退屈な日々を忘れたい俺がなぜバンドの手伝いをしているんだ......   作:haru亜

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第13話 2つの想いは交差する

約7年前

 

SPACEにて

 

ライブが終わり受付に着き、少し考えてると

 

「…」

 

「ん?どうした陽菜?」

 

そう声をかけてくるのはベースケースを担いだシュウだった。

 

「…別に、ちょっと気になっただけだ」

 

「?…ああ。

今日来てたバンドの事か。

陽菜が他のバンドに興味を持つなんて珍しいな」

 

「いや、興味を持ったんじゃない。

ただ…なんというか…変に思っただけだ」

 

「変?」

 

「ああ。

あの集団は、『個々の音』を出せてる。

でも、それをボーカルのせいでか、他がついて行けてない」

 

「ああ、確かにあったなそんな場面。

でも、それのどこが変なんだ?

素人の集まりならアレくらい普通だろ」

 

「はぁ…、興味持ってないのはどっちだ。

演奏隊はほぼミス無しだったろ。

ただボーカルが、あれだけ歌えるのに周りを気にしてない所が変だ、って事だ」

 

そう返しながらも次の予約を済ませた。

 

「なるほどね」

 

すると向こうから

 

「おーい!

何やってんねん!はよ行くぞー!」

 

カイトの声が聞こえ、声のする方を見ると

 

「店の前で大きな声出すんじゃないよ!!」

 

そんな声と共に、カイトはオーナーに叩かれていた。

 

「あでっ!?

何すんだ!!」

 

「アンタが馬鹿みたいに大きな声で叫ぶからだろう!

で、ボーカルはどこだい!

この馬鹿を制御できるのアイツくらいだろう!」

 

「なっ!?

この婆さん二回も馬鹿って言いやがっ」

 

再度、げんこつを喰らうカイト。

 

「年上は敬いな!

ん?」

 

「げっ…」

 

「そこのボーカル、ちょい来な」

 

オーナーはこちらを見てそう言った。

おまけに俺の方へと指は向けられている。

 

「はぁ……あの馬鹿…」

 

「いってらっしゃい」

 

「お前も道連れにしてやろうか…」

 

「あはは、無理」

 

と返されたので仕方なく向かった。

 

「で、うちの馬鹿が何かしましたか?」

 

「店の前で馬鹿みたいに叫ぶなら、ここを出禁にさせるよ」

 

「それはどうも、うちの馬鹿がすみません。

馬鹿は治るのが遅いので」

 

なんか後ろで『馬鹿やと!?』と聞こえていたが、俺とオーナーは無視した。

 

「不治の病だろう。

それより、今日連れてきたバンド。

アンタから見た感じどうだった?」

 

「ボーカルはダメだ。

ビブラートで若干震えてる。

『個々の音』を出せてるから、技術をもっと磨き上げれば『個々の音』はもっと鋭くなるが…」

 

そこで言うのをやめた。

 

「ていうか、オーナーはこれくらいわかってるだろ…」

 

「ああ。

だから、アンタから見て、と言っただろう」

 

「はぁ…。

とりあえず、俺には関係無い事だ」

 

「へぇ、あの子に才能、あると思ったんだけどねぇ」

 

「…才能が本人を幸せにするとは限らない。

人は才能を欲するが、才能は人を選ばないから」

 

「今の自分が不服かい?」

 

「いや、満足してる。

ただ…あのボーカルが自分の才能をどう思っているか、気になっただけだ」

 

「……まぁいいさ。

いつか、アンタの夢が叶うなら、それでいい」

 

「そうか」

 

そして、馬鹿を連れたメンバー全員で反省会を開いた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

翌日 SPACE

 

いつも通りの時間にライブハウスへ行くと

 

「あっ!」

 

「……?」

 

目の前に、栗色の髪を持つ俺と同い年くらいの男がいた。

 

「あ、あの!

昨日のライブに出てた如月さんですよね!?」

 

「誰」

 

「あっ、すみません!

