うと香澄が

 

「はいっ!…あっ!

じゃなくて、わかりましたっ!」

 

それは返事でしょう。

と言いかけたが飲み込んだ。

すると蘭が

 

「あたし達は、練習が終わったので帰るだけです」

 

そう言った。

 

「私もっ!」

 

香澄が元気に返事をして、それに続けるように

 

「私たちも充分練習出来たから、そろそろ帰ろっかな。

って思ってたところだよ」

 

彩がそう言い、最後にこころが

 

「みんなと一緒に帰るの?

なんだか、とても楽しいことが起こりそうな予感がするわ!」

 

謎の予兆を感じていた。

そのまま放っておいて受付に来ると、やはり誰も居ない。

それに何やら店内の様子がおかしい。

周りを見るとガチャ…と扉の開く音がした。

 

「そんじゃ、また明日。

その時までにちゃんと考えをまとめておいてくれよ」

 

1人の男が手をヒラヒラとさせながら出てきた。

その後ろに、暗い顔をしたまりなさんと何とも言えない表情をするオーナーの姿。

すると男が通り過ぎて行こうとした時

 

「待ってください」

 

紗夜が引き止める。

まりなさんたちの表情を見て、ほんの少し違和感を覚えたのだろう。

 

「ん?なんだ?オレ?」

 

体を横に向けて振り返ったと同時に、男の姿を見て紗夜は確信した。

 

「あなた…来閃 鬼龍さん…ですよね?」

 

『?』『!』

 

周りはキョトンとしていた。

けれど、一部の音楽雑誌などを見ていた者はこの男の正体に気づいた。

 

「そうだけど…。

オレになんか用事でもあるのか?」

 

「いえ。

ただ…どうして世界トップレベルのギタリストであるあなたがここにいるのか気になっただけです。

声をかけたのがご迷惑でしたら謝ります」

 

「えっ!?

いやいや、大丈夫。

てか、オレがここにいる理由って言われてもな…。

まぁ…そこの人たちに聞けばわかるから良いんだけど…」

 

そう言って、鬼龍はオーナーを指差した。

そして、その口から発せられた言葉は

 

「オレがここにいる理由。

それは、このCiRCLEを潰してバンドマンを育てる教室を作るためだ」

 

『えっ!?』

 

あまりの衝撃的な発言で思わず声が出てしまった。

すると背後から

 

「ああっ!」

 

と驚きの声が聞こえて振り向くと声の主はひまりだった。

 

「こ、この人。

前にテレビで映ってた来閃育成音楽コーポレーションの社長さんだよっ!」

 

「しゃ、社長さん…?

それに…来閃育成…って確か……」

 

燐子が呟くと共に、一気に謎が迫ってきた。

しかし、それを解消するかのように鬼龍が

 

「オレを知ってるなら話は早い。

まぁ、簡単に言うとオレはバンドを育てる為に専門企業の社長をしてんだ。

ただ開業してからまだ1年足らずで日が浅い。

だから、今はどうしても土地が欲しくてね。

そこで丁度良い感じの場所にあるこのCiRCLEを潰して、新しい教室を作るってこと」

 

話し方に聞き覚えがあった。

思い出しそうになった私は、少しでも他のことに気を紛らわすためにも、尋ねることにした。

 

「どうして、CiRCLEを選んだのかしら?」

 

「んー…ここには学生がよく通る。

それに、路上でライブをする人が多いし、地下のライブステージを使ってライブをすれば、その中から優秀な人材が得られるかも知れない。

まぁ、ざっとこんなもんだな」

 

回答は至ってわかりやすくシンプルだった。

けれど、それでも納得がいかない自分がどこかにいた。

すると

 

「あ、あの…!」

 

燐子が少し声を張って呼びかけた。

 

「ん?どうした?」

 

「あの…ここを…CiRCLEを潰すこと…変更は出来ませんか…?」

 

「…理由を聞いても?」

 

「ここは…たくさんの人と出会って……ぶつかり合ったりして……。

初めて……引きこもっていた自分を…好きになれた…。

音楽を通じて…初めて気づかせてくれた……。

1人ひとりが…繋がって…互いに認めて…高め合っていく…。

ここは……わたしにとって…そんな場所です。

だから、お願いします……大切な居場所……だから…!」

 

頭を深く下げる燐子を見て、リサとあこが

 

「あ、アタシもお願いします!」

 

「あこからもお願いします!」

 

2人も頭を下げた。

すると

 

「あたしも。

白金さん達と同じ意見です」

 

「わ、私からもよろしくお願いします!」

 

と言う蘭とつぐみに続き、香澄とたえまでも

 

「わ、私も私もっ!

