退屈な日々を忘れたい俺がなぜバンドの手伝いをしているんだ......   作:haru亜

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第9話 打ち上げとサンドウィッチと夏休み

第2回ガールズバンドパーティが終わった。

それを非常口から確認し終わり、そのまま楽屋に行こうか帰ろうかで迷っている。

 

(……疲れたから帰ろうかな……)

 

なんて思っていると

 

「あっ、いたいた。

おーい!陽菜ーー!」

 

向こうでリサが呼んでおり、リサは駆け足でこちらに向かってきた。

 

「はーるなっ♪

凄かったじゃんっ!さっきの歌!」

 

「それは良かった」

 

「あっ、そうそう♪」

 

「?」

 

「この後打ち上げがあるんだ♪

その時はしーっかりと陽菜の事、話してもらうよ?」

 

「……………えっ…」

 

「それじゃあ行こっか♪」

 

ガシッ

 

「………………えっ…?」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

リサ side

大勢の人が満足して帰って行く姿を見て、SPACEのオーナーが満足しているとCiRCLEのオーナーが打ち上げの準備を用意してくれており、もはや勢いで打ち上げが始まった。

 

(う〜ん…勢いで陽菜連れて来ちゃったけど、目を離した隙にアレは…)

 

すると隣にいた友希那が

 

「リサ。

…アレどうするの?」

 

そう言って友希那が指差した先には、陽菜がいくつもの女の子達に囲まれて質問されている光景があった。

陽菜がなんとか全員の対応しているのが遠くから見てわかる。

 

「あはは…。

さっきの歌で、陽菜の顔がちょっと割れちゃったからね」

 

「…そうね」

 

「?友希那大丈夫?」

 

なんとなく聞いてみた。

 

「?別に、如月の事なんてどうでも」

 

すると友希那の口が止まって、どこかを睨んでいた。

そしてその目線の先を見てみると

 

「あー…」

 

思わずそんな納得した声が漏れていた。

その理由は、向こうで陽菜が押しの強い女の子達に押されて、手を握られたりしていたからだった。

それを見た後に

 

「……友希那?」

 

「…別に、なんとも思ってないわよ。

そう、如月の事なんてどうでもいいわ」

 

(う〜ん…本当にそうかなぁ…)

 

今までの事を振り返ってみてそう思い、少し気になって

 

「ね、ねぇ友希那。

恋…した事ある?」

 

「?無いわよ。

恋愛なんてものにうつつを抜かすわけにはいかない。

リサもわかってるでしょう?」

 

「う、うん!

わかってるよっ♪」

 

「そう」

 

すると先程陽菜の周りにいた人達が解散していき、陽菜はこちらに気づいた。

それを見て友希那は

 

「はぁ…あの人に色々と聞きたいことがあるから、聞いてみましょうか」

 

「うんっ♪」

 

すると向こうから陽菜がやって来たので、とりあえず、何があったのか説明してもらう事にした。

 

 

 

リサ side out

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

戻ってきたら、リサ達に何があったのか説明して、と言われた。

誤魔化して乗り切ろうとしたが、ポピパとハロハピ、パスパレやアフロの中に何故か怒ってらっしゃる方が数人いたので、親父さんと約束したあの話は隠して話した。

 

「…って感じになった。

という事で、俺はもう自由の身になりました」

 

(1番心配してた事も無くなったから、良かった……。

それにちょっと省いたけど正直に話したし、みんなもこれで許…して……)

 

なんか不穏な空気が流れているのを察知した。

すると友希那が

 

「…如月?

ちょっと聞きたい事があるのだけれど」

 

「な、なんでそんなに怖い顔をしてらっしゃるんでしょうか…」

 

「怖い?

何を言ってるのかしら。

私は至って普通よ」

 

(いや…そのにっこにこした笑顔が怖いんですよ…)

 

そして一歩引き退ると後ろからかなり大きな声で

 

「やぁやぁ!楽しんでるかい美少女達よ!!

あと、そのプラスα君よーー!!!」

 

「げっ…!?ひなこ!?」

 

そこにいたのはグリグリのドラム担当ひなこだった。

 

「やー!はーちゃん久々かな!?久々だね!!

