退屈な日々を忘れたい俺がなぜバンドの手伝いをしているんだ......   作:haru亜

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第1.5章 番外編 〜Roselia〜
番外編第1号 前編 失われた『Roselia』


友希那 side

如月がいなくなってから、私達はコンテストまで後2日までという月日が経った。

けど、私達はまだ、如月からもらった手紙を開けていなかった。

理由は…

 

「…ねぇ、みんなちょっといいかな?」

 

するとあこが

 

「どうしたの?リサ姉」

 

「昨日、陽菜からもらったこの手紙なんだけど、アタシはまだ開けない方がいいと思う」

 

私はその理由が気になり

 

「どうして?」

 

「…多分だけど陽菜は、この手紙に『今』のRoseliaの事を書いたと思うの。もし、何かあった時の為に……だから、みんな、いいかな?」

 

するとみんな

 

「まぁ、今井さんがそう言うのなら」

 

「うんっ!それでいいと思うっ!」

 

「わたしも……それで、いいと思います……」

 

「友希那は?」

 

「いいわよ…」

 

「ありがとう、みんな☆」

 

そして現在、如月からもらった手紙はリサが預かっている。

 

 

 

 

 

友希那 side out

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

リサ side

アタシ達はコンテストの日を迎えて、楽屋でアタシは

 

「ああっ、やばっ!メンテ用のスプレー…!」

 

アタシは忘れ物に気づいて、思わず口から出ていた。

すると

 

「忘れ物には注意って、連絡したじゃない。

はい」

 

「あ……りがとう……」

 

そう言って紗夜はメンテ用のスプレーを貸してくれた。

紗夜……なんか前に比べて、トゲがなくなった……?そういえばみんなも……

そう思い、周りを見てみると

 

「りんりん大丈夫?ステージ、すっごく大きいよっ。真っ青になっちゃわない??」

 

「うん……大丈夫、だよ…あこちゃん……わたし最近……キーボードと、一緒に…いると、守られてる気がするの……」

 

「わかるわかるっ!あこもドラム叩いてる時は無敵!って感じがするもんっ!」

 

「うんっ……!」

 

「よーしっ。練習の成果、見せてやろうねっ」

 

それを聞いてた友希那は

 

「あこ。他の応募者もいるんだから、あまり騒がないで」

 

すると周りから

 

…Roseliaってもっとクールなバンドだ、って聞いてたけど…なーんか意外と普通。拍子抜けだわ。

 

そう?あたしは結構いいバンドだと思うよ。

あっ、ねぇ、テレビ見てよ。

 

そう聞いてテレビを見てみると

 

「「っ!」」

 

そこには紗夜の妹の日菜が所属しているPastel*Palettesが映っていた。

紗夜、本番前だけど大丈夫かなぁ。

そんな事を思っていると

 

「今井さん。スプレー終わった?私も使うから」

 

「えっ。あっ、うん……。はい」

 

日菜の事にも、紗夜、全然動じてない。

それに、燐子も人混みが苦手だったのに、あこと同じくらい楽しそうにしてる。

コンテスト前なのに……みんな、すごい…

それじゃあ友希那も…

 

「って、あれ?友希那?」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ライブハウスの外

 

「ちょっともぉ〜友希那〜!友希那は誰よりも準備すると思ったのに、楽屋にいないから、超探しちゃったよ!」

 

「いくら準備しても、なるように、なるだけよ」

 

「ええ〜?Roseliaのリーダーが投げやり発言っ?」

 

「練習は裏切らない、最終的な結果。それがすべてよ」

 

「友希那……。

……ねぇ、友希那。どうしてここに?」

 

そう聞くと友希那は少し考えてから

 

「……如月がよくライブ前に外に出て考え事をしてたからよ」

 

「陽菜が?」

 

「ええ、それである日聞いてみたの。

そうしたら如月は、『昔の事』って答えたわ」

 

「昔の事?」

 

「ええ。私も気になって聞いたら如月は少し考えてから『成長して失敗したとしても戻る必要はなかったんだな、って』如月は少し笑いながら言ってたわ……」

 

「あははっ、陽菜ってば、答えになってないね…」

 

