退屈な日々を忘れたい俺がなぜバンドの手伝いをしているんだ......   作:haru亜

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これは原作とは違ってカルマ回復クエなど回復系統のクエは一切ありません。



第6話 必ず

第三層に上がって行った。

いや、正しくは行こうとすると

 

「おい!」

 

男が叫んだ。

誰に向けて叫んだのかわからないでいると次の男の一言で理解した。

 

「お前みたいな奴が最前線に出てきてんじゃねぇ!!この人殺しが!!!」

 

男がそう言い放った。

できれば巻き込みたくないので

 

「…千聖、そのまま第三層に上がって行け。

頼んだぞ」

 

「何を言ってるの陽菜、まだあなたの事、説明されて」

 

その言葉を遮り

 

「今は俺から離れろ。

パスパレはアイドルの面でも、バンドの面でも世界的に有名になってきてる。

……だから、頼む」

 

「…!……わかったわ。

彩ちゃん、みんな行きましょう」

 

「えっ!千聖ちゃん!?」

 

そう言って千聖はパスパレのメンバーを引っ張っていってくれた。

後はこの子達をどうするか…

そう考えていると周りから

 

「お前がいたから負けそうになったんだろ!!」

 

「そうだよ、この人殺し!!」

 

「そうだ!!なんでお前みたいな殺人鬼にその子達を守らせないといけねぇんだよ!!!」

 

「それなら!俺たちが守った方がまだマシだ!!」

 

などの声が聞こえてくる。

それら全てを無視して今すぐに上に行きたかったが…

 

「……『俺たちが守った方がまだマシ』って言ったけど、今あんたらのレベルはいくつだ?」

 

「ああ!?ナメてんのか!ここにいる攻略組のほとんどがレベル18以上だ!!」

 

「はぁ…」

 

低い

 

「…護衛を甘く見るな。

そんなレベルで、ましてやボス戦の時にこの子達を守れるわけないだろ」

 

「はぁ!?だったらお前のレベル見せてみろよ!!」

 

1人がそう言うと周りも同じようだった。

ウィンドウで自分のパラメータを開き、そのまま全員にスライドした。

 

『っ!!?』

 

「俺の代わりをしたいなら、そのステータスを超えろ。

それができないなら…お前らにこの子達を守る資格はない…」

 

資格がない…?

何言ってんだか……アイツらの言う通り、ただの殺人鬼にこの子達を守る資格なんてない。

そんな事を思っていると

 

「な、なんだよこれ……」

 

「こんなの超えられる訳が…」

 

次々にそんな声が聞こえたが、今度は無視して先に進んだ。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

第三層 主街区

 

「……ねぇ陽菜…本当に、陽菜がやったの?」

 

第三層に上がって宿に向かいながら話を終えた時、リサの質問に

 

「もし、そうじゃなかったら、俺のカーソルは赤黒く染まってない」

 

「……でも、陽菜は…友達の最期のお願いで、仕方なくやったんだよね?

何も陽菜が気に病むことないよ…」

 

気にかけてくれているリサに対して少し…

 

「リサは優しいな。

…でも、ここにいるのは正真正銘ただの殺人鬼だ」

 

「!……でもそれは…」

 

「…それにこの世界にはもうRoseliaとしてみんなは有名になって、存在が広まってきてる。

そしてその近くに殺人鬼がいるとなると、Roseliaにもみんなにも、迷惑をかける事になる」

 

「っ!…陽菜さん……それって……」

 

「ああ……燐子は察しが良くて助かる」

 

「そんなの……嫌です……!」

 

燐子がそう言うと友希那が

 

「……如月、また、私達を…置いて行くつもり?」

 

「…」

 

するとメッセージが届いた。

俺がアルゴに頼んで置いたうちの1件だろう。

そしてそれを読んで、友希那達にウィンドウをスライドし説明をしようとすると

 

「これは……」

 

「鼠に頼んでおいた。

内容は

『オレンジプレイヤーは1週間

レッドプレイヤーは5ヶ月

ブラックプレイヤーは戻らない』っていう俺のカーソルについてだ」

 

「!……それなら、如月は」

 

「ああ、俺は赤黒いカーソルだから約一年だそうだ」

 

『っ!!』

 

すると

 

「待って…陽菜!

