退屈な日々を忘れたい俺がなぜバンドの手伝いをしているんだ......   作:haru亜

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第16話 スキル

第96層 ボス部屋前

翌日 14時25分

 

「うぎぃぁぁぁぁ!!?」

 

謎の奇声を発する悪趣味なバンダナをつけたクラインに

 

「久しぶりだなクライン」

 

そう返すと先の奇声に反応して今度は…

 

「どうしたのクラインさ……。

……え……な……嘘…!

…まさか……お、オバケ……!!」

 

そう言ってアスナは自分の腰にあるレイピアに手をかけた。

 

「待て!アスナが驚くとマジでシャレにならん。

俺はちゃんと生きてるから」

 

「じゃ、じゃあオメェ本当にあの陽菜で、オメェは生きてるんだな?」

 

「まぁな、あの後色々あって生きてるよ。

て事で、現実世界での奢りは無しな。

マジで俺金欠なんだ…」

 

「うぉぉぉおおお!!良かったなぁ!!

おーい!キリの字!エギル!陽菜が来てるぞっ!!」

 

クラインが涙を流しながら、向こうにいる2人組に呼びかけた。

すると

 

「何言ってんだクライン。

彼女達の前でそういう冗談はやめ……」

 

「そうだぞ、そういうのは本当……」

 

「久しぶりだなキリト、エギル」

 

「「えぇぇ!!?」」

 

「いい反応だ。

とりあえず、なんやかんやあって生きてたが、このゲームで死んだら本当に死ぬから、そこの所は勘違いするなよ」

 

「えっ、ちょ、ちょっと待ってくれ!

全然頭が追いつかない!」

 

「お、オレもだ。

陽菜は確かに、オレ達の目の前で死んだ……よな?」

 

「まぁ…そこは気にしないでくれ。

重要なのは、俺が死んでいなかったって事だ」

 

そう言うとクラインが肩に腕を乗っけて

 

「そーだぞ2人とも!

陽菜が生きてた事を今は喜ぼうぜ?」

 

「まぁ…それもそうだな。

でも、今はボス戦に集中しよう」

 

「キリトはやる気満々だな。

レベルっていくつくらいになった?」

 

「119だ。

まだ、彼女達には負けてないさ」

 

「なるほど。

じゃあ、今回のボス戦頑張ってくれ」

 

そう言うと斧タンクのエギルが

 

「?陽菜は一緒に戦わないのか?

ていうか、あの装備はどうした」

 

「一回全部消えたからな。

まぁ今はレベル1なんだ」

 

「じゃあ今日は見学みたいなもんか」

 

「ああ。

……後2分か…今のうちに聞いてもいいか?」

 

するとクラインが景気良い声で

 

「おうよ!なんでも聞いていいぜ!

76層以降の俺の武勇伝でもいいぜ?」

 

「お前に武勇伝がある事に驚きだ…」

 

「お、おぃ…それはねぇぜ陽菜」

 

「まぁ…聞きたいのは、アレ誰?」

 

そう言って向こうで色んな人と話し合っているパッと見て『豪華絢爛』という言葉が当てはまる白い騎士を指差した。

すると

 

「あ、ああ……彼は第76層以降から現れたプレイヤーなんだ」

 

「へぇ……」

 

その男をじっくりと見たが…

 

「あの男……弱いな」

 

するとアスナが

 

「すごいっ!陽菜君、キリト君と一緒の意見だね!」

 

「なんだろうな…装備だけ強い感じで、俺が消える前はいなかったのに、たった21層であそこまで1流の装備を整えてくるのは流石に……」

 

そう言っているとキリトが

 

「それがな、アルベリヒはステータスがかなり高いプレイヤーなんだ。

だから、彼は商売人が裏ルートで装備を整えたんじゃなく、本当に自分の力で整えたんだろうけど……」

 

「……もしかして、手合わせしたのか?」

 

「まぁな。

でも、あの時は気迫も感じられなかった。

それに砂を目くらましに使ったり、ローリングを勘だけで避けたと勘違いしてるからなぁ…」

 

「…立ち回りは大丈夫なのか?」

 

「う〜ん…わからない」

 

「マジか…」

 

そんな事を話しているとアスナが

 