「全くその通りだわ……」

 

「でも、それってどういう意味なの?」

 

「わからないわ。

如月の考えてる事なんて……」

 

「………」

 

「?どうしたの?まじまじ見て」

 

「いやぁ…なんか友希那、前よりもスッキリした顔、してるなーって」

 

「……そうね。

みんなに、何も隠さないでいいって、こんな気持ちなのね」

 

「友希那……」

 

良かった……。

あの時、アタシがした事は、間違ってなかったんだ…。

そう思っていると

 

「リサ。……ありがとう」

 

「そうだねっ☆って!?ええ!?……今、なんて?」

 

「…なんでもないわ。

早く戻るわよ。リサ」

 

「う、うんっ!」

 

今、友希那、確かにありがとう、って…

ダメだって…!よりにもよって今、友希那にそんなこと言われたら余計……っ

 

 

 

 

リサ side out

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

友希那 side

楽屋に戻り、少し経つと

 

「5分前よ」

 

紗夜の言葉を聞き、私は

 

「問題ないわ。いつでも行ける」

 

そう言い、リサの方をみると様子が少しおかしかった。

 

「…リサ?」

 

「へぁえっ!?う、うんっ!だ、だだ大丈夫だよ〜!ははは」

 

「リサ……」

 

そんなリサを見て、もしかしたら緊張しているのかと思っていると

 

「リサ姉……前から思ってたけど、緊張し」

 

するとそれに反応してリサは

 

「し……ってないよっ!しってませーんっ!!」

 

「「「「………」」」」

 

 

そして扉が開き、スタッフさんが来て私たちが呼ばれた。

リサ、やっぱり、緊張してるのかしら。

そんな事を考えているとリサがうつむいていると紗夜が

 

「ちょっと今井さん、そうやってうつむいてたら、他の人に楽器があたって迷惑よ。………ちゃんと前を向いて」

 

すると

 

「前、を……」

 

リサは何かわかったようにスッキリした顔になっており、安心しているとあこが

 

「よしっ!Roselia、行くぞーっ!おーっ!

ほら、みんなでやろーよ!せーの…」

 

「「「おー!」」」

 

「「やめて、そういうの」」

 

そして……Roseliaの出番になった。

 

 

 

 

 

友希那 side out

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各 side

ライブが始まり、演奏をしていた。

 

なにかしら……この……私…ギターをやっていて、こんなに穏やかな気持ちになったこと……今まで…

 

やっぱ…そうだよ!Roseliaはもっともーっとカッコイイあこにしてくれる魔法をもってる!!

 

た、楽しい……!!ウソみたい!アタシ、さっきまであんなに緊張してたのに!……やっぱりこのバンド……

 

……歌声も……ライトも……気にならない……わたし……Roseliaでいるときは、少し……強くなれるみたい……

 

……なにも考えられなくなっていく……ただ歌うことが……

 

そして、それぞれ思いを持って、Roseliaの演奏は終わった。

 

 

 

 

 

各 side out

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

リサ side

 

コンテスト後の昼のファミレス

 

「「…………」」

 

「ちょっともー、2人とも…相変わらずクールだなーっ」

 

それを聞いて紗夜と友希那が

 

「冷めてたらこんな所に来ません」

 

「そうよ」

 

するとあこが

 

「そうですよっ!紗夜さんも友希那さんも、スーパーやけ食いセットでいいですかっ?」

 

「「………」」

 

「よしっ!それじゃあ、みんなそれでっ!燐子よろっ♪」

 

「はい。……スーパーやけ食いセット……5人前、ですね……」

 

まぁ、結果としては、こうなっちゃったけど……

…演奏が終わり、結果発表を聞いていると

 

「エントリーNo.2 バンド名『グロリオサ』

受賞したバンドは以上です」

 

「「「「「!!」」」」」

 

そんな……っ

そう思っていると

 

「講評を聞きたいバンドは、控え室で残って下さい。

また、他のバンド、ご来場の皆様は……」

 

するとあこが

 

「……なんで?友希那さん、こんなの……」

 

「……講評を聞く。

理由を考えるのは、それからよ」

 

