退屈な日々を忘れたい俺がなぜバンドの手伝いをしているんだ......   作:haru亜

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第15話

数分前に目が覚めて起き上がると

 

……今どんな気持ちだ?

 

その声が後ろから聞こえ、俺は足元にある分厚い水晶の板に座り宙に浮かぶアインクラッドを眺めながらその質問に答えた。

 

「……後悔ばかりだよ」

 

それは…あの夜彼女を泣かせた事か?

 

「それもあるけど…1番は、友希那を最後の最後まで泣かせてしまった事だろうな……」

 

わからないな…

 

「だろうな……昔のまんまじゃわからない」

 

…お前はどうして、無謀な戦いに挑んだ?

 

「…俺は…約束をしたんだ。

だから、俺は戦った」

 

本当は英雄になりたかったんじゃないのか?

 

「なりたかった……ちょっと前の俺は」

 

というと?

 

「俺は…あの子達がいない退屈な日々に戻るのが嫌だった。

だから…必死に足掻いて、なのに余裕ぶってた。

でも…あの子達に出会ってわかった事が1つある」

 

それは?

 

「俺は…あの子達にとって少しは必要な存在になれた。

ただ…それだけだ」

 

フム……お主が言っている事は所々わからんな

 

突然口調が変わったと思い声の主を見てみると、そこには丸眼鏡をし分厚い本を持った、賢者のような姿をした幼女だった。

 

「よ…幼女?」

 

そう言うと幼賢者の顔は動いていないが怒りの表情が読み取れた。

すると

 

「お主…助けてもらった分際でよくもまぁ、そんな事が言えたな」

 

「え?助けてもらった記憶がないんですけど…」

 

「はぁ……少し記憶が飛んでおるな。

お主、なぜアレが浮いているかわかるか?」

 

そう言って小さな賢者はアインクラッドを指した。

それを見て

 

「いや…クリアされたから、放置してるんじゃないのか?」

 

「はぁ……どこまで記憶が飛んでおるのだ…」

 

「えぇ…じゃあ教えてくれ。

なんで浮いてるのか、俺はなぜ生きているのか」

 

確かに俺はヒースクリフとの戦闘で死んだ。

 

なのに……どうして…

 

そんな事を考えていると目の前に立っている賢者が

 

「まず、なぜアレが浮いているか、じゃが。

それはまだゲームがクリアされていないからじゃよ」

 

「………はぁ!?」

 

「もちろん…お主の友人達はまだ囚われておるよ」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!!

俺はヒースクリフを倒したぞ!?」

 

「ああ、確かにお主は倒したな。

システムにバグが発生したのを無意識のうちに利用して」

 

「バグ!?」

 

「まぁ…それは置いておけ。

ワシが言いたいのは、まだゲームはクリアされていない。

そして、その理由は外部から、なんらかの干渉があったからだ」

 

「?干渉?」

 

「ああ。

第76層の時、この『ソードアート・オンライン』に入り込もうとしたから、ワシが一回だけ追い出したのじゃよ」

 

「追い出した、って…いやいや!いくら賢者の格好をしても、ただの幼女がそんな事できる訳」

 

途端、顔の横を赤い閃光が走った。

 

「……何…今の…」

 

そして幼賢者の指先が赤く光っていた。

 

「何、ただの光線じゃよ。

ただ、当たれば消し飛ぶがな」

 

「すみませんでした!!」

 

「よろしい。

では、もう一つのなぜ、お主が生きているかじゃが。

それは、お主がナーヴギアで頭を焼かれる前に、茅場がその装置を止めたからじゃよ」

 

「なんで…ヒースクリフはそんな事を?」

 

「奴が死ぬ前、外部の奴らはもう一度入り込もうとした。

そのせいでアインクラッドに囚われた者達はログアウトが正常に作動しなかった。

しかも、その入り込もうとした奴らは今あのアインクラッドの中にいる」

 

