退屈な日々を忘れたい俺がなぜバンドの手伝いをしているんだ......   作:haru亜

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第17話 最悪の可能性

パチクリ

 

そんな効果音と共に目覚めた気分だった。

 

「うっ!?……あ…れ……?」

 

そこは俺の部屋だった。

身体に怠さを感じ、若干のめまいもしていたが、起き上がると何かが落ちた。

 

「?おしぼり…?」

 

すると

 

ガチャ

 

「し、失礼します……」

 

「あれ?……花音?」

 

「ふえぇ…!お、起きてる…!?」

 

そこには、何故かおしぼりを持った花音が扉を開けて入ってきた。

 

「どうしたんだ?おしぼりなんか持って」

 

「えっ、陽菜くんもしかして、覚えてないの…?」

 

「?何が?」

 

「陽菜くん、ナルちゃんと戦ってから、丸4日間眠りっぱなしだったんだよ?」

 

「ナル……ああ、カーディナルの事か。

…なんかすごいボーッとするんだけど…」

 

「あっ、それは陽菜くんがスキルを使い過ぎて、意識飛んじゃったらしいんだ…。

みんな、心配してた…よ」

 

「大丈夫だ。

…ていうか丸4日間となると、もう少しでボス攻略が始まるか」

 

すると花音が

 

「あっ……」

 

「?どうした?」

 

少し戸惑ってから答えてくれた。

 

「……そ、その…陽菜くんが寝てる間、一昨日に97層クリアしちゃったんだ…」

 

「へぇ、そうなんだ……えっ…?」

 

「えっと……次の攻略する階層は98層で、97層はもうクリアしちゃったんだ…」

 

「嘘…」

 

「本当…」

 

「……いくらなんでも、早すぎだろ…」

 

「ううん、そんな事ないよ。

…陽菜くんがいなくなってから、みんなすごい勢いで攻略していったんだ。

確か、早い時は2日に一回の時があったかな?」

 

そう説明しながら、花音は見ていて心配になる手つきで新しいおしぼりを取り替えた。

 

「ありがとう…」

 

「ううん…。

私に出来るのはこれくらいだから…」

 

「本当にそんな事ないぞ。

花音って優しいし、こういう事にちゃんと気を使ってくれてるからな」

 

「!!あ、その、あ、ありがとう…!」

 

花音はそう言いながら俯いて顔を赤く染めてしまった。

 

「…なぁ、ボス戦の時ってあのアルベリヒって奴いたのか?」

 

「わ、私…あの人苦手だから、極力見ないようにしてて…。

目があったら何かして来そうで怖いから…」

 

「あはは……まぁ、確かにアイツには気をつけた方がいい。

花音は迷宮区とか入る時、誰かと一緒にいるようにな。

ただでさえ迷子になりやすいから」

 

「ふえぇ……」

 

「まぁ、無理な時は助けるから。

それに、レッドとかオレンジプレイヤーにも会われたら大変だからな」

 

「それなら、もう会ったよ?」

 

「そうか、会ったのか良…くないな。

いつだ…それ、いつの話だ…」

 

「あれは確か、3週間くらい前…かな?

その時に、私とハロハピのみんなでダンジョン攻略してたら、陽菜くんの知り合い、って言うおじさんが襲ってきて結構みんなピンチになったりしたんだけど…。

その時、友希那さんとクラインさんが来てなんとかなったんだ」

 

「!ピンチ…って…そんなに……ヤバかったのか?」

 

「うん……それにその人ずっと、こんな事呟いてたんだ」

 

「?」

 

「『如月陽菜に、あの時の借りを返す』って…」

 

「!!!」

 

その言葉を聞いた瞬間、背筋に氷のように冷たい怖気が走り、それと同時にある事を思い出した。

それは

 

「路地裏の男…か」

 

「えっ?」

 

あの時、俺に囁いたフードを被った男…

でも…

 

「なんで…俺の名前を知ってるんだ…?」

 

何か情報屋を使って……いや、俺はこの世界で一度もフルネームを言った覚えはない

友希那や紗夜が呼んでいたのを聞いて俺の名前だと確信したのか?