ここはみんなで一緒にキラキラドキドキできる場所だから!

もっといっぱい、みんなでキラキラドキドキしたいですっ!」

 

「私も、ここ大好きだから」

 

そう言って次々と頭を下げていく5バンドのメンバー達。

そして、頭を下げられた鬼龍の答えは

 

「変更はしない」

 

一瞬の迷いも無くはっきりと断った。

それに続けて

 

「ま、確かに他の場所なんていくらでもある。

でも、オレは1度ここを取ると決めたら曲げない主義なんだよ。

ここはもう2週間ちょい経てば会社の土地になるから、早々に他の場所に移って、諦めることをオススメする」

 

『…っ!!』

 

「オレを諦めさせたいなら…。

せめて、オレと交渉出来るようになってからだな」

 

言い返すことも出来ない。

元々ダメ元で頼んだだけだったから。

しかし、こんな時にも彼の言葉を思い出した。

 

『交渉ってのは、自分自身にも賭ける物があり、話の主導権を他のことでカモフラージュしながら、密かに握ることが第一の条件だ。

それから、相手にも交渉にメリットがあることを自覚させることが大事だぞ。

メリットが無い勝負に、相手が乗ってくる訳無いからな』

 

(あの時に言っていた交渉の初歩。

…これを上手く使えれば…)

 

1つ思い出すと共にもう1つ彼の続きの言葉を思い出した。

 

『まぁ、コミュニケーションが苦手な友希那には難しいだろうけどな』

 

(余計なお世話よ)

 

その時も同じ言葉を返した。

そして頭を上げてから

 

「わかったわ」

 

『っ!?』

 

「ゆ、友希那!?」

 

リサが声を上げるが、一歩前に出た。

 

「わかってくれたならそれで良い。

そんじゃ、そろそろオレは帰らせてもら」

 

「1つ、交渉をしましょう」

 

「…本当に交渉を持ちかけるとは大したもんだ」

 

本当に驚いたような表情を浮かべた。

 

「まぁ…でも。

大した内容じゃないと判断すれば、オレは帰るぞ」

 

「良いわ。

少し待ってちょうだい」

 

「?」

 

振り返ってオーナーの方へと足を運んだ。

そして

 

「このお店。

CiRCLEを少し預からせてもらっても良いかしら?」

 

「預かるって、この場所をかい?」

 

「この交渉が上手くいけば、この店は潰されない可能性がある。

逆を言えば、この可能性しかCiRCLEを残す方法は無いわ」

 

当然、オーナーは悩んだ。

その出した答えは

 

「ま、良いだろう。

そろそろ隠居するつもりだったし。

精一杯頑張ってやんな」

 

簡単に言ったように聞こえる。

しかし、救う可能性を見出したからこその決断でもあった。

 

「ありがとう」

 

自分でも気づかない程に小さく微笑んだ。

そして鬼龍の方へと再び足を進めて言い放った言葉が

 

「1週間後、ここでバンド対決をしましょう」

 

『えっ!!?』

 

全員が驚愕し、鬼龍までもが目を見開いていた。

 

「私たちにライブで勝てば、あなたの会社にCiRCLEの所有権を渡すわ。

ただし私たちが勝てば、あなた達はCiRCLEの所有権を今と同じように存続させ、この店に2度立ち寄らないこと」

 

勝つか負けるか、シンプルな交渉だった。

 

『っ!!?』

 

「ほー…なるほど。

んー、まぁ細かいのは良いか。

2週間待つより回収するの早いし、何よりこんなに面白い交渉されたのは久しぶりだ」

 

一通り何か呟いた後に鬼龍は少しほくそ笑んで言う。

 