「へぇ…中に入ったのか。

それで?第75層からどれくらい進んだんだ?」

 

「第96層」

 

「へぇ…はい!?」

 

「だから…96層まで進んだと言ったのじゃ。

そこまで進んだのは、25人の少女達と二刀流使いとその仲間達、そして1人の男によってな」

 

「何それ誰?」

 

そう聞くと少し嫌そうな顔をした後、その幼女は

 

「その男は外部から来た者で、これが少々厄介でな」

 

「というと?」

 

「あの男、システムでレベルなどは操れんが、他プレイヤーに状態異常を付与できるのじゃ。

ワシからも奴に手をかけてみたが、ワシはアインクラッド内ではどうやらほとんどの機能が使えないらしい」

 

「えぇ…」

 

「とりあえず、外から奴のシステムに入り込もうとしたのじゃが、面倒な事に奴自身のオリジナル権限で入り込めないのじゃよ。

まぁ…しばらく掛かるが権限を停止させる事が出来るじゃろな」

 

「へぇ……で、君誰?」

 

「……今更それを聞くのはどうなんじゃ…」

 

「いや…話を聞いてる限り、君は何故かシステムに直接干渉できるみたいだから」

 

「はぁ……ワシは『カーディナル』だ」

 

「?なんかどっかで聞いたような……」

 

「馬鹿かお主は!!

あの世界にいてこの名を知らないとは、ただの馬鹿じゃな!!」

 

その小さな身体の一体どこからそんな大きな声が出ているのか気になったが、こうも思った。

 

えっ?そんな有名人なの?

 

もう一度心の中でその名を思い浮かべるとそんな思考は瞬時に中止された。

 

「あ、ああ!!あの高機能自律プログラムの!!」

 

「全く…そこまで記憶が飛んでおれば、ここからすぐに脱出させたのだが」

 

「えっ?できるの?」

 

「ああ。

ワシはこの世界の唯一の調整者じゃ。

そのくらい簡単じゃ」

 

「じゃあ、あの子達を先に」

 

「それは出来ない。

あの世界に囚われた者は、ゲームをクリアしないと脱出不可能じゃ。

100層ボスは、おそらくお主も一度見たであろうな」

 

「!あの超巨大モンスターを倒せと?

そんな事」

 

しかし、その言葉をカーディナルは遮り

 

「それよりも、ワシにはお主に聞きたい事があったのだ」

 

「……なんだ」

 

納得しなかったが、とりあえず聞いてみた。

そして

 

「お主、もう一度あの世界に行き、第100層ボスモンスターを倒せ」

 

なんで頼まれてるのに命令形なんだ…

 

そう思ってからその調整者の頼みに

 

「……まぁ、友希那達を助けなきゃダメだからな」

 

「ほう…一度死んだ人間の言葉とは思えんな」

 

「その敗者の物語を見せてやる」

 

「よう言ったわ」

 

「まぁ…あの子達はきっと強くなって、俺を追い越してるだろうな」

 

「まぁ、お主はここで約1ヶ月半眠っていたのだからな」

 

「そうだな、1ヶ月半も経てば…………て1ヶ月半!!?」

 

「ええい!五月蝿い!黙れ!

そんな事今はどうでもいい!

いいか!

メンタルヘルス・カウンセリングプログラム試作1号がいない今!

彼女の心に寄り添えるのはお前だけだ!!」

 

「そのメンタルヘルスなんちゃらの代わりになんで俺が!?」

 

「あの時は茅場に創り上げられたワシがユイを消してしまったが、今それの2号はあのアインクラッドの中にいる」

 

「ちょっと待て。

入るとしても、俺の装備、あの戦いで全部壊れたぞ。

例え、カーディナルでも俺の装備をバックアップする事なんて出来ないだろ」

 

「壊れてなどいない。

それに、あの時お主が死ぬ直前に茅場は世界の異変に気付き、お主の装備とレベルだけはバックアップしてるのじゃ」

 