そんな事どっちでもいいや!!」

 

はーちゃん、とは、残念なこの人の中だけでのあだ名である。

そして少し距離を置いて

 

「黙っといてくれひなこ!

お前イメージ崩壊寸前だぞ!?」

 

「おーおー!!

人生の先輩に向かって、その口の聞き方はなっとらんなー!!」

 

「こんな先輩いてたまるか!」

 

なんてやり取りをしていると

 

「こーら、ひなこ。

陽菜くんもさっきので疲れてると思うから、休ませてあげようね」

 

「おー!

これはこれは、愛しい愛しいゆりりんじゃないかー!!」

 

ゆりさんがひなこの頭を撫でるとひなこは犬みたいに落ち着いた。

すると

 

「陽菜くん。

お疲れのところごめんね」

 

「…ゆりさんが謝る事じゃ無いですから…。

ていうか、そっちこそ走ってきて速攻でライブなんてお疲れ様です。

それと、久しぶりですね」

 

そう言うとりみが

 

「陽菜さん……お姉ちゃんと知り合いだったんですか…?」

 

「ああ。

昔、ここでセッションした事があってさ。

その時は…まぁ、大変だったよ……」

 

昔の練習の時、ひなこから初対面でタックルを受けた事。

それで、ひなこにだけ敬語を使うのをやめた事を思い出しているとゆりさんが

 

「あはは。

あの時は楽しかったねぇ」

 

『それって、どんな話ですか!?』

 

何故か一部は俺の過去を掘り返そうとしていた。

すると香澄が

 

「はいはい!!

陽菜って、昔も歌ってたの?」

 

「うん!

1度、陽菜くんとセッションもした事あるよ」

 

「じゃあ、昔もあんなに上手かったんだ!」

 

香澄がそう言うと、ゆりさんは『う〜ん』と少し唸ってから

 

「多分、陽菜くんも自分でわかってると思うけど…。

昔よりかは結構劣ってた…かな」

 

「まぁ……それは理解してます。

…でも、7年ぶりにちゃんと歌えたんだから、別にいいんじゃ…」

 

すると燐子が

 

「あの……その頃の陽菜さんは……昔どんな人だったんですか…?」

 

(おおぅ……それをこの人に聞くか……)

 

そう思っても、ゆりさんは説明をし始めた。

そして少し話してから

 

「あはは!

陽菜くん絶対怒ってそうっ!」

 

日菜が笑いながら言うと

 

「そうそう!

それに陽菜くん、初めて私達と会った時にね。

私達に向かって『邪魔するなら帰れ』なんて言ったんだよ。

ねー?」

 

「こっちに振らないでください……」

 

「ええー!?

陽菜くん、そんな事言ったの?」

 

「いや……だって……」

 

(ドア開けた瞬間に、ひなこにタックルされた後に絞め技されたら、誰でも怒るだろ…)

 

そう思っているとひなこが復活したと同時に

 

「そーだ!!昔、はーちゃん聞こうと思ってた事を思い出した!!!」

 

「?……………はっ…!?」

 

嫌な事をまた1つ思い出し、逃げる準備をした。

 

「その名も!!

はーちゃんの好きな女性のタイ」

 

ビュン!!!

 

「プは誰でしょう!!でーす!!」

 

「あー!それ、あたしも気になる♪

ねー、陽菜くんの好きなタイプって……あれ?

陽菜くんどこ?」

 

『まさか……』

 

みんな周りを見渡したが、その姿は無い。

 

『……逃げた…』

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

翌日

通学していると後ろから

 

「陽菜くーーんっ♪」

 

(なんか来た…)

 

と思い振り返ったが、無視して前を見ると

 

「ハールーナーさーんっ!!」

 

(なんだよ今日の俺サンドウィッチかよ)

 

瞬時に理解した3秒後に校門前でサンドウィッチされた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

職員室に何故か俺まで呼ばれ、日菜とイブが怒られ、何故か俺まで怒られた。

そして廊下を歩きながらこんな話をしていた。

 

「ああ……腹と後頭部が痛い……」

 

「だ、大丈夫ですかハルナさん!?

