退屈な日々を忘れたい俺がなぜバンドの手伝いをしているんだ......   作:haru亜

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あ、予想ついてる方もいらっしゃるかと思いますが、前回出てきた18禁ゲームはFateです。



第3話 それだけはやめてください

前回色々とバレた俺。

まぁさ、俺も悪かったよ黙ってて。

ただ単に連絡取る勇気が無かっただけだから、許してとは簡単には言えないけど…

 

「ここまでする必要なくないか!?」

 

どこから出したのかもわからない紐で千聖に両手両足を塞がれて正座させられている。

 

「何か…?」

 

千聖が健やかな笑顔で聞く。

あぁ…もう駄目だこれ。

 

「それで、リサちゃん?

そっちの荷物は何かしら?」

 

隣にいるリサは座っておくよう千聖に言われて大人しく聞いている。

 

「えっとぉ…そのー、千聖?」

 

「中身は?」

 

「!え、っと、至って普通のお泊まりセットだよ…?」

 

「至って普通…ね。

そんなにも荷物の量が多いのはどういうことかしら?

ただでさえ一人の女が男の家へ1泊するのは危険だと言うのに。

その荷物の量は、1泊するだけではないでしょう?」

 

「……」

 

「正直に答えて良いのよ?」

 

絶えず笑顔で問いかける。

こんなにニコニコした千聖ほど怖いモノは無い。

それにリサは気まずさを顔に出しながら口を開いた。

 

「えーっと、この家にはしばらく陽菜のお世話係として住まわせてもらう予定でした…」

 

「へぇ…」

 

冷たく微笑んだ千聖がこちらを睨みつける。

 

「いや…あのですね」

 

「何か醜い言い訳でもあるのかしら?」

 

「……はい」

 

かくかくしかじか……

 

「……ということで、俺一人で生活するには難しいと判断したので、リサが一緒に住むことになりまし「それで?」…た」

 

「「「……」」」

 

(めっちゃ怒ってるやん千聖…)

 

思わず方言で思ってしまう。

素直に怖い。

 

「確かに、薬の飲み忘れは大変ね。

けどそれは、あなたが気をつけていれば良い話でしょう?」

 

「はい…」

 

「わざわさリサちゃんを泊める理由は何かしら?」

 

「う…む…」

 

ここでリサが無理矢理泊まりたいなんて言い出したので、それを仕方なく受け入れたと言えば、リサに矛先が向くやも知れん。

なので、それを回避すべく…。

 

「ええと…これにも訳がありまして…」

 

「それはどんな?」

 

「リサがどうしても心配だと言うので、泊めることにしました」

 

嘘は言っていない。

ほんの少し言い方を変えただけだ。

屁理屈だけど許せ。

 

「……リサちゃん。

それは本当かしら?」

 

「う、うんっ!

ホントだよ?」

 

俺の意思を汲み取ったリサが戯けながらも言う。

 

「そう……」

 

その一言を呟き何か考え始める千聖。

すると

 

「…とりあえず、その件には納得したわ。

けれど、絶対に間違いを起こさないと約束出来るかしら?」

 

千聖が笑みを止めて真剣に聞いてきた。

彼女なりに心配してくれているのだろう。

そして俺は、隣で真っ赤になって俯くリサを置いといて言い出した。

 

「ああ。

千聖との約束は必ず守る」

 

「……ならっ…この件はこれでおしまいにしましょう」

 

一瞬、気恥ずかしそうに目を逸らした気がしたが気のせいだろうか…。

とはいえ、ホッと一安心していると

 

「それで…話は変わるけれど…」

 

「?」

 

千聖が造り笑みでダンボールの中から一つのゲームパッケージを俺に突きつけて、目だけは笑わずに微笑みを浮かべた。

俺はそれを見て青冷めた。

 

「これ、何かしら?」

 

そう言って18禁ゲームを見せつけられ、俺の咄嗟に出た言葉が

 

「それは18禁ゲームだけど18禁ゲームじゃない」

 

何を言っているのかしら…とでも言いたそうな顔でこちらを冷たい視線で、しかも無言で睨む千聖。

するとゆらり…と俺の隣に座っていたリサが立ち上がり

 

「……陽菜…これ、何?」

 

千聖からパッケージを取る。

 

「18禁ゲーム…?」

 

パッケージの表裏を見たリサ。

 

「いや!違うって!