僕は、四宮 凛音と言います!」

 

「あー、それで四宮なにがし君?

俺は話す事なんてない」

 

「うっ…四宮 凛音です…。

まずはサインをくださ」

 

「無理、描くのめんどい」

 

「ええっ…!?

じゃあ…少しだけ相談に乗ってください!!」

 

そう言われて時間を見ると後10分程あったので

 

「はぁ……。

なんだ?」

 

「その…昨日の僕達のライブ。

やっぱり、いけなかったでしょうか?」

 

「!」

 

(聞いてたのか…。

それに、やっぱり…と言ってる時点でもう…)

 

そう思ったが、その問いに答える事にした。

 

「……歌、歌詞、リズム、技術的な面。

これらは良かったが、他がダメだ。

それにお前、ライブ中にビビってただろ」

 

すると意表をつかれたようで若者は

 

「す、すごい!

どうしてわかったんですか!?」

 

「はぁ…いつも肝心なところで一瞬震えてたな」

 

「っ…はい…」

 

「…人前で歌うのはこれで何度目だ?」

 

「…まだ6回目です…」

 

「…そうか。

…何を怖がる必要がある」

 

「怖…がる…?」

 

「だーかーら!

何を怖がる必要があるって聞いてんだ!」

 

「!え、ええと…その……お恥ずかしい話ですが……」

 

「なんだ、言ってみろ」

 

「僕…人前だと、怖いんです……」

 

「?何が?」

 

「僕、昔から歌うのが好きです。

でも、この前それを聞いた同級生達にこぞって馬鹿にされて…。

それで…4回目のライブから、どうしてもあの人達の事を思い出して……声が思うように出なくなったんです…。

だから…」

 

「だから、人前で、本気で歌うのが恥ずかしくて出来ない、と?」

 

そう言葉を繋げて尋ねると、その若者はコクコクと頷いた。

それを見た俺は

 

「はぁぁ……呆れた…」

 

「えっ…?」

 

「周りに流されやがってこの栗きんとん…。

……いいか?」

 

「えっ、はい…!」

 

「馬鹿にする奴らは認識するな。

たとえ、ライブに来てたとしても、だ。

強くなりたいなら自分の弱さを認めろ!

それに、自分が好きな歌を本気で歌って何が悪い!!」

 

「っ!!」

 

つい、()()()()()()と聞いて、そう言ってしまった。

そして一息ついてから

 

「…それに、バンドでボーカルをするのなら、揺らがない信念を持て。

簡単に揺らぐ信念なんて、役に立たんからな。

…わかったか?」

 

ソイツは、ポカンとした様子だった。

 

「…おい、聞いてんのか」

 

「え、あっ、はい!!」

 

(途中から聞いてなかったなコイツ…)

 

そう思っていると

 

「すみません!

感動してました!!」

 

「今の話に感動要素はゼロだ」

 

「そんな事ありません!

おかげで、僕に足りないモノが何か、やっとわかりました!」

 

「へぇ…。

今ので見つかる事もあるのか…」

 

「はいっ!

僕に足りなかったモノ。

それは自信です!」

 

「うむ」

 

「それでいつか、如月さんと同じステージに立ってみせます!!

そしたら、必ず僕はあなたを超えてみせます!!」

 

「へぇ…。

ま、演奏隊は問題ないな。

演奏隊は」

 

「ぼ、僕はこれからですから!」

 

「へいへい。

でもまぁ…頑張れ。

お前、一応才能のかけらはあるみたいだから」

 

すると若者は嬉しそうな顔をした後

 

「はいっ!!」

 

そしてこれが、(のち)の優勝者『四宮 凛音』と、(のち)の敗者『如月 陽菜』の最初で最後の交わした会話であった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そして現在

 

「らぎ…」

 

(はぁ……馬鹿な出来事を思い出したな…)

 

「さらぎ…」

 

(…全く…今更後悔しても遅いのに……)

 

「如月?」

 

「!!