「あっ!もう時間だ。

みんなもう準備してね!」

 

そう言ってアスナはボス部屋の扉の前に立ち、プレイヤー全員に説明した。

そして

 

「では!今からボス戦を始めます!」

 

そう言って振り向くと扉を開け、アスナが入ると後に続いて他のプレイヤーも中に入っていった。

 

「とりあえず頑張るか」

 

「陽菜さん戦わないけどね〜」

 

「ほら、モカ置いてかれるぞー」

 

「ふっふっふ〜……今回、陽菜さんの護衛はモカちゃんなのだ〜!」

 

「!まぁ…それなら仕方ないか」

 

そう言って戦闘位置(安全圏内)についた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

1時間後

 

ボスの姿は、顔まで覆う黒い甲冑で二本の片手剣を装備し、その剣からも禍々しいオーラが溢れ出ていた。

そして先の白い騎士の戦い方を見ていると

 

「……やっぱり、立ち回りおかしい…」

 

「陽菜さんお話ししましょー」

 

「暇か?」

 

「いつもなら前に出て、ドッカンバッタンと暴れられるんですけどね〜」

 

「…それが護衛になった原因だろ」

 

「そんな事ないよ〜?

陽菜さんの護衛、誰がつくか、みんなでジャンケンまでしたんですからー」

 

「何やってんだ……それで、モカが勝ったのか」

 

「はいー、なんか面白そうだから入ったら勝っちゃいました〜」

 

「モカも大分強くなってそうだな」

 

「それはそれは、強くなりましたよー。

レベル110です〜」

 

「おお、よく頑張ったな。

とりあえず、護衛頼む。

ボスの攻撃かすりでもしたら俺のHPバー消し飛ぶから」

 

「任せてください〜」

 

すると

ボスの雄叫びが鳴り響いた。

急いで前を見ると白騎士のレイピアがボスのHPバーを残り1本にした。

 

「へぇ…あの白騎士、結構ダメージ与えてるな」

 

「そうなんですよ〜。

あの人めっちゃ強いしキリトさん並にダメージ与えてるんですよ〜。すごいでしょ〜」

 

「なんでモカがドヤ顔なんだよ。

…もうそろそろ無事に終わりそうだけど、油断しないように」

 

「は〜い」

 

そして、ボスのHPが赤色に陥った所で

 

「キリト君!」

 

「ああ!!」

 

アスナとキリトの息ピッタリなスイッチで、キリトは両手の剣を青白く発光させ複数の斬撃をボスの胴に撃ち込んでいった。

そして、キリトの上段斬りがボスのクリティカルポイントを斬りつけボス結晶のかけらとなり弾けた。

 

「……」

 

「陽菜さん?」

 

蘭に呼びかけられた。

 

「…いや、なんでもない。

とりあえず、お疲れ様」

 

「?うん」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

第97層 主街区

 

「なぁ、みんなはあの白い騎士どう思う?」

 

ボス戦が終わってからしばらく経ち、夕日に染まる街を歩いている時に聞くと

 

「白い騎士…って、あのアルベリヒって人の事?」

 

「ああ、みんなから見て、アレどう思った?」

 

『………』

 

「?」

 

何故か全員が黙ってしまった。

すると千聖と彩が

 

「あまり…いい感じではないわね」

 

「うん。

それに一回だけあの人に無理矢理引っ張られたんだけど…」

 

「ほう?」

 

「如月、話はこれからよ」

 

「その…犯罪防止コードが出てこなかったんだ」

 

一瞬、自分の耳を疑った。

 

「!犯罪防止コードが…効かなかった?」

 

「うん…だから、昨日カーディナルちゃんに聞いたら『それはアルベリヒがスーパーアカウントを使っているから』って、言われたんだ」

 

「スーパーアカウント……なるほど、そういうことか…」

 

あのレベルもステータスも、全部システムで作り上げたのか……それなら動きが素人なのも納得いくな…

でも……犯罪防止コードが効かないとなると危険だ…

 

そう考えていると

 

「離してください!!