「良いよ。

その交渉乗った」

 

「それじゃあ、ライブの勝敗についてだけど…」

 

「1週間後のライブは投票形式とする」

 

鬼龍は話を遮って切り出した。

 

「ライブ観客が満席になるとして、2000人。

君らが観客から4割以上の票を獲得したら君らの勝ち。

そんで、俺たちが観客から6割以上の票を獲得したら俺たちの勝ち。

これが条件だ」

 

「…あなた達にメリットがあるようには見えないけれど…」

 

「そうだな。

でも、オレのバンドと君たちとの間に、どれだけの差があるか。

それがハッキリする」

 

その言葉を聞いた瞬間、少しモヤっときた。

 

「その条件…少し変えさせて貰うわ」

 

「?」

 

「私たちも6割以上獲得したら、私たちの勝ち。

それで良いかしら?」

 

「良いぜ。

じゃあ本番は1週間後だ。

ま、せいぜい頑張ってくれよ」

 

そう言って手をヒラヒラと振ってから扉の鈴を鳴らして出て行った。

少しの沈黙した空気の後、少し強張った体をほぐそうと腕を掴むと

 

「友希那ー!!!」

 

リサに名前を呼ばれると同時に抱きつかれ

 

「友希那さんすごいカッコ良かった!

なんかもう、こう、カッコ良かった!!

ねっ!りんりん!」

 

あまりの格好良さにあこの語彙力が無くなり、頑張って言葉を並べた後に話題を燐子に振った。

 

「う、うんっ…!」

 

「燐子の方が凄かったわよ。

誰よりも先に、頭を下げてまで守ろうとしたのだから」

 

「!…ありがとうこざい…ます…。

でも…さっきの友希那さん…。

すごく…似てた…な…

 

燐子が小さな声で何か言った気がしていると

 

「お見事でした」

 

「…紗夜」

 

「本当に…驚きました。

…面影が見えた気がしたので…」

 

珍しく主語をハッキリさせない紗夜。

それでも、それが『誰なのか』が伝わってしまう。

すると

 

「にしても…さっきの来閃さん…。

()()()()()()()

その、振る舞い方というか話し方というか…」

 

彩がぽりぽりと頰をいじりながら言った。

それに全員が自然と反応する。

おそらく、みんな脳裏に一瞬浮かんだのであろう。

 

『……』

 

徐々に重くなる空気。

 

「あっ…ご、ごめんみんな…!」

 

謝りながら彩が心の中で『まだ話すのは早過ぎたのかも知れない』と思っていた所を日菜が

 

「もー!

みんなどよーんってしてないで、作戦会議しようよー!」

 

「!…日菜?」

 

日菜の声にビクッとして一斉に意識を戻す。

すると

 

「…まさかとは思うけれど…。

あなた達も参加するつもりなの?」

 

何故か友希那に驚きながら聞かれた。

 

「いや…さっき湊さん『私たちと』って言ってたじゃないですか」

 

蘭が言う。

 

「あれは『私たちRoseliaと』という意味だったのだけれど…」

 

「完全に言葉足らずじゃないですか……」

 

「……」

 

何も言えずにいると

 

「ゆ、友希那ちゃん!」

 

「?何かしら丸山さん」

 

「えーっと、私たちも参加して良いかな?」

 

「…」

 

技術が足りるのだろうか。

そんな疑問が過り、どうするか迷う。

そこへ追い討ちをかけるように

 

「私も参加するわ友希那!」

 

「っ…!」

 

こころが相変わらずの笑顔で手を掴んでくる。

 

「こ、こころ…!」

 

美咲が心配してこころの隣に寄り添った。

しかし、さらなる追い討ち。

 

「わ、私もやりますっ!

やらせてください友希那先輩!!」

 

「…どうして…?」

 

「CiRCLEを守りたいからですっ!!」

 

「……そう」

 

違う。

1つの言葉が浮かんだ。

『これは私が欲しかった言葉じゃない』と。

望んでいたのは、自分に現実を突きつける言葉だった。

こうやって悩んでいるから、まだ前が見えない。

自分でケリを付けないといけない事を他人の言葉でケリを付けようとしている自分に腹が立っていると

 

「……そうと決まれば、あまり時間を無駄にしたくは無いわ。

湊さん、作戦会議をする場所はどこにしますか?」

 

紗夜が聞いてきた。

 

「そうね…」

 

頭を切り替えて質問に悩み、オーナーの方を見るとまりなさんがオーナーに1つため息混じりに話していた。

 

「はぁ……オーナー!