なんだ友希那か…」

 

「なんだ、とは失礼ね。

それより、一体何を考えてたの?」

 

「別に友希那が気にする事じゃ」

 

ガチャ

 

俺の言葉を遮るようにして扉が開く音がした。

 

「どうも、ちょっとお邪魔するよ」

 

そう言って陽気な声をかけて、入って来たのは栗色の髪をした青年だった。

 

『!!』

 

さすがに俺も驚いた。

そこに訪ねて来たのはフェスの優勝者だったからだ。

すると青年は真っ直ぐにRoseliaの方へと向かい

 

「はじめまして」

 

青年が軽く挨拶をして、紗夜が

 

「…どういったご用件でしょうか?」

 

「大した事じゃないさ。

ちょっと気になってね。

まぁ、でも…」

 

「……」

 

「中々面白そうなバンドじゃないか。

君がリーダーかな?」

 

指を差しながら聞かれ、友希那は

 

「ええ。

あなたは?」

 

「僕としたことが、まだ名乗ってなかったね。

僕は、四宮 凛音だよ」

 

「そう。

今日はよろしく」

 

「うんよろしく。

今日のライブ対決、楽しみにしてる。

もっとも…」

 

「?」

 

「僕は絶対に負ける気がしないけどね」

 

「…それは、こちらも同じ事よ」

 

「へぇ…。

あ、じゃあ、僕そろそろ行くよ。

じゃあね」

 

そう言うと、四宮は出て行った。

 

『……』

 

少しの間沈黙するとリサが

 

「なんか……すごい人だったね」

 

「そうですね」

 

すると

 

「…私はあの人、あまり良い感じはしないと思うわ」

 

友希那がそう言うと燐子も

 

「はい……わたしも…そう思います……」

 

「えっ?どうして?」

 

「さっきの人は…その……陽菜さんに見向きも……しなかったです……。

まるで……そこにいない存在みた」

 

「燐子、友希那。

それ以上は考えなくていい」

 

悪いとは思ったが、燐子のセリフを遮った。

ライブに集中して欲しいからだ。

すると

 

「…もしかして…さっきの四宮って人となんかあった?」

 

リサにそう聞かれて、答えない事もライブの妨げになると思い

 

「…まぁ、な。

だが、そんな事を気にしてる余裕は無い。

一応、相手はアレでも現在世界トップだ。

気は緩めないように」

 

『ええ(うん)』

 

「……私達は私達の演奏を信じるだけ」

 

友希那がポツリと呟いたのを聞き逃さなかった。

そして少し経ってから、Roseliaの演奏が始まった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

数分後 楽屋

 

Roseliaは、ライブを終えた。

 

『……』

 

そしてその結果はあまり良い結果とは言えなかった。

 

「……どうだった」

 

投げかけた問いにイスに座っているリサは俯きながら

 

「……今までより上手く出来たし、練習で間違えた所も出来た…。

でも、全然…敵わなかった…!」

 

悔しさから、ギュッと自分の手を握りしめるリサ。

そしてその隣に座るあこが

 

「…あこも…。

いつもより上手く出来たなーって、思ったけど…。

でもやっぱりお客さん達の歓声を見た時は…すっごく悔しかった…」

 

「……そうか。

他も一緒の意見か?」

 

そう聞くと紗夜と燐子は別々に、コクンと頷いた。

 

「…これで、俺が言ってた理由がわかっただろ。

今のRoseliaじゃ無理ってのは、そういう事だ」

 

すると紗夜が

 

「如月さん。

それは、最初から私達では敵わない相手だとわかって言ったんですか?」

 

「…ああ。

こうなる事はわかってた。

もっとも、1番近くで見てきたから言えた事だが…」

 

(だが、それ以外にも1つ…)

 

「っ…そう、ですか…」

 

「……ただ…1つ言う事があるとすれば…。

友希那、演奏中に何を迷ってた」

 

「!!」

 

「ボーカルはバンドの中で1番相手に感情を伝えやすい。

いや、伝わってしまう。

…さっきの演奏はいつもと違う、違和感があった」

 

「っ……」

 

「今まで、こんな事は無かっただろ。

それなのにどうして今更」

 

「から……のよ…」

 

「……友希那?」

 

すると

 

「わからないのよ!