牢獄に送りますよ!?」

 

「おいおいおい、オレ達にそんな物効かないってまだわからないのか?」

 

なにやら向こうで言い合いが起きているようだ。

そして人だかりが出来ている所に近づいて見ると女性プレイヤーが白い甲冑の男に腕を掴まれていた。

しかし、それはアルベリヒの装備に似ていたがアルベリヒでは無かった。

すると紗夜が呆れたように

 

「はぁ…またですか。

ちょっとそこのあなた嫌がっているでしょう?」

 

「ああ?なんだ急に出てき」

 

男が何か言いかけたその瞬間に男の後ろから

 

「私の部下が、何かしましたかな?」

 

「…アルベリヒさん。

その女性が嫌がっているので、あなたの部下に離してくださいと言っているんです」

 

紗夜がそう言うとアルベリヒは部下に目線を向けてから

 

「紗夜さん。

あまり言い掛かりはよして下さい。

私の部下はただ女性と手を繋いでいるだけじゃないですか。

……そんな事より」

 

そう言うとアルベリヒは友希那の手を掴んだ。

 

「友希那さん。

私の事を覚えておりますか?」

 

「覚えてないわ。

早く手を離して」

 

するとアルベリヒはその言葉を無視して

 

「アハハ。

またまたご冗談を…。

まぁ、それは置いといて…どうです?私と今夜ディナーでも」

 

「嫌よ。

いいから早く手を離して」

 

「まぁまぁ、そう言わ」

 

「アーット!テガスベッター!!」

 

そう言ってアルベリヒの鎧の中心を狙い、殴り飛ばした。

 

「ぐぉ!?……なんだお前は!?

私の邪魔をしないでもらおうか!」

 

「イヤー、なんか手が勝手にサー…」

 

「フンッ。

レアな武器どころか、全てが初期装備の低レベルプレイヤーのお前が僕の邪魔をするな!」

 

「一人称変わってんぞ……。

まぁ、とりあえず今アンタに出来る事は大人しく部下を引き連れて帰る事だろ」

 

「っ!!いいだろう。

そこまで言うのなら、この私とデュエルしてもらおうか?

それで、こんな事は万が一もあり得ないが、もし貴様が勝ったら我々は引いてやろうではないか」

 

「じゃあそういうことで」

 

そう返すと後ろから

 

「!ちょ!陽菜!?無理だよ!

そんなレベル差じゃ勝てないっ!」

 

「そうですよ如月さん!

今のあなたじゃ、あの人のHPを1も減らせません!」

 

「おねーちゃんの言う通りだよ陽菜くん!

倒すどころが陽菜くんが死んじゃうよっ!?」

 

「ハルナさんが出る必要はありません!

私がハルナさんの代わりに戦います!」

 

などの反対の声が聞こえてきた。

 

「……無理かどうかは置いといてだな。

なんでデュエルでHPを減らす必要がある」

 

『えっ?』

 

「まぁ…俺のHPは1も減らないからみんなは安心して見てていいぞ」

 

そう言うと目の前にデュエルウィンドウが表示された。

 

「どうした?もしかして私と戦うのが怖くなったのかな?」

 

「はぁ……」

 

そして丸ボタンを押した。

 

「…初撃決着モード…か」

 

「これでもし、貴様が死んでも、私に文句を言える奴はいない。

せいぜい後悔するんだな」

 

「……」

 

そしてデュエルが始まった。

 

「よっ」

 

カァァァァァァァァン

 

その音と共にデュエルの決着がついた。

 

『っ!?』

 

そして空中には【Winner 陽菜】と表示された。

 

「ば、バカな!

この僕が負けるはずが…!なんだ…一体何をした!!

僕のHPは1も減ってないんだぞ!?」

 

「コロコロと一人称が変わる奴だな。

別に…デュエルってのは相手のHPを削る事だけが勝つ方法じゃないんだ。

今の初撃決着モードでも、システムが初撃と認識する程度の攻撃で、ただ相手に一撃を入れれば勝ちだ」

 

「っ!!僕は…僕は認めないぞ!!

お前がやったチートは僕が暴いてやる!!」

 

「はいはい勝手にしろ。

それより、早く行ったらどうだ?

アンタが周りの目を気にしない奴なら、それでもいいけど」

 

「っ…クソッ!!覚えていろ…!!

