退屈な日々を忘れたい俺がなぜバンドの手伝いをしているんだ......   作:haru亜

53 / 107
第14話 迷い、ほんわか、新たな面倒ごと

友希那 side 2学期 9月

 

ライブ対決以来、如月は練習に来なくなった。

あれから学校も始まり、もう2週間以上も経つ中、私はRoseliaと自分に足りないモノをまだ見つけられずにいた。

 

「…行ってきます」

 

靴を履き、玄関を出ると少し涼しい程の風が吹く。

すると

 

「ゆーきなっ♪」

 

「…リサ」

 

家の前にはリサがいたので、そのまま一緒に登校する事にした。

登校中

 

「…ねぇリサ」

 

「ん?どーしたの?」

 

笑顔で聞いてくるリサに、少し躊躇(ためら)った。

 

「…いえ、なんでもないわ」

 

「…そっか。

何か悩みがあるならいつでも聞くからね♪」

 

「…ええ」

 

(足りないモノは、必ず見つけてみせる)

 

そして学校に着いた。

 

 

 

 

友希那 side out

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

リサ side

 

授業中 第1実験室

 

 

「はぁ…」

 

ため息をついたのは、朝の事を思い出していた。

 

(友希那、何か相談しようとしてたのに……)

 

また1人で抱え込ませたままにしてしまった事を悔やんでいると

 

「リサさん。

難しい顔して、どうしたんですか?」

 

「!ま、麻弥!?」

 

不意に話しかけられてびっくりした。

 

「ふへへ…すみません。

でも、リサさんが悩んでる所なんてあまり見た事ないですから」

 

「うぅ……そう見える?」

 

「はい。

あとですね…」

 

「?」

 

「その…ジブンで良ければ、相談相手になりますよ?」

 

照れくさそうにして、麻弥はそう言ってくれた。

 

「…うん、わかった。

それじゃあちょっとだけ話すね…」

 

そして今のRoseliaの状態を麻弥に話した。

 

「…なるほど…」

 

麻弥が一言漏らした所に

 

「何かわかったの!?」

 

ガタッと音を立て、薬品が零れかけた。

 

「ま、まだ断片的な事しかわかりませんよ!?

……でも、ジブンの推測では」

 

「うんうん」

 

「陽菜さんは、まだRoseliaの事が好きだと思います」

 

「!本当に?」

 

「はい。

今回もそうですが、陽菜さんはいつも皆さんを影からサポートしています。

それをこの約3年間続けてるのはすごい事なんですよ」

 

「そ、そうなの?」

 

「ええ、それはもう。

それほどまでに好きじゃないと続ける事は出来ませんから」

 

「そっか…。

まだ…好きなんだ」

 

少し安心した。

陽菜がもう二度と帰ってこないと思ってた故の気持ちだった。

するとチャイムが鳴った。

 

「ありがと麻弥っ♪

おかげで少し楽になったよ☆」

 

「ふへへ…それは良かったです」

 

 

 

 

リサ side out

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

紗夜 side

 

国語の授業が終わり、ふと、こう思った。

 

(如月さんは、一体何を考えているのでしょう…)

 

彼は、少し抜けているところが有りながらも、メンバーなど身内の事は誰よりも大事にする優しい人であり、メンバーの成長を誰よりも早く気づき、理解してくれる人でもある。

 

けれど、それと同時に、如月さんには少し怖い一面もある。

あのゲームの中でもそうだった。

もし他人である誰かがメンバーに危害を加えれば、それ相応の対応をしてしまう。

それはきっと、彼が優し過ぎるあまりとってしまう行動でもある。

 

(『私達Roseliaに足りないモノ』

それに気づく事こそがきっと今回の、そしてこれからの問題の解決と成長に繋がるはず…)

 

そう考えていると

 

「すみません。

氷川紗夜さんはいらっしゃいますか?」

 

教室のドアの方から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

見るとそこには何かのいくつかのファイルを持った羽沢さんがいた。

 

「羽沢さん?

どうかしましたか?」

 

すぐに向かい、羽沢さんの持っているファイルを持とうとすると

 

「だ、大丈夫ですよ!紗夜さん。

えっとですね、ファイルの上のプリントを見てください」

 

「?これ…ですか?」

 

そして手に取ったプリントに書かれていたのは、10月に3日間行われる文化祭の準備についてだった。

 

「そういえば、もうそんな時期ですね」

 

「生徒会長が、月曜日の放課後に、生徒会室で各クラスの予算についてなど話し合うので、各クラス1名以上は参加するように、だそうです」

 

(予算について…?