自分の店をお客さんに任せるなんて…!」

 

「あっ、そうだ。

ラウンジ使っても良いよアンタら。

ここなら広いし、みんなで話し合えるだろう?」

 

「オーナー!!」

 

まりなさんが必死に抗議しようとするもオーナーは軽く受け流す。

 

「…そう。

なら、有り難く使わせてもらうわ」

 

「あっ、うんっ!

みんな頑張ってね!

投票箱は今から私が作っておくから」

 

まりなさんが手を振る。

そうして、ラウンジでの作戦会議が始まった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「「ロックでいきましょう」」

 

まず1つ目は、友希那と蘭の2つの意見が一致した。

 

(今は迷っている訳にはいかない…)

 

そう思ったその数十分後…。

話が纏ってきたので紗夜が

 

「…では、パート分けやら各々の役割が決まりましたので。

湊さんには新しい曲の歌詞作りの方をお願いします」

 

「ええ」

 

「曲の方は、RoseliaとAfterglowが主軸となって考えます。

その間にポピパとパスパレ、そしてハロハピの皆さんには、今よりも高い技術を身につけてもらいます。

そうでもしないと、あの方たちには勝てないでしょうから…」

 

紗夜がそう言うと巴が

 

「あの、紗夜さん。

1つ聞いてもいいですか?」

 

「?なんでしょう」

 

「その…さっきの人ってどういうバンドを組んでいるんですか?」

 

巴の質問に、全員が静まった。

そして

 

「一応、話しておきましょうか。

あの方たちは、『World Throne(ワールドスロン)』というバンドを組んでいます。

ボーカル、ギター、ベース、キーボード、ドラム。

それぞれが各役割を極めに極め、過去に4回だけ大きな大会に出ていますが、どれも優勝しか取っていません。

それ故に、現在バンド業界で『世界最高峰のバンド』と称されています」

 

「世界最高峰のバンド…」

 

「バンド結成してから10ヶ月程度です。

そしてFWFにも出ては居ませんが、相手は確実に世界トップクラスの実力を持っています。

ですから、練習には遅れずに必ず参加してください」

 

『はい!』

 

と一部が声を揃えて返した。

そしてしばらくしてから

 

「やったあ!!

おねーちゃんとだ!!」

 

「!日菜…!

あまり引っ付かないで」

 

「えぇ〜…」

 

体を離しても、袖を少し引っ張る日菜。

 

「私はこれから練習するから、日菜は先に帰っていなさい」

 

「えぇ〜…。

おねーちゃんと練習出来ないのー?」

 

「……あなたは…練習をしなくてもすぐに追い抜くでしょう」

 

「そーだけどさ!

あたしはおねーちゃんとギター弾きたいの!

良いじゃんか!」

 

優しく拗ねる日菜。

 

「はぁ…仕方ないわね。

ちょっとだけよ」

 

紗夜はため息混じりに言ったが、日菜にとってはそれも嬉しい事であり

 

「!…うんっ!ありがとっ。

おねーちゃん♪」

 

デレデレになった日菜に抱きつかれて面倒そうな表情を浮かべながらも諦める紗夜。

その他方では

 

「ふえぇ…」

 

花音が緊張していると千聖が心配そうに

 

「花音大丈夫?」

 

と声をかける。

 

「だ、大丈夫…だと思う…」

 

「そう…。

何かあったら何でも言って良いわよ花音」

 

「うん、ありがとう。

千聖ちゃん」

 

微笑ましい会話が終わった頃に香澄が

 

「ねぇねぇ!