それだと、ある程度納得はいくが……あの時のってどういう……

 

そんな思考を巡らせても、まだ少し意識を保つ事に意識を巡らせて思考が鈍ってしまう。

 

「…はぁ……花音、そのプレイヤーの名前は覚えてるか?」

 

「う、うん。

確か…ザ・リッパー…だったと思うよ?」

 

「ザ・リッパー…?」

 

聞いた事ないな…

 

そう思っていると扉が開いた。

すると

 

「あら、如月起きたのね。

松原さん、わざわざおしぼりも交換してくれてありがとう」

 

「ふぇっ!?」

 

「あれ……友希那?」

 

「松原さんが如月の部屋に行ってしばらく出てこなかったから来たの。

それより、体の調子はどう?」

 

「見ての通り、今にも倒れそうだ。

でも、明日には治るだろうから。

心配しなくていいよ」

 

「!別に…心配なんてしてないわ…。

ただ…ほんの少し気になっただけよ」

 

「そうですか…。

そういえば、次のボス戦っていつなんだ?

もうボス部屋見つかってるんだろ?」

 

「ええ、次は明後日の15時にボス戦を開始する予定よ」

 

「そうか」

 

「…また来るつもりなら、如月は自分の症状が治るまで安静にしててちょうだい」

 

「…わかった。

とりあえず、カーディナル呼ばないと」

 

「「?」」

 

「俺は少し寝るよ」

 

「わかったわ」

 

「じゃあ、しばらくしたら、また来るね」

 

「ああ」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

数時間後

 

「……乗らないでもらいたい」

 

「友希那からお主が呼んでいたと聞いて、来てやったのにその言いようとはな」

 

「どんな事情でも、病人の上に乗る方がおかしいって…」

 

「まぁ、良い。

ワシも色々やっておるから疲れておるのじゃ。

そのまま聞いておれ」

 

「降りないのか…」

 

「お主のバックアップについてなんじゃが、昨日ようやくロードに入った」

 

「おお!やっ」

 

やっとか、と言おうとするとロリ賢者は遮り

 

「じゃが!

…このロードが飽きるほど長くてのう。

後数日は掛かるようじゃ」

 

「数日って…ボス戦間に合うかなぁ…」

 

「まぁ、出来たらお主に知らせが来るじゃろう。

それで?ワシに用とはなんじゃ?」

 

自分の言うことが終わると、ようやくロリ賢者は俺の上から降りて椅子に座ってから、マジックロッドを出し机をノックするように叩くと、お茶と茶菓子を出現させた。

 

最初から椅子に座れよ…

 

そう思ったが、思ったより身体の怠さが抜けていたので、そのままベッドに腰をかけた。

 

「今までの殺人者リストを見る事って出来るか?」

 

「無理じゃな」

 

ロリ賢者は簡潔に答えた。

 

「そもそも、カーディナルというのは殺人者だけをリストにするなどという無駄な事はせんのじゃ」

 

「っ……じゃあ、名前とその人の顔は見れるか?」

 

「……それなら、おそらくこの中でも出来るじゃろうな」

 

「!なら、ザ・リッパーという男を調べてくれ!」

 

そう言うとカーディナルはため息を吐いた後に、ウィンドウを操作していた。

すると

 

「ほれ」

 

そう言って俺の目の前にウィンドウが表示された。

そしてそこには

 

「…!!この男…間違いない…俺が路地裏であった男だ!

それに、この顔……」

 

どこかで見たはずだ…

でも、どこで見た?初めて会ったのはSAOじゃない

向こうの現実世界か?

でも、こんな男……どこ、で……

 

「!!!そうか!思い出した!」

 

「な、なんじゃ急に!」

 

「この男、俺の腹を刺した奴だ!

あー…思いっきり忘れてた……あの事件の事…」

 

「…何を思い出したかは知らんし興味もないが。

その男はもう死んでおるぞ」

 

「!?それいつ!?」

 

そう言いながらカーディナルに近づくと

 

「ええい!近づいてくるな!