まだ各クラスの出し物も決まっていないのに?)

 

そう思ったけれど

 

「…わかりました」

 

と返した。

すると

 

「あ、それと…」

 

「?」

 

「余計なお世話かもしれませんが、陽菜さんとRoseliaの事、頑張ってください!」

 

「!?

どうしてそれを…?」

 

そう聞くと、羽沢さんは

 

「もうみんな気づいてますよ。

陽菜さんとRoseliaのメンバー達の様子が、前から少しおかしいですから…」

 

それを聞いて、周りに勘づかれる程に、私達は落ち込んでいた事がわかった。

 

『俺なんて見るな』

 

私はあの言葉が頭から離れない。

あの言葉は如月さん自身の『謙虚さ』からくるのか、それは本人しかわからない事であり、その言葉をまだ理解出来ない私は、どうすればいいのか。

そんな思考がよぎる。

けれど

 

(…今は、目の前の成すべきことを成す。

それが、今の私に出来る事)

 

そうキリをつけた。

そして

 

「ありがとうございます。

ですが、心配は要りません。

この問題は私達自身で考えて、解決しますので」

 

すると羽沢さんは少し微笑み

 

「わかりました。

では、私はこれを運びに行きますね」

 

「はい。

頑張ってください」

 

「はいっ!」

 

そう返事して彼女が階段を降りていく音が聞こえた。

 

 

 

 

紗夜 side out

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

昼休み

 

(やっぱり何かヒントを与えるべきだっただろうか…)

 

今思えば、渡した少な過ぎる情報量にやや後悔しつつある1人の男。

俺は校舎裏に座りながら、サンドウィッチを食べている。

そこに

 

[ニャー]

 

草むらから、野生の真っ白な猫が現れた。

 

「……」

 

[ニャー]

 

猫は嫌いじゃない。

どちらかといえば、好きな部類に入る。

 

[ニャーオ]

 

(カワイイ…)

 

「おっ…ん?」

 

猫は頭を擦りつけて来た。

 

「……」

 

ソッと猫に触ろうとすると

 

[フシャー!]

 

めっちゃ警戒された。

 

「すまん…」

 

するとまた制服のズボンに擦り付けてきた。

 

(触りたいのに触れないこの気持ち…)

 

すると

 

[ニャー]

 

猫は見上げて鳴いている。

 

「?」

 

[ニャーオ]

 

(このサンドウィッチが欲しいのか?)

 

[ニャー?]

 

首を横に振った。

すると

 

[にゃあ]

 

猫は足の上に乗り、よじ登ろうとしてきた。

 

「…人懐っこいな…」

 

すると

 

ザッ

 

そんな音がしたので、また猫が現れたのかと思うと

 

「陽菜くーん!!」

 

向こうから、日菜(猫)が現れ、日菜の先制攻撃。

 

「ぐっ…」

 

[にゃ!?]

 

猫は日菜に驚いて逃げ出した。

そして俺はサンドウィッチ片手に押し倒された。

 

(危ない……もう少しでサンドウィッチが落ちるとこだった…)

 

「あはは♪ねーねー!

陽菜くんっ!星だよ星!聞いて聞いて!」

 

「上に乗るな」

 

「は〜い…」

 

なぜか残念そうに降りる日菜。

そして

 

「それで、星がどうとか言ってたけど、どうした?」

 

すると日菜はいたずら顔を浮かべながら

 

「どーしよっかな〜。

陽菜くんがどーしても気になる、って言うんだったら」

 

「あ、じゃあいいです。

そんなに気にならないから」

 

「うぅ…いいじゃんか!いいじゃんか!

話くらい聞いてよー!」

 

ポカポカと攻撃をくらう。

 

「はぁ…。

聞くからその地味に痛い攻撃をやめろ」

 

「うん!」

 

ピタリと止んだ。

 

「この学校に天文部があるのは知ってるよね!」

 

「ああ。

部員が2人しかいないから廃部寸前の」

 

そう言って、サンドウィッチを口に運ぼうとするとギュウッと頬をつねられた。

 

「痛い…」

 

「それは言っちゃダメだよ陽菜くん」

 

「へいへい」

 

「それでさー。

天文部の活動で、今度の日曜日に、こころちゃんの別荘で、深夜1時くらいに星を見るんだ!」

 

(時間的に、その日は学校なんだが…)

 

「そうか…。

まぁ、楽しんでこい」

 

「?陽菜くんも行くんだよ?」

 

「いや、日菜?