具合が悪いなら保健室に」

 

「いや…これは主にイブと日菜のせいなんだが…」

 

「?」

 

「ていうか、なんで毎回毎回抱きつかれにゃならんのだ…」

 

「あはは☆

陽菜くんはそういう日が多いだけだよっ♪」

 

「ソウデスネ」

 

「あー!思い出した!」

 

「ど、どうしたんですかヒナさん?」

 

「昨日、ひなっちに頼まれてたんだ!」

 

聞き慣れない言葉を聞いたので

 

「ん?ひなっち?」

 

と聞くと

 

「うん♪ひなこ先輩と仲良くなってお願いもされちゃったんだー☆」

 

「うわぁお…」

 

(最悪のコンビだな…)

 

「それで…ヒナさんが頼まれた事とはなんですか?」

 

「それはねー…」

 

そして日菜はチラッとこちらを見たと思うと、ニヤリと小悪魔のような笑みを浮かべた。

 

「陽菜くんの好きな女の人のタ」

 

バヒュン!!

 

「あっ!ハルナさん逃げてしまいました!」

 

「ふっふーん♪逃がさないよっ!

イブちゃん、またねー!」

 

「はいっ!」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

階段を駆け抜けると背後から

 

「如月さん?」

 

そこには紗夜の姿があり、腕には風紀委員と書かれた腕章を付けていた。

 

「朝から風紀委員活動とは大変だな…」

 

「いえ、校則を守らない生徒がいないかどうか、確かめるだけです。

それで、随分焦っていましたが…」

 

「紗夜、俺を助けてくれ」

 

「…話の意図が全く見えません」

 

「えっとなぁ…」

 

説明中……

 

説明中……

 

「…なるほど。

それで焦っていたんですね」

 

拙い説明だったが、理解してくれた。

 

「ああ」

 

「ですが、それは昨日の打ち上げの時に全部話してしまえば良かったのでは?」

 

「いや…だって、あの時はみんないただろ…」

 

「でしたら、日菜だけに話してしまえばいいんじゃないですか?」

 

「日菜の情報拡散能力はズバ抜けてる。

だから、知らない人にまで拡散されるのは困る」

 

「…話したら楽になりますよ」

 

「いや待て…。

なんで俺が話す事を進めてんだ……」

 

「いえ。

私個人としても、男性の方が、女性に対してどんな好みを持っているのか気になりますから」

 

(ミスった……紗夜がこちら側かと思ったら完全に向こう側だ…)

 

なんて思ってる合間に、日菜到着。

 

「ああ!おねーちゃんだ♪

ねぇねぇ!!どうしたの!?」

 

食いつき気味に聞かれた紗夜は

 

「日菜。

あまり校内で、如月さんに抱きつくのはダメよ」

 

注意された日菜は俺を見て、むすっとした後に

 

「は〜い…」

 

すると紗夜はこちらに来て、俺の腕を掴んだ。

 

「?」

 

「如月さん。

私個人として気になる事もあるので聞きますね」

 

「あっ…」

 

もはや逃げられない状況となった。

 

「如月さんの好きな女性のタイプはなんですか?」

 

(やっぱりか…)

 

「さっすがおねーちゃん!」

 

(そこ喜ばれるのは、なんかなぁ…)

 

とはいえ、腕を無理に振りほどいて、紗夜が万が一怪我でもしたらRoseliaとしても、色々と悪い影響が出る。

人はこれを絶対絶命という。

 

「うぅむ……」

 

するとチャイムが鳴った。

 

「!良し。

と、とりあえず教室に一旦戻ろうな」

 

「…わかりました」

 

ホッと一安心。

 

「では、後は頼んだわよ日菜」

 

「オッケー☆任せておねーちゃん♪」

 

ハッと現実を思い出す。

 

(そーいや日菜後ろの席だ…)

 

そして1〜4時間と全て教室で行われる授業だったので、その4時間、日菜に色々な質問をされていった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

昼休み

なんとか生き抜いて、腹が鳴りそうな程お腹が空いていた。

そしていつもの場所に着き、そこに植えられている目の前の大きな木を目印に座った。

すると友希那も、ほぼ同時に着いたようだった。

 