「じゃあ、すぐに前線に行けるんだな?」

 

「まぁ…とりあえず先に飛ばすとしようか」

 

「!?…え?武器とか防具とか装備してから行かないの!?」

 

「お前のバックアップの数値が地味に面倒くさい。

恨むならそこまで育て過ぎた自分を恨むんじゃな」

 

「じゃあ、俺はレベル1から始めて、しばらくの間モンスターから逃げ回ると…」

 

「そうじゃな。

それと、彼女達が95層をクリアした時点で、圏内にモンスターが入り込んで来るから気をつけてな」

 

「はぁ……もう驚くのもシンドイな……

なぁ…あの子達元気にしてるのか?」

 

「知らん!ワシは今、外部のせいで忙しいんじゃ!

暇な時に説明やら、色々やってやるからさっさと行ってこい!」

 

「いや、行けと言われましても…ここアインクラッドの外なんですよね」

 

「まぁ…通る時に何か不祥事が起きて一部記憶が消える可能性があるが……そんな事より、今お主が足をぶら下げて座っているその下がゲートになっておる」

 

「え……」

 

ゆっくりと足元を見下ろすが、そこにはただ月の光に照らされた雲が流れているだけだった。

 

「何故こんな所に……ていうか記憶が無くなるって何…」

 

「いいからさっさと行かんか!」

 

そう言われて下を覗きながら

 

「いやいやいや!!!下何も無いけど!?」

 

すると

 

「まぁ、ゲーム内に入れたらワシの名を呼べ」

 

ドンッ!!

 

「え?」

 

俺は水晶板から落ちていた。

 

「うわぁあああああ!!!?」

 

あの…突き飛ばしロリ賢者め!!!

 

そう心の中で叫びながら、俺は光のトンネルに呑み込まれそのまま落ちて行った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

第??層

 

「うわぁああああああ!!!?」

 

光のトンネルを通り抜け、夕焼けに染まる町の住宅路に転落して行った。

真っ逆さまに落ちて行き、下を見ると2人程がモンスターと戦っていた。

 

おお…戦ってる戦ってる

 

「ってそうじゃない!

どいてくれぇぇ!!!」

 

そして叫んでからモンスターの上に着地した。

…もちろん頭からだ。

 

「ぐっ……死ぬかと思った……」

 

そう呟いてから起き上がると

 

「ちょっとあなた!そこどいてください!!」

 

「?…っ!!」

 

前を見るとそこには骸骨の騎士が剣を青白く発光させていた。

それを左に避け、右に避け、宙に避けた。

そして最後の振り下ろし攻撃に初期の片手剣を使い、ソードスキル『スラント』で弾いた。

 

「スイッチ!」

 

自然とそう合図すると同時に、横から緑の一線がモンスターの胸を貫き、弾けた。

 

「……はぁ……全く、転移座標も考えて欲しいな…」

 

そう呟き、後ろに人にお礼を言おうとして振り向くと

 

「っ!!?…如月……さ、ん……?」

 

「えっ……本当だ…陽兄ぃだ……!!」

 

「!…まさか…こんな早く会えるとはな……」

 

全く…なんでカーディナルはこういう事言わないんだか…

 

「久しぶり、紗夜、あこ」

 

「!やっぱり…如月さん、あなたなんですね」

 

「ああ。

訳あって、今はこんな装備だけど」

 

そう言うとあこが笑顔で抱きついて来た。

 

「陽兄ぃ〜!!あこ会いたかった!!」

 

「よく96層まで進んでくれたな。

本当によく頑張ったな」

 

すると紗夜は何か思い出したように俺の手を掴んだ。

 

「…!そうでした!