俺は聞くと言っただけで…」

 

「だってもう、あたしとこころちゃん、陽菜くん。

この3人と他の人で、使うって言っちゃったもん」

 

「帰らせてもらう」

 

「なんでー!?

いーいーじゃーんーかー!!」

 

「まぁ、聞きたいことは他にもあるけど…。

なんで俺なんだ?」

 

特に疑問だったことについて聞いてみた。

すると日菜は、体育座りをして、顔を半分覗かせながら

 

だって最近の陽菜くん、全然元気無いもん…

 

何かボソッと言ったのはわかったが、よく聞き取れなかった。

 

「?ごめん。

もっかいだけ言ってくれ」

 

俺は申し訳なさそうにして、そう言うと

なぜか、日菜がプルプルと震え

 

「?日菜?」

 

「……うがー!!」

 

手に

 

かぷりっ☆

 

「いった!?

ちょ、なぜ手に噛み付いた!?」

 

パッと日菜が離れた瞬間

 

「知らないもんっ!」

 

「俺も知らねぇけど!?」

 

「う〜〜…。

じゃあサンドウィッチがそこにあったから!」

 

まるで無邪気な子供が駄々をこねるようだった。

 

「……」

 

(いや、持ってるのはもう片方の手なんだが…)

 

そう思いながらも、日菜の顔が少し火照っていることに気がついた。

 

「???」

 

(そんな暑くないけどな…。

てか、今日は寒いくらい…)

 

なんて思っていると日菜が頬を膨らませてこちらをジッと見つめていた。

 

(まったく…)

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

日菜 side

 

(陽菜くん…そんなにあたしと行くのが嫌なのかな…?)

 

芝生の草を人差し指でいじってたら

 

「……今度の日曜日、夜の11時半に学校前集合。

それでいいか?」

 

陽菜くんがそう言ってくれた。

 

「来てくれるの!?」

 

あたしはビックリして聞いた。

なんで考えてる事わかったんだろう、って思った。

それに、陽菜くんがこう言ってくれるのも久しぶりだから…

 

「……まぁ、暇だしな。

それに、日菜とこころだろ?

2人だけじゃ何しでかすか、わかったもんじゃない。

夜の道も危ないだろうし。

そもそも夜に女子だけで山なんて……」

 

(色々言ってるけど、どれもこれもあたし達の事心配してくれてる…)

 

そう考えてたら、自然と胸がるんっ♪ってしてきた。

 

「さっきから何をずっとニヤニヤしてんだ…」

 

「教えてあげなーい♪」

 

(やっぱり陽菜くんは、陽菜くんだっ♪)

 

 

日菜 side out

ーーーーーーーーーー

 

「…気になるんだが…」

 

日菜が上機嫌になった。

なぜ、上機嫌になったのか、俺にもわからん。

すると

 

「じゃあ日曜日に学校の東門前に集合だよっ!」

 

「へいへい…」

 

(忘れないうちにメモに書いておくか…)

 

そしてスマホを開いて、メモ帳を開くと

 

「?」

 

既に何か、1つだけ書かれていた。

それも日付がかなり前のメモだった。

 

「うむ…」

 

(入れた覚えはないし…。

まぁ、期間がそれなりに開いてるから、期間切れだろう…)

 

そう思い、新たにメモ帳へと記入した。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

友希那 side

 

昼休み 校舎裏(如月とは別の場所)

 

 

「……」

 

真っ白な猫がたまにここに訪れるのを期待して、座りながら待っていると

 

[ニャー]

 

「あっ……」

 

(来た…)

 

そう思って、振り返ると走ってきた猫はこちらに向かって飛んできた。

 

「!」

 

慌てずにキャッチして、ゆっくりと降ろした。

 

(どうして、走って来たのかしら…?)

 

そう考えていると猫は膝に乗って丸くなった。

 

「……なんて可愛いのかしら…」

 

猫をゆっくりと撫でた。

そしてしばらくすると

 

「みゃーお」

 

何かをねだるようにしてきたので

 

「ちょっと待ってて…」

 

そう言って、小包みから猫用のイチゴを出した。

 

「はい。

ちゃんと食べやすいように切ったわ」

 

手のひらに乗せて渡すと

 

[にゃー]

 

がぶがぶと食べ始めた。

 

「ふふ…可愛い…」

 

猫が食べる姿を見ていると心が和む。

ここに来たのは、あくまでも猫に癒しを求めに来ただけ。

 

(そう。

決して、如月と話そうとしたわけではないわ)

 

そんな事を考えた。

 

「そうよ…。

私には、まだ自分に足りないモノすら見つけられてないのだから…」

 

ポツリ呟くと

 

[にゃー?]