アタシたちに…できることってある…かな?」

 

リサが諦めまいと聞いてきた。

 

「…ある」

 

「それって?」

 

「…いつか、信頼できる人がみんなの前に現れたら、そのギルドに入るんだ。

それがみんなにできる事だ」

 

「!」

 

「……また会えるのは約1年後だ。

それまでに必ず生きて会おう」

 

そう言うと友希那が

 

「…でも如月、今の私達だけじゃ…」

 

珍しく友希那が弱気になっていて驚いたが

 

「大丈夫だ。

……みんなはきっとRoseliaとしても個人としても強くなる。

きっと俺を通り越すほどに…」

 

「…でも」

 

友希那が何か言おうとしたがそれを遮り

 

「『Roselia』…青い薔薇。

その花言葉は『不可能を成し遂げる』だろ?」

 

「!」

 

「だったら大丈夫だ」

 

「……そう」

 

「…じゃあな、俺は先に行ってるよ」

 

「ええ。

必ず、あなたに追いつくわ」

 

「ああ、待ってるよ」

 

そして、友希那達とは一年後に会う事になった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

それから約一年が経った。

未だに俺のカーソルは緑には戻っておらず、今は、オレンジカーソルになり、明後日には緑に戻る感じだった。

 

死亡者約3000人

生存者約7000人

現在の解放済み階層49層

 

そんな中、俺は独りで迷宮区奥に潜っていた。

そしてあの時から友希那達には一度も会ってない。

 

友希那達が有名になってきて生きているのはわかっているのに、毎日3回以上はみんなの生存確認をして、安心しているのは本当にただの大バカ野郎だな…

リザードマンとの戦闘中、そんなことを考えた隙に

 

「くっ!?」

 

敵のソードスキルが肩を深く斬り裂き、左上のHPバーが残り7割だったのに対し、3割を持っていかれ、残りが4割になった。

この敵のレベルは80、そして対するこちらのレベルは79。

 

数値的には何の問題も無いように見えるが、この1つの差から自身の命を落とす可能性が一気に高まる。

本来ならこんな場違いなレベルのモンスターは普通はあり得ないが、場所が奥深くの洞窟だから稀に出て来る。

 

そしてHPを見て逃げようと背中を見せると敵は盾を前にして、剣を後ろに構えて剣をオレンジ色に発光させ、ソードスキル『フェル・クレセント』を放ってきた。

 

4メートルほど離れていたが、相手のソードスキルは4メートルを0.4秒で詰めてくるという、なんとも面倒なソードスキルである。

そして

 

「…っ!」

 

振り返り、敵のソードスキルを『体術スキル』の『弦月』で蹴り飛ばして、剣を青色に発光させソードスキル『シャープネイル』を発動させた。

 

そして、空中には獣の爪痕のように3つの青色の光ラインを残して、モンスターは結晶のかけらとなり、目の前にはモンスターの戦利品が表示されると同時にレベルアップと表示され、レベルを見てみると

 

「80か…とりあえず今日のノルマは達成だな」

 

誰もいない所でポツリと独り言をこぼして、セーフティーゾーンで休んでから、主街区に戻っていった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

友希那 side

 

「はぁ〜!やぁっと終わった〜♪」

 

リサはそう言いながらソファに座った。

すると

 

「副団長様っ!これであこ達の任務、終わりだよねっ!」

 

あこがそう言うと副団長と呼ばれているアスナは少し説教するように

 

「もうっ!あこちゃんったら、副団長様ってやめてよ。

私たち友達なんだから」

 

「えへへ、ごめんなさい」

 

「わかればよろしいっ。

…あっ!そういえば、あこちゃん」

 

「?どうしたの?」

 

「あこちゃんって、このギルド『血盟騎士団』に入ってからもそうだけど、よく任務を頑張ってくれてたでしょ?