如月さん!今すぐに湊さんの所に行ってあげてください!!」

 

「…何かあったのか?」

 

「…それは…また話しましょう。

宇田川さんは今井さんと白金さんにこの事を!」

 

「はいっ!」

 

そして、俺と紗夜は友希那の所へ向かっていった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

第96層 迷宮区 奥地

 

「コッチです!」

 

「わかった」

 

来るまでの道でモンスターに出会ったが、紗夜とあこが瞬殺していった。

そして、水晶が光って、松明などの光の代わりになっている丸い洞窟の部屋に入ると

 

「…やっぱり、また1人でレベリングを…湊さん」

 

紗夜がそう言うと、銀髪の少女はレイピアを薄紫に発光させモンスターを貫いた。

 

「っ!」

 

今まで友希那がモンスターと戦っている所は見たことがなく驚いていると、その細剣使いは振り向き

 

「……紗夜…その人は誰?」

 

友希那の目には一切の光が無く、冷たい目線をこちらに向けてきた。

 

「何を言ってるんですか湊さん。

この人の事を忘れた訳じゃないでしょう!?」

 

友希那はこちらを一度見た後、ため息をつき背中を見せながら

 

「…紗夜、如月は死んだわ。

きっと、幻覚でも見ているのでしょう」

 

「っ!湊さん!

私達は幻覚など見ていません。

ここにいるのは正真正銘、如月陽菜さんです!

いつも私達の隣にいてくれて、寄り添ってくれて、見守ってくれていた」

 

すると友希那の背中がピクリとその言葉に反応した。

そしてこちらを向いて

 

「…そんな事…ある訳ないじゃない…!!!」

 

「「っ!!」」

 

「如月は私の腕の中で、目の前で死んだわ!

……何も…何も出来なかった…!」

 

「っ……」

 

紗夜が言葉に詰まった。

紗夜のこんな所を見るのは初めてだった。

そして、紗夜の肩にポンッと叩いた後

 

「…大丈夫」

 

ただ友希那を見ながらそう言って、友希那の方へ向かって歩いた。

 

「…近づかないで…」

 

その言葉を無視して近づいて行った。

 

「…近づいて来ないで…!!」

 

そう言って友希那はシステムに寄っていない手での攻撃をしてきた。

そしてその手を掴んで、引き寄せた。

 

「ごめんな、俺のせいで…。

こんなになるまで、友希那を傷つけて…苦しませて…。

でも…もう大丈夫だ」

 

「っ…」

 

「俺は…如月陽菜はちゃんと生きてる。

だから…もう…楽にしても良いんだぞ、友希那」

 

「…っ!!

……うっ……っ……うぅ……!!」

 

少しの声と共に俺の服を両手で握り顔をくっつけながら、すがるようにして泣いて、俺はそっとその頭を撫でた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

第47層

 

帰っている途中で、夜が来て懐かしの家に着いた。

 

まぁ…無事に着いたのならいいんだけどさ…

 

「…あの…友希那さん……いつまで袖を掴んでるんですか?」

 

「!…別にいいでしょう…。

気にしないであなたは早く歩いて…!」

 

「はいはい」

 

紗夜は『宇田川さん達と先に帰ってます』とだけ言い残して何処かへ行ってしまった。

そして家の扉を開けようとすると

 

「?あれ?鍵が開かない…」

 

「…ちょっと待って…」

 

そう言うと友希那がウィンドウを開き、何か操作していた。

すると

 

「いいわよ」

 

「あ、ああ」

 

そう言われて再び扉を引くと開いた。

 

「?……ああ、そうか。

俺は一回死んだ事になってるからか」

 

「…死んだって言葉を今は使わないでちょうだい」

 

「わ、悪い…」

 

そ、そんなに嫌か…

 

そう思いながらも懐かしい家の中に入った。

 

「なんか…ガランとしたなぁ……」

 

「そうね……」

 

すると目の前の廊下の突き当たりから足音が聞こえた。

 

「あっ!友希」

 

彩が隣にいる俺を見て固まった。

そして数秒も経たずに

 

「きゃああああああ!!!」

 

「ちょ!?落ち着け彩!!」

 

「丸山さん、落ち着いて…」

 

そしてしばらくして収まり、事情を説明すると

 

「うぅぅ…!!陽菜くんっ!!!」

 

そう言って彩は泣きながら抱きついて来た。

 

「…おいおい……アイドルとして男性に抱きつくのはどうなんだよ……」

 

「そんな事言わないでっ!!