バンド名何にする?」

 

という誰もが忘れていたことを言うとおたえが

 

「私は『うさうさバンド』が良い」

 

「なんだその兎メインみたいなバンド名は…」

 

有咲が呆れながらツッコむ。

当然、おたえはキョトンとしながら

 

「ダメかな?」

 

首を傾げて聞いた。

 

「ダメに決まってんだろ…。

つーか、私たちだけで決めるのはもっとダメだから。

せめて他の先輩たちの意見とか聞いてだな…」

 

有咲は後半を香澄に伝えると

 

「そっか!」

 

と言い、彩の方へと小走りした。

 

「彩センパーイ!」

 

「?どうしたの香澄ちゃん?」

 

「はいっ!

新しいバンド名は何にしたら良いと思いますか!?」

 

「えっ!?あ、新しいバンド名…?

え、えっと…う〜ん…。

待ってねっ、今考えてるから…!」

 

唸って考える彩。

すると麻弥が

 

「戸山さん。

彩さんは急な質問には答えられませんよ」

 

いたずらっぽく微笑みながら香澄に教えて、それを間に受ける香澄。

 

「そっか!」

 

「そっか!?」

 

「すみません!

ありがとうございます!」

 

そう言って香澄は違う所へと聞きに行った。

そして

 

「麻弥ちゃんひどいよ〜…!

せっかく良い名前浮かんだのに〜」

 

「そうなんですか?

ちなみに、どんな名前ですか?」

 

「えっとね、『キラドキバンド』って言うんだけど…」

 

「あ、あはは…」

 

「あ、あれ?

なんでそんなに微妙な表情してるの?麻弥ちゃん?」

 

「なんというか……彩さんらしいです」

 

「ええ〜っ!?」

 

そうしている中、友希那と蘭はというと…。

 

「…意外ね。

あなたはてっきり私のことを嫌っているのかと思っていたわ」

 

「別に…嫌いじゃないです。

ただ、あの時は何も言い返さなかったことにムカついただけです」

 

「そう…。

けれど美竹さん。

今回のライブに失敗は許されないわよ」

 

「湊さんに言われずとも、絶対に成功させますよ」

 

「なら良いわ」

 

「湊さんこそ。

ちゃんと集中してくださいよ。

最近、全然覇気が感じなくなったし…」

 

「そう…かしら?」

 

「気づいてなかったんですか…。

まぁ…それとは別に、湊さんはこの即席バンドのリーダーなんですから、ちゃんとしっかりしてください」

 

「…ええ。

必ず、成功させてみせるわ」

 

「はい」

 

会話が終えると共に、香澄が友希那の方へと元気に駆け寄ってきた。

 

「友希那先輩!」

 

「?」

 

「バンド名はGS…!

じゃなくて『SPバンド!』で良いですか?」

 

それを聞いて友希那は、もうガールズではないからGを消したのだろうと、その簡易的な考え方が『久しぶり』に思えて、思わず口元が少し緩む。

 

「友希那先輩?」

 

香澄が首を傾げる。

そして、緩めた口元を再び固めた。

 

「いいえ。

シンプルで良いと思うわ」

 

バンドの名前も決まり、即席で作られたバンドでの練習が1週間始まった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

一方、来閃コーポレーション会社

社長室

 

窓ガラスから商店街や学生が通る道を見下ろす男が1人。

すると背後から

 

「で?なんで呼ばれたの?」

 

ソファで足を組んで踏ん反り返る高身長で色白なイケメンの男、金剛(こんごう) 羅門(らもん)

それに対し

 

「まだ全員揃ってないでしょうが…。

それと足を組むのやめたらどうだ?」

 

もう片方の椅子に腰をかけている天然パーマの青年、神崎(かみさき) 龍魔(たつま)が言う。

すると

 

「1番年下のモジャモジャは黙ってろ」

 

強く言い返すイケメソ。

 

「そんなんだから女にモテないんだよゲス野郎」

 

またも天然パーマが言い返す。

 

「あ?」

 

「は?」

 

バチバチと火花を散らす2人に

 

「ふふ。

喧嘩しないでよ2人とも。

鬼龍がなんか話あるから集まったんでしょ?」

 

微笑みを入れて割止めた。

髪をまとめるためのカチューシャを付けた茶髪の可愛らしい人。

しかし、性別は男性である。

そして本名は、花咲(はなさき) 翔栄(しょうえい)