でも、今日のあこちゃん、いつもより調子が良かった気がするんだけど…私の気のせいかな?」

 

するといつの間にかソファにかけていた紗夜と燐子が

 

「多分それは、もう少しで『あの日』が近いからでしょう」

 

「そう…ですね……わたしも楽しみ……です……」

 

それを聞いてアスナは不思議な顔になったが、すぐに理解したようで

 

「…ああ!陽菜君に会える日が近いんだ!

それであこちゃん、今までにないくらいの元気だったんだ」

 

「うんっ!!

だってね、陽兄ぃ前にも勝手にどこかに行っちゃったの…。

その時はすぐに帰ってきてくれたけど……」

 

「そっか…今度は一年も待たないといけないもんね。

……陽菜君ってどんな人なの?

私、エルフクエストとボス攻略でしか会った事がなくて…」

 

それを聞いてそれぞれ

 

「えっとね!陽兄ぃはいっつもあこ達の事を守ってくれてカッコ良かったんだっ!!」

 

「陽菜さんは……男性なのに……安心できる人です」

 

「そうそう、だけど…陽菜って何でも一人で抱え込んじゃったりするから…」

 

「そうですね。

ですが、如月さんはそれと同時に私達を何度も助けました。

もちろん、向こうの世界でも」

 

「……」

 

「?友希那ちゃん、どうかした?」

 

「……いいえ、なんでもないわ」

 

「?……それで、友希那ちゃんは陽菜君の事どう思ってるのかな?」

 

「!どう…って言われても…」

 

思わず下を向いてしまった。

そして、考えて

 

「如月は……」

 

「陽菜君は?」

 

………

 

「…ただ、私達を手伝ってくれて助けてくれてるだけよ」

 

『………』

 

部屋が静まり返った。

すると

 

「「素直じゃないな〜友希那(ちゃん)は」」

 

リサとアスナ2人揃って言われ、それに対して

 

「…別に、普通よ…」

 

「え〜、でも友希那って昔、たまに陽菜の事目で追っかけてたよね?」

 

「!あ、あれはただ……如月が何か、しでかさないか気になってただけよ」

 

「あはは☆友希那ってば本当に素直じゃないよね〜」

 

「やめてリサ」

 

すると紗夜が

 

「そういえば次のボス戦は第50層ですよね」

 

紗夜の質問にアスナは

 

「そうだけど……それがどうかしたの?」

 

「いえ、私達が25層を攻略する時、大きな被害が出てしまいましたから……」

 

「…そうね、あの時は私たちも25層に通常のボスより遥かに強いボスがいた事で、攻略組の半分ほどがいなくなってしまった。

だから…あの時と同じ過ちは起こさない様に、動けているといいんだけど…」

 

「そうですね。

如月さんは第十層以来ボス戦に参加してないらしいですから、知らないでしょうけど。

……そういえば、今回もキリトさんは来るんですか?」

 

そう紗夜がアスナに聞くと

 

「な、なんで私に聞くの!?」

 

「?お二人はお付き合いされていないんですか?」

 

「つ、付き合ってないわよっ!

でも、キリト君ならボス戦に来ると思うよ」

 

「そうですか、すみませんでした。

でも、来るなら安心ですね。

如月さんもいたら助かるのですが…ボス攻略当日が『あの日』と重なると…」

 

「やっぱり、ボス戦には参加出来ないかもしれないわね」

 

アスナがそう言うとほぼ同時に扉をノックされた。

すると赤と白の甲冑を着た男が入ってきて

 

「アスナ様!第50層のボス攻略に関して団長が聞きたい事があるそうです!」

 

「団長が?」

 

「はい!会議室で待っている、との事です」

 

「わかりました、すぐに行きます。

ごめんなさい、私は行ってくるからあなた達はゆっくりしてて」

 

アスナがそう言うと男が

 