陽菜くん、いっつも日菜ちゃんとイブちゃんに抱きつかれてたでしょっ!!」

 

「うっ……」

 

「でも良かった……てっきり、また偽物が来たのかと思っちゃった…」

 

「?また、ってなんだ…何があったんだ…」

 

すると友希那が

 

「それは、また後で話すわ。

それよりも紗夜達が先に帰って来ているはずだけど…」

 

「あっ!それなら5分くらい前に帰って来たよ?

階段降りてる時になんかすごい勢いであこちゃんが走って行ったけど、もしかして陽菜くんの事?」

 

「ええ」

 

すると

 

ドドドドドドドドドドドドッ!!!!

 

「!……あの〜、この音なんですか?」

 

「多分、あこの情報がみんなに知れ渡ったのね」

 

「じゃあ、この複数の足音って…」

 

「丸山さん、私達は如月から離れておきましょう。

危ないわ」

 

「うんっ!陽菜くん頑張ってね!」

 

「ちょ!危ないってなんだ!?頑張れってなんだ!?俺何されるんだ!?」

 

「知らないわ。

ただ、こういう時の如月の周囲は確実に危ない」

 

そう言って2人は離れた。

それと同時に

 

「陽菜っくーーーんっ!!!!」

 

「うぐっ…!!!」

 

日菜の頭が俺の頭にいい感じでストライクして、なんとか体勢を立て直そうとしたが

 

「陽菜ーーっ!!!」

 

「がはっ……!?」

 

続けて第2撃目の香澄の頭が腹に直撃し、そのままの勢いで後ろ向きに倒れた。

 

「……痛い…俺のレベル1だからすごい痛い……」

 

主に頭と腹が……

 

「触れる!!」

 

「透けてない!!」

 

「色はっきりしてる!!」

 

「陽菜の目、鋭いっ!!」

 

「「幽霊じゃないっ!!!」」

 

「断言してくれるのは嬉しい。

けど…抱きつく習性はまだ直ってないのはどうなんだ……」

 

「ねえねえ!!陽菜はどうやって生き返ったの?」

 

「そうだな…順に行くと。

ゲーム内で俺のアバターは一回死んだ。

でも、現実世界での俺の脳は無事だった。

はい終わり」

 

説明し終わり一瞬の沈黙の後、蘭が

 

「えっ?それだけ?」

 

「いや、実際そうらしいんだ。

俺もあのロリ…賢者……に……」

 

そこで俺は、あのロリ賢者に言われてた『入れたらワシの名を呼べ』という言葉を思い出し

 

「ああっ!!カーディナル!!」

 

「!?ど、どうしたの陽菜?

頭ぶつけて混乱してる?」

 

リサが本気で心配してきた。

 

「違うから…どうしても早く来て欲しい奴がいるんだ。

カーディナルって奴なんだけど…」

 

「!それって、『人の手を必要としないAI』のこと?」

 

「そうそれ!

ゲーム内に入れたら名前を呼べって言われたから呼んでるんだけど来ないんだよな、あのロリ賢者!」

 

すると何か物凄い勢いで顔に飛んできた。

 

「うわっ!?」

 

それを避けると頭に何か乗っかった。

 

「誰がロリ賢者じゃ!

ワシだってこんな姿になりたくなかったわ!」

 

「だったら別のアバター選べば良かっただろ!」

 

「そんな暇なかったからランダムにしたのじゃ!」

 

「自業自得だ!」

 

「せっかく一息つける所をお主の仲間の為にわざわざ来てやったのじゃ!