「う、うんっ、そうだね…」

 

そして、控え室で待ち、審査員の所へ向かい、講評を聞いた。

 

「素晴らしい演奏だったわ。

本大会で、限りなくトップに近いレベルだった」

 

それに紗夜が

 

「…なら!なぜですか。なぜ……私たちは落選なんです?」

 

するともう1人の審査員が

 

「…あなたたちは結成して、とても日が浅い。

でも、練習量は他のバンドと変わりない。

…いいえ、それ以上と言ってもいいわ。

……だからこそあなた達には、このコンテストで『入賞』するのではなく『優勝』して、フェスのメインステージに立ってほしいの」

 

「「「「「!!」」」」」

 

「あなた達は、短期間の練習でとても荒削りだというのに、私たちをここまで惹きつけた。

…それにこれまで私たちが審査してきた中でそう思ったのは2回目よ。一体誰がRoseliaを……。

……いえ、関係のない話をしてしまったわね。

最後に、Roselia。あなた達には、伸びしろがありすぎる……」

 

「「「「「………」」」」」

 

「来年でも、再来年でもいい。

それまでに成長したRoseliaの姿を見せて下さい」

 

そんな事を思い出していると店員さんが来て、注文した物がきた。

そしてアタシは

 

「落選したけど、すっごく認めて貰えてたし、アタシはそんなに悪くないんじゃないかって……」

 

そう言うと紗夜は

 

「私は認めないわ……むぐ」

 

するとあこが

 

「むぐ……たしかにすっごい悔しかったけど、でもっ、それがどうでもよくなるくらい、あこ……楽しかった!!」

 

それを聞いてアタシは

 

「あー……ちょっと、わかっちゃう……なぁ…」

 

そう言うと燐子も

 

「わたしも……今までで、いちばん……」

 

「「……!」」

 

「あ、あなた達っ、なんの為に練習してきたと思ってるのよ…」

 

「そうよ。

Roseliaは自分たちの音楽を極める為に……」

 

そう言うと友希那と紗夜は少し迷いながら何か考えているようだった。

 

「私は……どんなに他から認められても、父親の立てなかったステージで歌うまでは自分で自分を認められない」

 

「友希那……」

 

すると紗夜も

 

「そうね。……私も……?あの、なにか私に用ですか?」

 

紗夜が何か言いかけそうになったが

そこには、ファミレスに来た他のお客がいた。

そして、そのお客は

 

あ、あのっ、もしかしてパスパレの日菜ちゃんのお姉さんですか?

 

「……そうです」

 

きゃーっ。やっぱりお姉ちゃんがいるって本当だったんだ。すごーい。ありがとうございましたっ。

 

紗夜はまた何か考えていた。

すると

 

「わたしも……やっぱり……このみんなで……FUTURE WORLD FES.に、出たい……です。

これまで……それを目指してきた時間が…今までで、一番楽しかった……から」

 

「燐子……」

 

アタシも友希那がお父さんの事をいつか笑って話せるようになるまで、アタシは……

 

「アタシも……!アタシもまだ、このバンドをやりたい!だって…楽しかったから!」

 

アタシはその為に……もっともっと、友希那と紗夜に楽しいって思ってもらいたい……から

 

「「「「「………」」」」」

 

「思うところは……皆様々だけど……」

 

「コンテストに出て優勝する。

その気持ちは同じようね」

 

「っ!じゃあこれからも、みんなでRoselia頑張ろうねっ!なんかあった時は今日みたいにファミレスに来たりさっ!」

 

「「しないわよ。

……!」」

 

「二度とこんな所に来ないように、もっともっと、これから練習するのよ。

だから、無駄にできる時間はないわ。そろそろ帰りましょう」

 

それを聞いてアタシとあこは

 

「「えーもうちょっとーー」」

 

すると友希那は少し微笑みながら

 

「Roseliaに馴れ合いは要らない。

友達ごっこがしたい人は抜けてもらうわよ」

 

 

 

 

 

リサ side out

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

友希那 side out

それからしばらく経ったある日の練習終わり

 

「今日の演奏は、それなりにまとまりがあったように思います。

湊さん、いかがですか?」

 