「いえ、それが演奏隊の皆様にも聞きたい事があるそうです」

 

「私達にも?」

 

「はい」

 

「じゃあ、みんなで行こっか♪」

 

リサがそう言い、会議室へ向かった。

 

 

 

 

 

友希那 side out

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

第50層 主街区

迷宮区から戻った俺は9層まで続くエルフクエストで手に入れた剣『クイーンズ・ナイトソード』を強化するためとレベル上げのために迷宮区に潜っていた。

そしてこの前、鼠から

『はっきり言って55層以降は最大値にした所で通用しなイ』と言われたのでそろそろ新しいのを探さないといけなくなった。

そんな事になっているが、とりあえず鍛冶屋に行き、強化を頼んだ。

すると

 

「ヨッ!」

 

「っ!…なんだ鼠か…」

 

「なんだとはなんダ。

それよりもそのカーソル」

 

そう言いながら頭の上のオレンジカーソルを指差した。

 

「順調に回復してるじゃないカ。

これでもうすぐあの子達に会えるナ」

 

「…そうだな。

あの子達が俺に追いついたか、追い越したか、楽しみだ」

 

「ふーン…。

……そうダッ!陽坊、次のボス戦には参加した方がいいゾ」

 

「?なんで?」

 

「ボスのLAが剣なんダ。

それも魔剣クラスに入るナ」

 

「…マジで?」

 

「うン、マジ。

『クイーンズ・ナイトソード』じゃ、この前言った通り55層が限界だからナ。

それを手に入れたらコレからの階層はほとんど攻略できるだろうナ」

 

「…ボス戦っていつだっけ?」

 

俺は第十層以来からボス戦には出ていない。

その間にも友希那達には会わなかった。

なので、ボス戦がいつかやるのかわからないのだ。

 

「ボス戦はちょうど明日ダ。

でモ、50層は他の階層とは違ウ」

 

「どういう事だ?」

 

「各フロアボスの中でも25、50、75、そしてもちろんの事100層まではクォーターボスと呼ばれる化け物がいル」

 

「?アインクラッドの階層全部、化け物なんだろ?」

 

そう言うとアルゴは首を振り

 

「そういう事じゃなイ。

この前の25層ボス攻略の時にも尋常じゃない程の死人が出タ。

それはクォーターボスだからダ。

そして、おそらく次の階層も…」

 

「クォーターボス…!」

 

「そういう事ダ。

情報はさっき血盟騎士団の団長に渡したから大丈夫だろうけド…」

 

「……やっぱり心配だな」

 

「そうだナ。

まぁ、とりあえず頑張ってくレ」

 

そう言うと鍛冶屋に頼んだ強化が終わり、取ってから振り返ってみるとそこにはアルゴはいなかった。

 

「…全く早いな。

そういえば情報料はいらなかったのか?」

 

そんな疑問を持ったが

 

「…まぁ、いいか」

 

レベルをもう少し上げる為にもう一度迷宮区に向かった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

友希那 side

 

会議室に入るとその先には椅子に座り、灰色の髪を前に垂らして、真紅のローブに身を包んだ団長の姿が見えた。

 

「失礼します」

 

「ああ、来たかね。

では明日にあるボス戦についてなんだが…少し、気がかりなんだよ」

 

それにアスナが

 

「気がかり…とは、この前の25層で起こったような事ですか?」

 

「さすがアスナ君は鋭い、とは言っても情報屋に聞いた事なんだがね。

とりあえず私が言っておきたいのは、このボス戦は君達も充分に注意してくれ」

 

「わかりました」

 

「話はこれで終わりなんだが……時に友希那君達は、本当に血盟騎士団には入ってくれないのかい?」

 

その質問に

 

「はい。

この前話した通り、私達には約束がありますから」

 

「そうか…それは残念だ。

君達がいてくれたらボス攻略は少し楽なのだが……まぁ、無理を言っても仕方がない」

 

「……」

 