「…なんか、友希那が最近ここに来る事が多くなってないか?」

 

と言い座ると

 

「別にいいでしょう」

 

そう言って友希那も座り、少しの間、何も話さず2人とも食べ終わった。

 

「……」

 

「……」

 

「なぁ」「ねぇ」

 

被ってしまった。

こちらも友希那に聞きたい事があるように、どうやら向こうに聞きたい事もあるようだ。

 

「どうした?」

 

「いえ。

あなた、そんなに1人がいいの?」

 

「難しい質問だな」

 

「あなたはいつだってそうよ。

海外に行く前だって何の相談も無い。

あのゲームの中でも、止めたのに勝手に団長と戦う」

 

「う……む……」

 

「今回だってそう。

リサから聞いた話じゃ、あなた、海外に行って今度こそ戻って来れない状態だったのでしょう?」

 

「い……やぁ……そこまで……では……」

 

「因みに、これは日菜があなたの母親から聞いた話でもあるわ」

 

「すんませんマジ勘弁してください。

洗いざらい話しますのでどーかお許しを」

 

本気を出して早口で言った。

すると友希那はほんの少し微笑んだ後

 

「そんなに謝るなら、何でも1つ聞く権利を約束したら、考えるわ」

 

「何その俺しか損しなさそうな話…」

 

「あら、記憶が失っている時のあなたはあんなにも素直だったのに」

 

「その時は俺の意思が……いや待て…今なんて」

 

すると友希那は何かをはぐらかすように

 

「そういえば、記憶が失っている時に、あなたの知り合いが来たわね」

 

さっきの事も気にはなったが、こっちが少し気になったので

 

「知り合い?」

 

「ええ。

黒い車に、スーツ姿、それとあなたの名前の由来を知っていたわ」

 

「!!」

 

驚きしか出なかった。

その男はきっと親父さんの事と理解したから。

そして

 

「…何も言われてないよな」

 

そう聞いて友希那が手に力を入れて握ったのがわかった。

 

「…今のRoseliaの事を言われたわ。

あの人、口ぶりからしてFUTURE WORLD FES.を知っていたようだけど…。

如月は心当たりあるかしら?」

 

「…無い」

 

(親父さんとフェスの関係性が見られないな…)

 

「まぁ、なんにせよ。

俺はもう親父さんと無関係にある。

だから、これでもう心配事は無くなった」

 

すると友希那は俺の顔を横から覗き込むようにしていた。

 

「ど、どうした?」

 

「いえ…あなたの言う親父さん、どうしてあなたは『さん』付けして読んでいるのかしら、と思って。

何か理由があるの?」

 

それを聞いて一瞬話そうか話さないか迷ったが

 

「まぁ…それが情けない話でな…。

一度、助けてもらった事があるんだよ」

 

「助けてもらった?」

 

友希那は不思議そうに聞いてきた。

 

「ああ。

それも、あの人が嫌っている1つのバンドで。

俺がバンドをやってた事は知ってるよな」

 

「ええ」

 

「その時に、中学生だった俺達はバイト出来ないから、楽器も集められなかったんだ。

要するに金が無かった。

で、その時にバンドに使う金を寄付してくれたのが、他でもない親父さんだ。

…あの人のお陰で、俺達は世界に1度は立てた」

 

「……そう。

そんな事があったのね。

でも…」

 

「?」

 

「もう一つ、気になる事があるわ。

その人、私の苗字も知っているようだったわ」

 

「!?」

 

「その反応だと、知らなかったようね」

 

「うむ……」

 

(これはまた…面倒な…)

 

なんて思っていると友希那が、こちらを見た後に少し離れた。

 

「?どうし」

 

「如月。

口は閉じておいた方がいいわよ」

 

「えっ?