「ええ、それなりによかったわね。

ちょうどいい時間だし、今日はこの辺にしましょう」

 

「お疲れさま……でした」

 

「お疲れ様でした。

それでは、片付けましょう」

 

「はーい!」

 

するとリサは

 

「みんな、おっつかれー!ね、今日はちょっと早く終わったし、外のカフェ寄っていこーよっ」

 

「さんせーさんせー!」

 

「……まあ、いいわ。

燐子と紗夜はどう?」

 

「少しなら……」

 

「わたしも……大丈夫です」

 

「やった!じゃ、早く片付けちゃお!」

 

そして片付けが終わり、外のカフェでお茶をしていると

 

「今日の練習も楽しかったーっ!りんりんはどうだった?」

 

「わたしも……楽しかった、よ……」

 

するとリサが

 

「そういえば紗夜、来週一緒にクッキー作るって話してた件だけどさ……」

 

「えっ!リサ姉と紗夜さん、一緒にクッキー作るの!?」

 

「い、今井さん……!その話はあまり大きな声でしてほしくないと言ったはずです!」

 

「あれ?そうだっけ……ゴメンゴメン。

けど、もうバレちゃったしいーじゃん?」

 

「あなた達の作るクッキーにはRoseliaの練習パフォーマンスをアップする効果がある気がするの。楽しみにしているわ」

 

「任せといてっ!」

 

そんな会話をしていると

 

「すみません、Roseliaの皆さんですか?」

 

「はい、そうですが……」

 

「私、SWEET MUSIC SHOWERという音楽イベントの運営事務局のものです。

今日はみなさんに、このイベントに出演していただきたく、こちらに伺いました」

 

それを聞いて、燐子とあこ、リサが

 

「「「ええ!?」」」

 

そして、帰り道

 

「……すごい話を………いただきました…ね」

 

「さっきのイベントが気になって調べたんだけど、すごく大きいイベントなんだね……」

 

「FUTURE WORLD FES.に出たことのある多くのバンドが出演しているイベントよ」

 

「そ……そんなすごい所から……直接声を掛けていただけるなんて……」

 

「やっぱりやっぱり、Roseliaは超カッコイイもんっ!

だから、声を掛けてもらえたって事ですよね?」

 

「ジュニア枠……プロのバンドの前座とは言え、FUTURE WORLD FES.に匹敵するほどの規模の会場。

気を引き締めなくては」

 

「そうね。フェスに繋げられるような演奏をしましょう」

 

「今井さん、申し訳ないけれど、クッキーの件はSWEET MUSIC SHOWER……SMSが終わってからにしましょう」

 

「りょーかい!終わったらゆっくり作ろう♪」

 

「そうしてくれると助かるわ。

SMSに照準を合わせて、練習量を増やす必要がありそうだから」

 

「そうですね……本番で、いい演奏が……できるように……がんばりましょう……」

 

「おー!」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そしてライブ当日

 

「もうそろそろアタシ達の出番…っ!うう、さすがに緊張してきた」

 

「会場のざわめきがここまで聞こえますね」

 

「お客さんすっごいたくさん……!ドキドキするよ〜!」

 

「落ち着いて、これまで練習してきたものを全て出すまでよ」

 

「……はい……っ!」

 

そしてステージに立つと

 

お、Roseliaじゃん!

 

へー、知ってるの?

 

この前小さい所でやってたんだけど、結構いい音してるんだよ!

 

「Roseliaです」

 

友希那がそう言うとあこが

 

「1、2、3!」

 

そして演奏が始まった。

 

 

 

 

友希那 side out

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

各メンバー side

演奏をしていると

 

わあ……!お客さん、ノッテきてる!

あこ達のカッコイイところ、みんな見て〜!

 

ひっかかりがちだった箇所もまとまってきてる。

この演奏なら……!

 

すると観客席から

 

う〜ん……。

 

まあ、『演奏は』上手いね……。

 

ジュニア枠ってあと何バンド出るんだっけ?

今のうちに手洗い行っとこうかな〜。

 

あ、私も!あと、なんか食べておこうかな。

 

そんな声が聞こえてき

 

えっ、ちょっと何……!?