「それに友希那君は私と同じユニークスキルを持っているから、団体との関わりは出来るだけ避けたいのだろう」

 

「!」

 

するとアスナが

 

「団長!…あまりその話はなさらないでください。

誰かに聞かれてたらどうするんですか」

 

「あ、ああ…すまないね、こんな話をしてしまって」

 

少したじろいでいた。

団長でも副団長には敵わないよう…。

 

「まぁ、君達がこれからどう成長して行くか楽しみだよ。

では、またボス戦の時に」

 

無言でお辞儀をし部屋を出てから扉を閉めると

 

「ごめんね。

団長があの話しちゃって…」

 

「いいわよ。

別に気にしてないから」

 

「それにしても…中々大変ね」

 

「?」

 

その言葉の意味を理解できず、首をかしげると

 

「友希那ちゃん達の護衛の事よ。

本当ならこっちの方がレベルは高くないといけないのに、友希那ちゃん達はここに入る前から血盟騎士団の人達よりもレベルは高くて強いから、護衛を決めるのが大変なんだよ。

自ら護衛に行く人もいるけど…」

 

それにリサが

 

「友希那がほとんど断ってるもんね〜。

『そんなレベルで守って欲しくない』って」

 

「そうそう!私も近くで聞いた時はびっくりしたよ。

友希那ちゃんがそんな事言うなんて」

 

「……」

 

実際に言ったことだから何も言えないわ…

そう思っていると

 

「あっ!もうこんな時間!みんな寝たほうがいいわ。

明日のボス戦に1日でも早く備えなきゃ!」

 

「そうね。

私達ももう寝るわ、おやすみなさいアスナ」

 

「うん!おやすみ友希那ちゃん」

 

そして各自、自分の部屋に行き、そのままボス戦に備えて眠った。

 

 

 

 

友希那 side out

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「な……何ぃ……!?」

 

そう叫びたくなる衝動がきたのは、昨日は全くレベリングが出来なかった悔しさからではない。

朝起きて次のボス戦について新しく更新された手紙を見ていた時だった。

しかもその内容がなんとも言えないものだったからだ。

内容は

 

第50層のボス戦について

ボス戦開始時刻、今日の22時30分

レベルは55以上

職業不問

 

ここまでは普通なのだが……

続きを読むと

 

なお『血盟騎士団演奏隊の護衛』をしてくれる者を探しています。

レベルは70以上

職業不問

 

理由は

『演奏スキル』を使う事で演奏隊はボスモンスターのヘイトが溜まり、攻撃されやすくなります。

それを守る事に、腕に自信がある方は今日の19時までに血盟騎士団の団長まで来てください。

 

との事だった。

なんだこれ……迷子のチラシを見てるみたいだ…

まぁ、友希那達が何かしたんだろうけど…俺の今のカーソルじゃなぁ…人殺しと呼ばれて門前払いを受けるだけだな。

 

「……しかも、この『血盟騎士団』って入ってる時点で最高レベルを指してるんだよなぁ…」

 

つまり、演奏隊以上のレベルがないと護衛は務まらない…か

 

「さてと……これからどうするか…」

 

今日のノルマは昨日のうちに達成しちゃったからな。

……たまには圏内を見て周ってみるか。

そう思ってフードを被り宿を出ると、やはり周りからの視線が痛い。

フードを被って正解だな…

そう思っていると

 

「あ、あのっ!……少しよろしいですか?」

 

裾を掴まれ振り返ると

そこには、あこくらいの身長で腰にダガーを持ち肩にリドラという小さな水色のドラゴンのようなモンスターを連れている、ツインテールの女の子がいた。

 

「何か用か?」

 

俺がそう尋ねると周りから

 

お、おい…あの子大丈夫か?