お主が昏睡状態になっている間、外部の奴らが入って来た事で、一時的に転移場所の座標がごちゃごちゃになった。

そんな時にあの男は運悪く転移した」

 

「……どこに?」

 

「…外周じゃよ。

問答無用で儚くも消えていったじゃろう」

 

「はぁ…ダメだ……一気に物事が起こり過ぎて今の頭じゃついていけん……。

カーディナル、暇だったら今日の夜ご飯は無しでいいってリサに伝えてくれないか?」

 

「今日の当番は、美咲と日菜じゃ。

とりあえず、お主の事は伝えておく」

 

そう言ってカーディナルは出ていった。

 

「ああ……身体からの危険信号が……」

 

そう言いながらベッドに倒れるように横になった。

 

なんか……最後、日菜って単語が聞こえた気が……いや、多分美咲もいるし大丈夫だろう…ヤバイ……本当に意識が飛びそう……

 

そしてどこか沈んでいくように眠りに落ちた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

翌日

 

朝目覚めると怠さが抜けていた。

 

「へぇ…結構かかると思ったけど、もう直ったのか」

 

「なんじゃ、もう直ってしまったのか」

 

「また勝手に…」

 

「まぁ良い聞け。

お主が強い状態に戻る為に、今システムはそれを実行中じゃ」

 

「ああ…俺のバックアップか……」

 

「……そこで、一応言っておくが、あの外部の者に勝てると思うのは大間違いじゃぞ」

 

「え、なんで?」

 

「お主は知っておるじゃろうが、奴はスーパーアカウントを使っておる。

それ故にワシとほぼ同じ力を持ち、色々なモノを呼び出す事が出来る」

 

「それって武器とか防具とかだろ?

だったらその武器がいくら強くても、プレイヤー技術が無かったら意味ないだろ」

 

「アホかお主は」

 

酷い…無い知恵絞ったのに…

 

「呼び出せるのは武器や防具はもちろん。

モンスターすら呼び出す事が出来るのじゃ、それも、お主達が今まで戦ってきたボスモンスターさえもな」

 

「なっ…!チートだろそんなの!」

 

「スーパーアカウントとは管理者の為に、最初からそういう風に設計されているのじゃ、仕方あるまい」

 

「いやでも、カーディナルはこの前『ワシの力を百分の一にしても余裕で勝てる』って言ってただろ」

 

「アレはシステムの話じゃ。

このゲームで戦えば、ワシは手も足も出ん」

 

「へぇ…。

ま、そんな話は後にして…。

そろそろ…お腹空いたから下、行かない?」

 

そう枯れかけた声で言うとカーディナルは呆れたように

 

「お主の目は節穴か?

そこに置いてある物が見えんのか」

 

そう言われて初めてテーブルの上にお粥らしき物が置いてある事に気付いた。

 

「あれ?これカーディナル……な訳ないか…」

 

「…今の言葉に少し苛立ちを感じたが、その通り、ワシが作ったんではない。

それは昨日、紗夜が作った物じゃ、ありがたくいただけ」

 

なんか上から目線で言われてる気が……

 

「まぁ…いいか」

 

そして、いただきます、とちゃんと紗夜にもお礼を言ってから食べた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

紗夜 side

 

「紗夜さん、おはようございます!」

 

呼びかけられて後ろを振り向くと

 

「羽沢さん、おはようございます。

どうかしましたか?」

 

「いえ、その服装を見て少し気になったので……外出ですか?」

 

「はい。

少し、食材が足りなくなってきたので買い物に行ってきます」

 

「あっ!それなら、私も手伝いますよ」

 

「いえ、アイテムストレージには空きがありますし…ついてこなくても大丈夫です」

 

「でも、紗夜さん。

陽菜さんもナルちゃんも外に出る時は2人一組で、って言ってました!」

 

ナルちゃん……あまり言い慣れないわね…

 

そんな考えをやめて

 

「…そうでしたね。

では、一緒について来てください」

 

「はいっ!」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

第47層 主街区

 

「……」

 

やっぱりここにも卵は無いようね…

 

「紗夜さーん!」

 

羽沢さんが私の名前を呼びながら息を切らして走って来た。

 

「羽沢さん?どうしたんですか、そんなに息を切らして」

 

「はぁ…はぁ…卵を探してたんですが、見つからなくて…」

 

「!…それは嬉しいですが、そんなに走らなくても大丈夫ですよ」

 

「はいっ!」

 