あなたの考えてる事、私に足りないモノも!!」

 

「!

わからないって…第1、俺の考えだと…?

わざわざそんな事で」

 

「そんな事じゃないわ!

テーマパークに行った時もメンバーの事を知ろうとした。

そしてその中にはあなたも含まれてたの!」

 

「!!

俺も…含まれてた…?」

 

「ええ…。

でも…どうしても、あなたの考えがわからなかったわ…。

心を開いてくれないあなたを信用してもいいのか。

考えていくうちに、自分が何をすればいいのか、それすらわからなくなってきた…。

ボーカルとして、あなたの力は知っている…。

でも!それだけじゃわからないの!」

 

『!!』

 

「友希那さんが……?」

 

「そんな…」

 

あこと燐子がそう言い、俺と紗夜、リサはそれを黙って聞いた。

そして俺はある問いを投げかけた。

 

「…()()()、って言ったけど。

それは、前回のライブイベントでやった事か?」

 

「…ええ。

あの時、あなたの歌声を聴いて、初めてボーカルとしての自分が不安になったわ。

会場の雰囲気を覆したあなたの歌声ですら、フェスで優勝出来なかったのだから…」

 

それを聞いて今までの事を走馬灯のように頭の中で駆け巡った、その瞬間

 

「…だったら…」

 

ああ、マズい…。

そう思っても俺の開いた口が止まる事はなかった。

 

「だったら、()()()()()()()()()()()()()()()()()やろ!!!」

 

『!!!』

 

「俺がいたからなんや!?

こんなたった1人の人間が与える程度の影響!!

こんなくだらない存在のせいで、Roseliaの信念が揺らぐんやったら、フェスのメインステージなんて夢のまた夢や!!」

 

「!!

くだらない…存在…?」

 

「…っああ!

こんな奴に左右されるぐらいの信念なんて、真っ赤な偽物だ!」

 

「っ…私達を最初から肯定し続けた存在を、そんな風に言わないで!!」

 

「っ!!」

 

「いくら本人であっても、肯定し続けた事を否定するのは、許さないわ!!」

 

「っ…だが今の友希那達は確実に下を見てる!!

俺なんて見るな!!

頂点を目指すのなら、上を向け!!

なんでコンテストで挫折した今も、バンドをやっているのかを思い出せ!!」

 

『!!!』

 

「…それが出来るまで、お互い干渉は無しだ」

 

「!ま、待って陽菜!

じゃあ、陽菜の目標は…どうなるの…?」

 

リサにそう言われてドアの前で引き止められたが

 

「…いつ俺が、近くで見たい、なんて言った」

 

「っ!!」

 

「…じゃあな」

 

そして夏休みの間、俺がRoseliaの練習に赴く事は無かった。




さて、ここからが頑張り所なので頑張ります!
d( ̄  ̄)

それと、お気に入りに関して変更点。
お気に入りしてくれた方々を掲載するのは3話以内とさせていただきますので、ご了承をお願いします。
(_ _)

理由は本当に勝手ですが、手が辛いです。
申し訳ない…

では、仕切り直して!

長瀬楓様

オジマンディアス様 リュウティス王子様
kyosyou様 Earl grey様 連夢様

お気に入りありがとうございます!

遠慮なく、誤字、脱字、良ければ感想などよろしくお願いします!

オマケ

気づいた方もいらっしゃると思いますが、前回くらいからやっと『多機能フォーム』の使い方がわかりました_:(´ཀ`」 ∠):

それと、BRAVE JEWELの円盤を買いましたが、もう本当に最高でした…!!♪( ´▽`)

では!

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