何を」

 

「閉じなさい」

 

「?」

 

すると後ろから芝生を駆ける足音がし、恐る恐る振り返った。

 

「陽菜くんみーーっけ!!」

 

「んんんんん!!!?」

 

ボフッ

 

そんな音と共に芝生へと倒れた。

 

(食後の運動ってこんなにも大変なんだな)

 

そして何故、友希那がこの事を教えてくれなかったのかはわからない。

 

「さーって!そろそろ吐いてもらうよっ!」

 

そう言って日菜は逃さないようか、俺の上に乗った。

少しだけだが、珍しく息を切らしている。

すると友希那が

 

「?如月はまた何かしたの?」

 

「またって何!?」

 

しかし、そんな言葉を無視して

 

「んーっとねー。

陽菜くんの好きな女性のタイプを聞いてるんだよっ♪」

 

「如月の?」

 

「うんっ!

友希那ちゃんも気になるよね?」

 

「…別にどうでもいいわ。

如月の好きな女性のタイプなんて」

 

「んー?

まっ、いいや♪

陽菜くんに話してもらおっと☆」

 

「いい加減人の上に乗るのはやめませんかね…」

 

「ええー…。

じゃあ、もう一個ひなっちに頼まれた事聞いてくれたらいいよ♪」

 

(まだあったのか…)

 

そう思いながら頷いた。

 

「歌うのは楽しかった?」

 

それは至って簡単な質問だった。

なので

 

「ああ」

 

と簡潔に答えた。

すると日菜は納得したようで、退いてくれた。

 

「はぁ……酷い目に合った…」

 

「あはは☆

こうでもしないと陽菜くん逃げちゃいそうだからさー」

 

「いい判断だと思うわ」

 

「おい友希那…」

 

「でっしょー♪」

 

するとまたもや向こうから人影が見え、日菜の一件があるから、少し警戒していると

 

「はぁ…はぁ……あっ!友希那!

それに、陽菜とヒナも!?」

 

こちらも何故か息を切らしているリサが来た。

 

「なんだリサか……なら安心だな」

 

そう呟くと日菜がキョトンとした顔で

 

「?リサちーが安心なら、何が不安なの?」

 

(俺の左隣に座って、不思議そうな顔をしているあなたです)

 

すると放送用のスピーカーから

 

『2年C組今井リサさん、2年B組氷川日菜。

至急生徒会室まで』

 

と聞こえ、一回で終わった。

それも…

 

「……今の声は……紗夜か?」

 

独り言のように言った。

 

「ええ。

今のは紗夜の声ね。

それで、どうしてここにいる2人が呼ばれているのかしら?」

 

「「うっ……」」

 

明らかに様子がおかしい2人に向かって

 

「…2人とも」

 

「「わぁっ!!?」」

 

(この感じ…)

 

「2人とも、さては…」

 

するとリサと日菜は

 

「いやいや!!なんでもないって!

ただスカートの丈がちょっとだけ短かったってだけで…」

 

「そうそう!

あたしもそれしてるけど、おねーちゃんに叱られるような事はしてないもんっ!」

 

「うん、日菜に関しては『おねーちゃんとして』じゃなくて『風紀委員』として、怒られるだけだからな。

それに、紗夜が怒ると怖そうだから、早く行った方がいいぞ」

 

そう言うと2人は少しの間、悩んだ後

 

「「は〜い…」」

 

落ち込みながらも2人は職員室に向かって行き、俺はそれを見届けた。

 

「……」

 

「今の会話、録音しておいたわ」

 

「えっ!?」

 

「そんな事より、来年ね」

 

その言葉に、一つだけ思い当たる節があった上に、自然に話を進められた気がした。

 

「……ああ。

第9回目のフェスは来年にある。

だから、コンテストは今年の終わり頃だな…」

 

(…今はまだ、友希那自身が大切な事に気付きそうで気付いてない。

少し、余計なお世話を加える事になったり……)

 

少し心配していると

 

「如月。

あなたがいない時、Roseliaが変わったのは知っているわよね」

 

「…ああ」

 

「私はみんなの事を本当の意味で何も知らなかった。

そうだと言うのに、SMSで上手くいかなかった事を悩んでいた私は、その時あこにキツく当たってしまった。

燐子に、リサに、紗夜、みんなに迷惑をかけたわ。

それに、あの時の事は今でも後悔してる」

 