さて…どうしましょう

ここには卵は無いようですから…

夕食までには間に合えばいいのですが…

 

そう考えていると羽沢さんが

 

「あっ!紗夜さん、今度は上の階に行ってみませんか?」

 

「えっ?」

 

「上の階になら、食材が豊富ですし、まだ日が沈むうちに用事を済ませましょう」

 

「…ですが…上の階には、あの人達もいます。

その人達には関わらないように、と如月さんに念を押されましたから」

 

「すぐに買って帰るだけですから!」

 

「……わかりました。

すぐに買って帰りましょう」

 

「はいっ!」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

第95層 主街区

 

目当ての食材が買い終わり、ふと夕日が沈むのを見てみると

 

「……そういえば、羽沢さんはどうしてバンドをしているのですか?」

 

「えっ!?ど、どうしたんですか急に?」

 

「いえ、羽沢さん達は、私達のように目標を持ってバンドをしている事は知っていますが、どんな目標を持っているのか気になりまして…」

 

すると羽沢さんは少し嬉しそうに

 

「えっとですね…私達が幼馴染という事は紗夜さんは知ってますよね」

 

「ええ」

 

「それで、いつも学校でも外でも5人一緒にいて、学校のクラスもずっと一緒だったんですけど、中学の時に進学して、その時蘭ちゃんだけ別のクラスになっちゃって…。

それで、何日か経った後、蘭ちゃんが授業に出なくなったんです」

 

「!…美竹さんがそんな事を…」

 

「はい…。

それで、ファミレスで久しぶりにみんなで集まった時にひまりちゃんがバンドの話をして、その時、私すごいピンッてきたんです!」

 

「?」

 

「みんなでバンドをやれば、いつも一緒にいられるって!

それで、みんな色んな楽器の事を調べて、練習して、今があるんです。

だから、私達アフターグロウの目標は、放課後みんなで集まって楽しくバンドをする事なんです!」

 

幼馴染だった羽沢さん達と一緒にいられなくなり、会う時間も少なくなってしまった。

美竹さんはきっと…寂しかった…

 

「…羽沢さん、良い幼馴染と出会えて良かったですね」

 

「はいっ!ありがとうございます!」

 

「そろそろ帰りましょうか。

如月さんの心配性が出る前に」

 

「ふふ、そうですね!」

 

すると

 

「おや?こんな所でこんな時間にどうかしましたかな?」

 

「「!!」」

 

そこには白い甲冑を着たアルベリヒさんが立っていた。

 

「何を怯えているのですか?

紗夜さん、つぐみさん」

 

すると羽沢さんが小声で

 

「さ、紗夜さん…逃げないと…」

 

「わかっています。

しかし、転移門に続く通路はあの人の後ろです。

最悪、転移結晶で離脱したいところですが…」

 

「!…すみません紗夜さん、転移結晶を持って来るのを忘れました…」

 

「…私もです…」

 

どうしようか迷っていると

 

「いやぁ、私は用が終わって帰る所でしたが…」

 

「?」

 

男は不敵な笑みを浮かべると

 

「まさかここにも生きの良い物があるとは…僕の実験が捗るという物です」

 

そう言って男は腰にかけていた刃の部分が歪んでいる短剣を抜いた。

 

「っ!!……なんですか…その奇妙な短剣は…」

 

「奇妙とは酷い言い様だ、結構良いデザインだと思うんだけどね。

…君達には特別に教えてあげよう」

 

「……」

 

「これは僕専用武器で、この切っ先に触れた者は否応なく、指定した場所に飛ばす事が出来る便利なアイテムでね」

 

「……私達をどこに飛ばすつもりですか?」

 

「なぁに、ただちょっと薄暗い所に監禁するだけですよ。

とりあえず、あの陽菜とかいう男を殺す前に、まずは君達から私の実験場に飛んでもらいましょうか!」

 

男がそう言うと同時に自分達の方へ短剣を突き刺そうとした。

すると

 

「…せぁ…!!」

 

「っ!?」

 

右から二本の剣のうち1本の白い剣が短剣を弾き、もう片方にある、かつて如月さんも持っていた黒い刀身の剣がアルベリヒさんの胴に入り退かせた。

 