 

お客さんが……

 

離れていく……

 

「ーー♪」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ライブ後の楽屋

 

「………」

 

「……悪くない演奏だったと思います」

 

「どうしてお客さんがどんどん、いなくなっちゃったんですか?

あこ、何回も間違えてたところ、今日はちゃんとできました。なのに……」

 

すると扉が開きスタッフさんが

 

Roseliaさん、お疲れ様でした。

 

「あっ……!お疲れ様でした!」

 

すみません、緊張してましたか?

以前聞いた時と印象が違ったような…

 

「あ、あはは〜!すみません、多分、緊張しちゃってたかもしれません……」

 

「………」

 

まあ、高校生ですから、まだまだこれからですよ。

それじゃ、今日はありがとうございました。

お疲れ様でした。

 

「「「「「………」」」」」

 

「この後……どうする?」

 

「今日はこのまま解散しましょう。

反省会はまた別の日に………それじゃあ、私はここで」

 

「あっ……友希那さん……!」

 

 

 

 

各メンバー side out

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

友希那 side

湊家 友希那の部屋

 

「………」

 

今日の演奏……どうしてオーディエンスは離れて行ってしまったの。

確実に私たちの演奏技術は上がったわ。

でも、あのスタッフは……

 

「以前と……何が違うの……?」

 

そして数日後

スタジオでは

 

「……ではさっきの2つ前から、あこカウントお願い」

 

「………」

 

「あこ?」

 

「……あっ、は、はい……!」

 

そして練習が終わり

 

「………そろそろ時間終わりの時間ですね」

 

「各自次の練習までつまづいた所を必ず直しておくこと、今日はここまで。片付けましょう」

 

「「「「お疲れ様でした。

おつかれー!」」」」

 

…メンバーで合わせてみてもわからないわ……なぜ、SMSの演奏は受け入れられなかったの?

以前との違い……

そう熟考していると

 

「ゆーきな!お疲れっ!友希那もクッキー食べない?」

 

「今井さん、一緒にクッキーを作る約束をしていたのに……1人で作ってしまったの?」

 

「あはは……ごめんごめん。

でもこれは、これからも頑張っていこー!的な?」

 

あ………

受け入れられなかった理由……それは……もしかすると……

そう考えているとリサが

 

「オッケー☆じゃ、一旦解散したら個人練だね。

友希那はどーする?」

 

「……今日はそのまま帰るわ。

それから、リサ」

 

「?どうしたの?」

 

「……もう、クッキーは作ってこなくていい。必要ないわ」

 

私たちは仲良くなり過ぎた。

 

「友希那……さん……?」

 

「あ、あれ?ごめん、なんかアタシ空気読めなかったかな……?」

 

「それじゃあ、これで……」

 

そう言ってスタジオを出た。

 

「……」

 

私達は、取り戻さなくてはならない……私達の歌を。

私達の、最初の頃のような張り詰めた思いを……。

今のように甘やかさず、最初の頃に戻る。

そして、確実に私達の『音』を取り戻す……!

 

 

 

 

 

友希那 side out

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あこ side

翌日 スタジオ

 

「……ストップ!

今テンポが崩れたわ。……あこ、前回の練習で、今日までに苦手な箇所を直しておいてと言ったはずよ」

 

「……すみません」

 

「この間のライブでわかったわ。私達にはまだまだ足らないものがあるのよ」

 

「……は、はい!すみません……っ!」

 

「このまま上達しなければ、抜けてもらう。

その覚悟を持って演奏して」

 

「はい……」

 

やっぱり今日の練習、いつもあこ達がやってるような練習じゃない。

友希那さんもいつも雰囲気が違う……

そう思っていると

 

「ちょっと友希那……急にどうしたの?

そんな事言って……」

 

「基準に満たなければ抜けてもらう。そのくらいの危機感を持たなければFUTURE WORLD FES.にはいつまで経っても出られないわ」

 

「確かに今の演奏は、少し気が緩んでいたかもしれません。

宇田川さん、危機感を持ってもう一度やりましょう」

 

「うう……」

 

 

 

 

あこ side out

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

燐子 side

そして、練習が終わり夜にあこちゃんと

 

『りんりーん!