友希那の話を隣で黙って聞いた。

何も質問はせず、ただ黙っていた。

そして

 

「でも、きっと、ああいう事があったからこそ、今のRoseliaがあると私は思うわ。

それで…如月はどこまで見えていたの?」

 

「…何がだ」

 

「あなたは私達に何も言わず、隠し通そうとした。

けれど、あなたがそうした理由。

私達はあなたがいなくてもやっていける事を信じて、やった事だと思っているわ」

 

「……うむ」

 

「本当に信じているのね。

Roseliaの事を」

 

「ああ」

 

「だったら、教えてちょうだい。

あなたはどこまで見えていたの?」

 

そう言われて、少し真面目な話をしようと思った。

 

「…友希那。

Roseliaは、俺が見てきた数多いバンドの中で1番魅力的だ」

 

「魅力的…?」

 

「ああ。

演奏技術は、世間から見れば上の方かも知れない。

でも、それは世間が勝手に決めた事だ。

Roseliaは高い演奏技術を最初から持っていたわけじゃない。

それを誰よりも理解しているから、Roseliaは今のように成長している。

…Roseliaよりも演奏が上手いバンドはいるだろう。

それでも、いずれRoseliaは全てのバンドを凌駕する程、気高く咲き誇る。

俺にはそのビジョンが見えた」

 

「そう…」

 

「それにあの時、Roseliaが解散しかける程、辛い事やすれ違いがあった。

それでも、きっとそれは必要な事だった。

…Roseliaは俺にとって予測出来ない事が多い。

そこも含めて魅力的だからな。

これからどれだけ伸びるのか、俺は楽しみだ」

 

そう言うと友希那は少し驚いた顔をした後

 

「…そうね。

確かにあれは、必要なすれ違いだったのかも知れないわね。

…本当、どうしていつも簡単に救えるのかしら…」

 

「そんな事は…無いと思うけど…」

 

「いいえ、あるわ。

大体あなたは、あのゲーム世界でも…」

 

友希那はそう言って、話し始めた。

 

(…過程によって、今後Roseliaがどういう風に成長するか…。

俺にはわからない。

でも、きっとどんな辛い事があっても、彼女達は乗り越える。

なんたって…)

 

すると

 

「ちゃんと聞いてる?如月」

 

「ああ。

聞いてるよ」

 

「そう」

 

(俺は…この唯一無二の存在を信じてるからな)

 

そして、友希那と教室に戻って行った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

放課後

最近夏に近づき、暑くなってきたので、そろそろブレザーを脱ごうか迷っている時期でもあった。

少しの間に迷いながらも、帰る準備をしている。

すると

 

「陽菜くーん!」

 

ビクッとなり、教室の入り口の方へと目をやると、こっちに手を振っている彩がいた。

そして一気に彩に視線が集まり、横にいた千聖が慌ててそれを止めていた。

 

(何やってんだ……)

 

すると携帯が震え、見てみると

 

『今日の放課後、イブちゃんの部活動を見に行くから、あなたも来る?』

 

と書かれていた。

そして、1つ思った事がある。

 

(あれ……そういえば、なんで千聖が俺のLIN○知ってんだろ…)

 

そして思考を巡らせた。

 

(……ていうか…俺のL○NE。

最初は家族と友希那達入れて、5人くらいだったのに、いつの間にか30人くらい増えてるし…。

いや、待てよ……もしかしたら……リサルートでみんなに広がった可能性がある…。

……うん、そうだろうきっと)

 

考えた末、その結論にたどり着き、一応念のために聞いてみた。

すると

 

『それは秘密よ』

 

と返ってきた。

 

「こえぇ……」

 

気の抜けた声を出しながらも、『Roseliaの練習が気になるから、また今度』と返した。

送った時に申し訳ない気がしてならなかったが、とりあえずCiRCLEに向かう事にした。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

今日は、みんなが個人練習で創ったアレンジを加え、少しいつもより長い時間の練習が行われた。

そしてかなりの時間が経った後、片付けをして外に出るとまだ少しだけ明るかった。

するとリサとあこが少しだけカフェで休もうと言って、友希那と紗夜は承諾した。

 

「ふっふっふ…。

陽兄ぃ、もうそろそろ何の時期か、わかるよね?」

 

「……なんかあったっけ?」

 

そう言うとあこは、先程届いたストロベリーアイスにスプーンを刺してから

 

「もー!