翔栄の『微笑み』は昔からの癖らしい。

 

「ちっ…毎度毎度。

女みたいな格好しやがっ」

 

「ふふ。

その綺麗に整えた髪、バリカンで両耳ごと剃ぎ落としてあげようか?」

 

「やっぱなんでもない…」

 

羅門が青ざめて大人しくなると外を眺めていた鬼龍は振り返り

 

「ん?アイツはどうした?」

 

「なんか流浪○剣心にハマったらしくて今全話見てるらしいです」

 

天パの龍魔が敬語で言う。

 

「あー…昔の作画好きだったなアイツ。

今度『なるたる』見せてあげよ」

 

『?』

 

「ま、それは置いといて。

今回集まってもらったのは、まぁライブについてだ」

 

「?僕たちのライブってまだ先じゃなかったですか?」

 

龍魔が聞くと、鬼龍は頷いて

 

「そうだったんだけど、急な予定が入ってな。

とりあえず、1週間後にライブがあって、そこで勝負する」

 

「は?」

 

「勝負?」

 

「ああ、いわゆるバンド対決だな。

CiRCLEを貰う手段としては、それが手っ取り早いからな」

 

「ほー、相手が俺ら『World Throne』と知った上での勝負か?」

 

見てもない対戦相手に高圧的な羅門。

 

「そうだな。

まぁ、中々面白い子たちだった。

調べてみれば、中にはFWFで優勝記録を叩き出したバンドもあるらしい」

 

「FWF…?

ああ、あの世界大会ですか。

そういえば、ありましたねそんな大会。

それで、()()()()はいくつ持っているんですか?」

 

「みんな0だね」

 

「え!?」

 

質問した龍魔自身が真っ先に声を上げて驚く。

 

「ふふ…。

0って……1つも持ってないってこと?」

 

翔栄は恐る恐る聞くと鬼龍は頷いた。

まさか勝負を挑んできた対戦者が公式レッテルを1つも持っていないとは思いもしなかったのだろう。

すると羅門が怠そうな口調で開いた。

 

「はぁ…話にならねぇじゃん。

勲章の1つも無いとか、俺らとの差が歴然じゃ」

 

「んー…それはどうかな。

彼女たちはおそらく勲章のことを知らない。

いや、もしかしたら…」

 

『?』

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のかも知れない」

 

「?なんでそんなことを?」

 

「さぁ?

ただ、とりあえず今オレたちがすべきことは、さっさと1週間後のライブに勝って、CiRCLEを貰う事だけだからな。

アイツにも、ちゃんと連絡入れとけよ羅門」

 

「やっとく」

 

スマホを取り出して早速メールを打つ羅門。

すると翔栄が何やら疑問を投げかけてきそうな目で見ていた。

 

「どうした?」

 

「ふふ。

別に…。

ただ、わざわざ鬼龍がそんな子どもの遊びに付き合うような真似事を今までしたことなかったからさ」

 

「大した理由は無いよ。

オレたちが圧倒的な差で勝てば、相手も納得してくれるだろ?」

 

「ふふ…」

 

「だが、()()()()()()()()

今度は年下だからって油断せず、完璧な演奏で勝ってみせる」

 

「ふふ…。

随分と、昔のことを根に持ってるね」

 

「……」

 

「ふふ。

応えないところも変わってない。

あの子にも言われたでしょう?

『いくら完璧でもイレギュラーに対応出来てなくては意味が無い』…って」

 

「別に…?

そんなことは気にしてない。

ここ数年はどうにも暇してたんだ。

実力があると言っておきながら、結局ある程度の実力しかない。

オレは本気でやれるような相手かどうかを見極めて、その上で圧倒的差をつける。

今回、そういう相手が見つかったと思っただけ」

 

「ふふ。

…まぁ、別に良いけど。

ただ今回に関しては給料ちゃんと余分に貰うからね」

 

「1週間後が楽しみだな…」

 

「ふふ…。

聞いてる?」

 

 

 




ユウキチ様 たなフレッシュ様
将太様 KPA様

お気に入りありがとうございます。

やべぇ…。
今月後500円で生活か…

心配するな
大丈夫
なんとかなる

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