 

猫が少し首を傾げてから、膝に頭を擦り付けてきた。

 

(可愛いわ…)

 

[にゃー]

 

ソッと猫に触ろうとするとチャイムが鳴った。

 

「あっ…!」

 

猫は元来た道へと戻って行った。

 

「……」

 

 

 

友希那 side out

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

授業中

 

「……」

 

授業が終わる頃、視線を感じ、横を見ると

 

「!……」

 

クラスのみんなは前を向いていた。

 

「?気のせいか…」

 

そして前を見ると少ししてからまた視線を感じ、今度はバッと見ると

 

「!!……」

 

向こうもバッと前を向いた。

 

(友希那…?

ていうか、すぐ逸らしたけど今絶対見てた…)

 

何が目的なのかわからないので、苦手科目の日本史を無視して考えていると

 

「どうしたの陽菜くん?」

 

後ろから日菜が机に前のめりになりながら話しかけてきた。

 

「ん?

いや、なんかさっきから視線感じるからさ。

なんかやらかしたかな…」

 

記憶にあるのは、この前の件だが、友希那はそんな事で怒らないと知っている。

だからこそ、今かなり困っているのだ。

 

「……」

 

「っ!……」

 

こちらが見るとすぐに目を逸らされた。

チラチラとこちらを見ようとしているが、姿勢だけは前を向いている。

 

(なんだ……なんだろう……。

あっ、人間観察か?

俺が暇で中学の時にやってた。

あの人間観察か?)

 

「うむ……」

 

キーンコーンカーンコーン

 

チャイムが鳴ったと同時に日菜が

 

「ねーねー!

陽菜くん、ちょっとだけ手伝ってくれない?」

 

「?何を?」

 

「生徒会」

 

「絶対にやりたくない」

 

「えー!?なんでー?」

 

日菜が大声で言うので、クラスの視線が集まってしまった。

 

「わ、わかったから、落ち着け」

 

「じゃあ手伝ってくれる?」

 

「うっ…ぐ…んん…。

まぁ…手伝うくらいなら……」

 

「やったぁ!」

 

それはそれは大変喜んでいる。

 

「…それで?

どこに行けばいい?」

 

「生徒会室っ♪」

 

「…生徒会…ねぇ…」

 

あまり、良い噂は聞かない。

生徒会長の家柄は武術全般で、蘭の家と同じく100年以上続くらしい。

 

その上、この学校の校長の息子であり、今回の生徒会選挙でも、裏で校長に頼んで今の地位を得たと聞く。

 

逆らったら有りもしない理由を付けられて、退学というマンガのような、小説のような噂もあるらしい。

 

(今のところ、2,3人くらいの生徒が退学になってるけど…。

まさかな…)

 

すると

 

「はーるなくんっ!

どーしたの?」

 

「…いや、なんでも無い。

それより、別に日菜だけでも内容くらい理解出来るだろ?

なんで俺が行かなきゃならんのだ?」

 

すると日菜が珍しくちょっと困ったような顔をして

 

「えっとね、生徒会長はね。

シーン…からガオー!で、バリバリー!ってなって、ドーンッ!からゴオオオ!で最後にはシュババーン!!

って、なりそうなんだよね〜」

 

理解不能。

 

「さっぱりわからん。

とりあえず、会議に行けばいいんだな」

 

「うんっ♪そんな感じ!」

 

「はぁ……。

面倒ごとには巻き込むなよ…」

 

「それってフラグ?」

 

「折ってやる」

 

そう返して、帰った。

 

(Roseliaの方なら、きっと大丈夫…)

 

なんて事を考えながら




ドラえもんズ様

長瀬楓様 オジマンディアス様 リュウティス王子様
kyosyou様 Earl grey様 連夢様

お気に入りありがとうございます♪( ´▽`)



また、誤字、脱字、感想、評価の方をお願いします
m(_ _)m

では!クリスマスは皆さんお幸せに!
私は今年もメリークルシミマス( ˙-˙ )

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。