夏休みだよっ!夏休み!」

 

「ああ、夏休みか。

そういえば、あこはいつから夏休み始まるんだ?」

 

「19日からだよ?」

 

「なん……だと……!?

俺達……25日からじゃねぇか……」

 

なんて嘆いていると燐子が

 

「ふふ……わたし達は一応高2ですから……その分課題も多いです…。

あこちゃんが少し早いのは……仕方ありません……」

 

「うむ……あっ、なんなら仮病でも使って休めば」

 

「如月さん。

校外とはいえ、私がいる事を忘れないでください」

 

「ですよね。

…まぁ、それよりも、あこは夏休みに何か楽しみにしてる事あるのか?」

 

「うんっ!

Roseliaの練習でしょ!それから、それから…あれ?

Roseliaの練習以外無い…。

どうしよう陽兄ぃ!」

 

「俺にあこの夏休みを変える力なんて無い…。

ていうか、練習も楽しいならそれで良いと思うんだけどな…」

 

するとリサが

 

「んー、多分そうじゃなくて、あこは夏休みに何か特別な事がしたいんだよ」

 

「ああ…要するに、楽しい思い出が欲しいんだな」

 

「うんっ!

Roseliaのみんなで、思い出作りをしたい!」

 

あこにそう言われて見ると、ここにいる全員が思い出作りをしている所を見た事がなかった。

そして

 

(この機会にみんながみんなの事を知れたら、Roseliaはもっと上に行けるんじゃ……)

 

そう考えた俺はとある提案を出した。

 

「じゃあ、夏休みの間にRoseliaでどこか行ったらどうだ?」

 

すると

 

「「それいいっ!!」」「練習が優先よ」

 

見事に反応が2つに割れた。

そして紗夜が

 

「今井さん、それに宇田川さんも。

夏休みのほぼ全てが練習で埋まっている事を忘れないでください」

 

「で、でもでもっ!

みんなで一緒にどこか行くのはきっと楽しいですよっ!」

 

「そうだな、楽しいだろうから行ってみたらどうだ?」

 

あこに続けて言うと

 

「如月さん。

あまり勝手な事は言わないでください。

フェスのコンテストまで、後数ヶ月しか無いのだから」

 

紗夜が色々と言いそうなので、その言葉を遮って

 

「まぁまぁ、あこ達がこんなに行きたがってるんだから、ちょっとくらい付き合ってあげるのも良いと思うぞ。

それに、息抜き程度には良いんじゃないか?」

 

「息抜きに1日の大部分も使ってなんかいられません。

如月さんもそれはわかっているでしょう?」

 

「それはそうなんだけど……。

さっきから静かな友希那はどうだ?」

 

「……」

 

「友希那?」

 

そう呼びかけると

 

「!……ごめんなさい、少し考え事をしていたわ」

 

「…今、夏休みの間に1回だけでもいいから、みんなで一緒にどこか行かないか、っていう話をしてるんだが、友希那はどうする?」

 

すると友希那は

 

「ええ、いいと思うわ」

 

『ええっ!?』

 

友希那の予想外の答えにこの場にいた全員が驚きの声を出した。

 

「行くんですか!?」

 

紗夜が驚きながらも聞くと、友希那はホットコーヒー(砂糖入り)を飲んでから

 

「ええ。

でも、まずどこに行くかも定まっていないのなら、やめておくわ」

 

すると

 

「「トコナッツパーク!!」」

 

俺の座っている右隣の2人がそう叫んだ。

そして

 

「「「「トコナッツパーク?」」」」

 

4人がそう言うとリサが

 

「ええ!?