「ぐぅぅ…!!チッ……クソ餓鬼が…!!」

 

男は苦悶の表情を浮かべて黒の剣士を睨みつけた。

そして黒の剣士は

 

「残念だけど、アンタの研究データはほとんど消去させてもらったよ。

これで、アンタの企んでた研究は終わりだ」

 

「なっ!!?」

 

男はたじろぐと慌ててポーチから赤い転移結晶を取り出し、何処かへ転移した。

 

「……」

 

二本の剣をしまった剣士はこちらを振り向き

 

「ふぅ…君達はいつも陽菜と一緒にいる子達だな。

陽菜はどうしたんだ?」

 

「…如月さんなら、い」

 

俺が家にいる事は周りには内緒に、と如月さんに言われた事を思い出した。

 

「い?」

 

「いえ……如月さんなら、どこかレベリングをしていると思います」

 

「そうか…じゃあ、またボス戦で」

 

そう言って黒の剣士は去っていった。

すると

 

「さ、紗夜さん……」

 

「…まだ少し、怖いですか?」

 

「あはは……すみません…」

 

「いえ…早く帰りましょう」

 

とりあえず、羽沢さんを安全に家に帰しましょうか…

 

そして暗い夜道を帰っていった。

 

 

 

 

紗夜 side out

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「……!」

 

扉が開く音が聞こえ、急いで向かった。

 

「紗夜!つぐみ!」

 

「…如月さん…。

すみません、帰るのが遅くなりました」

 

玄関には紗夜とつぐみが立っており、つぐみが少し機嫌が良くなさそうだった。

 

「…つぐみ、大丈夫か?」

 

「えっ!?だ、大丈夫ですよ!それより早く夕飯、じゃなくて晩ご飯の準備しますね!」

 

そう言ってつぐみはキッチンの方へ向かっていった。

 

「…ごめん紗夜。

今の俺じゃ何も出来ないから……。

とにかく、無事なら良い」

 

「…如月さんの方こそ、身体の具合は大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫だ。

紗夜のお粥、美味しかったぞ」

 

「!そ、そうですか…なら、良かったです」

 

「とりあえず、ゆっくりしてていいぞ。

つぐみも休憩させるから」

 

「…わかりました。

では、お言葉に甘えて、そうさせていただきますね」

 

「ああ」

 

そしてつぐみにも同じように伝えてから、俺は自分の部屋に戻った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

3階 自室

 

ガチャリ

 

!?

 

ゴンッ!!

 

(訳:扉を開けるとなぜか、香澄、こころ、日菜がいて、香澄とこころに飛びつかれ、筋力値が足らず廊下の壁に飛ばされた音)

 

「っ…この猫ども…」

 

「そうだわ香澄!

陽菜に私達と夜ご飯が出来るまで、遊んでもらいましょう!」

 

「いいねいいね!陽菜遊ぼう!」

 

そう言って寄り添ってくる2人に

 

「嫌です。

なぜなら、3人を相手してると身が持たないからです」

 

「あはは☆変な喋り方っ!

でも、ちょっとぐらい遊んでよっ!」

 

「えぇ…」

 

「それに陽菜くんはずっと寝てたから、たまには身体動かした方がいいよっ♪」

 

「身体を動かすのは、ボス戦だけで充分なんだけど…」

 

「えー、なんでー?

あーそーぼーよー!」

 

そう言いながら俺の腕を掴むのやめませんか?

 

「…何して遊ぶんだよ…」

 

「「「トランプ!!!」」」

 

……約10年間独りだった俺に、トランプをする同級生ができるとは…

 

「?陽菜くんなんで泣いてるの?」

 

「いや、何でもない…やるか」

 

「やったあ!場所は陽菜くんの部屋でやろーっと!」

 

「…勝手にしてくれ」

 

すると

 

「あれ…?陽菜さん……どうしたんですか…?」

 

「あら?燐子に花音じゃないっ!一緒にトランプしましょう!