お前がどれだけ無力か、僕が教えてやる!!」

 

アルベリヒはそう言って転移結晶を使ってどこかへ飛んで行った。

すると

 

「陽菜くんっ!!」

 

「てい」

 

日菜の頭に手刀を入れた。

が、飛ぶ勢いを止める事はなく

 

「痛くないもーん♪」

 

「しまっ!グッ…!!?」

 

「あはは☆ヒナは相変わらずだね〜♪

にしても、陽菜さっきのどうやって相手の背後に回ったの?」

 

「う〜ん……ただ身体に捻りを入れて、全力で走ったら背後に回れるんだよな。

とりあえず帰ろうか、人が集まってきた」

 

「?人が集まるのはいい事よ!

これだけ人がいればたっくさんの笑顔が見れるわっ!!」

 

「俺人混み苦手なんだ…」

 

「あらそうなの?それは大変ね!

今すぐに帰りましょう!」

 

そう言ってこころは回路結晶を出した。

 

「!?ちょっと待て!

それは使わなくていいから、歩いて帰ろうか!」

 

「あらそう?

なら歩いて帰りましょうか!」

 

そして歩いて帰って行った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

第47層 家

 

「よう、待っておったぞ」

 

夜になり帰ってリビングに着くと

 

「……この世界って警察いたかな…」

 

「残念ながらおらんよ。

それよりも、何故そう警戒するのじゃ。

ワシはただお茶を飲んでるだけじゃろう」

 

「いやいやいや!家に不法侵入してお茶飲んでる奴が目の前にいたら警戒するだろ!」

 

するとカーディナルはお茶を一口含んだ後

 

「それも残念ながら合法じゃよ。

昨日来た時に彼女達から許可を貰ったから、ワシもこの家に住めるのじゃ」

 

「な…」

 

なんだと……!?

このロリ賢者いつの間に…

 

「まぁ…ワシも少しお主にだけ話しておきたい事があってな」

 

「?何かあったのか?」

 

「まぁな……この質問はお主にとって彼女達には聞かれたくないだろう」

 

「?」

 

なんか遠回しの言い方があるな…

 

「まぁ、お主が毎晩彼女達が寝静まった後、こっそり家を出」

 

「わかった!わかりました!

その話はやめて俺の部屋で本題を話そうか!」

 

「ウム」

 

「とりあえず、みんなは俺の部屋には絶対に近づくなよ」

 

『……』

 

そう言い残し、自分の部屋に向かった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「それで?なんの話?」

 

椅子に座る幼賢者にそう問いかけながらベッドに座ると

 

「お主に、あのユニークスキルをもう一度使う覚悟はあるか?」

 

「!いや待て、アレって使用回数1じゃなかったか?

それにアレは使い方間違えたら、意識が追いつかなくて意識持ってかれるだろ。

しかも、その後3分後には…」

 

「ああ、その使用者は死ぬな」

 

「っ!…そんな簡単に言うな…。

俺は一度あの子達を裏切ってるんだからそんな事、雑に断らせてもらう」

 

「ならば、その死のデメリットがなければお主はやるのじゃな?」

 

「…まぁ、やると思う…」

 

そう答えるとカーディナルは小さな笑みをこぼした。

するとカーディナルの手に、RPGによくあるマジックロッドが現れ、部屋の床をトントンッと叩くと赤色のウィンドウが目の前に表示された。

 

「ほれ。

それが、お主の新しいスキルだ」

 

「っ!!これ、お前が用意したのか?」

 

「他に誰が用意するんじゃ。

とにかく、詳細を見てみろ」

 

そう言われて詳細を見るとそこには

 

「……」

 

イレギュラースキル『敗者』

 

発動条件

 

片手直剣装備状態、片手剣熟練度1000以上

 

効果

 

メリット・・・ソードスキル修正、現状態での全パラメータ限凸、ソードスキルキャンセル無効、状態異常無効

 

デメリット・・・状態強化無効、一定時間HP回復無効、『敗者』終了時にHP5割分減少とスタンと全パラメータ0の効果付与、発動時受けるダメージ量3倍、修正を行ったソードスキルリセット、使用時間5分

 

と書かれていた。

それを見て唖然としていると

 

「ユニークスキルは全部で10種あるが、11種以上はワシの権限を持ってしても創れない。

それ故、ワシの権限を使いバグが出ない程度に、新しいスキル枠を創ったのじゃ」

 

「うん……創ってくれた事には感謝するけど…」

 

「?なんじゃ?」

 

そして赤色のウィンドウを一見した後

 

「なんでスキルの名前が『敗者』なんだ!?」

 

「なんじゃそんな事か。

それの何が不満なのじゃ?