ワシに感謝して欲しいくらいじゃな!」

 

すると

 

「あ、あの……陽菜さん……そちらの子は…?」

 

「ああ、この子は」

 

「ワシはカーディナル。

今この世界を調整できる唯一のAIじゃ」

 

『っ!!?』

 

そしてその説明に後付けするように

 

「まぁ…アインクラッド内では大体の機能が使えないから、ほとんど意味ないけどな」

 

「お主は黙っとれ!

この子達には、ワシから説明するからお主は散っておれ!」

 

散っておれってなんだ……

 

「はいはい。

じゃあ、みんなに説明頼んだぞ、不法侵入者どの」

 

「お主…後で覚えておれよ…」

 

「高度数万メートルのはるか上空から突き落とした事はな」

 

カーディナルにそう言ってから、俺は自分の部屋に戻った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

1時間後

 

「……」

 

アイテム欄を見て何もない事を確認しているとお腹が空いてきた。

 

コンコンッ

 

ノックがしたので、扉を開けると

 

「陽菜〜☆ご飯出来たよっ♪」

 

「おお…ナイスタイミング」

 

「もしかして陽菜、お腹空いてた?」

 

「ああ、 感覚的には昨日死んだ感じがするんだけど、身体的には1ヶ月くらい美味しい物食べてない感じするから」

 

「あはは☆そう思って、陽菜の好きなシチュー作ったよっ♪」

 

君は神か

 

一瞬言いかけたが、そのままやめて

 

「ありがとうリサ。

またリサの美味しいご飯が食べられるから良かったよ」

 

「!も、もう陽菜ってば!上手いんだから…!」

 

頰を少し紅く染めて、リサは照れるようなしぐさをした。

するとリサが

 

「…実はね陽菜…。

今じゃアタシ達5バンドは仲良くやってるけど、本当は陽菜が死んじゃってしばらく経ってから、ちょっとだけ仲がギクシャクしちゃったんだ…」

 

「…ああ」

 

「何日か経った後、みんなは『陽菜の為にもこれから頑張って行こう』…ってなったんだけど、その中で友希那は『私は1人でやって行く』って言っちゃったから……蘭と千聖とちょっと喧嘩しちゃってさ……」

 

「!…そう…か」

 

「それから友希那、ずっと1人でダンジョンに潜ったり、迷宮区でレベリングしながらボス部屋をすぐに見つけちゃったり…。

アタシもたまに手伝ってたんだけど、友希那の戦い方とか見てたらさ……なんだか昔の陽菜の事を思い出したんだ」

 

「…なるほど……友希那は、きっと昔の俺みたいに強くなりたかったんだな。

もう後悔したくないから」

 

「うん…でもやっぱり、陽菜の戦い方って結構危ないじゃん?

だから、何度も友希那をこっちに連れ戻そうとしたんだけど…」

 

「友希那はそれを拒絶した…か」

 

「うん…でも、陽菜が帰って来た時に友希那、顔色とかすごく良くなってたんだ、迷いも吹っ切れた感じがしてさ♪

だから…」

 

一瞬、リサは言葉に詰まった後

 

「だから……ありがとう陽菜、友希那を連れ戻してくれて…本当にありがとう!」

 

「……お礼を言うのはこっちの方だ。

みんな目の前で知り合いが死んだのに、それを言い訳にせず、戦い続け、生き残った。

本当に、ありがとなリサ」

 

「〜〜っ!もうっ…我慢…してたのに……っ!」

 

「あはは……泣きたい時は泣いてもいいからな、リサ」

 

「っ!うん…!!」

 

そう言うと同時にリサは抱きつき、泣きながら耳元で

 

「ずっと……ずっと怖かった……!!

陽菜が…死んじゃってから……みんな……死んじゃうかもしれないって…!!」

 

「…不安だったんだよな。

みんなが死ぬのが、死んで悲しむ誰かの姿を見るのが…リサは怖かったんだよな」

 

「うん……うん…っ!!」

 

「よしよし……よく頑張った…」

 

「うぅ〜、子供扱いしないでよ〜…っ!」

 

「……でも、もう安心していいから…リサも無理はせずにな」

 

そう言うと、リサは離れてから目の雫を拭き取り

 

「うん……陽菜も、あんな危険な賭け、絶対にしちゃダメだからね…!」

 

「?そんな事したっけ?」

 

「!団長と戦った事だよっ!