 

オレンジプレイヤーに話しかけるなんて…

 

ね、ねぇ誰か助けに行った方がいいんじゃ…

 

そんな声が聞こえてきたが、無視した。

すると

 

「あの…キリトさんという男性のプレイヤーを知りませんか?」

 

「知ってるけど…キリトに用があるなら、鼠に聞いた方がいいぞ」

 

「で、でも…わたしお金がないので…」

 

「じゃあ、キリトにメッセージ飛ばすから、待ち合わせはここでいいか?」

 

すると女の子は笑顔で

 

「…!あ、ありがとうございます!」

 

「それで、キリトは君の事知ってるのか?」

 

「た、多分…一度だけ助けてもらった事があって、1日だけ…わたしのお兄ちゃんでした…」

 

「……わかった。

とりあえず呼ぶ、今すぐに来れるかはわからないけど…」

 

そう言いながらキリトにメッセージを飛ばすとすぐに返信がきて

 

「…よかったな。

少し遅くなるが、後5分で来るらしい」

 

「ほ、本当ですか!?

ありがとうございます!!」

 

「じゃあ、俺は宿に戻るよ。

…そういえば名前聞いてないな」

 

「あっ!シリカです!それでこっちは相棒のピナです!」

 

相棒…

 

「その相棒、大切にしろよ」

 

「はいっ!ありがとうございました!

ええと…」

 

「きさ…陽菜だ」

 

「ありがとう陽菜さん!」

 

何回ありがとう言うんだこの子は…

とりあえず視線が痛いからやっぱり戻ろう…

そう思いながら宿に戻った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

友希那 side

 

現時刻22時27分

現在地ボス部屋前

ほとんど最前線に出ている攻略組が集まっていた。

それを見渡していると

 

「ゆーきなっ♪」

 

「!どうしたのリサ」

 

急に抱きつかれて少しビックリしたけど……

 

「今日の演奏隊はアタシ達だけだから、頑張ろうねっ♪」

 

「ええ」

 

すると向こうから、血盟騎士団の団長ヒースクリフとアスナ、その隊員が複数人が来た。

キリトもアスナの近くにいた。

そして

 

「これより第50層ボス攻略を始める!我々がする事はただ一つ!!

誰も犠牲を出さず、次の階層に進む事だ!!!」

 

『おおーーー!!!』

 

団長のヒースクリフがそう言うと周りから相当な意気込みが感じれるほどの声が聞こえた。

すると団長は振り返り、重々しいボス部屋の扉を開けた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ボス部屋を開けるとそこにいたのはまるで千手観音像のような仏像だった。

じっとして、少しも動かなかったが、1人がボス部屋に一歩、足を踏み入れると、それに反応してボスは目を赤く光らせ

 

[ボォォォォォォォォン!!!!]

 

今までに聞いた事がない咆哮を出してきたが、すぐに団長が

 

「全員配置につけ!!来るぞ!!!」

 

団長の覇気ある声は全員を動かした。

それを見て

 

「みんな、やるわよ」

 

『うん(ええ)!』

 

『演奏スキル』のボタンを押してから

 

「『BLACK SHOUT』」

 

そう言うと『演奏スキル』が反応し、まばらに光を放ちながらそれぞれの楽器が目の前に現れ、演奏を始めた。

すると

 

「ウォッシャーー!!」

 

「Roseliaの曲聴きながらとか、最高かよ!!」

 

そんな事を周りから聞きながら、ボス攻略が始まった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

それから20分程

団長、アスナ以外の血盟騎士団は壊滅寸前

キリト以外の助っ人達はすでにHPがレッドに陥っていた。

しかし

 

「……せあ…ッ!!」

 

「やあ!!」

 

勢いよくキリトとアスナが斬りつけ、ボスのHPバーがようやく最初の7つから4つに減った。

すると

 

[キュアアアアアアアアアアアアア!!!]