声に出せばシステムが勝手に反応してくれるじゃろ。

それが嫌ならウィンドウを開きスキルボタンを押せば良かろう」

 

「そんな事してたらすぐに発動出来ないだろ…」

 

「はぁ…面倒な奴じゃな。

とにかく、ソレを使う覚悟は出来たか?」

 

「…そうだな、使わせてもらう」

 

「なら決まりじゃ。

その丸ボタンを押せば、お主専用のスキルになる」

 

「ああ…」

 

そして丸ボタンを押そうとしたその時

 

『ちょっと待った!!!』

 

その複数の声と共にドアが勢いよく開かれた。

 

「っ!!?

なんで!?ていうか、どうした!?」

 

「陽菜くん!ちょっとそれ見せて!!」

 

彩がそう言うと同時に、みんなが一斉に寄ってきた。

 

「えっ?おわっ!?」

 

そして赤色のウィンドウをみんなが睨みつけ読んでいた。

すると

 

「カーディナルさん?」

 

「な、なんじゃ紗夜…」

 

初めてこの幼賢者がたじろぐ姿を見た。

そして紗夜は止まる事なく

 

「なんじゃ、ではありません!

こんなスキル、如月さんが断らない訳ないでしょう!」

 

「い、いや、でもじゃな紗夜…これは陽菜が決めた事で…」

 

「如月さんが決めた事でも、死なない事を前提にして考えてください!」

 

カーディナル相手に考えてくださいとはすごいな…

 

そう思って2人が口論を(紗夜が一方的に)してるのをベッドで座りながら見ていると

 

「陽兄ぃ!なんでこのスキルの名前『敗者』なの?

陽兄ぃならもっとカッコイイ名前のスキルが似合うと思うんだけどなー」

 

あこがそう言いながら膝に乗ってきた。

そしてその質問に

 

「う〜ん……俺は一回死んだ事になってるからだと思う…。

それにな、あこ」

 

「?」

 

俺の顔を不思議そうに覗き込むあこに

 

「俺は、あこみたいにカッコ良くないからな。

なんやかんやで、この名前気に入ってるんだ。

だから、別にカッコイイ名前じゃなくてもいいんだ」

 

するとあこは目を光らせて

 

「陽兄ぃはやっぱり陽兄ぃだからカッコイイっ!!」

 

「ど、どういう事だ…。

まぁ…とりあえず、紗夜?」

 

そう呼びかけてカーディナルを質問責めしている紗夜を止めた。

 

「はい」

 

「俺は、別に自己犠牲でみんなを助けようなんてしてない。

このゲームをクリアする為に必要だから、このスキルを貰おうとしてるだけだ。

スキルを使ったら、その後の俺は死ぬ確率が上がるってのは理解してる」

 

「なら如月さん、このスキルは使わなくても」

 

「だから、スキルを使った後はみんなに頼ろうと思う。

もちろん、スキルは極力使わないようにする。

でも、もし俺が使わないといけないような状況になったら…その時は俺を助けてくれ…」

 

『!!』

 

何故かみんなが驚き、静かになると

 

「…わかったわ」

 

「!湊さん?」

 

「紗夜の言いたい事はわかるわ。

でも、如月がこうやって人を頼るのは本当に、滅多にない事よ。

だから…如月、その言葉は嘘じゃないわね?」

 

「当たり前だ…」

 

「そう…なら私はいいわ。

他のみんなは知らないけど…」

 

友希那がそう言ったと共に、みんなを見ると

 

「あたしはいいよ」

 

「私も私もっ!みんなで陽菜を守ろうっ!」

 

「さすが香澄ね!いいアイデアだわ!」

 

「わ、私達も頑張ろうね!」

 