あの時、アタシ達に相談無しで勝手に決めたから、これからはちゃんと何でも相談する事!

陽菜わかった?」

 

「えぇ…何でもってのは」

 

「じゃあ今日の夜ご飯は陽菜だけ、黒パンにしようかなぁ…」

 

「頼りにしてます!!」

 

「あはは☆冗談だよっ♪

でも、大事な事はちゃんとみんなに相談するんだよ?」

 

「ああ、それをしなかったのが、俺の間違いだからな。

…とりあえず下に降りるか」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

一階 ダイニング

 

扉を開けるとそこには今まで通りの食卓の景色に1人なんかいた。

 

「……カーディナル、何してるんだ…」

 

「何とは、見ての通りリサの美味しいご飯を待っているのじゃよ」

 

「美味しい…って、システムが感情持って大丈夫なのか」

 

「問題ない、これは全てワシ自身が設定した事じゃからな。

とりあえず早く座らんか」

 

「…まぁ、同意見だな」

 

そう言っていつもの席に座った。

すると千聖が

 

「…陽菜、今から私達が言う3つの質問に答えてもらうわ」

 

「?別にいいけど、どうした急に…」

 

その質問は通らず、千聖は

 

「1問目。

あなたの誕生日はいつ?」

 

「?11月」

 

「日にちは?」

 

「18だけど…」

 

「じゃあ第2問、これはイブちゃんからよ。

イブちゃんが倒れて帰って来た日の夜に食べたお菓子は?」

 

「?お菓子なんて食べてないけど、その日は普通にリサが作ってくれた鮭モドキのホイル焼きがオカズだったと思う」

 

そう答えるとカーディナルとリサ以外の全員が安心したように息を吐いた後、続けて

 

「第3問、これはみんなから。

あなたがもし、自分を見失いかけたら、見失ったら、あなたはどうする?」

 

「?な、なぁ…さっきから一体なんの質問をして」

 

「いいから答えて如月」

 

「っ…どうするって言われても、自分を見失ってたら何も冷静な判断出来ないと思うけど…」

 

「じゃあ、あなたが迷った時は自分1人じゃ、何も出来ないって事でいいのね?」

 

「なんか一部改変された上、情けないけど…そういう事だな」

 

そう言うと

 

「良かった…陽菜さん、ちゃんと本物じゃん」

 

蘭がそう言うとひまりも

 

「うんっ!偽物じゃ無くて本当に良かったぁ…!」

 

2人の言っている意味が理解出来なかった。

なので

 

「ちょ、待て!

さっきから本物とか偽物とかどういう事だ!?」

 

その質問にカーディナルがお茶をすすってから

 

「お主が寝ている間。

お主が死んだ事をいい事に、この子達のファンの者がお主になりすまして近づいて来たのじゃよ」

 

「?そんな事しても、俺が死んでるのはこの子達は知ってるから、全く意味ないだろ…」

 

「はぁぁぁ……お主、本当にこの子達を最前線で守り抜いたのか?

プレイヤーには自分の本当の顔を隠す機能として、顔を整形するシステムがあるのじゃよ。

お主は彼女達といつも一緒に居たからな。

顔も知られておる。

……後は想像出来るじゃろう」

 

「あー…これは最悪だな。

とりあえず、俺になりすました奴が目の前に現れたら…どうしてやろうか…」

 

「冗談はそこまでにしておけ。

それと、お主のバックアップにはもう少し時間がかかる。

それまで彼女達に守ってもらうのじゃな」

 

「複数の女の子に守られるって男としてどうなんだ?」

 

「知らん。

そんな事より、ワシは早くリサのご飯が食べたいのじゃ」

 