あのね、イベントボスが強くて倒せないから、レベル上げと防具と武器の素材集め、手伝ってくれないかな?』

 

『うん、もちろん……!

それじゃあ、今日は周回クエストをやろうか…!』

 

『ありがとー!今日の目標はレベルを1つでも上げる事と、防具の素材を集めきる!』

 

『わかった……それじゃあ……がんばろう……!』

 

そして周回クエストをあこちゃんとしていると

 

『あ!りんりん!素材出たよー!』

 

『あこちゃん……おめでとう…!よかったね……』

 

『これで防具強化できるよ!ボス、倒せるかなぁ』

 

『今度、ボスに挑戦して………無理だったら…またレベル上げ、手伝う……から……』

 

『うんっ!ありがと、りんりん!』

 

『ふふっ……それで、ボス戦は……明日の練習の後で……いいかな……?』

 

『はぁ〜、練習かー……』

 

『どうしたの……?』

 

『今日の練習、なんだかいつもと違う雰囲気だったからかな……緊張して、うまく叩けなくて、なんだか楽しくなかった…そしたらテンポが崩れちゃった…』

 

『そっか……今日の緊張感は……あまりいいものじゃなかったんだね……』

 

『それに…FUTURE WORLD FES.にも近づいてるのか遠のいているのかわからないよね』

 

『そう、だね……これまでは…フェスに向けてやってたけど……この前のSMSでうまく演奏できなかったから……。

……こんな時……陽菜さんなら……どうする、かな………?』

 

『陽兄ぃ?う〜ん………わかんない。

陽兄ぃはいつも周りの事見てたから』

 

『うんっ、……陽菜さん、いつも……みんなの事…見てくれてたね……』

 

『それに、あの時どうしたらいいか迷ってる時に、どうしたらいいか教えてくれたのは陽兄ぃだもん…』

 

『……陽菜さんが……Roseliaを……裏で支えてくれてたもんね……』

 

『う〜ん、陽兄ぃが戻ってきてくれたらなー……』

 

『ダメだよあこちゃん……陽菜さんは……わたし達5人だけで……やっていけるって……思ったから、海外に行ったんだよ……』

 

『うん。

……でも…明日の練習もあんな感じなのかな?あこ、練習に行きたくないって初めて思ったよ……』

 

『あこちゃん……』

 

 

 

 

 

燐子 side out

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

友希那 side

次の日、スタジオ

甘やかさず、確実に…昔と同じように

そう思いながら、練習をしていると

 

「……あこ!またテンポが乱れてるわ。

次の練習までに苦手な箇所を直しておいてと言ったでしょう。

何度も同じ事を言わせないで」

 

「まぁまぁ、友希那。

焦ってもいい事ないし、ダメなら練習すればいいじゃん?だから、友希那もそこまで言わなくても……」

 

「………では、もう一度同じところから」

 

すると

 

「………何度やったって、出来ないと思います」

 

「あこ?

宇田川さん?」

 

「何度やったって、あこ、失敗します。

それに…何の為に上手くなればいいんですか!?」

 

「それは……!」

 

フェスの為に……そう言おうとした。

でも、

 

「SMSで失敗したのに、反省会もやらないで!みんな、わけもわからないまま、ずっと練習してて……FUTURE WORLD FES.にも近づいてるのか遠のいているのかわからないし……っ!」

 

……

 

「遠のいているわよ。今のあなたは」

 

「っ!なんでですか!?あこが上手くないからですか?」

 

……

 

「そうよ。

それに、そんな甘えた様子で、このバンドにいる資格はない」

 

「ちょ、ちょっと友希那……!」

 

「っ!!!

………こんなの………こんなのRoseliaじゃないっ!!!」

 

「あ、あこっ!!!」

 

そう言ってあこは出て行った。

 

「………友希那さん………」

 

……そんな事、こうするしか、ないから……

 

「4人だけでも続けましょう」

 

すると

 

「どうして……あこちゃんに……そんなこと…言うんですか……?」

 

「燐子……?