 

「っ!」

 

耳をつんざく咆哮がすると同時に『演奏スキル』のランダム効果付与が解除され、目の前にあった楽器が全て砕け散った。

そして、HPバーの隣にはバフ無効のマークがついた。

 

「!」

 

急いで確認すると、時間は10分という幾ら何でも長すぎると思わせるほどのものだった。

 

「そんな…!」

 

燐子がそう呟いた。

すると前で

 

「全員避けろ!!」

 

キリトがそう叫んだが、もう遅く。

前線に出ていたプレイヤーのほとんどが自身の周りに円を描くように放たれた真紅の光線をくらってしまった。

それを見て

 

「…あれを使うわ」

 

「!友希那…それを使ったら」

 

「…如月が、私達を守ってくれたように、私もあの人達を見殺しには出来ない」

 

「っ!…友希那がそう言うなら、アタシは反対しないよ。

だって、友希那が決めた事だもんっ♪」

 

「ありがとう、リサ」

 

そう言った後、右手を素早く下にスライドさせ、スキルウィンドウを開いてユニークスキル『歌姫』を選んだ。

 

「ーー♪」

 

歌い始めるとボス部屋全体の地面から複数の光の粒が地面からふわりふわりと浮き出て幻想的な光景を見せていた。

この『歌姫』は歌っている間、地面から光の粒を浮き出し、その粒に触れるとプレイヤーは相手の攻撃を一度だけ無効化できる能力と攻撃、防御、敏捷の全てがほぼMAXまで上がる。

しかし、これは1プレイヤーにつき一回だけで、次に付与できるようになるのは三日後になっている上、『演奏スキル』が一緒に使えない。

だから…この効果が切れる前に倒してくれないと……

そう思っていると

 

「せあ…!!」

 

「フンッ!!」

 

「やあ!!」

 

キリト、団長、アスナの一撃がボスの額を斬り、HPバーの4つ目が半分に減った。

するとボスはさっきと同じ咆哮をしてその場で高速回転し、周りを吹き飛ばした。

さっきの光の粒を触れていたなら大丈夫だけど…

そう思っていると

 

「!」

 

そこにはスタンになり、動けない者がいた。

おそらく、ボスの攻撃を一度だけ無効化したが、二撃目をくらったのだ。

そして

 

「!ダメッ!」

 

そう止めても、ボスは無慈悲だった。

拳を握り、腕を上げて力を溜めていた。

それを見て

 

「っ!」

 

「友希那っ!!ダメッ!」

 

思わず飛び出していた。

きっと、如月ならそうすると思ったからだ。

そして振り下ろされる前に間に合い、安全圏まで連れて行こうとすると

 

[パアアアアアアアアアアア!!!」

 

またも聞いた事がない咆哮がし、見上げるとボスは拳を振り下ろそうとした。

すると

 

「ヒィィィィッ!!!」

 

「あっ!」

 

助けようとしたプレイヤーのスタンがギリギリの所で切れて、安全圏まで逃げて行き、ボスは腕を振り下ろした。

 

「……っ」

 

諦めたその刹那。

 

「…綺麗な薔薇には棘があるっていうだろ」

 

振り下ろされそうになったボスの腕に一つの青白い線が引かれ、腕が落ちた。

そして、目の前には…

どこか懐かしく、そして安心してしまう雰囲気を放っていた。

 

「…如月っ…!」

 

 

 

 

 

友希那 side out




お、おお、お気に入りが増えてる!?
ややや、やばいって!!
し、紹介します!

taihou01様 メルヘム@様 黒野舞亜様
勇気ブレイブ様 貧弱様 ユダキ様
lunar913様 夜刀様燃え萌え隊様 テスアクエリポカ様
たうそ きさまや様 ー咲良様 天駆けるほっしー様
田中さん様 ブラジロ様 岬サナ様
プリン大福様 ヒロキチ様 月季様

これで18人…本当にこんな物を読んでお気に入りしていただき感謝してます。
なんかもう、名前の見えない方も入れると19人なんですよ。
出したい。
名前ものすごく出したい。
出してお礼を言いたい。
そして気づかないうちに昔の自分が自分の作品にお気に入りしてしまっていた。
………
こんな物ですがこれからもよろしくお願いします。
そして、お気に入りしていなくても、見てくれている方々、本当にありがとうございます。
では、また会おう!

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