人数が多い方がトランプは楽しいわっ!」

 

「ふえっ…!?陽菜くん、これって一体…」

 

「ごめん燐子、花音。

晩ご飯が出来るまで付き合ってくれないか?」

 

「わ、わかりました……」

 

そして、謎の緊張感があるババ抜きが始まった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

数分後

 

ババ抜きをして中盤、俺の番が来て、花音のカードを取ろうとカードに手をかけると

 

「あ…!」

 

「?」

 

隣のカードに手をかけると

 

「ふえ……!」

 

「?」

 

取るカードの場所を変えると

 

「ふえぇ…!」

 

「…」

 

また変えると

 

「ふえぇぇ………!!」

 

もう一度最初の場所に手をかけると

 

「あ…!」

 

花音は小さい動作でこくこくと頷いた。

 

わかりやすいなぁ…

 

そう思いながら、カードを取り、次の方へ向けた。

 

「はい、次は日菜だな」

 

「う〜ん……陽菜くん、ジョーカー持ってる?」

 

「さぁな」

 

「じゃあこれでっ!」

 

そう言って日菜はジョーカーを取った。

 

「むぅ…!」

 

悔しそうにこちらを見てきた。

 

「あ、あはは…」

 

そして、しばらくそんな感じのババ抜きをして、何回戦目かが終わると

 

「なんだか……眠たくなってきたわ…」

 

「私も、こころと一緒〜」

 

「あっ!陽菜くんのベッドすごいフワフワっ!」

 

「本当!?日菜先輩!私も私もっ!

…本当だ!フワフワのフカフカだぁ…」

 

「楽しそうね!私も乗ってみるわ!」

 

そう言って俺のベッドに上がる3人に

 

「おーい、俺の部屋で寝るなよ。

俺がリビングで寝ないといけなくなるから…」

 

「そこなんですね……陽菜さん…」

 

「ここで3人に寝られたら死活問題だな」

 

「では、ナルさんの部屋に…泊めてもらうのは……どうでしょうか…?」

 

「間違いなく存在ごと抹消される。

ていう事で、3人とも寝るなら自分の、って……」

 

「「「すー……すー……」」」

 

「……やっぱり猫だった…」

 

「寝ちゃい…ましたね……」

 

あのベッドって3人も寝れるんだ…

 

そう思っていると扉が開き

 

「陽菜さん、ご飯出来ましたよー…って、何してるんですか…?」

 

「つぐみか、良いところに来た。

とりあえず、この3人を」

 

刹那、微かに漂ってくる美味そうな料理の匂いがした瞬間

 

「!わーい!ご飯だー!!」

 

「早く行きましょう!」

 

「レッツゴー!」

 

そう言って先程まで寝ていた3人が一瞬にして階段を駆けていく音が聞こえた。

 

「あの3人の睡眠活動どうなったんだ…」

 

「「「確かに……」」」

 

とりあえず、下に降りた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

一階 ダイニング

 

食事中の会話が飛び交う中

 

「ハルナさん!明日のボス戦も来るんですか?」

 

隣に座っていたイヴが聞いてきた。

 

「もう症状は治ったから行くつもりだよ」

 

「なら、今度は私がハルナさんの護衛に着きます!」

 

「いやダメだ。

この前の戦いを見たところ、イヴはこの中で1番のダメージディーラーだから」

 

「そうですか…残念です…」

 

そう悲しむイヴを見て、思い出した事があった。

イヴが倒れた日の夜に、イヴが俺を守ると言った事を…

 

…イヴも後悔してるか……

 

「…やっぱり、イヴに守ってもらおうかな」

 

「えっ!?良いんですか!?」

 

「ああ、俺はな。

でも、レベルが低くて攻略組でもない俺が、勝手に決めて大丈夫かどうかは知らないけど…」

 

「大丈夫ですっ!

今度のジャンケンは負けません!」

 

やっぱりジャンケンで決めるのか…

 

「まぁ、頑張ってくれ」

 

そう言って前を見ると

 

「あっ、蘭。

口にケチャップついてるぞ」

 

そう言ってティッシュで拭き取った。

 

「!あ、ありがと…」

 

「いいよ」

 

「でも…」

 

「?」

 

蘭は顔を少し赤くしながら

 

「あんまり…人前でそういう事しないでください…」

 

「…何を照れてるんだ…」

 

「なっ…!別にそんな事」

 

「ランさん、顔が真っ赤です!」

 

「ちょ、イヴさん声でかいって!」

 