……っ!」

 

燐子は目に涙を浮かべながら

 

「きっと……わたしたち……どれだけ練習しても……『音』なんか……あいません……!

こんな演奏……誰も……振り向いてくれません……!

だって………誰も……みんなの『音』聞いてないから……っ!!」

 

そう言って燐子も出て行った…。

 

「燐子!!!

………ねぇ、友希那、どうしちゃったの?この間の練習から、なんかヘンだよ?」

 

ヘン……いいえ、違う。

私はただ…

 

「私は、Roseliaを取り戻したいだけよ」

 

「取り戻すって……どういうこと?」

 

「……Roseliaに馴れ合いは要らない。クッキーはもう、いらない」

 

「ちょっと待ってよ!

そんな……どうして昔に戻っちゃったみたいなこと言うの?」

 

「…そうでなければ、私達の『音』は取り戻せないからよ。

私達は少し仲良くなり過ぎてしまったんじゃないかしら…」

 

そう言って私はスタジオを出て行った。

 

 

 

 

友希那 side out

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

リサ side

 

「友希那……!」

 

友希那はスタジオを出て行ってしまった。

 

「湊さん……っ!

……行ってしまったわね」

 

「……」

 

「今井さん、大丈夫?」

 

「あ……ご、ごめん……なんか、驚いちゃって」

 

「湊さんが言ってたこと、わかる気がします」

 

「わかるって……?」

 

「私達は、バンドと個人として、色んな経験をしました。

その結果、私個人としては成長できましたし、バンドの空気が以前よりもいいものになっています」

 

でも、どうしてそれが……

そう思っていると

 

「ですが……それはRoseliaにとって大きな問題だったのでは、と思ったんです」

 

「……どういうこと?」

 

「私達が無意識的にまとまっていた張り詰めた空気が消え、いつしか『いい雰囲気』が『音』にのっていたのではないでしょうか。

それによって、Roseliaのサウンドは以前と比べて迫力が失われてしまったのかもしれません」

 

「昔の迫力を取り戻す為には、昔みたいにならないといけないってこと……?」

 

「……どうすれば私達の『音』を取り戻せるかは、わかりませんが……以前の私達に戻る必要はないと私は思います」

 

「っ!!!」

 

そんな……、それじゃあアタシが今までやってきたことって……もしかして、バンドにとってすごくダメな事だったのかな……

 

「……」

 

「今井さん、今日はもう帰りましょう」

 

「う、うんっ……」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

帰り道

 

「……」

 

「あの……今井さん……どうかしましたか?」

 

「…なんか、アタシ、何してたんだろって……。

みんながいい感じになって、アタシはみんなよりも演奏が下手だから、少しでも役に立てる事考えてさ。

でも、それは全部Roseliaの為になってなかったんだよね……。

ずっと、友希那の夢が叶うようにってやってきたのに。

……っ」

 

すると

 

「……あなたは、Roseliaのベーシストです」

 

「え……?」

 

「私はあなたをRoseliaのベーシストとして認めています。あなたの存在はバンドにとって必要不可欠なものです」

 

「紗夜……っ!はあ、もう……優しいなぁ。

けどさ、これからどうすればいいんだろう?」

 

「緊張感のある私達の『音』……これは確かに取り戻すべきですね。

………そういえば、今井さん」

 

「?どうしたの?」

 

「如月さんからの手紙を預かってましたね」

 

「っ!……それだよ……それだよっ、紗夜っ!

今からアタシの家に行こっ!」

 

アタシはそう言って紗夜の手を引っ張って行った

 

「えっ!?ちょ、ちょっと今井さん……!」

 

 

 

 

 

リサ side out




番外編の前半と後半は結構長くなります。
なんせ、番外編ですから。
さて、お気に入りありがとうございます。
新しい方から紹介させていただきます。

たうそ きさまや様 ヒロキチ様 月季様 ー咲良様 勇気ブレイブ様 田中さん様 貧弱様 ユダキ様 天駆けるほっしー様

祝!!!
10人突破!!!
はたから見ると少ないと思いますが自分的にはかなり嬉しいです。
本当に毎回言ってますが
ありがとうございます!

次回予告

『Roseliaの』


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