4人ともトコナッツパーク知らないの!?」

 

「知らないわ」

 

「……知りません……」

 

「知りません」

 

「知らんな」

 

と4人に返されたリサは

 

「う〜ん…確かに、4人とも、そういう所は行かなさそうだもんね」

 

(まぁ……俺はインドア派だからな)

 

そう思いながらカフェオレを飲み干すと、あこが

 

「トコナッツパークっていうのはですね。

いろんなウォーターアトラクションがいっぱいあって、すっごく楽しい場所なんですよ!

夜になるとステージショーがあって、キラキラでワックワクの超超超カッコいいステージが見れるんですっ!!」

 

(あこはトコナッツパークに行った事があるのか…)

 

そして友希那が

 

「…よくわかったわ。

つまり、遊園地というわけね」

 

(……………ん?

いや……大丈夫か……)

 

友希那の納得の仕方に違和感があったが、気にせずに

 

「それじゃあトコナッツパークに決定っ☆

集合場所は駅前でいいかな?」

 

リサがそう言うと、先程から何か悩んでいた紗夜が

 

「私は構いません」

 

「あこもそれでいいよー!

りんりんは?」

 

「わ、わたしも……大丈夫です……」

 

「私も、問題ないわ」

 

「陽菜は?」

 

リサにそう聞かれて

 

「えっ?

それって俺も行くの?」

 

「なーに言ってんの☆

ここにいるみんなで行くに決まってるじゃんっ♪」

 

(待て……ここで俺が行ったらRoseliaの意味無いんだが…)

 

「あっ、もしかして…お金の心配してる?」

 

色々と考えているとリサにそれを聞かれて

 

「いや、夏休み中ならそれは問題無い」

 

無意識のうちに正直に話してしまった。

良い収入とは、親父さんから、今までの分の仕送りだ。

 

(何を正直に言ってんだ俺は…)

 

なんて思いながら、別の言い訳を考えていると

 

「夏休みにどこか行こうと言い出したのは如月でしょう?

言い出した本人が行かなくてどうするのよ」

 

「そうです。

こうなった原因は如月さんにあるんですから、あなたも付いて来るべきです」

 

「…いや待て…。

こういう時って普通、女子だけで行くんじゃないの?

俺はそう本で読んだ気がする…」

 

確か、ラノベの小説でなんかそんなのあった気がした。

しかし、現実は実に非情である。

 

「あのなぁ…普通に考えてみてくれ。

女子高生の集団の中に、男子が1人いたらどうなると思う?

最悪、プールの水に若干の赤が混ざるぞ」

 

「でも陽菜?

陽菜が知らない間に、この中の誰かがナンパでもされたら陽菜、どうする?」

 

「とりあえず、縛って警察に突き出す」

 

「あはは☆

予想の斜め上の答えだったけど、まぁいいや♪

…それだったら、陽菜、付いてきた方がいいんじゃない?」

 

「……はぁ…」

 

(……一般的に見ても美少女。

そんな子達が揃うとこんなにも面倒とは……)

 

「…わかったよ…」

 

「やった♪

それじゃ、当日の待ち合わせ時間とかの詳細は、後でみんなに送るね☆」

 

『はーい(おー)』

 

すると友希那が突然

 

「そういえば…1つ心配事があるわね」

 

「?何かありましたか?」

 

紗夜が聞くと友希那は、俺とあこを見て

 

「あこ、如月。

あなた達、課題はすぐに終わらせるのよ」

 

「「うぐっ…!」」

 

共に痛い所を突かれた。

 

「いやぁ……俺は課題を最後に終わらせ」

 

「如月さん。

良ければ、私が勉強をお教えしましょうか?」

 

もはや、俺に最後まで言い切らせる気は無いようだ。

そしてその有難い提案を

 

「日本史と科学A、Bを教えてくださいお願いします」

 

「あ、あこもあこも!

紗夜さん、良いですか…?」

 

「良いですよ。

ですが、やるからにはちゃんとやってもらいます。

良いですね?」

 

「はい!」「わかった」

 

そしてまだほんのちょっと先にある夏休みの初日は、勉強会となった。




めっちゃ期間空きましたね( ̄▽ ̄)
不定期更新&バンドリイベ恐るべし…((゚Д゚ll))ガタガタ

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お気に入りしてくれてありがとうございます♪( ´▽`)

では!また次の話で


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