「それに関しては同意見だ」

 

「じゃあみんなで食べよっか♪」

 

そして、リサが作ってくれたシチューを食べ、1時間程で食べ終わった。

すると

 

「ふぅ……やはりリサのご飯は美味しいかった。

堪能出来たぞ」

 

カーディナルはそう言うと立ち上がった。

 

「もう行くのか」

 

「ああ、どうやらまた外部から来た者が好き勝手にシステムをいじろうとしてるみたいでな。

今からその相手をする」

 

「相手、ってそんなに大変なのか?」

 

「そんな訳なかろう。

ワシはカーディナルじゃ。

あんな物、ワシの機能を100分の1にしても余裕で勝てるわ」

 

「じゃあ、そっちとバックアップは頼んだ。

出来るだけ、次のボス戦までには」

 

「図々しい奴じゃな。

まぁ、良い、今夜はご馳走になった」

 

そう言うと同時にカーディナルはシュンッという音と共に消えた。

いや、転移したのだ。

すると

 

「すごい……本当にこの世界の管理者なんだ……」

 

「つぐみ、最初見た時の感想は言わない方がいい」

 

「…私一度だけ、小さくて可愛い賢者って言ったら、普通にやめてくれ、って返されました」

 

「あ、れ?

俺の時は当たったら消し飛ぶ、必殺の光線撃たれたんだけど……」

 

「それ…陽菜さんだけだと思います…」

 

「いやまさかそんな事、蘭と紗夜は何か言ったか?」

 

「あたしも言ったけど何もなかったよ」

 

「私も、何もありませんでしたよ」

 

「えぇ……」

 

そんな会話をしているとリサが

 

「あっ!明日昼からボス戦だからみんな早く寝よっ!

お皿はアタシが片付けて置くから!」

 

「あっ、リサにボス戦の事聞いておきたい」

 

「えっ?陽菜、参加するつもり?」

 

「あたりま……ああ…そうだ…俺レベル1だった……」

 

「でも、リサさん。

次のボス戦は、近接型モンスターだから近づかなければ大丈夫じゃない?」

 

「う〜ん……目の前で人がやられそうになっても、絶対に陽菜が助けに行っちゃダメだよ?

その時はアタシ達が行く、だから安全圏から出ちゃダメ、わかった?」

 

「わかった、善処する」

 

「だ、大丈夫かなぁ…陽菜さん、すぐに飛び出しそうだけど…」

 

「ひまりは心配性だな。

大丈夫、言われた事は守るから」

 

「は、陽菜さんに心配性って言われるとは思わなかった…」

 

「心の声漏れてるぞー」

 

「うぅ?……あら、陽菜……今、私を呼んだかしら?」

 

「こころは部屋で寝ような、香澄とはぐみも」

 

「いやぁー陽ちゃん、おんぶして〜」

 

「私も私も〜、もう眠たぁい、動けなぁい」

 

「俺の筋力値皆無なんだけど…」

 

「あっ、陽菜さん。

香澄達は私達で運びますので、気にせず先に寝てていいですよ」

 

「…そうか。

なら、沙綾と美咲に頼むよ」

 

「「わかりました」」

 

「じゃあ、おやすみ」

 

そう言って自分の部屋に戻っていき、そのままベッドで眠りについた。




Remon様
メッセン様
ziozio様 ハクア хорош o様 KIRAMERO様
飛翔翼刃様 霧雨隼人様 赤い龍ポン酢様
藤恭様 黒き太刀風の二刀流霧夜様 反逆の堕天使ルシファー様
kuronosu127様 九澄大牙様 アーペ様
Bacon0112様 黒夜様 関飛様

もうすぐ40人です!
後、まだSAO続くのか…と思った方がいたら、すみませんm(_ _)m

とりあえず、ゆっくりゆったりと見ていただければ幸いです( ´∀`)

じゃあの!ロリ賢j((殴
└(՞ةڼ◔)」



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