そのゲームは18禁だけど18禁じゃねぇんだよ!」

 

「で、でもっ…!

18禁ってことは…その……」

 

「う……む…まぁ、確かにそういうシーンもあるんだが…。

そこは妥協してくれるか…?」

 

「うぅ……確かに陽菜も男の子だからこういうのはあっても良いと思うけど……」

 

(うん。

男の『子』では無いなうん)

 

そう思いながらも、どうにかゲームを返してもらおうと考えている。

どう言えば返してくれるのだろうか…。

そもそもストーリー終盤まで後もうちょっとだから、そこまで如何わしいシーンはないはず…多分。

 

「ええと、リサ?

そのゲームなんだが…」

 

「ちょっと良いかしら?」

 

するとここで介入して来た千聖。

 

「この人がここまで止めるのも何かしら理由があると思うわ。

だから…」

 

(おおっ…!!)

 

もしや助けてくれるのか?という謎の期待を抱いていると

 

()()、燃やしましょうか」

 

「それだけはやめてください」

 

笑顔でとんでもないことを言い放った。

 

「ねぇ何どうしたんですか千聖さん?

ちょっと俺への風当たり強くないですか?」

 

「別に、これが普通よ。

あなたこそ、私たちに何か言うことがあるんじゃないかしら?」

 

「う……む…。

まぁ、確かにあるが…」

 

「あなたが虚偽の報告で死んだ後。

()()()()()()()、どれだけ心を痛めていたのか…。

しかも、女性を1人自宅に連れ込んで何をしているのかしら?」

 

千聖の言葉には、キツい部分が見られた。

しかし、ちょっとした誤魔化した部分があることにも気がついた。

 

(私たちに…ってさっき言ってたのに…)

 

そう思った。

しかし、今はしっかりと千聖の質問に答えることにした。

 

「…その件は本当に悪かった。

何も言わずに、知らない所で死んで悪かった。

でも…」

 

「?」

 

「もし千聖も心配してくれてたなら、ありがとな」

 

「……」

 

その間静寂の時が来たが、千聖が一瞬にして

 

「何を呑気なことを言っているのかしら?」

 

俺の頬を引っ張ると同時に雰囲気もろとも壊した。

 

「いってぇ!?」

 

「良いかしら?

私が言っているのは『彩ちゃんたちに心配させた上に、謝礼も無しに何も言わずこんな所で何を呑気に異性共同生活の準備を始めているのかしら?』と聞いているのよ」

 

「ちょ、千聖さん…?

顔怖いですよ…」

 

「本当に何を言っているのかしら。

私はこんなにも笑顔でいるじゃない」

 

「いや……あの……なんで近づいてくる…?

別にそこからでも話でき」

 

「リサちゃん」「る……よ…な」

 

俺の台詞を遮ってくるりと振り返った千聖は、黒い笑顔でリサに向かって

 

「5分だけ、外で待っててくれるかしら?」

 

「……うん」

 

「リサ!?」

 

そっ…と引き下がってドアが閉まる直前で「ごめん」と言わんばかりに手を縦に添えてリサは外へと出ていった。

そして取り残された俺と千聖。

 

「あの……」

 

「何か言い残すことがあるなら聞くわよ」

 

「なら最後に言わせてもらおう」

 

「ええ」

 

「あのゲームは18禁だけど、やってみたら面白い。

だから千聖もやってみろ」

 

悔いはない。

言いたいことは言えたのだから…。

 

「女に向かって18禁ゲームやらせようとする馬鹿な心意気は認めてあげるわ」

 

そう言って、千聖は俺にある提案を耳打ちで持ち出す。

そして当然のように拒否権はなく、飲み込まざるを得ないので、飲み込んだ俺。

どうして俺の平和は訪れないんだろうか…。




まくらん様 OBORO20様
裕也様

それと名前の表示されていない名無し様
お気に入りありがとうございます。




この前、自転車乗りながら鳩を目で追ってたら電柱にぶつかりました。
電柱の中って何も入ってないのにあんなに痛そうな音するんですね…。
ごめんよ自転車

次回
「新たな来訪者その1」

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