………まぁ、みんな楽しそうだし、いいか…

 

そう思っているとカーディナルが

 

「ふむ、では話がまとまった所で、陽菜よ。

そのスキルを取れ」

 

「ああ」

 

そしてスキルを習得した。

 

「…すまぬが、お主のバックアップはまだかかりそうじゃ」

 

「…そうか」

 

「それと…お主は食事を終えたら、ワシの所へ来い」

 

「?まだ何かあるのか?」

 

「ある。

けれど、ここではそれを出来んからな。

食事を終えてからだ」

 

「……お前ご飯食べたいだけだろ…」

 

「そんな事より、今日は誰のご飯なのじゃ?」

 

そう言いながらマジックロッドをしまい、席を立った。

すると

 

「あっ、それなら今日は私と沙綾ちゃんで作りました!」

 

「ほう…!

今日はつぐみと沙綾のご飯か。

楽しみにしておるぞ」

 

「はいっ!」

 

カーディナルにそう言われてつぐみがいつも以上に張り切った声を出し、とりあえず下に降りて、ご飯を食べた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

食事を終え、言われた通りにカーディナルの元へ向かうと

 

「来たか…では、行くぞ」

 

「?今夜中の12時だぞ、行くってど」

 

「着いたぞ」

 

「……え?」

 

そう言われて周りを見ると先程まで家の中に居たはずなのだが、そこには、真っ暗闇の中で、所々黄色の文字が縦に流れている見たこともない場所だった。

 

「……ここは?」

 

「システムの狭間じゃよ。

そんな事より、イレギュラースキルを使ってみよ。

何、ここは全ての条件を満たしておるから問題ない」

 

「なんでここで使わないといけないんだ?」

 

「発動せんとワシがお主を殺すからじゃ」

 

「!?」

 

その言葉に反応し、つい『敗者』を発動してしまった。

 

「発動したな。

では、ワシの攻撃を1分間防いでみよ」

 

そう言って賢者は宙を浮くと同時に、聞き慣れない英語のような言葉を使った。

それと同時に、10本の槍が形成され、降り注いだ。

 

「っ!」

 

6つは弾いたが、残りの4つが周りを囲むように刺さると爆発し、煙幕ができた。

すると砂けむりの中からカーディナルの姿が見えると同時に黒い大剣が俺めがけて振り下ろされた。

 

「くっ…!!」

 

なんとか防いだが、押される。

 

「どうした、ラスボスを倒した者はこんなものか?

反撃せんと一方的にやられるだけじゃぞ」

 

「!…せぁ…っ!」

 

その言葉に反応してか、ソードスキル『ホリゾンタル』に修正を行い、大剣を弾いた。

 

「それで良い。

お主はその力を上手く使えておらんからな、今からそれを教える」

 

「?どういう事だ?」

 

「お主は今、片手剣ソードスキルを修正したな?」

 

「ああ…それがどうした?」

 

するとカーディナルはため息をついた後

 

「何故、片手剣ソードスキルに固執する。

ソードスキル修正というのは、片手剣とは厳選されておらんだろう?」

 

「っ…まさか…」

 

「そう、そのまさかじゃ。

イレギュラースキル『敗者』は全てのソードスキルを修正し、修正したソードスキルを全て片手剣に詰め込むのじゃ」

 

「!!!………なるほど…」

 

そう納得するとカーディナルは再び宙に浮いた。

すると

 

「理解した所で、テストといこうか」

 

「じゃあ、頼んだぞ先生」

 

「フン。

お主のような生徒はいらんな」

 

そう言って数十本の槍が形成され、俺めがけて雨のように降り注いだ。

 

「あはは…そうですか…っ!」

 

そして爆発音と共に戦闘が始まった。




39人のお気に入りありがとうございます♪( ´▽`)

本当にありがとう、としか言いようがありません
_:(´ཀ`」 ∠):

なので友希那のユニークスキル『歌姫』について説明入ります!
結構短いです

オマケ

ユニークスキル『歌姫』

光の粒子を地面から溢れさせ、それに触れたプレイヤーに攻撃、防御、敏捷の全てがMAXまで上がる『能力』を付与する。
同時に、攻撃無効能力を1回だけ付与。










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