「まぁ、蘭のいじりはそこまでにして。

早く食べて寝ないと明日のボス戦は、普通に寝過ごすかもしれないから」

 

「それ、陽菜さんだけだから。

最近はないけど、なんで前はいつも昼過ぎに起きてたの?」

 

「いや、まぁ、うむ…色々あってなぁ……」

 

「何?」

 

「私も気になります!」

 

「……じゃあ、食後に2人にだけ教えるけど、絶対他には教えちゃダメだからな」

 

「「?」」

 

そして、食事が終わり、俺が何故昼過ぎにいつも起きるかを耳打ちで説明した。

すると

 

「…それって、自分のせいじゃん」

 

「うっ…!」

 

「起きられないなら、ソレやめればいいのに」

 

「だって、レベリングする時間が…」

 

「レベリングしなくても強かったじゃん」

 

「ハルナさん!無理のし過ぎはダメですよ!」

 

「うっ…!

でも、心配はさせないから…」

 

「まぁ…その話、湊さん辺りにしたら陽菜さん、すっごい怒られそう…」

 

「確かに……ユキナさんは怒ります。

ハルナさん、気をつけてくださいね!」

 

「ああ、もちろ」

 

「如月、なんの話をしているの?」

 

「「「わあっ!?」」」

 

急に背後から呼びかけられてビックリし、振り向くと

 

「!ど、どうしたの?そんなに驚いて…」

 

「み、湊さん…」

 

「だ、大丈夫大丈夫!

何にもないから」

 

「?また如月が変なこと考えついたの?」

 

「なんで?どうしてそうなったの?」

 

「ふっ、ふふ…は、陽菜さん……めっちゃ心配されてるじゃん…」

 

「ふふふ、ユキナさんも大変ですね」

 

すると友希那が

 

「やっぱり…また如月が何かやりそうなの?」

 

「やりそうっていうか、やった、ですね」

 

「ちょ、蘭、それ教えちゃダメだろ」

 

「いや、これ絶対バレるって」

 

「……如月、遺言を書く?」

 

「待って!?まだ俺何も悪い事してないよね!?」

 

そう弁明している俺の後ろで、蘭とイブがこちらを見て笑っていた。

 

「!?待って!友希那さん!?なんでレイピアなんか出してんの!?」

 

「いえ、吐かないならこうした方が速いと思っただけよ」

 

「ダメだって!それは普通に死ねる!」

 

「何をしようとしてたのか。

それを言うまで……いえ、カーディナルに聞けば良い事ね」

 

「いや…アイツ絶対俺の事売る…」

 

「そう」

 

「ちょっ!だから…」

 

そしてしばらく友希那を説得するのに時間がかかったが、なんとか誤魔化し、その説得で疲れ切った俺は自分の部屋に戻ってゆっくり寝た。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

翌日

 

「陽菜くんっ、起きてーー!!」

 

そんな声が聞こえ、目を開けずに布団に潜り込もうと目を少し開けた。

すると同時にかなりの光が目に入ってきた。

 

「目がぁぁ……!!」

 

「陽菜くんっ♪ボス戦だよっ!」

 

「う…日菜よ……俺は眠い……」

 

「ほーらー早くっ!また友希那ちゃんに怒られるよー?」

 

そう言って身体を押したり引いたりして揺らしてきた。

 

「……揺らすな揺らすな。

起きるから」

 

そう言って起き上がると同時に、日菜に手首を掴まれてそのまま

 

「いっくよー!!」

 

「は、え、ちょっ!?」

 

扉を開けて階段を走って降りていった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

第98層 迷宮区 14時50分

 

「……なるほど、それで陽菜は疲れてるのね…」

 

「千聖も寝起きで日菜に引っ張られてみろ。

本当に体力なくなる…」

 

「ひ、日菜ちゃんも悪気はないと思うわ…」

 

「わかってる。

アレも日菜の良いところの1つでもあるからな」

 

「それ、日菜ちゃんにもう一度してもらいたい、って聞こえるわよ」

 

「特殊変換やめろ」

 

「ふふ、特殊変換…ね。

そういえば…陽菜は、Roseliaみたいに他のバンドの手伝いをする気はない?」

 

「ない」

 

「珍しく即答ね」

 

「それに、俺が混ざったらダメなんだよ」

 

「まだ、そんな事を言ってるの?

あなたの事は誰も必要としてない、なんて事はないと、前に伝えたでしょう?」

 

「ああ、知ってるよ。

でも、それは千聖達の『物語』であって、俺の『物語』じゃない」

 

「…あなた、また自滅覚悟で戦う気?」

 

「まさか、そんな事はしない。

俺は、自分の『物語』をもう見つけたから」

 

「?どういうこと?」

 

「まぁ、気にするな。

ただ、あの時の言葉を撤回するだけだ」

 

「ならいいのだけど……。

……全く…あの時の涙を返して欲しいものね…」

 

「?何か言ったか?」

 

「いいえ。

それよりも、そろそろボス戦が始まるわよ」

 

「あれから、転移結晶無効化エリアらしいな」

 

「ええ。

でも、問題ないわ。

陽菜がやってくれたように、私達も全力で最高以上の結果を出すわ」

 

「俺はそれを見守っておくよ」

 

そう言うと千聖は少し考えた後

 

「……本当、前のあなただったら『下がってろ』とか命令だしてそうね」

 

「や、やめろ…。

ほら、ボス戦開始するぞ」

 

「わかってるわ」

 

そして、禍々しい鎧を着たドラゴンとのボス戦が始まった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

30分後

 

「行くよモカ!!」

 

「任せて蘭〜」

 

2人の息ピッタリの攻撃がボスのHPバーを残り1本にした。

するとキリトが

 

「パターン変わるぞ!!」

 

そう叫ぶと同時に蘭達は距離を取った。

今日のボス戦では、演奏隊がポピパとRoselia。

攻撃隊が、残りのアフロとパスパレ、ハロハピ、キリト、血盟騎士団、エギル、風林火山だ。

 

「……アイツはいないのか…」

 

ポツリと呟くと

 

「アイツ……とは誰のことですか?」

 

キョトンとするイヴに

 

「アルベリヒの事だ」

 

「その方なら、この前の97層のボス戦から来てないと思います。

どうかしましたか?」

 

「…いないなら、安全だなぁ…と思って。

…それより、ジャンケン勝ったんだな」

 

「はいっ!

最後まで白熱した戦いでした!」

 

知らないうちに決まっていたのに驚いたが…

ジャンケンは一体いつどこでやってるんだ?

 

そんな疑問を持ちながら、ボスを見ると、ボスのHPバーが残り3割を切っていた。

 

「イヴ。

そろそろ前に出てダメージ与えてきたらどうだ?」

 

「嫌です!

ハルナさんの護衛を任されたのは私です!

だから、最後までハルナさんの側にいます!」

 

「お、おう…」

 

なんか今日のイヴ、すごい気合い入ってるな…

 

そう思っていると爆発音に似た弾ける音が聞こえ、前を向くと結晶のかけらが舞っていた。

 

終わったか…

 

そう思っていると

 

『っ!!?』

 

全員が次々と倒れていき、ついに俺も倒れHPバーを見ると

 

「!麻痺……!?」

 

それは、あの時と同じ光景、第75層でヒースクリフが全員を麻痺状態にした時と。

それと同時に、とある最悪の可能性を脳裏がよぎった。

そして、その可能性を確実な物と思わせる人物が現れた。

 

「…アルベリヒ…!!」

 

「やぁ……ごきげんよう、陽菜君」




うぉっしゃい!!
ヽ(*^ω^*)ノ

十六夜ユウスケ様
Remon様 メッセン様
ziozio様 ハクア хорош o様 KIRAMERO様
飛翔翼刃様 霧雨隼人様 赤い龍ポン酢様
藤恭様 黒き太刀風の二刀流霧夜様 反逆の堕天使ルシファー様
kuronosu127様 九澄大牙様 アーペ様
Bacon0112様 黒夜様 関飛様

40人ありがとうございます!♪( ´▽`)
見た瞬間うぉっしゃいですよ、うぉっしゃい!

では、また次回!
も長くなったらすみません_:(´ཀ`」 ∠):

オマケ

後2、3話くらいでこのSAOも終わりです…

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